「ニート」の版間の差分

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=== 中年層ニート ===
=== 中年層(35〜49歳)の無業者の問題 ===
ニートは若年者だけの問題と思われがちだが、35〜49歳の中年層のニート(正確には中年層の純粋無業者増加はむしろ若年層を上回っており状況はより深刻である。かし定義上'''35歳以上はニートと見なされない'''ために支援策講じられておらず[[自殺]]や[[社会保障]]費の増加などが懸念されている<ref>[http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/pdf/2-1-4.pdf 青少年の就労に関する研究調査 中年無業者の実情]</ref>。
35〜49歳の中年層の無業者は増加傾向で、そのうちの非求職型+非希望型<ref>職を探ていないタイプと就職を希望していいタイプ</ref>の人は、2002年におい48.6万人いるとされ、「青少年の就労に関する研究調査<ref>[http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/pdf/2-1-4.pdf H17 青少年の就労に関する研究調査 中年無業者の実情]</ref>」においては'''中年ニート'''と呼ばれている。ニートは若年者だけの問題と思われがちだが、中年ニートの状況も深刻である

なお、中年層の無業者を求職型、非求職型、非希望型に分けた時、2002年において、職業経験については無職業者の23.4%が職業経験を持っておらず、特に非希望型は57.6%に及ぶ。また、非求職型の中年が働けない理由として挙げられているのが、「病気やけが」であり、2002年において非求職者20.3万人のうち8.5万人がこれにあたり<ref>[http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/pdf/2-1-4.pdf H17 青少年の就労に関する研究調査 中年無業者の実情]</ref>、中年ニートには、職業経験がない非就職希望者や、健康上の理由で働けない非求職者が多い。

このような状況があるものの、定義上では'''35歳以上はニートと見なされない'''ために、支援策などは講じられておらず、[[自殺]]や[[社会保障]]費の増加などが懸念されている。


家族に扶養されているニートの場合、扶養者である家族の高齢化や死去以降の生計手段が問題となってくる。遺産や貯蓄などが尽きしだい行政は生存権保証のために[[生活保護]]を行う必要があり、これによって[[福祉|福祉財政]]を圧迫すると指摘されている。
家族に扶養されているニートの場合、扶養者である家族の高齢化や死去以降の生計手段が問題となってくる。遺産や貯蓄などが尽きしだい行政は生存権保証のために[[生活保護]]を行う必要があり、これによって[[福祉|福祉財政]]を圧迫すると指摘されている。

2011年8月1日 (月) 03:45時点における版

ニート(Not in Education, Employment or Training, NEET)とは、教育労働職業訓練のいずれにも参加していない状態を指した造語である[1]。ただし、この訳は日本におけるニートの定義・用法とは異なる。なお、以下では特に断り書きの無い限り、日本における無業者(主に35歳未満の若年者)について解説をする。

概説

元は、1999年イギリス政府機関社会的排除防止局が作成した調査報告書『BRIDGING THE GAP』の中にある一文「Bridging the Gap:New Opportunities for 16-18 years olds not in education, employment or training」(日本語訳「ギャップを埋める:教育、雇用、職業訓練に参加していない 16〜18歳の若者に対する新しい機会」)の"Not in Education, Employment or Training"という部分の頭文字を採り、"NEET"と略したものが始まりである。そのためイギリスにおける“ニート”とは、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない、義務教育修了後の16〜18歳(もしくは19歳)までの者と定義されている。なお、BBCニュースの報道によると、2005年時点で"NEET"に該当する若者がイギリス全土に15万人いると推計されており、これは、16〜18歳(19歳)人口のおよそ9〜10%に相当する数字だという[2]

日本における普及過程

定義について

現在、日本におけるニートの算出方法は、総務省が毎月実施している労働力調査の『特定調査票集計』の中の「詳細集計」に基づいており、そのうち、15〜34歳の年齢層の非労働力人口[3]の中から学生専業主婦を除き、求職活動に至っていない者を厚生労働省においては日本における若年無業者ニート)と定義している。なお、いわゆる家事手伝いの扱いについては、自営業者の家族従業員が含まれているのを理由として、現在はニートに含めていない[4][5]

内閣府の定義による二重基準

一方、過去の内閣府による定義では、現在の総務省が1956年からほぼ3年毎、1982年以降は5年毎に実施している『就業構造基本調査』を根拠にしており、2005年に内閣府が実施した『青少年の就労に関する研究調査』においては、「各種学校(高等学校大学専門学校の他、予備校も含まれる)に通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人」と定義していた。この点は前述した厚生労働省のそれと差異は無いが、決定的に違うのは家事手伝いの女性を含めている点である[5]。これは、同研究調査の企画分析委員長にして東京大学社会科学研究所助教授(いずれも当時の肩書き)である玄田有史が、家事手伝いとニートに差異はないと判断したためである。玄田は本調査の中で、「女性の若年無業者が家庭外での社会参加活動をしていない場合、自らの現状を表す言葉に窮し、“家の手伝いをしている”と回答する女性が多く見受けられた」ことを理由としている[6]

類型

更に内閣府は、前述の就業構造基本調査を基に以下の類型を設けていた。

求職型
無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望(収入になる仕事をしたいと思っている)を表明し、その仕事を探したり開業の準備をしている個人。
非求職型
無業者のうち、就業希望を表明しながら、求職活動や開業の準備をしていない個人。
非希望型
無業者のうち、就業希望を表明していない個人。

現在の定義

しかし、2006年3月22日の参議院経済産業委員会において、前述した定義の二重基準が存在する事実を取り上げられ、「政府としては厚生労働省の定義を採用している」という旨の答弁がなされたことにより、現在は同省による定義が「政府の公式見解」とされている。これを受けて、内閣府によるニートの推計調査は、2005年に行った『若年無業者に関する調査』を最後に実施されていない[5]

失業者やフリーターとの区別

定義上、失業者労働力人口の「失業者数」に分類されており、そのうち常用雇用(定義では正社員派遣労働者)での就労を希望する無業者であれば、具体的な求職活動に至っていない場合でも「ニート」には分類しないこととしている。その一方で、アルバイトまたはパートタイマーでの就労を希望する者の場合には扱いが少々異なる。アルバイトやパートでの雇用形態で就労を希望する無業者のうち、求職活動に至っていない者であれば「ニート」、これらの雇用形態での就労を希望していたり、具体的な求職活動に至っている者であれば「フリーター」に分類している[4]

「引きこもり」との区別

厚生労働省の定義では、いわゆる引きこもりを若年無業者(ニート)の「就業希望を有しない者」(2009年の調査でおよそ33万人)に含めており、実質的に引きこもりを「ニート」として扱っている[4]。ところが、2010年に内閣府が行った初の引きこもり全国実態調査(15〜39歳対象)では、引きこもりに該当する者は69.6万人いると推計されることが発表され[7]、この数と「就業希望を有する」ニートの数およそ30万人を合わせれば、単純計算でニートの推計は実に100万人にも及ぶ。これは厚労省の定義や上記の分類とは明らかに矛盾したものだが、本調査の分析委員らは「引きこもりの増加に危機感を持ち、定義を広くとった」としている[8]。ひきこもりについては家庭問題でもあるため、国の基準も定まっていないのが現状である。

実態に関する調査

推移

厚生労働省の定義による「ニート」の総数(単位:万人)
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
総数 40 42 45 40 42 46 48 44 49 64 64 64 64 62 62 64 63
年齢別(5歳階級、単位:万人)
年齢\年 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
15〜19歳 12 11 10 9 10 9 9 10
20〜24歳 17 16 18 16 17 16 16 16
25〜29歳 18 18 19 20 18 18 18 18
30〜34歳 17 18 18 19 18 18 19 18
  • 資料出所:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[4]

「総数」の表を見ると、若年無業者人口は2002年に前年の49万人から64万人へと急増している。これは、2004年の労働経済白書よりニートに該当する存在を「若年層無業者」として捉えたためで、2005年以降の白書では、ニートの定義に「家事を行わない既婚者」やいわゆる不登校の状態にある学生を新たに加え、定義が変更されたからである。従って、2002年以前の数値にはこれらの者が含まれていない。また、いずれの表を見ても、厚生労働省が定義するニートの数は2002年以降わずかな増減を繰り返すのみで、特段増加していないことが分かる。

最終学歴

年齢別(5歳階級、単位:%)
年齢\学歴 中学卒 高校卒 大学卒
15〜19歳 16 9.3 -
20〜24歳 10.5 4.5 1.9
25〜29歳 9 3.3 1.3
30〜34歳 8.6 2.4 1.1
35〜39歳 8.7 2 0.8
40〜44歳 10.4 1.8 0.9
  • 資料出所:「平成19年版就業構造基本調査」労働政策研修・研究機構による再集計
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[4]

最終学歴高校中退を含めた中学校卒(中卒)が最も多い。特に学歴が中卒の場合、ホワイトカラー(事務職など)への就職がまず不可能なばかりか、ブルーカラー(土木・建築・製造など)への就職も難しくなることから職業の選択肢が狭まるだけでなく、各種専門学校や教習所職業訓練校などへの入学も制限されることと、中卒でも取得可能な免許資格[9]も制限されるため、無業者に陥る割合が高くなる様子が窺える。

求職活動をしない(できない)理由

理由別(単位:%)
理由\学歴・就業経験 合計 中学卒 高校卒 大学卒 就業経験あり 就業経験なし
探したが見つからなかった 7.8 6.9 7.8 6.6 8.4 6.9
希望する仕事がありそうにない 7.2 8.6 6.5 7.2 6.9 7.7
知識・能力に自信がない 11.1 11.5 12.4 9.1 10.9 11.5
病気・けがのため 28.7 26.1 29.1 29.7 32.3 22.8
育児や通学のため 0.6 0.3 0.9 0.4 0.8 0.3
家族の介護・看護のため 0.8 0.1 1.2 0.8 1.1 0.3
急いで仕事に就く必要がない 6.1 5.1 6.5 6.2 7.1 4.5
進学や資格取得などの勉強中 12.3 5.6 9.2 20.4 11.7 13.3
その他 25.3 33.2 26 19.6 20.8 32.7
  • 資料出所:労働政策研究・研修機構「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状-平成19年版「就業構造基本調査」特別集計-」
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[4]

全階級を通じて、病気や怪我などの「健康上の理由」や親の介護などで就労に向けての各種活動を行ないと回答する者が3割前後を占めている。学歴別だと、「探したが見つからなかった」「希望する求人がありそうにない」が中卒で最も多く、「知識・能力に自信がない」も高卒に次いで2番目に多い。一方大卒では、「知識・能力に自信がない」とする理由が最も少ない半面、キャリアアップに向けて「進学や資格取得などの勉強をしている」とする者が他の学歴と比して突出している。

男女比

内閣府の調査(2002年)によると、ニートの男女比率は男性が48.4%(41万人)、女性が51.6%(43.7万人)とほぼ半々となっており、過去10年間の調査と比較しても大きな変化は見られない。ところが、男女比率はほぼ半々であるにもかかわらず、「ニートは男だけ」と見られがちなことが多い[10]

中年層(35〜49歳)の無業者の問題

35〜49歳の中年層の無業者は増加傾向で、そのうちの非求職型+非希望型[11]の人は、2002年において48.6万人いるとされ、「青少年の就労に関する研究調査[12]」においては中年ニートと呼ばれている。ニートは若年者だけの問題と思われがちだが、中年ニートの状況も深刻である。

なお、中年層の無業者を求職型、非求職型、非希望型に分けた時、2002年において、職業経験については無職業者の23.4%が職業経験を持っておらず、特に非希望型は57.6%に及ぶ。また、非求職型の中年が働けない理由として挙げられているのが、「病気やけが」であり、2002年において非求職者20.3万人のうち8.5万人がこれにあたり[13]、中年ニートには、職業経験がない非就職希望者や、健康上の理由で働けない非求職者が多い。

このような状況があるものの、定義上では35歳以上はニートと見なされないために、支援策などは講じられておらず、自殺社会保障費の増加などが懸念されている。

家族に扶養されているニートの場合、扶養者である家族の高齢化や死去以降の生計手段が問題となってくる。遺産や貯蓄などが尽きしだい行政は生存権保証のために生活保護を行う必要があり、これによって福祉財政を圧迫すると指摘されている。

その他

2007年に厚生労働省委託により実施された、若者自立塾地域若者サポートステーションなどの支援機関の利用者約830人へのアンケートによると、出身家庭の経済状況について、47.1%が「ふつう」、28%が「やや苦しい」、10.8%が「やや余裕がある」と回答している。就業経験については、過去に連続1か月以上就労した経験がある者は79%で、就労回数は平均2.6回となっている。就職活動については、75.8%がハローワークに通ったことがあり、68.2%が面接を受けるため企業に問い合わせた経験がある他、64.8%が実際に面接を受けている。生活面では、49.5%が現時点で引きこもりで、49.5%が精神科または心療内科を受診した経験があるという[14]

主な要因

発達障害との関わり

各種の統計によれば、子供の1割は何らかの発達障害を抱えており、ニートの場合、厚生労働省の調査によれば2割強が発達障害者であるとされる[15]。精神科医の星野仁彦は自著において、臨床的にはニートの8割とする統計も別に存在すると指摘し[注釈 1]、その方が厚生労働省の調査よりも実態に近いと述べている。発達障害のある人は、自分を客観的に見つめる事が苦手で、基本的に目先の事しか考えられず、長期の目標に向かって長期間努力することができないため、自分の欠点ばかりが目立つような職業に就いて、仕事が上手くいかなかったり職場に馴染めなかったりして、転職を繰り返したりニートになったりするケースが多いと述べている[15]。星野は、発達障害者は小児期から学習障害や認知障害を持つケースが多いため、英語、数学、国語などの基礎的能力を必要とするような職種に就いてもなかなか熟練できないという問題も抱えていると分析している[15]

政界・行政の動き

対策・支援

詳細はリンク先を参照。

厚生労働省
経済産業省
文部科学省
内閣官房

対策・支援に関する問題点

利権問題

東京大学助教授(現教授)本田由紀は、ニートの支援に関連する諸々の対策は利権の温床となっており、各省庁地方自治体、更には支援に携わるNPO法人等の民間団体や企業までもが、「ニートの自立支援」を名目とした予算の争奪戦を繰り広げている現状があると、著書『「ニート」って言うな!』の中で指摘している。また、本田は「これまで、引きこもりへの支援を細々と行っていた様な(民間の)団体が、“ニート”への支援を謳い始めた途端に、お金が降りて来るというような現象が起きている」と述べ、これらの者が従来行われていた引きこもり対策を「ニート対策」と改称するなどして利権を拡大させたと分析している。

本田はこれらを踏まえて、今日においてニートが「金づる」にされている現実を指摘、加えて、本来はその種の支援を希望、または必要としていない「非求職型のニート」までもが「集団生活の中で、生活訓練や労働体験等を通じて、勤労観の醸成を図り、働く自信と意欲を身に付けさせる」などといった、方向性を誤った“支援”の対象とされてしまっていることを危惧している[16]。同様の主旨の発言は、この書の共著者である内藤朝雄後藤和智も行っており[17]、また、引きこもり問題の第一人者である精神科医斎藤環は、「ニート支援は将来的にビジネスとして成立すると思う」と予見していた[18]

偏見・差別

本田由紀らは、「ニート」という語が大きな誤解を招き、偏見や差別が助長され、それによりニートの状態にある者の社会参加が困難になったと主張する。前述の通り玄田有史によってアルファベットの"NEET"が“ニート”と言い換えられただけではなく、玄田がイギリスのそれとは異なる「教育を受けておらず、労働職業訓練もしていない“15歳”から34歳の若者”」と定義したことや、玄田以外の学識経験者や教育関係者らの持論(「働く意欲のない若者が増えている」など)に基づいたマスメディアの報道などが寄与したと指摘し、「ニートという語を使用すべきではない」と強く訴えている[19]

マスメディアの報道姿勢

ニートという語が使用されるようになって以降、テレビ・新聞などのマスメディア上では一種のニートバッシングがなされていることに対し、懐疑的な見方をするテレビ視聴者も少なくはなく、放送倫理・番組向上機構(BPO)などには、差別や偏見の助長を懸念する旨の意見が寄せられている。寄せられた指摘の中には、「たとえ自らの意志で就労を拒否したとしても、それを他人が攻撃する資格も権利もない」という意見もあった[20][注釈 2]

また、いわゆる「やらせ」の疑義も持たれている。確認出来るものでは、2006年6月9日放送の『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』(日本テレビ系列)に出演したニートを自称する男性は「ニートスズキ」の名でその他のテレビ番組(同局の『報道特捜プロジェクト』など)やイベントに出演しているタレントのような立場にあった[21]。他にも、「漫読家(まんどくか)」を名乗り路上パフォーマンスやイベント出演などで生計を立てているパフォーマーの東方力丸も、同年4月に放送された『ズバリ言うわよ!』(TBS系列)に「ニート代表」として出演していた。

企業の採用姿勢

2008年4月に横浜市が市内の企業に対して実施したアンケート(約1,000社中316社が回答)によると、83.3%の企業が若年無業者は就労困難であるという先入観を抱いており、「ニートや引きこもり状態にある若者を雇用する意向はない」と回答している[22]

ニートに関する主な発言

否定的もしくは批判的なもの

政治家

  • 自民党衆議院議員武部勤2004年12月に行った講演の中で、フリーターやニートの状態に置かれている若者に対して、「1度自衛隊にでも入って(イラクの)サマワみたいなところに行って、緊張感を持って活動してみるといい。そうすれば、3か月ぐらいで瞬く間に変わるのではないかと思う」となどと語った[23][24]
  • 民主党衆議院議員の小沢一郎2005年3月当時夕刊フジで連載していた『剛腕コラム』にて、「本人たちは『誰の迷惑にもなっていない』と言っているらしいが、親の稼ぎで食わせて貰って、公的なサービスも享受している。病気でもないのに他人に寄生して生きているなど、とんでもない話だ」と不快感を示し、続けて「彼ら自身も問題だが、何よりも厳しくせずにただ甘やかしている親たちが問題だ。僕は自宅で小鳥を飼っていて、親鳥はヒナが大きくなるまでは一生懸命に世話をするが、一定の時期が来ると冷たく突き放して巣立ちさせる。それが出来ないニートの親は動物にも劣るといっても過言ではない」などと持論を展開した[25]
    • また、当時政府与党が検討していた対策や支援についても、「政府は今後ニートの就職支援に本腰を入れるそうだが、僕に言わせれば対策は簡単だ。一定の猶予を与えて、親が子供を家から追い出せばいい。追い詰められれば、彼らだって必死に考えて行動するに違いない。それでも働きたくないというなら、勝手にすればいい。その代わり、親には一切頼らず、他人に迷惑もかけず、公的なサービスも受けてはいけない。無人島にでも行けばいい」などと切り捨て、対策等も不必要との見解を示した[25]
  • 自民党衆議院議員の菅原一秀は2005年6月放送のテレビ番組『企画工場なりあがり』の企画「華のガキ国会」に出演し、ニート歴3年以上の者への直接課税と、ニートが保有する運転免許とパスポートの没収及び新規交付停止を柱とする議員立法を実現させることを表明した。その中で菅原は、「働いてもいない奴が車を乗り回したり、旅行に言ったりしているのは許せない」などとニート批判を展開した。タレントや一般出演者から構成される評議員40人中30人がこれに賛成し、「可決」された[26]が、2011年現在これらは実現に至っていない。
  • 東京都知事石原慎太郎は2005年8月に各国の高校生・大学生らを招いて開かれたトークディスカッションの中で、「ニートの問題というのは、国家の緊張感の問題に関係があると思う。私の友人である精神科医斎藤環君が、彼が扱っている登校拒否引きこもり・ニートの連中に『もし日本に徴兵制度があればどうするか』と尋ねると、9割は自ら志願すると答えたそうだ。例えば、韓国には徴兵制度がある。途上国には貧困や食糧の問題がある。そうした色々な問題が緊張感を生んでいるから、恐らくニートが非常に多いのは日本とアメリカだろう」と言い切り、経済的に豊かで平和な国において発生する現象との持論を述べた[27][28]
    • 更に、「結局、これは私たち大人の責任で、社会全体が子供たちを甘やかしすぎた。動物行動学者のコンラッド・ローレンツは、子供の時に(虐待ではない)肉体的な苦痛を味あわなかった子供は、大人になって非常に不幸な人間になると言っている。要するに我慢だ。暑かろうが寒かろうが冷暖房を控えるとか、お腹が空いてもまだご飯の時間ではないから水で我慢するとか、遊ぶのを我慢して親に命じられた手伝いをするといった作業の中でこらえ性が身に付く。日本の子供はこらえ性がないから結局ニートになってしまう。ニートなんて格好いいように聞こえるけど、みっともない。無気力・無能力な人間のことだ」と批判した[27]
  • 自民党衆議院議員の安倍晋三内閣官房長官時代に出演したテレビ番組『世界がもし100人の村だったら』の中で、「アフリカでは、小さな子供たちが生きるために働いている。ニートとは大違いだ」などと語り、不快感を露わにした[29]
  • 自民党衆議院議員の稲田朋美2006年8月に行われた保守シンクタンクの「『立ち上がれ! 日本』ネットワーク」が主催するシンポジウム「新政権に何を期待するか?」において、「ニート問題を解決するためには“徴農制度”を実施すべき。若者に農業に就かせる徴農を実施すれば、ニート問題は解決する」となどと持論を述べた[30]

文化人・企業人など

  • 登山家野口健は石原慎太郎も参加した上記トークディスカッションの中で、「僕が登山のために訪れたチベットには貧しい人が沢山いる。仕事をしなければ食べていけない。僕の仲間が『彼らには“ニート”という発想が無いだろう』と言っていた。その通りだと思う。日本は親がニートにご飯を食べさせているから、そういう意味ではもっと厳しくていい」などと批判した[27]
  • 写真家ジャーナリスト宮嶋茂樹週刊文春の記事において、「税金も払わない上に、三十路になっても親がせっせと部屋に“エサ”を運び続け、パソコンに向かってしか他人と会話できん奴をニートと呼ぶそうだが、そんな穀潰しが何十万も生きておるんは世界広しと言えども我が国だけや!」となどと批判し、続けて「お隣の半島南半分ではサッカー選手から、大統領まで男は全員2年以上の徴兵だ。8ヶ月ぐらいでもいい。我が国でもニートに対して規律、勇気、自己犠牲国防意識という美徳を自衛隊で徹底的に教育し直せ」と述べ、ニート対策として徴兵制度の導入を唱えている[31]

芸能人・スポーツ選手など

  • お笑いコンビくりぃむしちゅー上田晋也は2005年12月放送のテレビ番組『上田晋也の日本の宿題』の中で、当時の政府が打ち出したニート支援策が取り上げられた際、「怠け者は放っとけ!」とこれらの支援策は不要との持論を述べ、若者自立塾をはじめとした支援事業で行われていた家庭訪問や卒業後の新生活支援などについても、「まるでなまはげみたいなシステムだな(笑)」、「アパマンか! 部屋ぐらい自分で探させろ!」などと嘲笑した。更に、「ニートなんて国民の三大義務を1つも守っていないんだから、逮捕しろ!と言いたい」と罵倒し続けた[32]
  • タレント矢口真里は2011年5月放送のテレビ番組『青春リアル』でニートがテーマとなった放送回において、「すごく怠けてるんですよ。とにかく親の脛をかじって、誰かに頼って生きていくのもいいんじゃないかっていう考え方は」、「現代社会をすごく見ている感じ。あ、これが現代社会なんだなって」と述べ、親の脛をかじり働こうとしない(とされる)“ニート”とは、現代社会の産物であるとの見方を示した。また、この回のテーマ提案者である自称ニートの男性については、「いつか痛い目にあうんじゃないかなと思いますけどね(笑)。見ている人もきっと「何なんだあいつ」って反感を買うようなことをしているのに、怖がってない。それがすごいなと思うんですよ。ま、なめてるよね、社会をね(笑)」などと嘲笑した[33]

肯定的もしくはニート批判に懐疑的なもの

イギリスを除いた諸外国の状況

欧米

欧米においても「教育機関に所属せず、雇用されておらず、職業訓練に参加していない者」は存在するが、日本語でいうような「ニート」あるいは類する語での分類・定義付けはされておらず、その概念も普及していない。その原因の一つは「ニート」という分類が1999年当時社会問題となっていた「社会参加困難者」(被社会的排除者)の一部にすぎないものであることが挙げられる。欧米における「社会参加困難者」は人種宗教言語による差別・格差問題の色が濃く、日本での若年無業者問題と同列に扱うことは困難である。英国の「ニート」の定義付けは将来的な「社会参加困難者」を予測する分析としての意義はあったが、総合的な「社会的排除対策」が行われる中で「ニート」という分類自体は重要視されなかった。イタリアでは、2007年10月に当時経済・金融大臣の銀行家Tommaso Padoa-Schioppaが、20歳〜30歳の家族とともに生活している人々(該当する人々は全人口の内、相当の数)をbamboccioni(big dummy boys:大きなおしゃぶり坊やたち)と定義し[34]、イタリアの世論の大きな騒ぎを引き起こした。新聞社は、個人的に気分を害され侮辱と受け取った読者達からの大量の手紙を受け取り、イタリアの人口の内大変な数を占める「月約1000ユーロで生活していて、両親の家を離れるだけのお金を支払うことのできない20〜30歳」の状況を全く理解していないと彼を非難した[35]

韓国

OECD は、韓国の青年(15歳〜29歳)の6人に1人が「ニート」で、割合はOECD加盟国の平均を大きく上回っていると指摘。[1]。同国では前政権下、雇用安定を目的として法的に解雇が大きく制限された。このことによって企業が若者の新規採用を手控えるという意図せぬ結果を生み出してしまったとされる。

韓国とOECD加盟国平均の比較
韓国 OECD加盟国平均
「15〜24歳」の失業率 10.0%(2006年
6.3%(1996年
14.7%
就業率(2006年) 27.2% 43.0%
「15〜24歳」のニート占有率 11.7% 12.0%
「15〜29歳」のニート占有率 17.0% 12.0%

OECDは韓国にニートが多い理由について、「兵役で就職が遅れ、大学卒業後にも就職しない若者が多いため」と報告したが、徴兵制は若者を強制的に社会参加に強いる制度であるため、青少年期の「ひきこもり」状態からそのまま全く社会経験を経ずに家に閉じこもったまま「ニート」に移行していくパターンは日本より過小である。

中国

中国の通信社・新華社によると、2005年の時点で16歳から35歳の3.62%(およそ1216万人)がいわゆるニートになっているという。これらの若者が、自室やインターネットカフェに入り浸り、寝食を忘れてオンラインゲームに熱中し、死に至る事件が相次ぐなど、社会問題化している[36]

関連書籍

他、多数

脚注

注釈

  1. ^ ただし星野は、その統計が誰がいつ、どのようにして統計したものであるかは明らかにしていない。
  2. ^ 同様の意見は2006年5月以降にもある。

出典

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関連項目

派生語

外部リンク