シャチ

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シャチ
シャチ
シャチ Orcinus orca
保全状況評価[1]
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : クジラ類 Cetacea
: マイルカ科 Delphinidae
亜科 : シャチ亜科 Orcininae
: シャチ属 Orcinus
: シャチ O. orca
学名
Orcinus Fitzinger1860
Orcinus orca (Linnaeus1758)
和名
シャチ(鯱)
サカマタ(逆叉)
オルカ
英名
Killer Whale
Orca
シャチの生息域

シャチ(鯱、学名: Orcinus orca)は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科シャチ属の唯一の種である。

分類と系統

シャチ属に属するのはシャチ1種のみである。

体の大きさでは小型のクジラに分類される。しかしもちろん、体の大きさでクジラとイルカを分けるのは系統的ではなく、系統的には、同じく小型のクジラであるゴンドウ類と共にイルカ系統の内部に位置し、最も近縁なカワゴンドウと共にマイルカ科シャチ亜科に分類される[2]オキゴンドウに近縁とする説もある。

マイルカ上科
マイルカ科
シャチ亜科

シャチ

カワゴンドウ

ゴンドウ亜科(その他のゴンドウ

マイルカ科のイルカ

ネズミイルカ科

イッカク科

ゴンドウとは近縁で、現在はゴンドウの一種とはされないが、歴史的にはゴンドウと呼ばれることもあった[3]

尚、現在では一種とされるシャチであるが、後述の通り複数の種に分割する見解もある(特徴も参照)。

名称

日本語においては「シャチ」(伝説上の生物「」にちなむ)以外の名称としてサカマタ(逆叉)がある。種小名オルカを使う研究者もいる。

アイヌ語での名称はレプンカムイ(repun kamuy 沖の神)のほかに、アトゥイコロカムイ(atuykor(o) kamuy)、カムイフンペ(kamuy humpe)、イコイキカムイ(ikoyki kamuy)などがある。樺太の方言ではレポルン(タ)カムイ(reporun(ta) kamuy)、トマリコロカムイ(tomarikoro kamuy)、チオハヤク(ciohayaku)、カムイチシ(kamuy cis)とも呼ばれる。

礼文地方ではイコイキフンペ(ikoyki humpe)、モハチャンクル(mohacan kur)、シハチャンクル(sihacan kur)、イモンカヌカルクル(imonkanukar kur)、カムイオッテナ(kamuy ottena)といった名称があり、幌別地方ではトミンカルカムイ(tominkar kamuy)、カムインカルクル(kamuinkar kur)、イソヤンケクル(isoyanke kur)、カムイラメトク(kamuy rametok)といった名称がある。

これらのアイヌ語名のうち、イコイキカムイ(i koyki kamuy)、イコイキフンペ(i koyki humpe)、イソヤンケクル(iso yanke kur)については、後述の「狩り」に由来する名称である。[4]

特徴

典型的な人間との大きさの比較
シャチの分類例
Type Cとされる個体。アイパッチが他と比べ小さい。

イルカの仲間では最大の種であり、オスの体長は9m、体重は5-8tに及ぶ。メスはひと回り小さく、全長は7-8m、体重は4-6t。背面は黒、腹面は白色で、両目の上方にアイパッチと呼ばれる白い模様がある。生後間もない個体では、白色部分が薄い茶色やオレンジ色を帯びている。この体色は、群れで行動するときに仲間同士で位置を確認したり、獲物に進行方向を誤認させたりする効果があると言われている。大きな背びれを持ち、オスのものは最大で2mに達する。背びれの根元にサドルパッチと呼ばれる灰色の模様があるタイプがある。個々の模様や背びれの形状は一頭ずつ異なるため、これを個体識別の材料とすることができる。円錐状の鋭い歯が上下のあごに計44-48本並んでいる。歯の形状は全体的にほぼ均一であり、獲物を咀嚼することよりも噛みちぎることに特化したものになっている。 現時点では一種として扱われているものの、少なくとも南極海だけで1万年ほど前から混血のない3タイプに分化しており、食性、サイズが異なる。区別の必要がある場合、以下のような分類がなされることがある。

タイプA
最近の論文などではwhale eater killer whaleと記述されることが多い。一般的にイメージされるシャチであり、クロミンククジラ等を主食とする。アイパッチの大きさは中間的で、サドルパッチはない。流氷の少ない沖合に棲む。[5]
タイプB
最近の論文などではmammal eater killer whaleと記述されることが多い。タイプAよりやや[6]小型であり、海生哺乳類を主食とする。クロミンククジラナガスクジラペンギン等も捕食する。アイパッチがAの二倍ほど大きく、サドルパッチがあるのが特徴。白色部がやや黄色い。流氷のある沿岸近くに棲む。
タイプC
最近の論文などではfish eater killer whaleと記述されることが多い。Orcinus glacialisという学名が新たに提案されている。最も小さいタイプであり、タイプAと比較してオスで100cm、メスで60cmほど小さいと思われる。タラを中心とした魚食性。最も大きな群れを作る。アイパッチが他と比べ小さく、体の中心部の黒白の境界面に対して大きな角度を持つ。タイプB同様サドルパッチを持ち、白色部がやや黄色い。流氷のある沿岸近くに棲む。
タイプD
2004年以降、提唱されるようになった種。通常よりも小さい目、短い背びれ、ゴンドウクジラに似る丸みを帯びた頭部によって認識される。活動範囲は南緯40度~60度の間の亜南極海域で、地球を回るように周回していると考えられている。主な食事については知られていない。

現在タイプB・Cは別種とすべきという研究が提出されつつある。[7][8]

北太平洋付近の観測もある。研究の進んでいるカナダのブリティッシュ・コロンビアで、レジデント(定住型)・トランジエント(回遊型)・オフショア(沖合型)の3タイプの個体群が知られている。レジデントは主に魚を餌とし、大抵は十数頭の家族群を形成して生活する。魚の豊富な季節になると、特定の海域に定住し、餌を追うことから定住型と呼ばれる。それに比べ、トランジエントは小さな群れまたは一頭のみで生活し、決まった行動区域を持たず、餌も海に住む哺乳類に限られる。オフショアは文字通り沖合に生息し、何十頭もの巨大な群れを形成する。3タイプの中で最もデータが少なく、餌についてもほとんど分かっていないが、傷が多かったり歯がすり減ったりしているという特徴があるため、「手強い」獲物(サメなど)を食しているとも考えられている。

上に挙げた3タイプのシャチ間での交配は報告されておらず、遺伝子も異なることがわかっている。

分布

一般的に冷水を好むが世界中の海に生息し、クジラ目としては珍しく地中海アラビア海にも生息する。餌になる動物が多いことなどから、特に極地付近の沿岸に多く住む。主にカナダブリティッシュコロンビア州ノルウェーティスフィヨルドアルゼンチンパタゴニアインド洋クローゼット諸島などに住む個体群の研究が進んでいる。地球上で最も広く分布する哺乳類の一種と言われる。時には餌を求めて、数百kmも川を遡上することも報告されている。日本では北海道根室海峡から北方四島にかけてや、和歌山県太地町にて度々目撃されている。

生態

ブリーチングするシャチ

非常に活発な動物であり、ブリーチング(海面へ自らの体を打ちつけるジャンプ)・スパイホッピング(頭部を海面に出し、辺りを見渡すためと言われる行動)など、多彩な行動が水上でも観察されている。また泳ぐ速さは時速60-70kmに及び、「泳ぎの達人」と呼ばれるハンドウイルカと並んで、哺乳類では最も速く泳ぐことができる生物のひとつである。餌を求めて1日に100km以上も移動することが知られている。また、好奇心も旺盛で、興味を持ったものには近寄って確かめる習性もある。

他のハクジラと同様、二つの種類の音を使い分けていることが知られている。一つはコールと呼ばれ、群れのメンバー同士のコミュニケーションに使用される。もう一つはクリック音と呼ばれ、噴気孔の奥にある溝から、メロンと呼ばれる脂肪で凝縮して発射する音波である。この音波は物質に当たるまで水中を移動するため、シャチはその反響音を下あごの骨から感じ取ることで、前方に何があるか判断することができる。この能力をエコーロケーション(反響定位)と呼ぶ。クリック音の性能は高く、わずか数mmしか離れていない二本の糸を認識したり、反響音の波形の違いから物質の成分、果ては内容物まで認識することが可能だという。

オスの平均寿命は30歳、最高寿命は約50歳で、メスの平均寿命は50歳、最高寿命は80歳あまりである。

食性

骨格標本

肉食性。海洋の食物連鎖の頂点に位置し、武器を使う人間を例外にすると自然界での天敵は存在しない。知能も高く多くの生物を捕食することから、非常に獰猛で貪欲な捕食者として知られている。利益にならない戦闘は避ける傾向もあり、食べる必要のないものを襲うことは少ないと考えられている。アザラシやオタリアを襲うとき、海面上に放り投げ必要以上の苦痛を与えることがあるが、これは子供のシャチに安全な海中(上)で狩りの練習をさせるためだと考えられている(陸上のアザラシを捕食する際、シャチ自身が海に戻れなくなり死亡することがあるため)。しかし、はっきりしたことは未だわかっていない。英名の Killer whale は「殺し屋クジラ」であり、学名の Orcinus orca は「冥界よりの魔物」という意味である。

各タイプのメインの獲物だけでなく、小さいものでは魚・イカ・海鳥・ペンギン、比較的大きなものではオタリアアザラシイルカホッキョクグマ、時にはクジラサメなど、捕食する動物は多岐に渡るとされる。一部を別種とする学説すらあることからわかるように、一頭のシャチがさまざまな種類の動物を捕食するというより、個体ごとにさまざまな好みを持った生物であると理解した方が現実に近い。一頭一頭を見れば、どちらかといえば偏食な動物である。

死肉を食べる例もあり、海底で見付けたミンククジラの死体を数頭で食べる映像記録も発表されている[9]

氷の下からの奇襲・群れでの協力・挟み撃ちなど、高度な狩りの技術を持つ。前述のクリック音を通常より凝縮させて獲物に当てて麻痺させ、捕食しやすくする行動も知られている。浜辺にいるアシカなどに対して、そこへ這い上がって来て捕食することもある。海洋学者のジャック=イヴ・クストーの海洋探査船が、水面下を遊泳していた3mほどのサメを真下から攻撃し、一撃で仕留めた例を報告している。サメエイを捕食する場合、獲物の身体をひっくり返し擬死状態にすることで抵抗出来なくしてから食べる[10]。軟骨魚類特有の性質を用いた有効な狩猟方法だが、エイの尾にある猛毒によって致命傷を負うこともある。口に入れた魚を吐き出してカモメをおびき寄せ、集まってきたカモメを食した例も報告されている他、モントレー湾の観察では、超音波を放ってサケ類を麻痺させて食べる事も報告されている。多頭でうずを巻くようにニシンなどの比較的小さな魚を一箇所に集めた上に尻尾でたたきつけ気絶させやすやすと捕食する例も報告されている。大型のクジラを襲う場合は、一頭がクジラの頭上に陣取って海面での呼吸を妨げ、もう一頭はクジラを底から押し上げて潜水を妨げるなどの行動が観察されている。好物はクジラの舌、口付近であり、他の多くの部分は放置されることがしばしばある。

攻撃力が非常に高く、自分より体躯が上のヒゲクジラ類も襲い、地球上最大の動物であるシロナガスクジラをも餌とする。大型で獰猛なホホジロザメすら制圧し[11]、そのため「海のギャング」などと呼ばれるが、大型の鯨でも、同じハクジラ類のマッコウクジラはあまり襲わない。マッコウクジラのメスや子供はともかく、オス成体は性質が勇猛な上に、体が大きく深く潜るために仕留めにくく、更に好物の舌部分が他の鯨より引き締まって硬く、あまり食べる部分が無いのが敬遠される理由だといわれる。

ヒトへの危害

シャチは偏食で基本的にヒトを捕食することはまず無いとされるが、仲間に危害を加えた人間に報復、襲ったと見られるケースは報告されている。一方で、最近の研究でそれは誤りだという説もあり、飢えたシャチと対面したり、アザラシと勘違いされた場合は特に危険性が高い(これはシャチ以外にも、大型のサメによる被害でも指摘されることである)とも言われ、暗色ダイビングスーツを着用している場合誤認される危険性は高まるという意見もある。しかし、サーファーが足を噛まれた例があるが、これもじゃれたり、シャチ特有の好奇心の強さによるアプローチだとされ、捕食目的とは違うと見られる。もしシャチが現実に人間を襲ったとすれば、歯と顎の大きさから一溜まりもない。

また小さな漁船や潜水艦などに体当たりするケースもあり、獲物としてみなされているという意見もあるが、これも好奇心による接触の可能性もある。また、水族館で飼育されているシャチが水上の飼育員を水中にひきずりこみ死亡させる事件も起こっている[12]。(この事例の個体は過去にも飼育員と客を死なせており三人目の犠牲者だった。但しこの場合は被害者は水中にいたという違いがある。)。

これまでにシャチが意図的に人を喰い殺したというはっきりした事例は知られていないが、その巨体故にじゃれる程度でも、場合によっては被害を被る可能性もあり、安全とは言い難い部分もあるので、触れあったりする場合にも、細心の注意をするに越したことはない。これはシャチに限らず、大型の動物類全てにいえることでもある。

また、経済面では漁業被害の事例も報告されており、シャチは大型魚を食い荒らすため、漁業関係に与える被害も決して無視できるほど小さくはなく、まだ捕鯨が行われていた時代には、仕留めた鯨を食いにやってきたシャチの食害も報告され、ノルウェーなどの日本以外の捕鯨国では、シャチ撃退用にライフルマンを雇っていた事もあった程だった。

社会性

群れるシャチ
シャチに関する音声

単体、または数頭から数十頭ほどの群れ(ポッド)を作って生活し、非常に社会的な生活を営む。

群れは多くの場合、母親を中心とした血の繋がった家族のみで構成され、オスは通常一生を同じ群れで過ごし、メスも自身の群れを新しく形成するものの、生まれた群れから離れることは少ない(これらの情報は主に、研究の比較的進んでいるカナダのレジデント個体群から集められたものであり、同海域でのほかの2タイプ、または他の海域のシャチ全てに当てはまるわけではない)。それぞれの群れは、その家族独自の「方言」とも呼ばれるコールを持ち、それにより情報を互いに交換し合っている。「方言」は親から子へ、代々受け継がれていく。群れの中でのじゃれ合いなどのほかにも、違う群れ同士が交じり合い、特に若い個体間での揉み合いや、激しいコールの交換なども観察されている。ある特定の海域では年に1回、いくつもの家族が100頭以上の群れを形成する「スーパーポッド」という行動も知られている。

特に、生まれたばかりの個体に対する「気配り」とも取れる行動は多く観察されている。母親が餌取りに専念している間、他のメスが若い個体の面倒を見る「ベビーシッティング」的な行動や、自身のとった獲物を若い個体に譲ったり、狩りの練習をさせるためにわざと獲物を放ったりすることも知られている(このとき獲物は殺さず、教え終わったら逃がすケースも見られている)。一般に、生まれたばかりの若い個体のいる群れは移動速度が遅く、潜水時間も短い。このあたりから、バンドウイルカなどと非常に似通った習性を持つと考えられる。

飼育

鴨川シーワールドでのシャチショー
マイアミ水族館で芸をするロリータという名のシャチ

日本の旗 日本アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国カナダの旗 カナダフランスの旗 フランススペインの旗 スペインアルゼンチンの旗 アルゼンチン 6ヶ国11施設で、計42頭が飼育されている(2008年)。うち、野生個体(野生状態から捕獲した個体)13頭、繁殖個体(飼育下で出産された個体)29頭である[13]

日本

日本国内のシャチ飼育施設(2009年1月)[14]
施設 都道府県 開始 累計飼育数(現在) 終了
合計 野生 繁殖
鴨川シーワールド 千葉県 1970年09月 18(7) 12(3) 06(4) 飼育中
アドベンチャーワールド 和歌山県 1978年04月 11 10 01 2005年01月
太地町立くじらの博物館 和歌山県 1979年02月 04(1) 04(1) 2010年06月
江ノ島水族館 神奈川県 1982年03月 02 01 01 1984年04月
伊豆・三津シーパラダイス 静岡県 1986年06月 03 03 2007年09月19日
名古屋港水族館 愛知県 2003年10月 03 01 -飼育中
日本の旗 計(重複を除く[15] 1970年09月 38(8) 30(4) 08(4) 飼育中

1970年4月23日、東京湾にシャチが出現し、開館間近でシャチ飼育を計画した鴨川シーワールドスタッフらにより捕獲が試みられたが、失敗した。けっきょく鴨川シーワールドは、アメリカのシアトルで捕獲された2頭を輸入し、ジャンボ(♂)・チャッピー(♀)と命名した。これが日本での最初の飼育である。

1972年8月、網走[16]で小型捕鯨船がシャチを捕鯨銛で射て捕獲した。日本での初の捕獲である。港で数日、オホーツク水族館で3日間仮飼育されたのち鴨川シーワールドへ緊急移送されたが、銛の傷が重くすぐに死亡した。ゼロ号と呼ばれている。

1974年4月にジャンボが、7月にチャッピーが死亡し、一時、日本に飼育シャチはいなくなった。1978年4月、アドベンチャーワールドが、カナダで捕獲されアメリカで飼育されていたキアヌ(♀)を輸入し、日本でのシャチ飼育が再開した(1980年6月死亡)。1980年2月、鴨川シーワールドもアイスランドで捕獲された2頭を輸入しシャチ飼育を再開し、キング(♂)・カレン(♀)と名づけた。

1979年2月、太地町で5頭が捕獲され、2頭が太地町立くじらの博物館で、1頭がアドベンチャーワールドで飼育された。その後も太地町での捕獲は続き、1982年3月に江ノ島水族館、1986年6月に伊豆・三津シーパラダイスが太地町からのシャチを飼育し始めた。

1991年水産庁により学術目的以外の捕獲は禁止された。1997年に太地町で学術目的の5頭が捕獲され、アドベンチャーワールド、太地町立くじらの博物館、伊豆・三津シーパラダイスで飼育された。太地町立くじらの博物館の1頭クーは、2003年10月、名古屋港水族館に貸し出された(2008年9月19日死亡)。

日本でのシャチの出産は、1982年5月の江ノ島水族館が初だが、捕獲した時点で妊娠している個体によるものであり、4日で死亡した。1995年の鴨川シーワールドでの出産も産後30分で死亡した。長期間飼育された個体では、1998年1月11日に鴨川シーワールドのステラが産んだラビー(♀)が最初である。2008年10月13日にはラビーがアース(♂)を出産し、3代目となった。2011年12月には、鴨川シーワールドのステラ、ビンゴ、ランが名古屋港水族館へ緊急輸送された。

2010年、くじらの博物館から、シャチのナミが名古屋港水族館に譲り渡されたが、2011年1月14日死亡した[17]

2011年1月現在日本で飼育中のシャチ
名前 性別 飼育施設 飼育開始 捕獲/誕生地
ビンゴ 名古屋港水族館 1984年11月 アイスランドで捕獲
ステラ 名古屋港水族館 1987年10月 アイスランドで捕獲
オスカー 鴨川シーワールド 1987年10月 アイスランドで捕獲
ラビー 鴨川シーワールド 1998年01月11日 鴨川シーワールドで誕生
ララ 鴨川シーワールド 2001年02月 鴨川シーワールドで誕生
ラン 名古屋港水族館 2006年02月 鴨川シーワールドで誕生
アース 鴨川シーワールド 2008年10月13日 鴨川シーワールドで誕生

現在日本の施設で見られるシャチは、アイスランドで捕獲されてセイディラサフニドから送られてきた個体か、鴨川シーワールドで誕生した個体がほとんどである。かつては和歌山県東牟婁郡太地町で捕獲された個体が多くいたが、国内での捕獲は学術目的以外では禁止されたため、2011年1月時点で存命個体は存在しない。

獰猛ではあるが、人間には懐きやすく訓練への適応も高いので各地の水族館などでショーに利用されている。

シャチの登場するフィクション

シャチはその知名度故に、海を舞台にした映画や、漫画などの作品に多く登場し、いずれもシャチを肯定的に描いている(「オルカ」では復讐のために怪獣並の破壊行為を行うが)が、作品によっては、否定的な描写もある。

脚注・出典

  1. ^ Taylor, B.L., Baird, R., Barlow, J., Dawson, S.M., Ford, J., Mead, J.G., Notarbartolo di Sciara, G., Wade, P. & Pitman, R.L. (2008). "Orcinus orca". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008. International Union for Conservation of Nature. 2008年12月14日閲覧
  2. ^ May‐Collado, Laura; Agnarsson, Ingi (2006), “Cytochrome b and Bayesian inference of whale phylogeny”, Molecular Phylogenetics and Evolution 38 (2): 344–354, http://theridiidae.com/pdf/MayColladoandAgnarsson2006.pdf 
  3. ^ 祖一誠 (2010), “題2章 シャチとの出会い”, 海獣水族館, 東海大学出版会, p. 28, ISBN 978-4-486-01857-5 (1970年の東京新聞からの引用)
  4. ^ 知里真志保『分類アイヌ語辞典』
  5. ^ 論文中offshore killer whaleと形容されるが、結論部で北太平洋のシャチとしてトラジエントとレジデントにのみ触れておりかつまったく食性が違うため、下記の北太平洋のオフショア型に対応するという意図ではないと思われる
  6. ^ 曖昧なのはB,Cをより分けて観測した例がまだ少ないため
  7. ^ Pitman, Robert L. and Ensor, Paul. "Three forms of killer whales (Orcinus orca) in Antarctic waters" Journal of Cetacean Research and Management 5(2):131–139, 2003
  8. ^ Newsletter of the Puget Sound Chapter of the American Cetacean Society Spring 2004
  9. ^ アニマルプラネット 『シャチの密着観察記録』
  10. ^ The moment a whale delivers a deadly 'karate chop' blow to a killer shark
  11. ^ 群れの中に子供がいる場合、防衛的に鮫を襲うことが間々見られる。
  12. ^ 観客の目の前、シャチが女性調教係死なす-米の水族館~朝日新聞社(リンク切れ)
  13. ^ 祖一誠 (2010), “題2章 シャチとの出会い”, 海獣水族館, 東海大学出版会, p. 37, ISBN 978-4-486-01857-5 
  14. ^ 祖一誠 (2010), “題2章 シャチとの出会い”, 海獣水族館, 東海大学出版会, p. 37–38, ISBN 978-4-486-01857-5 (終了欄を補足)
  15. ^ 施設間を移動した個体があるため単純な合計数とは一致しない
  16. ^ 祖一誠 (2010), “題2章 シャチとの出会い”, 海獣水族館, 東海大学出版会, p. 33, ISBN 978-4-486-01857-5 (太地町とする情報源もあるが間違い)
  17. ^ 朝日新聞2011年1月14日

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