「アミガサタケ」の版間の差分

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[[子実体]]は類球形ないし卵形の頭部と太くて明瞭な柄とで構成され、全体の高さは5-12 [[センチメートル|cm]](あるいはそれ以上)に達する。頭部は淡黄白色ないし黄褐色または帯赤褐色を呈し、肋脈に囲まれた多数の蜂の巣状の窪みの集合体となる。柄は歪んだ円筒状をなし、白色ないし淡黄褐色で表面はざらつく。頭部・柄を通じて中空で、肉は薄くてもろく、ほぼ白色で傷つけても変色することはなく、ほとんど無味無臭である。
[[子実体]]は類球形ないし卵形の頭部と太くて明瞭な柄とで構成され、全体の高さは5-12 [[センチメートル|cm]](あるいはそれ以上)に達する。頭部は淡黄白色ないし黄褐色または帯赤褐色を呈し、肋脈に囲まれた多数の蜂の巣状の窪みの集合体となる。柄は歪んだ円筒状をなし、白色ないし淡黄褐色で表面はざらつく。頭部・柄を通じて中空で、肉は薄くてもろく、ほぼ白色で傷つけても変色することはなく、ほとんど無味無臭である。


[[胞子紋]]は淡黄色<ref name="Tsubaki">[[椿啓介]]、1978. ''Morchella esculenta'' Pers. ex St.-Amans. ''in'' 宇田川俊一椿啓介堀江義一三浦宏一郎箕浦久兵衛山崎幹夫横山竜夫昌平、1978. 菌類図鑑 pp. 723-724. ISBN 978-4-06129-962-7. </ref>、あるいはオレンジ色を帯びた黄褐色<ref>Phillips, R., 1991. Mushrooms of North America. Little Brown & Company, London. ISBN 978-0316706131.</ref>を呈する。
[[胞子紋]]は淡黄色<ref name="Tsubaki">{{Cite book|和書|author=宇田川俊一, 椿啓介, 堀江義一, 三浦宏一郎, 箕浦久兵衛, 山崎幹夫, 横山竜夫, 昌平 |title=菌類図鑑 |publisher=講談社 |year=1978 |NCID=BN00567881 |ISBN=978-4-06129-962-7 |url=https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001366631-00 |chapter=[[椿啓介]]、1978. ''Morchella esculenta'' Pers. ex St.-Amans. ''in'}}</ref>、あるいはオレンジ色を帯びた黄褐色<ref>Phillips, R., 1991. Mushrooms of North America. Little Brown & Company, London. ISBN 978-0316706131.</ref>を呈する。


頭部の窪みの内面に多数の[[子嚢菌門#子嚢|子嚢]]が林立した'''子実層'''を形成し、子嚢の内部に[[胞子]]を生じる。子嚢は細長い円筒状で無色・薄壁、[[ヨウ素]]溶液で青く染まることはなく、先端に薄い円盤状の蓋を有し、成熟すれば蓋が外れて胞子を射出する。胞子は卵状楕円形あるいは広楕円形で油滴を欠き、多数の[[細胞核|核]]を含んでいる<ref name="SynopticKey">Korf, R. P., 1972. Synoptic key to the genera of the Pezizales. Mycologia 64: 937-994 + 1 plate.</ref><ref>Roper, M., Petter, R. E., Brenner, M. P., and A. Pringle, ., 2008. Explosively launched spores of ascomycete fungi have drag-minimizing shapes. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 105: 20583-20588.</ref>。子実層には、子嚢とともに多数の側糸(先端が僅かに膨らんだ、[[重相]]の不稔菌糸)が混在する。
頭部の窪みの内面に多数の[[子嚢菌門#子嚢|子嚢]]が林立した'''子実層'''を形成し、子嚢の内部に[[胞子]]を生じる。子嚢は細長い円筒状で無色・薄壁、[[ヨウ素]]溶液で青く染まることはなく、先端に薄い円盤状の蓋を有し、成熟すれば蓋が外れて胞子を射出する。胞子は卵状楕円形あるいは広楕円形で油滴を欠き、多数の[[細胞核|核]]を含んでいる<ref name="SynopticKey">{{Cite journal|author=Roper, Marcus and Pepper, Rachel E. and Brenner, Michael P. and Pringle, Anne |title=Explosively launched spores of ascomycete fungi have drag-minimizing shapes |volume=105 |issue=52 |pages=20583-20588 |year=2008 |doi=10.1073/pnas.0805017105 |publisher=National Academy of Sciences |ISSN=0027-8424 |url=https://www.pnas.org/content/105/52/20583 |journal=Proceedings of the National Academy of Sciences}}</ref>。子実層には、子嚢とともに多数の側糸(先端が僅かに膨らんだ、[[重相]]の不稔菌糸)が混在する。


== 生態 ==
== 生態 ==
主に春、[[林]]内や[[庭園]]内の地上、あるいは路傍などに孤生ないし群生する。[[山火事]]跡や[[焚き火]]跡などを好むという報告もある<ref>Wurtz, T. L., Wilta, A. L., Weber, N. S., and D. Pilz, 2005. Hervesting morels after wildfire in Araska. Research Note RN-PNW-546. Portland, OR: U.S. Forest Service Pacific Northwest Research Station.</ref>。
主に春、[[林]]内や[[庭園]]内の地上、あるいは路傍などに孤生ないし群生する。[[山火事]]跡や[[焚き火]]跡などを好むという報告もある<ref>{{Cite journal|author=Wurtz, Tricia L., et al. |title=Harvesting morels after wildfire in Alaska |journal=Res. Note PNW-RN-546. Portland, OR: US Department of Agriculture, Forest Service, |publisher=Pacific Northwest Research Station |volume=31 |page=546 |year=2005 |url=https://doi.org/10.2737/PNW-RN-546 |doi=10.2737/PNW-RN-546}}</ref>。


周囲の条件によって、随意に[[腐生菌]]として振る舞うことも[[菌根]]を形成することもあり、菌根についても外生菌根を作る場合と内生菌根となる場合とがある。
周囲の条件によって、随意に[[腐生菌]]として振る舞うことも[[菌根]]を形成することもあり、菌根についても外生菌根を作る場合と内生菌根となる場合とがある。
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腐生生活を営む場合、従来は、枯れ葉や小枝などを[[分解者|分解]]・資化するのではないかと漠然と考えられていたが、[[日本]]の[[京都市]]で採集された子実体から得た[[培養]]菌株を用い、20×20×5 [[ミリメートル|mm]] の材片に接種して2ヶ月間の木材腐朽試験を行ったところでは、[[ブナ]]辺材に対して25パーセント以上の重量減少が認められた一方で、[[アカマツ]]辺材については腐朽能力をほとんど示さなかったという。試験後のブナ辺材片の成分を定量した結果、試験片に含まれていた[[リグニン]]は30パーセント以上減少しており、リグニン減少率とホロ[[セルロース]]減少率との比は 1.34-1.47であることから、リグニンを優先的に分解していると推定され、アミガサタケは[[白色腐朽]]を起こすことが示唆された。また、リグニンの分解産物の一種である[[バニリン酸]]やシリンガ酸が試験片から見出された点や、培養菌株の酸化酵素反応(バーメンダム反応)試験が陽性を示し、色素(レマゾールブリリアントブルーR)を酸化・脱色する能力を有する点なども、[[白色腐朽]]菌としての性質を間接的に示唆するものであり、これらの所見から、アミガサタケは木材をも栄養源として利用する能力を有することが明らかになった。
腐生生活を営む場合、従来は、枯れ葉や小枝などを[[分解者|分解]]・資化するのではないかと漠然と考えられていたが、[[日本]]の[[京都市]]で採集された子実体から得た[[培養]]菌株を用い、20×20×5 [[ミリメートル|mm]] の材片に接種して2ヶ月間の木材腐朽試験を行ったところでは、[[ブナ]]辺材に対して25パーセント以上の重量減少が認められた一方で、[[アカマツ]]辺材については腐朽能力をほとんど示さなかったという。試験後のブナ辺材片の成分を定量した結果、試験片に含まれていた[[リグニン]]は30パーセント以上減少しており、リグニン減少率とホロ[[セルロース]]減少率との比は 1.34-1.47であることから、リグニンを優先的に分解していると推定され、アミガサタケは[[白色腐朽]]を起こすことが示唆された。また、リグニンの分解産物の一種である[[バニリン酸]]やシリンガ酸が試験片から見出された点や、培養菌株の酸化酵素反応(バーメンダム反応)試験が陽性を示し、色素(レマゾールブリリアントブルーR)を酸化・脱色する能力を有する点なども、[[白色腐朽]]菌としての性質を間接的に示唆するものであり、これらの所見から、アミガサタケは木材をも栄養源として利用する能力を有することが明らかになった。


なお、外観からトガリアミガサタケ(''Morchella conica'' Kromnh.)と同定された子実体から得た培養菌株について、同様に腐朽力を試験した結果、ブナ辺材に対してもアカマツ辺材に対しても、試験材片の重量減少はほとんど見出されなかったという<ref>辻山彰一、2008. アミガサタケ類の木材腐朽力について. 日本菌学会第52回大会講演要旨集(三重) p. 59. </ref>。
なお、外観からトガリアミガサタケ(''Morchella conica'' Kromnh.)と同定された子実体から得た培養菌株について、同様に腐朽力を試験した結果、ブナ辺材に対してもアカマツ辺材に対しても、試験材片の重量減少はほとんど見出されなかったという<ref>{{Cite journal|和書|author=辻山彰一 |title=アミガサタケ類の木材腐朽力について |journal=日本菌学会大会講演要旨集 |publisher=日本菌学会 |year=2008 |volume=日本菌学会第52回大会 |issue=セッションID: P093 |page=127 |naid=130007005173 |doi=10.11556/msj7abst.52.0.127.0 |url=https://doi.org/10.11556/msj7abst.52.0.127.0}}</ref>。


外生菌根を形成する相手となる樹種としては、[[マツ科]]の[[オウシュウトウヒ]]<ref>Buscot, F., and I. Kottke, 1990. The association of ''Morchella rotunda'' (Pers.) Boudier with root of ''Picea abies'' (L.) Karst. New Phytologist 116:425-430.</ref>、ニシカラマツ([[:en:Larix occidentalis|''Larix occidentalis'']])、[[コントルタマツ]]([[:en:Lodgepole Pine|''Pinus contorta'']] Douglas ex Loudon)、[[ポンデローサマツ]]([[:en:Pinus ponderosa|''Pinus ponderosa'']] Douglas ex C.Lawson)、[[トガサワラ属]]の一種([[:en:Pseudotsuga menziesii|''Pseudotsuga menziesii'' (Mirb.) Franco var. ''menziessi'']])<ref name="Pinaceae">Dahlstrom, J. L., Smith, J. E., and N. S. Weber, 2000. Mycorrhiza-like interaction by Morchella with species of the Pinaceae in pure culture synthesis. Mycorrhiza 9: 279-285.</ref>などが挙げられている。一変種マルアミガサタケ(独立種として扱う意見もある)においては、[[トネリコ]]属(''Fraxinus'')、[[イボタノキ属]](''Ligustrum'')、[[ニレ属]](''Ulmus'')、[[コナラ属]](''Quercus'')・[[ハシバミ属]](''Corylus'')、あるいは[[ミズキ属]]などの樹根との間で生態的関係を結ぶのみならず、[[トクサ属]](''Equisetum'')や[[ネギ属]](''Allium'')、[[タンポポ属]](''Taraxacum'')、[[ヒヨドリバナ属]](''Euparotium'')などの[[草本植物]]の[[根]]にも侵入するとされている。これらの植物の細根の内部において、マルアミガサタケの[[菌糸]]は、根の表皮層・皮質柔組織および二次[[師部]]などの組織を構成する[[細胞]]内部にまで侵入し、内生[[菌根菌]]のような挙動を示す<ref>Buscot, F., 1987. Contribution à l'étude d'une espèce de morille de la forêt rhénane:''Morchella rotunda'' (Pers.) Boudier; perspectives de domestication. Université de Strasbourg (France), pp. 179.</ref>。
外生菌根を形成する相手となる樹種としては、[[マツ科]]の[[オウシュウトウヒ]]<ref>Buscot, F., and I. Kottke, 1990. The association of ''Morchella rotunda'' (Pers.) Boudier with root of ''Picea abies'' (L.) Karst. New Phytologist 116:425-430.</ref>、ニシカラマツ([[:en:Larix occidentalis|''Larix occidentalis'']])、[[コントルタマツ]]([[:en:Lodgepole Pine|''Pinus contorta'']] Douglas ex Loudon)、[[ポンデローサマツ]]([[:en:Pinus ponderosa|''Pinus ponderosa'']] Douglas ex C.Lawson)、[[トガサワラ属]]の一種([[:en:Pseudotsuga menziesii|''Pseudotsuga menziesii'' (Mirb.) Franco var. ''menziessi'']])<ref name="Pinaceae">{{Cite journal|title=Mycorrhiza-like interaction by Morchella with species of the Pinaceae in pure culture synthesis |author=J. L. Dahlstrom, J. E. Smith, N. S. Weber |journal=Mycorrhiza |year=2000 |volume=9 |pages=279-285 |doi=10.1007/PL00009992 |url=https://doi.org/10.1007/PL00009992}}</ref>などが挙げられている。一変種マルアミガサタケ(独立種として扱う意見もある)においては、[[トネリコ]]属(''Fraxinus'')、[[イボタノキ属]](''Ligustrum'')、[[ニレ属]](''Ulmus'')、[[コナラ属]](''Quercus'')・[[ハシバミ属]](''Corylus'')、あるいは[[ミズキ属]]などの樹根との間で生態的関係を結ぶのみならず、[[トクサ属]](''Equisetum'')や[[ネギ属]](''Allium'')、[[タンポポ属]](''Taraxacum'')、[[ヒヨドリバナ属]](''Euparotium'')などの[[草本植物]]の[[根]]にも侵入するとされている。これらの植物の細根の内部において、マルアミガサタケの[[菌糸]]は、根の表皮層・皮質柔組織および二次[[師部]]などの組織を構成する[[細胞]]内部にまで侵入し、内生[[菌根菌]]のような挙動を示す<ref>Buscot, F., 1987. Contribution à l'étude d'une espèce de morille de la forêt rhénane:''Morchella rotunda'' (Pers.) Boudier; perspectives de domestication. Université de Strasbourg (France), pp. 179.</ref>。


胞子が発芽して形成された[[カビ]]世代は、''Costantinella terrestris'' (Link.) Hughes の[[学名]]で呼ばれるが、アミガサタケ属の他の種のカビ世代も包含する学名であるというべきである。菌糸は無色(培養期間が長期に渡れば黄褐色を帯びてくる)で、表面に微細な突起を帯びてざらついており、直立した分生子柄の周囲に、無色で楕円形の[[分生子]](あるいは[[不動精子]]である可能性もあり、その場合は有性生殖に関与するために、このカビ世代を[[アナモルフ]]と呼称できるか否かは検討を要する)を[[輪生]]する<ref name="SynopticKey">Korf, R. P., 1972. Synoptic key to the genera of the Pezizales. Mycologia 64: 937-994 + 1 plate.</ref><ref>Mykhaylova O.B., Buchalo A.S. Mycelial microstructures in pure cultures of the representatives of Morchellaceae (Ascomycota). Ukrainian Botanical Journal 62: 790-796.</ref>。
胞子が発芽して形成された[[カビ]]世代は、''Costantinella terrestris'' (Link.) Hughes の[[学名]]で呼ばれるが、アミガサタケ属の他の種のカビ世代も包含する学名であるというべきである。菌糸は無色(培養期間が長期に渡れば黄褐色を帯びてくる)で、表面に微細な突起を帯びてざらついており、直立した分生子柄の周囲に、無色で楕円形の[[分生子]](あるいは[[不動精子]]である可能性もあり、その場合は有性生殖に関与するために、このカビ世代を[[アナモルフ]]と呼称できるか否かは検討を要する)を[[輪生]]する<ref name="SynopticKey">Korf, R. P., 1972. Synoptic key to the genera of the Pezizales. Mycologia 64: 937-994 + 1 plate.</ref><ref>Mykhaylova O.B., Buchalo A.S. Mycelial microstructures in pure cultures of the representatives of Morchellaceae (Ascomycota). Ukrainian Botanical Journal 62: 790-796.</ref>。


菌糸の集合体である'''菌核(きんかく:Sclerotium)'''を形成する性質があり、子実体を作るにさきだって菌核形成が必要になるともいわれる<ref name="Sclerotia">Miller, S.L., Torres, P., and T. M. McClean, 1994. Persistence of basidiospores and sclerotia of ectomycorrhizal fungi and ''Morchella'' in soil. Mycologia 86: 89-95.</ref>。この菌核は黒色ないし赤褐色でやや歪んだ塊状あるいは粒状をなし、自然環境下では路傍などの浅い地中に埋没している<ref name="Sclerotia"/>。なお、アミガサタケの菌核は、表皮層と髄層との分化がほとんどなく、さらに内部に植物の組織片や土塊・砂粒などの異物を包含する性質があることから、厳密には'''偽菌核(ぎきんかく:Pseudosclerotium)'''であるとみなされている<ref name="VandL">Volk, T., and T. J. Leonard, 1990. Cytology of the life-cycle of ''Morchella''. Mycological Research 94: 399-406.</ref>。菌核の形成促進には、[[基質]]中における空隙の存在が重要であるといわれている<ref name="JapaneseMorchella">坂本裕一・小倉健夫、2003. 日本産アミガサタケの菌核形成. 日本応用きのこ学会誌11: 85-91. </ref>。この菌核は越冬形態として機能するといわれ、3.3-4.4[[セルシウス度|℃]]で2週間ほど保つことによって[[子実体]]形成が誘導されるという報告もある<ref name="MAITAKEandMOREL">Stott, K., and C. Mohammed, 2004. Specialty Mushroom Production Systems:Maitake and Morels. A report for the Rural Industries Research and Development Corporation. Rural Industries Research and Development Corporation, Barton. ISBN 0-642-58734-5.</ref>。
菌糸の集合体である'''菌核(きんかく:Sclerotium)'''を形成する性質があり、子実体を作るにさきだって菌核形成が必要になるともいわれる<ref name="Sclerotia">{{Cite journal|author=Miller, S. L., Torres, P., & McClean, T. M. |title={Persistence of basidiospores and sclerotia of ectomycorrhizal fungi and Morchella in soil |journal=Mycologia |volume=86 |issue=1 |pages=89-95 |year=1994 |publisher=Taylor & Francis |doi=10.1080/00275514.1994.12026377 |url=https://doi.org/10.1080/00275514.1994.12026377}}</ref>。この菌核は黒色ないし赤褐色でやや歪んだ塊状あるいは粒状をなし、自然環境下では路傍などの浅い地中に埋没している<ref name="Sclerotia"/>。なお、アミガサタケの菌核は、表皮層と髄層との分化がほとんどなく、さらに内部に植物の組織片や土塊・砂粒などの異物を包含する性質があることから、厳密には'''偽菌核(ぎきんかく:Pseudosclerotium)'''であるとみなされている<ref name="VandL">Volk, T., and T. J. Leonard, 1990. Cytology of the life-cycle of ''Morchella''. Mycological Research 94: 399-406.</ref>。菌核の形成促進には、[[基質]]中における空隙の存在が重要であるといわれている<ref name="JapaneseMorchella">坂本裕一・小倉健夫、2003. 日本産アミガサタケの菌核形成. 日本応用きのこ学会誌11: 85-91. </ref>。この菌核は越冬形態として機能するといわれ、3.3-4.4[[セルシウス度|℃]]で2週間ほど保つことによって[[子実体]]形成が誘導されるという報告もある<ref name="MAITAKEandMOREL">Stott, K., and C. Mohammed, 2004. Specialty Mushroom Production Systems:Maitake and Morels. A report for the Rural Industries Research and Development Corporation. Rural Industries Research and Development Corporation, Barton. ISBN 0-642-58734-5.</ref>。


異なる胞子由来の菌糸の[[接合 (生物)|接合]]により形成された[[重相]]菌糸は、遺伝的に異質な複数の[[細胞核|核]]を同時に含んだ[[異核共存体|異核共存状態]]で生長する<ref name="VandL"/>。まれに、胞子発芽で形成された[[核相|単相]]菌糸(唯一個の核を含むのみ)と、単相菌糸同士の接合を経た重相菌糸との間で菌糸融合が起こり、核の交換が行われる[[ダイ・モン交配]]が認められることがある<ref name="HerveySingle"> Hervey, A., Bistis, G., and I. Leong, 1978. Cultural studies of single ascospore isolates of ''Morchella esuclenta”. Mycologia 70: 1269-1274.</ref>。
異なる胞子由来の菌糸の[[接合 (生物)|接合]]により形成された[[重相]]菌糸は、遺伝的に異質な複数の[[細胞核|核]]を同時に含んだ[[異核共存体|異核共存状態]]で生長する<ref name="VandL"/>。まれに、胞子発芽で形成された[[核相|単相]]菌糸(唯一個の核を含むのみ)と、単相菌糸同士の接合を経た重相菌糸との間で菌糸融合が起こり、核の交換が行われる[[ダイ・モン交配]]が認められることがある<ref name="HerveySingle"> Hervey, A., Bistis, G., and I. Leong, 1978. Cultural studies of single ascospore isolates of ''Morchella esuclenta”. Mycologia 70: 1269-1274.</ref>。
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== 類似種 ==
== 類似種 ==
頭部が丸く、そのくぼみが丸みを帯びるとともに粗雑なものをチャアミガサタケ(''Morchella esculenta'' var. ''umbrina''(Boud.)Imai)、肋脈の稜が幼時は白っぽい(次第に暗褐色を帯びてくる)ものをマルアミガサタケ(''Morchella esculenta'' var. ''rotunda'' Pers.: Fr.)の名で呼び、おのおの変種レベルで区別される<ref name="Imai"> Imai, S. 1954. Elvellaceae Japoniae. Science Reports of the Yokohama National University, Sec II. No. 3: 1-35 + 2 plates.</ref>が、これらを同一種の変異とする意見もある。
頭部が丸く、そのくぼみが丸みを帯びるとともに粗雑なものをチャアミガサタケ(''Morchella esculenta'' var. ''umbrina''(Boud.)Imai)、肋脈の稜が幼時は白っぽい(次第に暗褐色を帯びてくる)ものをマルアミガサタケ(''Morchella esculenta'' var. ''rotunda'' Pers.: Fr.)の名で呼び、おのおの変種レベルで区別される<ref name="Imai"> Imai, S. 1954. Elvellaceae Japoniae. Science Reports of the Yokohama National University, Sec II. No. 3: 1-35 + 2 plates.</ref>が、これらを同一種の変異とする意見もある。


頭部が長卵形をなすとともにその肋脈が厚く、全体に黄白色ないしクリーム色を帯びるものにアシボソアミガサタケ(''Morchella deliciosa'' Fr.)がある<ref name="Kawamura">[[川村清一]]、1908. 本邦産あみがさたけニ就テ. 植物学雑誌22: 206-213.</ref>が、これをアミガサタケの一変種としたり、あるいは同一種として扱ったりする研究者もある<ref name="Ower"> Ower, R., 1982. Notes on the development of the morel ascocarp: ''Morchella esculenta''. Mycologia 74: 142-143.</ref>。
頭部が長卵形をなすとともにその肋脈が厚く、全体に黄白色ないしクリーム色を帯びるものにアシボソアミガサタケ(''Morchella deliciosa'' Fr.)がある<ref name="Kawamura">{{Cite journal|和書|author=[[川村清一]] |title=本邦産あみがさたけニ就テ |journal=植物学雑誌 |ISSN=0006-808X |publisher=日本植物学会 |year=1908 |volume=22 |issue=257 |pages=206-213 |naid=130004076246 |doi=10.15281/jplantres1887.22.257_206 |url=https://doi.org/10.15281/jplantres1887.22.257_206}}</ref>が、これをアミガサタケの一変種としたり、あるいは同一種として扱ったりする研究者もある<ref name="Ower"> Ower, R., 1982. Notes on the development of the morel ascocarp: ''Morchella esculenta''. Mycologia 74: 142-143.</ref>。


日本からは、この他にアシブトアミガサタケ(''Morchella crassipes'' (Vent.) Pers.)、トガリアミガサタケ(''Morchella conica'' Krombh.)、オオアミガサタケ(''Morchella smithiana'' Cooke)<ref name="Kawamura"/>、コトガリアミガサタケ(''Morchella angusticeps'' Peck var. ''angusticeps'')、オオトガリアミガサタケ(''Morchella elata'' Fr.)、ヒロメノトガリアミガサタケ(''Morchella costata'' (Vent.) Pers.)、フカアミガサタケ(''Morchella patula'' Pers. var. ''patula'')(食毒不明)、トガリフカアミガサタケ(''Morchella patula'' var. ''semilibera'' (DC) S. Imai = ''Mitrophora semilibera'' (DC) Lév.)(食毒不明)、オオフカアミガサタケ(''Morchella patula'' var. ''gigas'' (Pers.) S. Imai =''Mitrophora gigas'' Lév.)<ref name="Imai"/><ref>[[今井三子]]、1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類(II). 植物及動物 3: 26-30.</ref><ref>今井三子 1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類(III). 植物及動物 3: 59-64.</ref>などが知られている。
日本からは、この他にアシブトアミガサタケ(''Morchella crassipes'' (Vent.) Pers.)、トガリアミガサタケ(''Morchella conica'' Krombh.)、オオアミガサタケ(''Morchella smithiana'' Cooke)<ref name="Kawamura"/>、コトガリアミガサタケ(''Morchella angusticeps'' Peck var. ''angusticeps'')、オオトガリアミガサタケ(''Morchella elata'' Fr.)、ヒロメノトガリアミガサタケ(''Morchella costata'' (Vent.) Pers.)、フカアミガサタケ(''Morchella patula'' Pers. var. ''patula'')(食毒不明)、トガリフカアミガサタケ(''Morchella patula'' var. ''semilibera'' (DC) S. Imai = ''Mitrophora semilibera'' (DC) Lév.)(食毒不明)、オオフカアミガサタケ(''Morchella patula'' var. ''gigas'' (Pers.) S. Imai =''Mitrophora gigas'' Lév.)<ref name="Imai"/><ref>[[今井三子]]、1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類(II). 植物及動物 3: 26-30.</ref><ref>今井三子 1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類(III). 植物及動物 3: 59-64.<!--執筆者向けメモ、原典発見できず(2022/01)--></ref>などが知られている。
[[種 (分類学)|種]]レベルでの分類は、子実体の大きさと色調、頭部と柄部との接続の状態、頭部のくぼみの形態、柄の形態(上下同大であるか、それとも柄の上部あるいは下部で太まるか)などに基づいているが、これらの形質は必ずしも安定したものとはいえず、同定は容易ではない。子嚢や胞子あるいは側糸などの顕微鏡的な形質についても、大きさや形態の差異はほとんどなく。分類形質となりにくい。産地を異にするいくつかの[[標本]]を元にした解析では、アミガサタケとアシブトアミガサタケとは[[分子系統]]学的差異がほとんどなく、同一分類群に属すると判定されたという<ref>Masaphy, S., Zabari, L., Gokdberg, D., and G. Jander-Shagug, 2010. The complexity of ''Morchella'' systematics: A case of the yellow Morel from Israel. Fungi 3: 14-18.</ref>。
[[種 (分類学)|種]]レベルでの分類は、子実体の大きさと色調、頭部と柄部との接続の状態、頭部のくぼみの形態、柄の形態(上下同大であるか、それとも柄の上部あるいは下部で太まるか)などに基づいているが、これらの形質は必ずしも安定したものとはいえず、同定は容易ではない。子嚢や胞子あるいは側糸などの顕微鏡的な形質についても、大きさや形態の差異はほとんどなく。分類形質となりにくい。産地を異にするいくつかの[[標本]]を元にした解析では、アミガサタケとアシブトアミガサタケとは[[分子系統]]学的差異がほとんどなく、同一分類群に属すると判定されたという<ref>Masaphy, S., Zabari, L., Gokdberg, D., and G. Jander-Shagug, 2010. The complexity of ''Morchella'' systematics: A case of the yellow Morel from Israel. Fungi 3: 14-18.</ref>。


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食品の[[うま味]]成分の構成要素の一つとなり得る[[呈味性ヌクレオチド]]としては[[グアニル酸]]と[[アデニル酸]]とが検出されており、特に後者の割合が多いという。一方で、[[イノシン酸]]、[[シチジル酸]]、[[ウリジル酸]]は見出されていない<ref name="Sugawara">菅原龍幸(編)、1997. キノコの科学. [[朝倉書店]]、東京. ISBN 978-4-254-43042-4.</ref>。
食品の[[うま味]]成分の構成要素の一つとなり得る[[呈味性ヌクレオチド]]としては[[グアニル酸]]と[[アデニル酸]]とが検出されており、特に後者の割合が多いという。一方で、[[イノシン酸]]、[[シチジル酸]]、[[ウリジル酸]]は見出されていない<ref name="Sugawara">菅原龍幸(編)、1997. キノコの科学. [[朝倉書店]]、東京. ISBN 978-4-254-43042-4.</ref>。


[[脂肪酸]]としては、その80パーセント前後は[[リノール酸]]で占められ、他に[[パルミチン酸]](10パーセント前後)や[[オレイン酸]](5パーセント前後)を含んでいる<ref name="Sugawara"/><ref>広井勝、1988. きのこ脂質の脂肪酸組成と分類. 日本菌学会会報29: 449-470.</ref>。
[[脂肪酸]]としては、その80パーセント前後は[[リノール酸]]で占められ、他に[[パルミチン酸]](10パーセント前後)や[[オレイン酸]](5パーセント前後)を含んでいる<ref name="Sugawara"/><ref>{{Cite journal|和書|title=きのこ脂質の脂肪酸組成と分類 |author=広井勝 |journal=日本菌学会会報 |year=1988 |month=12 |volume=29 |issue=4 |pages=449-470 |ISSN=00290289 |url=http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010412097
}}</ref>。


== 食・毒性 ==
== 食・毒性 ==
[[英語]]でmorel (モレル)、[[フランス語]]でmorille (モリーユ)、 [[イタリア語]]で"morchetta" (モルケッタ)、[[ドイツ語]]で"Speise" (シュパイゼ)、[[中国語]]で「羊肚菌」(ヤンドゥージュン)と呼ばれ、[[食用キノコ]]として珍重される。
[[英語]]でmorel (モレル)、[[フランス語]]でmorille (モリーユ)、 [[イタリア語]]で"morchetta" (モルケッタ)、[[ドイツ語]]で"Speise" (シュパイゼ)、[[中国語]]で「羊肚菌」(ヤンドゥージュン)と呼ばれ、[[食用キノコ]]として珍重される。


食用キノコの一つであるが、子実体には微量の[[ヒドラジン]]を含むため、生食することは避けるべきであるとされる<ref>Stamets, P., 2005. Mycelium Running (how mushrooms can help save the world). Ten Speed Press, Berkeley, California. ISBN 978-1580085793.</ref>。また、調理されたものであっても、[[アルコール]]とともに食べると[[酔い]]を深め、悪心や[[嘔吐]]の原因になるともいわれている<ref>Groves, J.W. Poisoning by morels when taken with alcohol. Mycologia 56: 779-780.</ref>。きちんと加熱調理し、かつアルコールを同時に摂取せずに食べても、大量に摂食した場合に[[眩暈]]・ふらつき、[[縮瞳]]などを起こした例が報告されている<ref name="German">Pfab, R., Haberl, B., Kleber, J., and T. Zilker, 2008. Cerebellar effects after consumption of edible morels. (''Morchella conica'', ''Morchella esculenta''). Clinical Toxicology 46; 259-260.</ref>。ただし、これらの症状は、特別な治療を施さなくても次第に寛解するとされている。また、[[ドイツ]]の[[ミュンヘン]]近郊で、アミガサタケを大量に食べて体調に異変をきたした例では、患者を診察した医師自身が、診察・処置の終了直後に、患者が採取したのと同一の場所でアミガサタケを集めて試食したが、症状は発現しなかったという<ref name="German"/>。
食用キノコの一つであるが、子実体には微量の[[ヒドラジン]]を含むため、生食することは避けるべきであるとされる<ref>Stamets, P., 2005. Mycelium Running (how mushrooms can help save the world). Ten Speed Press, Berkeley, California. ISBN 978-1580085793.</ref>。また、調理されたものであっても、[[アルコール]]とともに食べると[[酔い]]を深め、悪心や[[嘔吐]]の原因になるともいわれている<ref>Groves, J.W. Poisoning by morels when taken with alcohol. Mycologia 56: 779-780.</ref>。きちんと加熱調理し、かつアルコールを同時に摂取せずに食べても、大量に摂食した場合に[[眩暈]]・ふらつき、[[縮瞳]]などを起こした例が報告されている<ref name="German">{{Cite journal|author=Pfab, R., Haberl, B., Kleber, J., & Zilker, T |title=Cerebellar effects after consumption of edible morels (Morchella conica, Morchella esculenta) |journal=Clinical Toxicology |volume=46 |issue=3 |pages=259-260 |year=2008 |publisher=Taylor & Francis |doi=10.1080/15563650701206715 |url=https://doi.org/10.1080/15563650701206715}}</ref>。ただし、これらの症状は、特別な治療を施さなくても次第に寛解するとされている。また、[[ドイツ]]の[[ミュンヘン]]近郊で、アミガサタケを大量に食べて体調に異変をきたした例では、患者を診察した医師自身が、診察・処置の終了直後に、患者が採取したのと同一の場所でアミガサタケを集めて試食したが、症状は発現しなかったという<ref name="German"/>。


廃棄された[[リンゴ]]園の跡に発生した場合、[[農薬]]の成分として土壌に撒布された[[ヒ酸水素鉛(II)|ヒ酸鉛]]に含まれる[[ヒ素]]や[[鉛]]が子実体に蓄積され、これを食用とした場合に健康に好ましくない影響を与える可能性も指摘されている<ref name="shav10">{{cite journal| title=Lead and Arsenic in ''Morchella esculenta'' Fruitbodies Collected in Lead Arsenate Contaminated Apple Orchards in the Northeastern United States: A Preliminary Study| first=Elinoar| last=Shavit| first2=Efrat| last2=Shavit| journal=Fungi| volume=3| month=Spring| year=2010| pages=11–18| url=http://www.fungimag.com/winter-2010-articles/shavit-morels.pdf| issue=2}}</ref>。アミガサタケは全て食用になると思われがちだが、近縁のフカアミガサタケについては食毒不明とする文献がある。
廃棄された[[リンゴ]]園の跡に発生した場合、[[農薬]]の成分として土壌に撒布された[[ヒ酸水素鉛(II)|ヒ酸鉛]]に含まれる[[ヒ素]]や[[鉛]]が子実体に蓄積され、これを食用とした場合に健康に好ましくない影響を与える可能性も指摘されている<ref name="shav10">{{cite journal| title=Lead and Arsenic in ''Morchella esculenta'' Fruitbodies Collected in Lead Arsenate Contaminated Apple Orchards in the Northeastern United States: A Preliminary Study| first=Elinoar| last=Shavit| first2=Efrat| last2=Shavit| journal=Fungi| volume=3| month=Spring| year=2010| pages=11–18| url=http://www.fungimag.com/winter-2010-articles/shavit-morels.pdf| issue=2}}</ref>。アミガサタケは全て食用になると思われがちだが、近縁のフカアミガサタケについては食毒不明とする文献がある。
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生鮮品を用いる場合もあるが、[[乾物|乾燥品]]をひたひたに浸る程度の水で戻した上で調理されることが多い。戻し汁にもよい風味が滲出しているので、一度漉して砂粒などを除いた後、調理に用いる<ref name="Yamaoka">山岡昌治、1996. 山岡シェフのきのこ料理(お気に入りのレシピ). 雄鶏社、東京. ISBN 978-4-27763-018-4. </ref>。
生鮮品を用いる場合もあるが、[[乾物|乾燥品]]をひたひたに浸る程度の水で戻した上で調理されることが多い。戻し汁にもよい風味が滲出しているので、一度漉して砂粒などを除いた後、調理に用いる<ref name="Yamaoka">山岡昌治、1996. 山岡シェフのきのこ料理(お気に入りのレシピ). 雄鶏社、東京. ISBN 978-4-27763-018-4. </ref>。


[[生クリーム]]や[[バター]]などとの相性がよいとされ、[[グラタン]]や[[シチュー]]などにしばしば使われる<ref>井口潔、1994.街で見つける山の幸図鑑.山海堂、東京. ISBN 978-4-38110-212-6. </ref>。[[ピッツァ]]、[[フライ (料理)|フライ]]、[[スープ]]、[[オムレツ]]などの素材としてもよく使われる<ref name="Iguchi">生出智哉・井口潔、1993. きのこ狩りの極意書. 山海堂、東京. ISBN 978-4-38110-197-6. </ref><ref>兵庫きのこ研究会(編著)、2007. のじぎく文庫 兵庫のキノコ. [[神戸新聞]]総合出版センター、神戸. ISBN 978-4-34300-428-4</ref>。
[[生クリーム]]や[[バター]]などとの相性がよいとされ、[[グラタン]]や[[シチュー]]などにしばしば使われる<ref>井口潔、1994.街で見つける山の幸図鑑.山海堂、東京. ISBN 978-4-38110-212-6. </ref>。[[ピッツァ]]、[[フライ (料理)|フライ]]、[[スープ]]、[[オムレツ]]などの素材としてもよく使われる<ref name="Iguchi">生出智哉・井口潔、1993. きのこ狩りの極意書. 山海堂、東京. ISBN 978-4-38110-197-6. </ref><ref>兵庫きのこ研究会(編著)、2007. のじぎく文庫 兵庫のキノコ. [[神戸新聞]]総合出版センター、神戸. ISBN 978-4-34300-428-4</ref>。


元々は日本ではほとんど食用にされた歴史がないキノコであるが、[[辛子]]和えや[[炒め物]]などの和風料理に用いられることもある<ref>清水大典、1971. 原色きのこ全科-見分け方と食べ方.家の光協会、東京. ISBN 978-4-259-53309-0.</ref><ref name="Iguchi"/>。
元々は日本ではほとんど食用にされた歴史がないキノコであるが、[[辛子]]和えや[[炒め物]]などの和風料理に用いられることもある<ref>清水大典、1971. 原色きのこ全科-見分け方と食べ方.家の光協会、東京. ISBN 978-4-259-53309-0.</ref><ref name="Iguchi"/>。
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日本では[[岐阜県]]のメーカーが2018年にハウス栽培による人工栽培および商用生産に初めて成功し、2020年には整備された[[竹林]]での林地栽培による試験生産に成功した<ref>[https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2020/03/200324-40861.php 「日本初 アミガサタケの人工栽培に成功 ハルカインターナショナル」『[[農業協同組合新聞]]』ニュース|栽培技術|JAcom</ref>。竹チップなどを用いた栄養材を培地として竹林に設置したもので、日本の竹林でアミガサタケの生産が可能であることが実証されたことから、全国にある放置竹林を用いてアミガサタケを安価に量産するビジネスモデルが提案されている。
日本では[[岐阜県]]のメーカーが2018年にハウス栽培による人工栽培および商用生産に初めて成功し、2020年には整備された[[竹林]]での林地栽培による試験生産に成功した<ref>[https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2020/03/200324-40861.php 「日本初 アミガサタケの人工栽培に成功 ハルカインターナショナル」『[[農業協同組合新聞]]』ニュース|栽培技術|JAcom</ref>。竹チップなどを用いた栄養材を培地として竹林に設置したもので、日本の竹林でアミガサタケの生産が可能であることが実証されたことから、全国にある放置竹林を用いてアミガサタケを安価に量産するビジネスモデルが提案されている。


岩手県では雲南省と友好交流協定を締結して2016年より栽培技術を導入し、国内産の菌株を用いて2021年に岩手県林業技術センターでの屋外人工栽培に成功した<ref>[https://www.iwanichi.co.jp/2021/07/02/5686526/ 屋外人工栽培に成功 安定生産で地域振興 県林業技術センター アミガサタケ【岩手】] 岩手日日新聞社</ref>。夏は暑過ぎず、冬は温暖な岩手県沿岸部の気候が栽培に適しているとのこと。
岩手県では雲南省と友好交流協定を締結して2016年より栽培技術を導入し、国内産の菌株を用いて2021年に岩手県林業技術センターでの屋外人工栽培に成功した<ref>[https://www.iwanichi.co.jp/2021/07/02/5686526/ 屋外人工栽培に成功 安定生産で地域振興 県林業技術センター アミガサタケ【岩手】] 岩手日日新聞社</ref>。夏は暑過ぎず、冬は温暖な岩手県沿岸部の気候が栽培に適しているとのこと。


== 和名・学名・方言名・英名 ==
== 和名・学名・方言名・英名 ==
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属名の''Morchella'' は、[[ドイツ語]]名の Morchel を[[ラテン語]]化したものである。[[種小名]]の''esculenta'' はラテン語で「食用になる」の意である<ref name="IandHandT"/><ref name="Makino"/>。
属名の''Morchella'' は、[[ドイツ語]]名の Morchel を[[ラテン語]]化したものである。[[種小名]]の''esculenta'' はラテン語で「食用になる」の意である<ref name="IandHandT"/><ref name="Makino"/>。


日本では食用としてはあまり重視されてこず、[[地方名|方言名]]は少ない。[[秋田県]]下で「うど」「がらんど」「しわがら」、また[[青森県]]や[[長野県]]などで「みそっこ」などと呼んでいるに過ぎない<ref>奥沢康正奥沢正紀、1999. きのこの語源・方言事典. [[山と渓谷社]]、東京. ISBN 978-4-63588-031-2.</ref>。
日本では食用としてはあまり重視されてこず、[[地方名|方言名]]は少ない。[[秋田県]]下で「うど」「がらんど」「しわがら」、また[[青森県]]や[[長野県]]などで「みそっこ」などと呼んでいるに過ぎない<ref>{{Cite book|和書|author=奥沢康正, 奥沢正紀 |title=きのこの語源・方言事典 |publisher=奥沢康正,山と渓谷社 (発売) |year=1998 |NCID=BA39065879 |ISBN=4635880311 |url=https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002731015-00}}</ref>。


古く[[明治時代]]の初頭には、東京の[[四谷]]付近で「カナメゾツネ」という名が当てられていたが、その[[語源]]については明らかになっていない<ref name="Makino"/>。
古く[[明治時代]]の初頭には、東京の[[四谷]]付近で「カナメゾツネ」という名が当てられていたが、その[[語源]]については明らかになっていない<ref name="Makino"/>。
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== ミネソタ州におけるアミガサタケ ==
== ミネソタ州におけるアミガサタケ ==
[[アメリカ合衆国]][[ミネソタ州]]においては、アミガサタケが「州のきのこ」として[[州法]]に規定されている<ref>Weber, N. S., 1996. A Morel Hunter's Companion: A Guide to True and False Morels. Thunder Bay Press, San Diego. ISBN 978-1882376162.</ref>。また、ミネソタ州のみならず周辺の各州([[アイオワ州]]、[[イリノイ州]]、[[ウィスコンシン州]]など)では、毎年5月にアミガサタケの採取コンテストが開催される。参加者が、制限時間(通常は2時間)以内に自力で野外から採取したアミガサタケの本数を競うものであるという<ref>Schaecter, E., 1997. In the Company of Mushrooms: A Biologist's Tale. Harvard University Press, Cambridge. ISBN 978-0674445543.</ref><ref>毛利尚樹、2011. アミガサタケの生長観察. 千葉菌類談話会通信27: 4-8.</ref>。
[[アメリカ合衆国]][[ミネソタ州]]においては、アミガサタケが「州のきのこ」として[[州法]]に規定されている<ref>Weber, N. S., 1996. A Morel Hunter's Companion: A Guide to True and False Morels. Thunder Bay Press, San Diego. ISBN 978-1882376162.</ref>。また、ミネソタ州のみならず周辺の各州([[アイオワ州]]、[[イリノイ州]]、[[ウィスコンシン州]]など)では、毎年5月にアミガサタケの採取コンテストが開催される。参加者が、制限時間(通常は2時間)以内に自力で野外から採取したアミガサタケの本数を競うものであるという<ref>Schaecter, E., 1997. In the Company of Mushrooms: A Biologist's Tale. Harvard University Press, Cambridge. ISBN 978-0674445543.</ref><ref>毛利尚樹、2011. "{{PDFlink|[http://chibakin.la.coocan.jp/kaihou27/27p4-8amigasa-seichou.pdf アミガサタケの生長観察]}}" [http://chibakin.la.coocan.jp/kaiho27mokuji.html 千葉菌類談話会通信] 27: 4-8.</ref>。


<gallery>
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[シャグマアミガサタケ]]
* [[シャグマアミガサタケ]]

{{Commons|Morchella esculenta}}
{{Commons|Morchella esculenta}}

==外部リンク==
* {{Cite journal|和書|author=松村宗治 |title=昇龍菌科ノ分類二對スル一寄與 / Contribution to the Knowledge of the Classification of Helvellaceae. |journal=植物学雑誌 |ISSN=0006-808X |publisher=日本数学教育学会 |year=1932 |volume=46 |issue=544 |pages=172-175,359 |naid=110003851692 |doi=10.15281/jplantres1887.46.172 |url=https://doi.org/10.15281/jplantres1887.46.172}}


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2022年1月11日 (火) 13:34時点における版

アミガサタケ

Morchella esculenta (L.: Fr.) Pers.
var. esculenta

アミガサタケ Morchella esculenta
ポーランドビャウォヴィエジャの森のアミガサタケ
分類
: 菌界 Fungus
: 子嚢菌門 Ascomycota
亜門 : チャワンタケ亜門 Pezizomycotina
: チャワンタケ綱 Pezizomycetes
亜綱 : チャワンタケ亜綱 Pezizomycetidae
: チャワンタケ目 Pezizales
: アミガサタケ科 Morchellaceae
: アミガサタケ属 Morchella Dill.:Fr.
: アミガサタケ M. esculenta(L.:Fr.)Pers.
学名
Morchella esculenta(L.)Pers.

var. esculenta

和名
アミガサタケ

アミガサタケMorchella esculenta (L.) Pers. var. esculenta)は、アミガサタケ科アミガサタケ属に属する子嚢菌類キノコの一種で、食用キノコ[1]である。

形態

子実体は類球形ないし卵形の頭部と太くて明瞭な柄とで構成され、全体の高さは5-12 cm(あるいはそれ以上)に達する。頭部は淡黄白色ないし黄褐色または帯赤褐色を呈し、肋脈に囲まれた多数の蜂の巣状の窪みの集合体となる。柄は歪んだ円筒状をなし、白色ないし淡黄褐色で表面はざらつく。頭部・柄を通じて中空で、肉は薄くてもろく、ほぼ白色で傷つけても変色することはなく、ほとんど無味無臭である。

胞子紋は淡黄色[2]、あるいはオレンジ色を帯びた黄褐色[3]を呈する。

頭部の窪みの内面に多数の子嚢が林立した子実層を形成し、子嚢の内部に胞子を生じる。子嚢は細長い円筒状で無色・薄壁、ヨウ素溶液で青く染まることはなく、先端に薄い円盤状の蓋を有し、成熟すれば蓋が外れて胞子を射出する。胞子は卵状楕円形あるいは広楕円形で油滴を欠き、多数のを含んでいる[4]。子実層には、子嚢とともに多数の側糸(先端が僅かに膨らんだ、重相の不稔菌糸)が混在する。

生態

主に春、内や庭園内の地上、あるいは路傍などに孤生ないし群生する。山火事跡や焚き火跡などを好むという報告もある[5]

周囲の条件によって、随意に腐生菌として振る舞うことも菌根を形成することもあり、菌根についても外生菌根を作る場合と内生菌根となる場合とがある。

腐生生活を営む場合、従来は、枯れ葉や小枝などを分解・資化するのではないかと漠然と考えられていたが、日本京都市で採集された子実体から得た培養菌株を用い、20×20×5 mm の材片に接種して2ヶ月間の木材腐朽試験を行ったところでは、ブナ辺材に対して25パーセント以上の重量減少が認められた一方で、アカマツ辺材については腐朽能力をほとんど示さなかったという。試験後のブナ辺材片の成分を定量した結果、試験片に含まれていたリグニンは30パーセント以上減少しており、リグニン減少率とホロセルロース減少率との比は 1.34-1.47であることから、リグニンを優先的に分解していると推定され、アミガサタケは白色腐朽を起こすことが示唆された。また、リグニンの分解産物の一種であるバニリン酸やシリンガ酸が試験片から見出された点や、培養菌株の酸化酵素反応(バーメンダム反応)試験が陽性を示し、色素(レマゾールブリリアントブルーR)を酸化・脱色する能力を有する点なども、白色腐朽菌としての性質を間接的に示唆するものであり、これらの所見から、アミガサタケは木材をも栄養源として利用する能力を有することが明らかになった。

なお、外観からトガリアミガサタケ(Morchella conica Kromnh.)と同定された子実体から得た培養菌株について、同様に腐朽力を試験した結果、ブナ辺材に対してもアカマツ辺材に対しても、試験材片の重量減少はほとんど見出されなかったという[6]

外生菌根を形成する相手となる樹種としては、マツ科オウシュウトウヒ[7]、ニシカラマツ(Larix occidentalis)、コントルタマツPinus contorta Douglas ex Loudon)、ポンデローサマツPinus ponderosa Douglas ex C.Lawson)、トガサワラ属の一種(Pseudotsuga menziesii (Mirb.) Franco var. menziessi[8]などが挙げられている。一変種マルアミガサタケ(独立種として扱う意見もある)においては、トネリコ属(Fraxinus)、イボタノキ属Ligustrum)、ニレ属Ulmus)、コナラ属Quercus)・ハシバミ属Corylus)、あるいはミズキ属などの樹根との間で生態的関係を結ぶのみならず、トクサ属Equisetum)やネギ属Allium)、タンポポ属Taraxacum)、ヒヨドリバナ属Euparotium)などの草本植物にも侵入するとされている。これらの植物の細根の内部において、マルアミガサタケの菌糸は、根の表皮層・皮質柔組織および二次師部などの組織を構成する細胞内部にまで侵入し、内生菌根菌のような挙動を示す[9]

胞子が発芽して形成されたカビ世代は、Costantinella terrestris (Link.) Hughes の学名で呼ばれるが、アミガサタケ属の他の種のカビ世代も包含する学名であるというべきである。菌糸は無色(培養期間が長期に渡れば黄褐色を帯びてくる)で、表面に微細な突起を帯びてざらついており、直立した分生子柄の周囲に、無色で楕円形の分生子(あるいは不動精子である可能性もあり、その場合は有性生殖に関与するために、このカビ世代をアナモルフと呼称できるか否かは検討を要する)を輪生する[4][10]

菌糸の集合体である菌核(きんかく:Sclerotium)を形成する性質があり、子実体を作るにさきだって菌核形成が必要になるともいわれる[11]。この菌核は黒色ないし赤褐色でやや歪んだ塊状あるいは粒状をなし、自然環境下では路傍などの浅い地中に埋没している[11]。なお、アミガサタケの菌核は、表皮層と髄層との分化がほとんどなく、さらに内部に植物の組織片や土塊・砂粒などの異物を包含する性質があることから、厳密には偽菌核(ぎきんかく:Pseudosclerotium)であるとみなされている[12]。菌核の形成促進には、基質中における空隙の存在が重要であるといわれている[13]。この菌核は越冬形態として機能するといわれ、3.3-4.4で2週間ほど保つことによって子実体形成が誘導されるという報告もある[14]

異なる胞子由来の菌糸の接合により形成された重相菌糸は、遺伝的に異質な複数のを同時に含んだ異核共存状態で生長する[12]。まれに、胞子発芽で形成された単相菌糸(唯一個の核を含むのみ)と、単相菌糸同士の接合を経た重相菌糸との間で菌糸融合が起こり、核の交換が行われるダイ・モン交配が認められることがある[15]

分布

アミガサタケの分布図

日本を含む[16]北半球温帯亜寒帯湿潤気候の地域に分布する[2][17]ほか、ニュージーランド、稀ではあるがブラジルにも分布する。

類似種

頭部が丸く、そのくぼみが丸みを帯びるとともに粗雑なものをチャアミガサタケ(Morchella esculenta var. umbrina(Boud.)Imai)、肋脈の稜が幼時は白っぽい(次第に暗褐色を帯びてくる)ものをマルアミガサタケ(Morchella esculenta var. rotunda Pers.: Fr.)の名で呼び、おのおの変種レベルで区別される[18]が、これらを同一種の変異とする意見もある。

頭部が長卵形をなすとともにその肋脈が厚く、全体に黄白色ないしクリーム色を帯びるものにアシボソアミガサタケ(Morchella deliciosa Fr.)がある[19]が、これをアミガサタケの一変種としたり、あるいは同一種として扱ったりする研究者もある[20]

日本からは、この他にアシブトアミガサタケ(Morchella crassipes (Vent.) Pers.)、トガリアミガサタケ(Morchella conica Krombh.)、オオアミガサタケ(Morchella smithiana Cooke)[19]、コトガリアミガサタケ(Morchella angusticeps Peck var. angusticeps)、オオトガリアミガサタケ(Morchella elata Fr.)、ヒロメノトガリアミガサタケ(Morchella costata (Vent.) Pers.)、フカアミガサタケ(Morchella patula Pers. var. patula)(食毒不明)、トガリフカアミガサタケ(Morchella patula var. semilibera (DC) S. Imai = Mitrophora semilibera (DC) Lév.)(食毒不明)、オオフカアミガサタケ(Morchella patula var. gigas (Pers.) S. Imai =Mitrophora gigas Lév.)[18][21][22]などが知られている。 レベルでの分類は、子実体の大きさと色調、頭部と柄部との接続の状態、頭部のくぼみの形態、柄の形態(上下同大であるか、それとも柄の上部あるいは下部で太まるか)などに基づいているが、これらの形質は必ずしも安定したものとはいえず、同定は容易ではない。子嚢や胞子あるいは側糸などの顕微鏡的な形質についても、大きさや形態の差異はほとんどなく。分類形質となりにくい。産地を異にするいくつかの標本を元にした解析では、アミガサタケとアシブトアミガサタケとは分子系統学的差異がほとんどなく、同一分類群に属すると判定されたという[23]

成分

子実体には、非タンパクアミノ酸の一種であるシス-3-アミノ-L-プロリンが遊離状態で含まれている[24]。この成分は、本種と同属に置かれるトガリアミガサタケやアシブトアミガサタケの子実体からも検出され、これらのキノコの呈味成分の一つであると推定されている[24]が、アミガサタケ属のキノコ以外からは見出された例がない[25]。なお、このアミノ酸は、アミガサタケの培養菌糸からも検出されている[25]

食品のうま味成分の構成要素の一つとなり得る呈味性ヌクレオチドとしてはグアニル酸アデニル酸とが検出されており、特に後者の割合が多いという。一方で、イノシン酸シチジル酸ウリジル酸は見出されていない[26]

脂肪酸としては、その80パーセント前後はリノール酸で占められ、他にパルミチン酸(10パーセント前後)やオレイン酸(5パーセント前後)を含んでいる[26][27]

食・毒性

英語でmorel (モレル)、フランス語でmorille (モリーユ)、 イタリア語で"morchetta" (モルケッタ)、ドイツ語で"Speise" (シュパイゼ)、中国語で「羊肚菌」(ヤンドゥージュン)と呼ばれ、食用キノコとして珍重される。

食用キノコの一つであるが、子実体には微量のヒドラジンを含むため、生食することは避けるべきであるとされる[28]。また、調理されたものであっても、アルコールとともに食べると酔いを深め、悪心や嘔吐の原因になるともいわれている[29]。きちんと加熱調理し、かつアルコールを同時に摂取せずに食べても、大量に摂食した場合に眩暈・ふらつき、縮瞳などを起こした例が報告されている[30]。ただし、これらの症状は、特別な治療を施さなくても次第に寛解するとされている。また、ドイツミュンヘン近郊で、アミガサタケを大量に食べて体調に異変をきたした例では、患者を診察した医師自身が、診察・処置の終了直後に、患者が採取したのと同一の場所でアミガサタケを集めて試食したが、症状は発現しなかったという[30]

廃棄されたリンゴ園の跡に発生した場合、農薬の成分として土壌に撒布されたヒ酸鉛に含まれるヒ素が子実体に蓄積され、これを食用とした場合に健康に好ましくない影響を与える可能性も指摘されている[31]。アミガサタケは全て食用になると思われがちだが、近縁のフカアミガサタケについては食毒不明とする文献がある。

調理

生鮮品を用いる場合もあるが、乾燥品をひたひたに浸る程度の水で戻した上で調理されることが多い。戻し汁にもよい風味が滲出しているので、一度漉して砂粒などを除いた後、調理に用いる[32]

生クリームバターなどとの相性がよいとされ、グラタンシチューなどにしばしば使われる[33]ピッツァフライスープオムレツなどの素材としてもよく使われる[34][35]

元々は日本ではほとんど食用にされた歴史がないキノコであるが、辛子和えや炒め物などの和風料理に用いられることもある[36][34]

中国では、排骨湯や鶏湯などのスープにしたり、中の空洞に肉を詰めて調理されることが多い[37]

栽培

特に欧米では高級食材として珍重されるため、人工栽培の方法については昔から様々な模索がなされていたが、ブラックモレル(M. importuna)に関しては2010年代以降に商業的に安定した栽培法が確立されつつある。中華人民共和国では雲南省などで盛んに栽培されており、主におがくず小麦粉を混ぜた「栄養袋」(ENB)をに設置して菌床とする人工栽培が行われている。2018年から2020年にかけて四川省重慶市で栽培面積が急激に拡大しているものの、供給量が需要量の増加に追いついておらず、1kgあたり460元程度と非常に高価となっている[38]zh:中国科学院昆明植物研究所は2007年からブラックモレルの栽培に関する研究を開始し、2021年に栽培床による工場栽培を実現した。この栽培方法では、気候に左右されず通年収穫が可能となり、1m3の収穫量は畑栽培の0.5kg以下から2kgに増加する見込み[39]。また、同年にデンマークのプロジェクトチームがブラックモレル (Morchella sp.)の安定した屋内通年栽培の技術を確立したことを発表した[40]。この栽培方法では、1年間に1m3あたり約10kgの収穫が見込め、品質も野生菌に勝ると評価された。今後はこの技術を商業化することが課題とされている。 イエローモレル(M. esculentaなど)の人工栽培は未だ成功していない。

日本では岐阜県のメーカーが2018年にハウス栽培による人工栽培および商用生産に初めて成功し、2020年には整備された竹林での林地栽培による試験生産に成功した[41]。竹チップなどを用いた栄養材を培地として竹林に設置したもので、日本の竹林でアミガサタケの生産が可能であることが実証されたことから、全国にある放置竹林を用いてアミガサタケを安価に量産するビジネスモデルが提案されている。

岩手県では雲南省と友好交流協定を締結して2016年より栽培技術を導入し、国内産の菌株を用いて2021年に岩手県林業技術センターでの屋外人工栽培に成功した[42]。夏は暑過ぎず、冬は温暖な岩手県沿岸部の気候が栽培に適しているとのこと。

和名・学名・方言名・英名

岩崎常正文政11年(1829年)に著した植物図鑑である『本草図譜』第七巻に、本種とおぼしきものが図説され、和名「あみがさたけ」、漢名「仙人帽」と記されている[19]。ただし、仙人帽の漢名は、天保6年(1835年)に坂本浩然が著した『菌譜』においてはキヌガサタケに当てられている。この和名は「編笠蕈」の意[43]で、多数のくぼみを備えるとともに褐色系の色調をあらわす頭部を深編み笠にみたてたものと考えられる。

属名のMorchella は、ドイツ語名の Morchel をラテン語化したものである。種小名esculenta はラテン語で「食用になる」の意である[17][43]

日本では食用としてはあまり重視されてこず、方言名は少ない。秋田県下で「うど」「がらんど」「しわがら」、また青森県長野県などで「みそっこ」などと呼んでいるに過ぎない[44]

古く明治時代の初頭には、東京の四谷付近で「カナメゾツネ」という名が当てられていたが、その語源については明らかになっていない[43]

英語圏ではモレル(Morel)の呼称で親しまれるが、また Dryland-Fish あるいはhickory-Chickenと称されることもある。ドイツ語ではMorchel(モルヒェル)、フランス語ではmorille(モリーユ)、イタリア語では学名と同じmorchella(モルケッラ)またはspugnola(スプニョーラ)である。

ミネソタ州におけるアミガサタケ

アメリカ合衆国ミネソタ州においては、アミガサタケが「州のきのこ」として州法に規定されている[45]。また、ミネソタ州のみならず周辺の各州(アイオワ州イリノイ州ウィスコンシン州など)では、毎年5月にアミガサタケの採取コンテストが開催される。参加者が、制限時間(通常は2時間)以内に自力で野外から採取したアミガサタケの本数を競うものであるという[46][47]

脚注

  1. ^ 「希少な高級品-アミガサダケ 日本初 人工栽培」日本農業新聞』2020年6月8日(1面)2020年6月10日閲覧
  2. ^ a b 宇田川俊一, 椿啓介, 堀江義一, 三浦宏一郎, 箕浦久兵衛, 山崎幹夫, 横山竜夫, 渡邊昌平「椿啓介、1978. Morchella esculenta Pers. ex St.-Amans. in'」『菌類図鑑 上』講談社、1978年。ISBN 978-4-06129-962-7NCID BN00567881https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001366631-00 
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  6. ^ 辻山彰一「アミガサタケ類の木材腐朽力について」『日本菌学会大会講演要旨集』日本菌学会第52回大会セッションID: P093、日本菌学会、2008年、127頁、doi:10.11556/msj7abst.52.0.127.0NAID 130007005173 
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関連項目

外部リンク