備長炭


備長炭(びんちょうずみ、びんちょうたん、びっちょうずみ、びっちょうたん)は木炭(白炭)の一種。
「備長炭」の名は元禄年間(1688年 - 1704年)に紀伊国の炭問屋であった備中屋長左衛門[1]が江戸で広めたことに由来する[2][3]。現行の木炭の規格(2003年3月)では、ウバメガシを含むカシ類を窯外消火法により炭化したものを備長炭としている[4]。
特性
[編集]備長炭は白炭の一種で、原料となるウバメガシの材は細く曲がっているため建材には向かないが、緻密で硬く、その炭も硬い性質をもつ(備長炭の硬度は15度以上である)[2][3]。ナラなどを原料とする硬度が低い木炭に比べて火付きは悪いが、燃焼の速度は緩やかで火持ちは良い[2][3]。
煙が少ない為、雑味が付きにくく、炭火焼を売り物にする料理屋(鰻屋、焼き鳥屋)などの燃料として使用される。
白炭は硬く緻密であり、叩くと金属音がする[3]。白炭の一種である備長炭も叩くと金属音がするが、ひび割れなどが生じていると音は鈍くなるため、叩いた時の金属音が良質な炭の証となっている[2]。
燃料以外に、さまざまな用途に利用されている。備長炭は無数の小さな空洞(細孔)に様々な物質を取り込む(吸着)ことができる。白炭1g当たり200~250㎡(テニスコート約1面)の表面積がある[5]。
このような性質を利用して、水の浄化、炊飯、脱臭、空気の清浄、土壌の改良などに利用される[2]。このほかマイナスイオンの発生や電磁波の減少の効果もあるとされる[2]。また、副産物の木酢液は害虫駆除などに使うことができる[2]。
製法
[編集]備長炭の原木となるウバメガシは、樹齢30年から40年ほどのもので、切ってすぐの木のほうが適している[2]。樹齢が80年から100年程度の古木だと火の粉が散りやすい炭となる[2]。
備長炭の窯の温度は最高で1300℃から1500℃の高温となる[2](これに対して黒炭の炭化時の温度は400℃から700℃前後である[3])。ただし、温度を高くしすぎると立ち消えが生じやすい炭となる[2]。
数日の燃焼後、窯からかき出した木炭に水で湿らせた灰(消し粉)をかけて急冷する[2]。
原木を窯に詰める作業から出来上がるまで約1週間を要する[2]。
産地・銘柄
[編集]- 紀州備長炭 - 紀州備長炭の製炭技術は和歌山県指定の無形民俗文化財[6]である。
- 土佐備長炭 - 2014年以降、備長炭を含む白炭の生産量は高知県が最も多い[7]。
- 日向備長炭
- 樵木備長炭 - 樵木林業で育林した原木を活用した備長炭で2023年頃から徳島県で生産が本格化[8]
など
脚注
[編集]- ↑ 『備中屋長左衛門』 - コトバンク
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 備長炭の音 日本特殊塗料 2026年1月4日閲覧。
- 1 2 3 4 5 山梨県森林インストラクター会「森へおいでよ 森の体験マニュアル」 公益財団法人山梨県緑化推進機構 2026年1月4日閲覧。
- ↑ 『木炭の規格』社団法人全国燃料協会・日本木炭新用途協議会、2003年3月。
- ↑ 谷田貝光克 (2014). “多孔性の魅惑の素材,炭(ヘッドライン:暖炉から最先端研究まで活躍する炭素)”. 化学と教育 62巻1号: 8-11.
- ↑ “県指定文化財・民俗文化財”. 和歌山県教育委員会. 2018年3月12日閲覧。
- ↑ “特用林産物生産統計調査 確報 特用林産基礎資料”. 2023年12月20日閲覧。
- ↑ “「樵木備長炭」の窯完成、薪炭産業復活へ 年27トン生産計画”. 朝日新聞. 2023年4月6日. 2025年11月19日閲覧.