ウバメガシ

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ウバメガシ
Quercus phillyraeoides1.jpg
ウバメガシ(2007年2月)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ブナ目 Fagales
: ブナ科 Fagaceae
: コナラ属 Quercus
: ウバメガシ Q. phillyraeoides
学名
Quercus phillyraeoides
A. Gray
和名
ウバメガシ(姥目樫)

ウバメガシ(姥目樫、学名:Quercus phillyraeoides)は、ブナ科コナラ属の常緑広葉樹。別名、イマメガシ(今芽樫)、ウマメガシ(馬目樫)。

備長炭の原料として利用される。和歌山県県の木

概要[編集]

ウバメガシは日本産の常緑のカシ類では特に丸くて小さく、また硬い葉を持つカシである。海岸や岩場に多く、しばしば密生した森を作る。日本の暖地では海岸林の重要な構成樹種の一つである。

また乾燥や刈り込みに強いことから街路樹などとしてもよく使われ、その材は密で硬く、特に備長炭の材料となることでよく知られている。

特徴[編集]

常緑性の高木で、高いものだと20m近くまで成長するが、通常は5〜6m程度の低木が多い。樹形は、ごつごつしていて、樹皮には独特の縦方向のひび割れが出る。若枝には黄褐色の柔らかい毛が密生する。

は倒卵形で長さ3〜6cm、やや表側に盛り上がっており、周辺には鋸歯がある。また、葉はやや厚くて硬く、表面には強い照りがある。雌雄同株堅果(どんぐり)は長さ2cm前後で楕円形、色は褐色

材は緻密で極めて硬い。比重が大きく、水に入れると沈む。


分布と生育環境[編集]

日本での分布は本州の神奈川県以南、四国九州、それに琉球列島に分布する。ただし、沖縄県では伊平屋島と伊是名島、それに沖縄本島から僅かな記録があるのみである[1]。日本国外では中国中部、南部、西部とヒマラヤ方向へ分布が広がっている。また、沖縄県が分布の南限である。

暖かい地方の海岸部から山の斜面にかけて多くみられる。特に海岸付近の乾燥した斜面に群落を作るのがよく見かけられる。トベラヒメユズリハとともに、海岸林を構成する代表的な樹木である。

小柄の葉は乾燥への適応とも考えられ、日本における硬葉樹林的な植物であるとの見方もある。ただし、四国では瀬戸内海側でも太平洋側でも見られ、瀬戸内側は降水量が少ないが、太平洋側はむしろ多雨地帯であり、降水量が少ない地域の特徴である硬葉樹林と直接に比較するのは難しい[2]。また艶やかで硬いので、落ち葉になっても分解が遅く、そのぶん保水力がある。

ウバメガシ林[編集]

ウバメガシはしばしば本種が優占する森林を形成する。いわゆるウバメガシ林は植生区分の上からはスダジイ群団の中に位置するもので、その環境に応じて生じる土地的極相でもある。四国での調査では大きくは二つのパターンがある。一つは比較的樹高が高い(10mくらいまで)もので、高木層にはタブスダジイなどが混じり、スダジイ林に性質が近い。亜高木層にタイミンタチバナが多く、林床は暗くて植物が少ない。他方で海岸の岩場に生じるものは樹高がせいぜい3mの灌木林で、トベラマルバシャリンバイネズミモチマサキハマヒサカキが混じる。林床にはヒトツバタマシダツワブキコウヤボウキなどが出現する。また、高木にクロマツが入る場合もある[3]

紀伊半島におけるウバメガシ[編集]

ウバメガシ林(西光寺山

紀伊半島南部では、内陸部の崖地にウバメガシの優占する森林があり、やや特殊な昆虫相を維持している。代表的なものとしてはウラナミアカシジミの固有亜種ナンキウラナミアカシジミがある。この、内陸部にあるウバメガシ林は、紀伊半島に独特の例外的存在であるかのように言われることがあるが、実際には、西日本各地に内陸のウバメガシ林が点在し、それぞれの地域で「ここは例外である」と言われている。和歌山県大塔山系法師山の山頂にはウバメガシの低木があり、多分最高標高の生育地である。

また、紀伊半島南部では、あちこちの低山の斜面に、備長炭の用材としてウバメガシが優占するように育成された森林があったが、最近の需要の増加のため、減少が目立つ。かつては細心の注意で維持されたものであった。山にある立ち木の状態で炭焼き師の手に売られた後は、伐採後の樹木の生長に気配りしつつ伐採された。たとえば伐採の後、ひこばえの成長に配慮して、鋸は絶対に使わず、斧のみを使って伐採したとの伝承がある。鋸を使うとひこばえが多数出過ぎて、後の成長が良くないと言われる。切り口を斜めにして雨露が溜まらないようにしたり、不要な芽を掻き取ることで質の良い後継木を育てる工夫もなされている。


利用[編集]

ウバメガシの生垣 法金剛院
ウバメガシの備長炭

良質ので有名な備長炭の原料として知られる。

落葉が少なく常緑で病気に強く、また切り詰めに耐えることから、最近では、街路樹生垣としても利用されている。よく見られるのは低木で、大木や古木は珍しい。葉がやや細くて葉脈が凹んだものをチリメンガシといって、園芸盆栽に利用される。これら園芸用の採取により個体数が減少している。

分類[編集]

日本に自生するカシでは唯一コナラ亜属(subgenesis Quercus)に属し、他に日本に自生するアカガシ亜属(subgenesis Cyclobalanopsis)のカシよりはナラ類に近縁である。南欧に自生するコルクガシQuercus suberとは特に近縁であり交雑する。

以下のような品種も知られる。

チリメンガシ Quercus phillyraeoides f. crispa 別名ビワバガシ
フクレウバメ Quercus phillyraeoides f. subcrispa
ケウバメガシ Quercus phillyraeoides f. wrightii

レッドリスト[編集]

生育地である下記の地方公共団体が作成したレッドデータブックに掲載されている。

天然記念物[編集]

国指定

都道府県指定

市町村指定

  • 呉市 : 磯神社のウバメガシ群落 - 広島県呉市仁方町戸田 磯神社境内
  • 尾道市 : ウバメガシ
  • 愛南町 : ウバメガシ林相 - 愛媛県南宇和郡愛南町
  • 津久見市 : 姥目公園のウバメガシ - 大分県津久見市中央町7番
  • 名護市 : 許田のウバメガシ - 沖縄県名護市許田122
  • 宇和島市 : 石応堂崎のウバメガシ樹叢 - 愛媛県宇和島市石応堂崎 観音寺境内
  • 岬町 : 小島住吉神社のウバメガシ社叢 - 大阪府泉南郡岬町多奈川小島 住吉神社境内
  • 尾道市 : 五柱神社のウバメガシ - 広島県尾道市因島三庄町
  • 西脇市 : 西光寺山のウバメガシ群落 - 兵庫県西脇市中畑町西光寺山
  • 岡山市 : 水門町のウバメガシ - 岡山県岡山市東区水門町924
  • 津久見市 : 千怒新地のウバメガシ - 大分県津久見市大字千怒字新地6239番地
  • 土佐清水市 : 立石のウバメガシ - 高知県土佐清水市立石
  • 小豆島町 : 西村高木明神社の社叢 - 香川県小豆郡小豆島町西村 高木明神社境内
  • 小豆島町 : 西山稲荷神社の社叢 - 香川県小豆郡小豆島町坂手 西山稲荷神社境内

出典[編集]

  1. ^ 初島(1975)p.221
  2. ^ 山中(1958)p.4
  3. ^ 山中(1958)p.4

参考文献[編集]

  • 沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、2006年
  • 山中二男、(1958)「四国のウバメガシ群落」、高知大学学術研究報告第7巻第9号、pp.1-6
  • 初島住彦『琉球植物誌(追加・訂正版)』,(1975),沖縄生物教育研究会

関連項目[編集]