ナナカマド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ナナカマド
Nanakamado tree.jpg
ナナカマド
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
: ナナカマド属 Sorbus
: ナナカマド Sorbus commixta
学名
Sorbus commixta
和名
ナナカマド
英名
Japanese Rowan

ナナカマド(七竈、学名;Sorbus commixta)は、バラ科落葉高木。赤く染まる紅葉果実が美しいので、北海道東北地方では街路樹としてよく植えられている。

特徴[編集]

北海道本州四国九州の山地~亜高山帯に分布する。

高さ7~10m程度になり、夏には白いを咲かせる。は枝先に集まって着き、奇数羽状複葉。秋にはあざやかに紅葉し、赤い実を成らせる。実は鳥類の食用となる。果実酒にも利用できる。

北欧などで魔よけとされているのは、ナナカマド (Japanese Rowan) と同じナナカマド属だが別種のセイヨウナナカマド (European rowan, Sorbus aucuparia) である。

語源[編集]

「ナナカマド」という和名は、"大変燃えにくく、7度竃(かまど)に入れても燃えない"ということから付けられたという説が広く流布している。その他に、"7度焼くと良質のになる"という説や、食器にすると丈夫で壊れにくい事から"竃が7度駄目になるくらいの期間使用できる"という説などもある。

牧野日本植物図鑑の記述[編集]

千数百種類の植物に学名をつけ[1]「日本の植物学の父」といわれ近代植物分類学の権威である牧野富太郎が記した『牧野日本植物図鑑』は[注釈 1]1940年に出版された本であるが、講談社の「近代日本の百冊を選ぶ」にも選ばれている。[2]その図鑑のななかまどの項に

材ハ燃エ難ク、竈ニ七度入ルルモ尚燃残ルト言フヨリ此和名ヲ得タリト伝フ。

と記されている。[3]

辞典における記述[編集]

以下のように、異口同音に「七度かまどに入れても燃えない」という趣旨の説明をしている。

  • 七度かまどに入れても燃えないという俗説がある。 (広辞苑 第六版、岩波書店、2008年)
  • 材が燃えにくく、七度かまどに入れても燃え残るというところからの名。 (日本国語大辞典、小学館、1976年)
  • 七度かまどに入れても燃え残るほど燃えにくいためこの名があるという。 (大辞林 第3版、三省堂、2006年)
  • <七度かまどに入れてもなお燃えない>ということからこの和名がある. (世界大百科事典、平凡社、2007年)

実際に燃やした結果[編集]

実際にはナナカマドの薪は良く燃える。この点、『植物名の由来』で中村浩は

わたしは越後の山荘で何度か冬を過ごしたことがあるが、よくナナカマドの薪をたいて暖を取ったものである。この木の材はよく燃えて決して燃え残る事は無い。[4]

と自らの経験を述べている。鶴田知也は『草木図誌』に

「燃えにくく、かまどに七度入れてもまだ焼け残るというので」その名があるとは、牧野植物図鑑のみならず、広く支持されている説である。しかし事実と合わない。燃えにくいことでは、浜に打ちあげられた木株にもおとらず、たきびに加えるとあぶくをさかんに吹くあわぶきでもそんなことはない。まして、ななかまどなどは問題ではないのである。だから、名は体をあらわさず、ななかまどは何か別の意味があるのではなかろうか。[5]

と記し、ナナカマドが燃えにくいという説は事実ではないとしている。

海外の情報[編集]

  • 英国の Hyndburn Borough Council のサイトは、Rowan を "Burns well. Grade: 3" としている。なお Grade: 3 とは "Good" を意味するので、結局ナナカマドは良く燃える良い薪だと区分している。[6]
  • Firewood Guide for Wood Burning Stoves and Log Burning Biomass というサイトでは Rowan に関し
Like all its sister and cousins in the Rose tree family, Rowan makes a good hot fire, which burns slowly.
参考訳: 他の全てのバラ科の植物と同様、ナナカマドはゆっくり燃える高温の良い火を作る。

としている。[7] このように海外ではナナカマドは極めて燃えにくい特殊な木とはされておらず、普通のバラ科の木として良い薪になるとしている。

[編集]

中村浩は『植物名の由来』で

この備長のことを記した古書[注釈 2]には、”備長は木炭の中の上物なり。紫珠及び花鍬樹を極上品とす”という記述がある。

と述べている。花鍬樹とはナナカマドのことである。[8]

利用[編集]

北海道では果実を用いてジャムやマーマレードなどの製造がおこなわれている。[9]

生の果実中に存在するソルビン酸はナナカマドの学名より取られた。現在は合成したものが保存料として使用される。[10]

セイヨウナナカマドの生果実にはパラソルビン酸が 0.4%-0.7% 含まれるが、加熱処理や乾燥でソルビン酸に変わる。[注釈 3]「健康食品の安全性・有効性情報」のサイトではヨーロッパナナカマドの新鮮な果実を過剰に摂取することに注意を喚起している。[11][注釈 4]

市町村の木に指定する自治体[編集]

脚注[編集]

参考資料[編集]

  • 中村浩 『植物名の由来』 東京書籍、東京、1998年9月16日、第2版。ISBN 978-4487795574
  • 鶴田知也 『草木図誌』 東京書籍、東京、1979年10月1日ISBN 978-4487721450
  • 牧野富太郎 『牧野日本植物図鑑 増補版』 北隆館、東京、1956年3月20日 (初版は1940年9月29日)。
  • 俵浩三 『牧野植物図鑑の謎』 平凡社、東京、1999年9月21日ISBN 978-4582850178

出典[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 牧野富太郎の記事冒頭に青字で強調されて「日本の植物学の父」と書かれている。
  2. ^ 出典には古書としか書かれていないため書名は不明。
  3. ^ en:Rowan#Usesに "The raw fruit also contain parasorbic acid (about 0.4%-0.7% in the European rowan)" とあり、出典として Sorbus aucuparia L. が挙げられている。なお、Japanese rowan に関する言及は無かった。
  4. ^ こちらも、日本のナナカマドに関しては言及していない。

外部リンク[編集]

関連項目[編集]