ナナカマド

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ナナカマド
Nanakamado tree.jpg
ナナカマド
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
: ナナカマド属 Sorbus
: ナナカマド Sorbus commixta
学名
Sorbus commixta Hedl.[1][2]
シノニム
和名
ナナカマド
英名
Japanese Rowan
変種
  • var. commixta ナナカマド
  • var. rufoferruginea サビバナナカマド
  • var. wilfordii ツシマナナカマド

ナナカマド(七竈[5][6][7]、花楸樹[8]学名Sorbus commixta)は、バラ科落葉高木[5][1]。別名では、オオナナカマド[2]、エゾナナカマド[2]ともよばれる。赤く染まる紅葉果実が美しいので、北海道東北地方では街路樹や公園樹としてよく植えられている[5]。材はかたく、備長炭の代用になる。

名称[編集]

「ナナカマド」という和名は、異説がいくつかある[9]

  1. よく知られるのは、「大変燃えにくく、7度竃(かまど)にくべても燃え残る」ということから付けられたという説が広く流布している[10][11][12][7][13][9]
  2. 「7度または7日間竃で焼くと良質のになる」という説もある[12][9]
  3. 「この材で作った食器は7世代も使えるほど強い」という説もある[9]

牧野富太郎は『牧野日本植物図鑑』で本種の項に

材ハ燃エ難ク、竈ニ七度入ルルモ尚燃残ルト言フヨリ此和名ヲ得タリト伝フ。

と記している[14]

現在でも辞典類ではこの説が取り上げられる。下はその1例である。

  • 七度かまどに入れても燃えないという俗説がある。(『広辞苑』第六版、岩波書店、2008年)

ただしこれは現実的には正しくないようで、実際にはナナカマドの薪は良く燃えるとの記述もある。例えば『植物名の由来』で中村浩は

わたしは越後の山荘で何度か冬を過ごしたことがあるが、よくナナカマドの薪をたいて暖を取ったものである。この木の材はよく燃えて決して燃え残る事は無い。[15]

と自らの経験を述べている。中村の説によるとナナカマドの木炭は火力が強く、これを作るには7日間炭焼きのかまどに入れておく必要があったため「七日かまど」と呼ばれており、それが詰まってナナカマドになったという[10]。鶴田知也は『草木図誌』で同様に事実を経験として述べ、『名前の由来には別の意味がある』可能性を示唆している。

分布・下位分類[編集]

南千島を含む[16]北海道本州四国九州冷温帯の山地帯の上部および亜高山帯の林地に自生する[5][1]樺太[16]朝鮮半島[16]などアジア東北部に分布[6][17]。山地のミズナラブナ林から亜高山の森林限界まで普通に分布する[5][18]

本種は以下の3変種に分けられる。それぞれの特徴は#形態・生態の項参照。

Sorbus commixta var. commixta ナナカマド
全国に普通に自生[5]
Sorbus commixta var. rufoferruginea サビバナナカマド
東北地方から近畿にかけて時に分布[5]
Sorbus commixta var. wilfordii ツシマナナカマド
対馬および北陸から山陰にかけて低地から分布[5]

形態・生態[編集]

落葉広葉樹[17]。高さ3 - 12メートル (m) の小高木から高木で[5]、山地では普通高さ6 - 10 m程度だが、15 mになるものもある[6][1]。高地では小低木となることが多い[10]樹皮は暗灰褐色をしており、横長の細長い皮目があり滑らかで、サクラにやや似る[5][6][18]。若い樹皮は褐色から淡褐色で、皮目や横すじが目立つ以外は滑らかだが、成長とともに灰褐色となり、老木では縦に浅く裂けるようになる[12][18]。一年枝は紅紫色でつやがある[18]。樹形は株立ちで、逆形となり[12]、高原ではより低く横に広がる傾向がある[18]。胸高直径は15 - 30センチメートル (cm) になる[1]

は長さ15 - 25 cmの奇数羽状複葉で、長さ3 - 9 cmの側小葉が4 - 7対(または9 - 17枚[1])向かい合ってつく[5][6]。小葉は披針形または長楕円状披針形で、先は尖り[6]、幅は1 - 2.5 cm[1]。小葉には細かく鋭い鋸歯または重鋸歯があり、両面ともほぼ無毛[5][6][1]。小葉の表面は緑色で、裏面は淡緑色[1]。変種サビバナナカマド(S. commixta var. rufoferruginea)では葉裏の主脈に沿い、に錆色(褐色)の毛が密生する[5][6]。花序や萼にも褐色の長軟毛が生える[6]。また小葉基部の葉軸上には褐色の毛が生え、これはナナカマド属共通の形質である[5]。変種ツシマナナカマド(S. commixta var. wilfordii)では小葉が4 - 6対と少なくて、形は幅広く短い[5]。葉序は互生する[5]

開花時期は初夏の5 - 7月で[18]、白いを多数咲かせる[6]。花は5枚の花弁からなる6 - 10ミリメートル (mm) の大きさの小花で複散房花序の形をなす[10][6]。雄蕊は20個で、花柱は3 - 4本[6]

果期は9 - 10月[9]果実ナシ状果[18]、秋にはあざやかに紅葉[5]、球形で直径5 - 6 mmの赤い実を実らせる[6]。実は晩夏から冬まで見られ[5]、葉が落ちても果実は枝に残り、しばしば黒ずんだ果実が冬場でも残っている[16][18]。実はとても苦いが、冬の寒さの中で糖度が上がって少しずつ苦味は減少し、レンジャクアトリツグミなどの鳥類の食料となる[10][9]

冬芽は枝に側芽が互生し、枝先には仮頂芽がつく[18]。冬芽は先端が尖った長卵形で紅紫色の芽鱗2 - 4枚に覆われ、撮むと樹脂によりしばしば粘る[5][18]。葉痕は三日月形で、紅紫色の葉柄基部が残って突き出し、維管束痕が5個ある[18]

紅葉したナナカマドの複葉。
ナナカマドの樹皮。
ナナカマドの花。
ナナカマドの実。

利用[編集]

実や紅葉が美しく、北海道などの北国では庭木街路樹公園樹として植栽され、花材としても用いられる[6][16][17][9]。材は褐色で堅く細工物に適しており[10]ろくろ細工の材、彫刻材としても優良である[9]。樹皮は染料にする[17]。果実は果実酒にも利用できる。かたい材は備長炭の代用として優れている。

生の果実中に存在するソルビン酸はナナカマドの学名より取られた。現在は合成したものが保存料として使用される。[19]

セイヨウナナカマドの生果実にはパラソルビン酸が 0.4%-0.7% 含まれるが、加熱処理や乾燥でソルビン酸に変わる[注釈 1]。「健康食品の安全性・有効性情報」のサイトではヨーロッパナナカマドの新鮮な果実を過剰に摂取することに注意を喚起している[20][注釈 2]。1993年に北海道大学で果実を用いてジャムやマーマレードなどの商品化の研究が行われた[21]

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生材は燃えにくいが、乾燥させると燃料として優れている[9]。この材で作られた炭は火力も強く火持ちも良いので、極上品とされている[9]。ナナカマドで作られた堅炭は、備長炭の代用としてウナギの蒲焼きに珍重される[9]

中村浩は『植物名の由来』で

この備長のことを記した古書[注釈 3]には、“備長は木炭の中の上物なり。紫珠及び花鍬樹を極上品とす”という記述がある。

と述べている[22]。花鍬樹とはナナカマドを指す漢名である[8]

栽培[編集]

植え付けや勢姿剪定は1 - 3月に行われる[11]カミキリムシの食害を受ける[11]。完熟前に採り播きし、実生にて増やされる[11]

伝承・文化[編集]

北欧などで魔よけとされているのは、ナナカマドと同じナナカマド属だが別種のセイヨウナナカマド (European rowan, Sorbus aucuparia L.) である。生木は燃えにくいことから「火除けの木」や「落雷除けの木」として縁起木とされる[12]

ナナカマドの花言葉は、「慎重」である[9]

シンボル[編集]

  • ナナカマドをシンボルに指定している市町村
道県 支庁 ナナカマドを指定する各市町村 備考
北海道 宗谷総合振興局 猿払村稚内市利尻富士町枝幸町 稚内市はサクラ、利尻富士町・枝幸町はエゾマツも指定している
留萌振興局 初山別村苫前町増毛町 -
上川総合振興局 幌加内町鷹栖町比布町旭川市士別市 士別市はアカエゾマツも指定している
オホーツク総合振興局 興部町紋別市大空町 大空町はシラカバも指定している
後志総合振興局 岩内町 -
石狩振興局 新篠津村江別市 -
空知総合振興局 妹背牛町砂川市歌志内市奈井江町三笠市 -
十勝総合振興局 清水町浦幌町 -
釧路総合振興局 白糠町釧路市 釧路市はハシドイエゾヤマザクラも指定している
渡島総合振興局 鹿部町 -
胆振総合振興局 室蘭市白老町苫小牧市洞爺湖町 洞爺湖町はサクラも指定している
根室振興局 標津町羅臼町 -
青森県 三八地域県民局 田子町 -
秋田県 鹿角地域振興局 鹿角市 -
山形県 村山総合支庁 山形市 -
福島県 会津地方振興局 猪苗代町 -
  • ナナカマドをシンボルに指定している行政区

北海道 ‐ 白石区(札幌市)

  • ナナカマドをシンボルに指定していた廃止等市町村

北海道 ‐ 門別町音別町常呂町虻田町、石狩町[23]石狩市への市制施行前)

青森県 ‐ 十和田湖町

新潟県妙高村

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ en:Rowan#Usesに "The raw fruit also contain parasorbic acid (about 0.4% - 0.7% in the European rowan)" とあり、出典として Sorbus aucuparia L. が挙げられている。なお、Japanese rowan に関する言及は無かった。
  2. ^ こちらも、日本のナナカマドに関しては言及していない。
  3. ^ 出典には古書としか書かれていないため書名は不明。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i 馬場 1999, p.238
  2. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus commixta Hedl.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月28日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus commixta Hedl. var. sachalinensis Koidz.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月28日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus americana Marshall subsp. japonica (Maxim.) Kitam.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月28日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 林 2020, p.310
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n 林 1985, p.338
  7. ^ a b 日本漢字能力検定協会2014, p.645
  8. ^ a b 日本漢字能力検定協会2014, p.142
  9. ^ a b c d e f g h i j k l 田中潔 2011, p. 46.
  10. ^ a b c d e f 石狩の木ナナカマド”. 石狩市. 2020年2月24日閲覧。
  11. ^ a b c d 川原田 2006, p.158
  12. ^ a b c d e 梅本 2010, p.132
  13. ^ 加納 2007, p.138
  14. ^ 牧野日本植物図鑑, p. 467.
  15. ^ 中村 1998, p.158.
  16. ^ a b c d e 鈴木 2005, p.299
  17. ^ a b c d 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 120.
  18. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 162.
  19. ^ 用途別 主な食品添加物 保存料 東京都福祉保健局
  20. ^ ヨーロッパナナカマド、オウシュウナナカマド - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  21. ^ 佐藤博二「ナナカマド果実の苦味物質について」『北海道大学農学部農場研究報告』第28号、北海道大学農学部附属農場、1993年3月、 19-23頁、 ISSN 03856445NAID 110000309379
  22. ^ 中村 1998, pp.159-160.
  23. ^ 「石狩ファイル」(0008-01 石狩の木・ナナカマド) 石狩市(2020年10月9日閲覧)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]