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狂った果実 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
狂った果実
訳題 Crazed Fruit
作者 石原慎太郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出オール讀物1956年7月号
刊本情報
出版元 新潮社
出版年月日 1956年7月10日
装幀 奥野肇
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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狂った果実』(くるったかじつ)は、石原慎太郎短編小説1956年(昭和31年)、文芸雑誌『オール讀物』7月号に掲載。単行本は同年7月10日に新潮社より刊行された。同名のタイトルの映画作品も同年7月12日に公開された。

作品成立

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夏久・春次兄弟のキャラクター設定はフョードル・ドストエフスキーの小説『白痴』に登場する、レフ・ニコラエヴィチ・ムイシュキン公爵とパルフョン・セミョーノヴィチ・ロゴージンのそれから取った。本作に登場するシーンも『あちこちの作品から拝借』していた(そのため、映画の撮影時に石原裕次郎が「ここはあの作品の○○のシーンだな」などと撮影現場で度々口にしていたという)。

執筆は葉山町にある旅館の離れで行い、原稿用紙100枚の小説を「たったの8時間」ほどで仕上げた即席短編小説である。兄がスポーツマンで女性にもてて、弟が内向的で女性にもてない文学青年という設定は、実際の石原兄弟を逆転させたものである。

あらすじ

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夏の逗子海岸で、大学生と高校生の兄弟二人が、ヨットやボートで遊んでいる。兄の夏久は、太陽族と呼ばれ、享楽的で不良っぽい。反して弟の春次は、かたくて純真なタイプで、女性にもうぶである。あるとき、二人は恵梨という美女と海で知り合う。春次は彼女に惹かれ、真剣な思いで次第につきあうようになる。ところが別の日に横浜のクラブで恵梨を見かけた兄の夏久は、彼女に夫がいたことを知る。春次との浮気を正当化する恵梨だが、夏久は弟に言わない代わりに自分と浮気するように迫り、強引に抱きしめ関係を持ってしまう。恵梨は春次に心はあるものの、夏久の魅力、肉体にも惹かれていく。あるとき夏久は、弟を出し抜いて恵梨をヨットで海に連れ出し、弟も夫も捨てて俺についてくるようにと迫る。平沢から恵梨と夏久に関する総ての出来事をぶちまけられた春次は、憑かれたようにモーターボートで二人の後を追った。早朝の海の上、春次は夏久と恵梨の乗ったヨットの周囲を乗り廻しながら、無表情に二人を眺めていた。夏久は耐えられなくなり思わず「止めろ、恵梨はお前の物だ」と叫ぶなり彼女を弟めがけて突きとばした。その瞬間、舳先を向け直した春次のモーターボートは恵梨の背中を引き裂き、夏久を海中に叩き落してヨットを飛び越えた。白いセールに二人の血しぶきを残したヨットを残して、モーターボートは夏の太陽の下、海の彼方へと疾走して行った。

映画

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狂った果実
Crazed Fruit
監督 中平康
脚本 石原慎太郎
原作 石原慎太郎
出演者 石原裕次郎
北原三枝
津川雅彦
音楽 佐藤勝
武満徹
撮影 峰重義
編集 辻井正則
製作会社 日活
配給 日活
公開 日本の旗 1956年7月12日
上映時間 87分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1956年日活により映画化・公開(太陽族映画)された。石原慎太郎が同名の原作小説を書き始める段階で日活から「映画化したい」という話があり、慎太郎が弟・裕次郎の主演を条件に承諾したという。慎太郎自身が脚本も手がけている。

当初、日活側は裕次郎を弟の春次役に起用し、兄の夏久には三國連太郎を起用しようとしたが、「役回りが年齢的に自分に合わない[注釈 1]」という理由で三國が辞退したため、慎太郎はある結婚式でたまたま見かけた1人の少年のことを思い出した。それが津川雅彦であり、最後には「彼でなければ駄目だ」という慎太郎の強力な推薦により春次役での出演が決定、裕次郎は夏久役に回った。ちなみに、津川の芸名もこの作品に出演した時に慎太郎が自らの小説『太陽の季節』のメインキャラクター「津川竜哉」から命名した(いずれのエピソードも慎太郎の小説『弟』に詳細が書かれている)。

石原裕次郎の実質的なデビュー作品である。後に結婚に至る北原三枝(=石原まき子)との初共演もこの作品であった。

現代音楽作曲家、武満徹が初めて映画音楽を担当した映画である。

公開後エピソード

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評論家、四方田犬彦はこの映画が、日本の事情を知らないフランソワ・トリュフォーから評価されたことを指摘している[1][注釈 2]

石原慎太郎がパチンコ業界に対して「パチンコやめちまえ」と暴言を吐いた際、パチンコ業界は「狂った果実」と石原を批判した。本作出演時の裕次郎のギャランティの金額がクイズ番組の問題で出されたことがあり、「2万円」であったという[注釈 3]。なお、『海浜の情熱』というタイトルで海外でも上映されている。

石原裕次郎は、翌年公開された『嵐を呼ぶ男』で銀幕のスターの地位を確立した。これによって日活映画は生真面目な文芸映画や純愛ものの作品からアクションに路線が変わっていく。また、松竹などの優男や女性のメロドラマなどが急速に人気を失い、映画界の様相が変化したと言われている[2]

キャスト

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北原三枝津川雅彦

スタッフ

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テレビドラマ

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2002年9月9日TBSの単発スペシャルドラマにて『狂った果実2002』として放送された。舞台設定を現代に変更している。

キャスト

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スタッフ

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脚注

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注釈

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  1. ^ 本作の撮影時点で三國は33歳、裕次郎は21歳であった。
  2. ^ 四方田犬彦は、「パリでたまたまこの作品を観たフランソワ・トリュフォーは、まだ『大人は判ってくれない』(1959年)を監督する前であったが、長文の批評を書き評価した。私見するに『狂った果実』はクロード・シャブロルの『いとこ同志』(1959年)になんらかの示唆を与えている『はずである』」と解説[1]
  3. ^ 1989年10月12日放送『大橋巨泉のクイズまるごと20世紀』。ちなみに同番組では『嵐を呼ぶ男』出演時の裕次郎のギャラについても150万円と紹介している。

出典

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  1. ^ a b 四方田犬彦『日本映画史110年』(集英社新書 、2014年)162頁
  2. ^ 佐藤忠男『日本映画の巨匠たちIII』(学陽書房、1997年)

参考文献

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栗原裕一郎豊崎由美『石原慎太郎を読んでみた』(原書房、2013年):石原をからかっている書籍である。

外部リンク

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