エルビス・アンドラス

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エルビス・アンドラス
Elvis Andrus
アリゾナ・ダイヤモンドバックス(マイナー)
テキサス・レンジャーズ時代
(2019年6月18日)
基本情報
国籍 ベネズエラの旗 ベネズエラ
出身地 アラグア州マラカイ
生年月日 (1988-08-26) 1988年8月26日(35歳)
身長
体重
6' 0" =約182.9 cm
200 lb =約90.7 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 遊撃手二塁手
プロ入り 2005年 アマチュアFA
初出場 2009年4月6日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム ベネズエラの旗 ベネズエラ
WBC 2013年

エルビス・オーガスト・アンドラス・トーレスElvis Augusto Andrus Torres,[注 1] 1988年8月26日 - )は、ベネズエラアラグア州マラカイ出身のプロ野球選手遊撃手二塁手)。右投右打。MLBアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下所属。愛称はエル・コマンド[3]。代理人はスコット・ボラス

4歳年上の兄エロルド・アンドラスもタンパベイ・レイズ傘下のマイナーリーグに所属していた元プロ野球選手。

経歴[編集]

プロ入りとブレーブス傘下時代[編集]

2005年1月26日、16歳の時にアマチュア・フリーエージェントでアトランタ・ブレーブスと契約を結び、プロ入り。この年からマイナーリーグ(ルーキー級)でプレーを始め、52試合に出場の上、打率.293、出塁率.377の好成績を収め、ガルフ・コーストリーグ・ブレーブスチームMVPに輝いた[4]

2007年はA+級マートルビーチ・ペリカンズにおいて126試合に出場して40個の盗塁を決め、7月8日にAT&Tパークで行われたオールスター・フューチャーズゲームでは「世界選抜チーム」の一員として代打に起用され、遊ゴロに倒れた。

レンジャーズ時代[編集]

2007年7月31日にマーク・テシェーラロン・メイヘイとのトレードで、ジャロッド・サルタラマッキアマット・ハリソンネフタリ・フェリスボー・ジョーンズと共にテキサス・レンジャーズへ移籍した。シーズン終了後にはアリゾナ・フォールリーグに派遣され、15試合に出場して好成績を挙げ、オール・プロスペクト・チームに選出された。

2008年2月3日にレンジャーズ・ファーム組織内のトップ・プロスペクトとベスト・ディフェンシブ・インフィルダー、ベスト・インフィールド・アームの3部門に選定される[4][5][6]。シーズンでは傘下のAA級フリスコ・ラフライダーズで118試合に出場して打率.295、出塁率.350、54盗塁(テキサスリーグ2位、レンジャーズ組織内では最多盗塁)。7月13日にヤンキー・スタジアムで開催されたフューチャーズ・ゲームでは世界選抜チームの遊撃手として先発出場を果たし、1四球、1盗塁、1得点を記録した。12月8日、プロスペクト・リストの4位にランクされ、前年に引き続きベスト・ディフェンシブ・インフィルダーとベスト・インフィールド・アームに選定される[5][7]

2009年スプリングトレーニング中のプレシーズン・ゲームでチーム最多の30試合に出場して好成績を収め、4月6日のクリーブランド・インディアンスとのシーズン開幕戦に「9番・遊撃手」で先発出場を果たした。そして、第1打席でクリフ・リーからキャリア初安打となる右翼線二塁打を放つなど、4打数1安打、1得点の結果でデビュー戦を終えた。なお、アンドラスが正遊撃手に抜擢されたがゆえに、看板選手のマイケル・ヤングは三塁へとコンバートを余儀なくされた。ヤングは当初これに難色を示し、一時はトレード論も浮上したが、最終的には本人が三塁転向を受け入れチームに残留した。更に、レンジャーズはベネズエラ人遊撃手の先達であるオマー・ビスケルと契約を交わし、弱冠20歳であるアンドラスの指南役に充てた[8][9]。1年目から145試合に出場し、守備防御点+15はジャック・ウィルソンに次いで全遊撃手で2位だった。新人王の投票ではアンドリュー・ベイリーに次ぐ2位に入った。

2010年オールスターに初選出された。四球が増加して出塁率は上がったが、本塁打はレギュラーシーズン、ポストシーズン通して0本だった。この年は開幕してから一度も髪を切らずに伸ばし続け、終盤にはアフロヘアーになっていた[10]。シーズン終了後には元通りに頭を丸めた。

2011年は自己ベストの打率.279を記録し、2年ぶりの本塁打も放った。主に「2番・遊撃手」としてチームのリーグ連覇に貢献した。

2012年2月8日にレンジャーズと総額1440万ドルの3年契約に合意した[11][12]。7月には2年ぶり2度目のオールスター選出を果たした。1番、3番を担当したイアン・キンズラージョシュ・ハミルトンの間で繋ぎ役に徹し、2年ぶり2度目の最多犠打を記録した。

2013年はシーズン開幕前の3月に開催された第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ベネズエラ代表に選出された[13]。シーズンでは、4月4日にレンジャーズと総額1億2000万ドルの8年契約(2022年、2023年の球団オプション付き)に合意した[14][15]。この年は156試合に出場して打率.271、4本塁打、67打点、42盗塁を記録した。

2014年も遊撃手のレギュラーを務めたが、オフシーズンにトレーニングをさぼった[16]ため、走攻守全てに成績が低下し、特に盗塁死はリーグワーストの15個だった。

2015年は自己最多となる160試合に出場した。自己最多の7本塁打に加え、二塁打も34本放ったが、打率と出塁率は更に低下し、自己ワーストを更新した。走塁面では、25盗塁は自己最少ながら盗塁死を8つ減らした。また、通算200盗塁も達成している。遊撃守備は、アメリカンリーグの遊撃手ではワースト2位の22失策を犯したが、248刺殺と516補殺は、いずれもア・リーグトップ(遊撃手部門)を記録した[17]

2016年5月15日に起きたトロント・ブルージェイズ戦での乱闘[18]で、17日にMLBから暴力行為を行ったとして、1試合の出場停止処分が科せられた[19]。最終的に147試合に出場し打率.302、8本塁打、69打点、OPS.800とキャリアハイの成績を残した。遊撃手の守備は、147試合で17失策、守備率.974という成績ながら、前年と同様に刺殺(229刺殺でア・リーグ2位)と補殺(413補殺で同5位)ではリーグ上位にランクインした。

2017年9月6日に初となるシーズン20本塁打を記録し、シーズン20本塁打・20盗塁を達成した[20]。オフには球団年間最優秀選手賞を受賞した[21]

アスレチックス時代[編集]

2021年2月6日にクリス・デービスジョナ・ハイムデーン・アッカーとのトレードで、アラミス・ガルシア、金銭と共にオークランド・アスレチックスへ移籍した[22]

2022年8月17日に自由契約となった[23]

ホワイトソックス時代[編集]

2022年8月19日にシカゴ・ホワイトソックスと契約した[24]。オフの11月6日にFAとなった[25]

2023年2月21日に1年総額300万ドルでホワイトソックスと再契約を結んだ[26]。 自身初めて正二塁手として起用される。 4月13日に現役選手ながらベースボール・ユナイテッドの共同オーナーとして参入した[27]。 オフの11月3日にFAとなった[28]

ダイヤモンドバックス時代[編集]

2024年3月3日にアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ[29]。アリゾナでのスプリングトレーニングから招待選手として、チームに合流する[29]

選手としての特徴[編集]

走塁[編集]

快足を最大の武器とし、「ウィリー・タベラスの遊撃手バージョン」「レンジャーズの機動力を担う存在」「将来の1番打者候補」と嘱望されていた[30][31][32]

打撃[編集]

目標とする憧れの選手は、デレク・ジーターとオマー・ビスケルの両遊撃手[33][30][31][32][5][8][34]

人物[編集]

2024年に野球殿堂入りを果たしたエイドリアン・ベルトレ。彼が現役だった頃は、彼との「怒りパフォーマンス」が人気であった。

詳細情報[編集]

年度別打撃成績[編集]

















































O
P
S
2009 TEX 145 541 480 72 128 17 8 6 179 40 33 6 12 3 40 0 6 77 4 .267 .329 .373 .702
2010 148 674 588 88 156 15 3 0 177 35 32 15 17 0 64 0 5 96 6 .265 .342 .301 .643
2011 150 665 587 96 164 27 3 5 212 60 37 12 16 1 56 0 5 74 17 .279 .347 .361 .708
2012 158 711 629 85 180 31 9 3 238 62 21 10 17 3 57 0 5 96 15 .286 .349 .378 .727
2013 156 698 620 91 168 17 4 4 205 67 42 8 16 6 52 1 4 97 19 .271 .328 .331 .659
2014 157 685 619 72 163 35 1 2 206 41 27 15 9 7 46 0 3 96 21 .263 .314 .333 .647
2015 160 661 596 69 154 34 2 7 213 62 25 9 8 9 46 1 2 78 14 .258 .309 .357 .667
2016 147 568 506 75 153 31 7 8 222 69 24 8 4 7 47 2 4 70 18 .302 .362 .439 .800
2017 158 689 643 100 191 44 4 20 303 88 25 10 1 4 38 0 3 101 18 .297 .337 .471 .808
2018 97 428 395 53 101 20 3 6 145 33 5 3 0 2 28 0 3 66 8 .256 .308 .367 .675
2019 147 648 600 81 165 27 4 12 236 72 31 8 0 10 34 1 4 96 16 .275 .313 .393 .707
2020 29 111 103 11 20 5 0 3 34 7 3 1 0 0 8 0 0 15 5 .194 .252 .330 .582
2021 OAK 146 541 497 60 121 25 2 3 159 37 12 2 3 4 31 2 6 81 14 .243 .294 .320 .614
2022 106 386 354 41 84 24 0 8 132 30 7 4 0 0 30 0 2 62 10 .237 .301 .373 .673
CWS 43 191 181 25 49 8 0 9 84 28 11 0 0 0 9 0 1 30 1 .271 .309 .464 .773
'22計 149 577 535 66 133 32 0 17 216 58 18 4 0 0 39 0 3 92 11 .249 .303 .404 .707
2023 112 406 374 39 94 20 1 6 134 44 12 4 1 2 25 1 4 71 11 .251 .304 .358 .662
MLB:15年 2059 8603 7772 1058 2091 380 51 102 2879 775 347 115 104 58 611 8 57 1206 197 .269 .325 .370 .695
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績[編集]



二塁(2B) 三塁(3B) 遊撃(SS)




































2009 TEX - - 145 261 407 22 98 .968
2010 - - 148 242 401 16 89 .976
2011 - - 147 245 407 25 102 .963
2012 - - 153 233 414 16 91 .976
2013 - - 146 212 362 14 97 .976
2014 - - 153 237 371 18 94 .971
2015 - - 160 248 516 22 114 .972
2016 - - 147 229 413 17 105 .974
2017 - - 157 245 493 17 107 .977
2018 - - 97 139 263 11 77 .973
2019 - - 146 205 379 13 80 .978
2020 - - 29 33 61 3 10 .969
2021 OAK - - 143 161 337 15 61 .971
2022 - - 101 114 262 9 48 .977
CWS - - 42 58 104 1 17 .994
'22計 - - 143 172 366 10 65 .982
2023 63 92 139 6 29 .975 3 3 4 0 0 1.000 52 63 86 6 19 .961
MLB 63 92 139 6 29 .975 3 3 4 0 0 1.000 1966 2925 5276 225 1209 .973
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

表彰[編集]

  • 球団年間最優秀選手賞:1回(2017年)

記録[編集]

MiLB
MLB

背番号[編集]

  • 1(2009年 - 2020年、2022年途中 - 2023年)
  • 17(2021年 - 2022年途中)

代表歴[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ スペイン語の発音記号変換ツール”. easypronunciation.com. 2019年9月7日閲覧。
  2. ^ 英語のIPA発音記号変換(アメリカ英語)”. tophonetics.com. 2019年9月7日閲覧。
  3. ^ Explaining Rangers Players Weekend nicknames MLB.com (英語) (2017年8月24日) 2017年8月31日閲覧
  4. ^ a b Highlights: Awards/Honors:” (英語). minorleaguebaseball.com. 2009年6月9日閲覧。
  5. ^ a b c Elvis Andrus Stats, Bio, Photos, Highlights” (英語). MLB.com. 2009年6月9日閲覧。※「Bio >」をクリック。
  6. ^ Aaron Fitt (2008年2月3日). “Organization Top 10 Prospects: Texas Rangers:” (英語). Baseball America. 2009年6月9日閲覧。
  7. ^ Aaron Fitt (2008年12月8日). “Organization Top 10 Prospects: Texas Rangers:” (英語). Baseball America. 2009年6月9日閲覧。
  8. ^ a b Lisa Winston (04/12/09). “Movin' On Up: A historic matchup” (英語). MLB.com. 2009年4月6日閲覧。
  9. ^ スラッガー編集部「topics & quotes」『月刊スラッガー No.131 , 2009年3月号』、日本スポーツ企画出版社、70頁。 
  10. ^ Elvis Andrus is all hair and flair. ESPN Dallas
  11. ^ Rangers sign SS Elvis Andrus to three-year deal”. MLB.com Rangers Press Release (2012年2月8日). 2014年7月27日閲覧。
  12. ^ T.R. Sullivan (2012年2月8日). “Rangers, Andrus agree to three-year deal”. MLB.com. 2014年7月27日閲覧。
  13. ^ 2013 Tournament Roster” (英語). The official site of World Baseball Classic. 2015年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月3日閲覧。
  14. ^ Rangers sign SS Elvis Andrus to eight-year contract extension through 2022 with vesting option for 2023”. MLB.com (2014年4月4日). 2014年7月27日閲覧。
  15. ^ T.R. Sullivan (2014年4月4日). “Andrus excited to commit to Rangers long term”. MLB.com. 2014年7月27日閲覧。
  16. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2015』廣済堂出版、2015年、249頁頁。ISBN 978-4-331-51921-9 
  17. ^ 2015 American League Fielding Leaders - Baseball-Reference.com (英語) . 2015年11月26日閲覧。
  18. ^ Fracas tarnishes Rangers' win over Jays MLB.com (英語) (2016年5月15日) 2016年5月27日閲覧
  19. ^ Discipline for Blue Jays-Rangers incidents announced MLB.com Press Release (英語) (2016年5月17日) 2016年5月27日閲覧
  20. ^ Andrus unleashes power potential in 2017 MLB.com (英語) (2017年9月6日) 2017年9月10日閲覧
  21. ^ Andrus named Rangers Player of the Year MLB.com (英語) (2017年11月14日) 2017年12月17日閲覧
  22. ^ Rangers To Acquire Khris Davis From A's For Elvis Andrus” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年2月7日閲覧。
  23. ^ Athletics Release Elvis Andrus” (英語). MLB Trade Rumors. 2022年8月18日閲覧。
  24. ^ White Sox sign free agent Elvis Andrus, option Lenyn Sosa to Triple-A Charlotte” (英語). MLB.com. 2022年8月20日閲覧。
  25. ^ 131 Players Become XX(B) Free Agents” (英語). mlbplayers.com (2022年11月6日). 2022年11月14日閲覧。
  26. ^ White Sox agree to terms with Elvis Andrus; designate Bennett Sousa for assignment” (英語). MLB.com (2023年2月21日). 2023年6月19日閲覧。
  27. ^ TWO-TIME MLB ALL-STAR ELVIS ANDRUS JOINS BASEBALL UNITED OWNERSHIP GROUP” (英語). Baseball United (2023年4月13日). 2023年6月19日閲覧。
  28. ^ 130 Players Become XX(B) Free Agents” (英語). Home (2023年11月3日). 2023年11月8日閲覧。
  29. ^ a b Mark Polishuk (2024年3月3日). “Diamondbacks Sign Elvis Andrus To Minors Contract” (英語). MLB Trade Rumors. 2024年3月4日閲覧。
  30. ^ a b Ryan Glass (2009年1月12日). “Will Elvis Andrus Make a Fantasy Impact Next Year?” (英語). FanGraphs Fantasy Baseball. 2009年6月9日閲覧。
  31. ^ a b Shawn Shroyer (07/05/08). “Rangers stockpiling speed in Frisco” (英語). texasrangers.com. 2009年6月9日閲覧。
  32. ^ a b Elvis Andrus Top 50 Prospects Profile” (英語). MLB.com. 2009年6月9日閲覧。
  33. ^ ESPINOZA ENIS(10/25/2010),Elvis se roba el show en tierra de gigantes,EL SOL DE MARGARITA(スペイン語),2010年10月26日閲覧
  34. ^ Elvis Andrus - Texas Rangers - Scouting Report” (英語). Sportsnet.ca. 2009年6月9日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]