KuToo

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本来の表記は「#KuToo」です。この記事に付けられた題名は技術的な制限または記事名の制約により不正確なものとなっています。

#KuToo(クートゥー[1])は、日本の職場で女性がハイヒールおよびパンプスの着用を義務づけられていることに抗議する社会運動である。MeTooをもじって「靴」と「苦痛」を掛け合わせた造語である[2]

概要[編集]

ハイヒール
パンプス

2019年1月24日、石川優実Twitterにおいて、職場でハイヒールの着用を女性に義務づけることは許容されるべきではない、と述べた[3]。この発言のリツイート回数が数千回に及び、また、ほかの女性たちから足や背中の痛みを訴えるコメントが寄せられる様子を見た石川は、#KuTooの運動を始めた[3]。石川は、特定の種類の靴を着用することを女性に義務づけている企業について、これを禁止するよう厚生労働省に求めるための署名をChange.orgで募った[3]

この運動をきっかけとして、多くの女性たちが、足にできた痣や肉刺の写真を投稿したり、不快感や苦痛を詳しく述べたりするようになっている[3]。しかし、その一方で、ハイヒールの着用を女性たちに義務づけることは革靴の着用を男性たちに義務づけることと同じである、といった反発の声も上がっている[3]

つま先の細い靴は親指の付け根を圧迫し変形させるが、ハイヒールはそこにかかる力が増して外反母趾を悪化させる働きがある[4]。また加齢により足のアーチが崩れ、50歳前後で加齢とともに足の幅が広くなる[5] ため年齢により着用の選択肢が狭まるうえハイヒール着用による痛みが増加する可能性がある。

職場でハイヒールの着用を強制されることについて、石川は、性別間の不平等と健康上のリスクという2つの問題が存在する、と述べている[6]。なお、弁護士ドットコムLINE公式アカウントでのアンケートでは、職場でのパンプス強制については、男性上司よりも女性上司の方が厳しいという声があったことも報道されている[7]

2019年6月3日、石川は、職場で女性にハイヒールの着用を強制することを禁止するよう求める要望書を、18,856人の署名とともに厚生労働省に提出した[8]。5日の厚生労働委員会[9] において、厚生労働大臣根本匠は、「例えば労働安全衛生の観点からは、腰痛や転倒事故につながらないよう服装や靴に配慮することは重要であって、各事業場の実情や作業に応じた対応が講じられるべきであると考えております。」と、雇用者の安全配慮義務がハイヒールやパンプスの着用にも及ぶとした上で、「女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務づける、これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲か、この辺なんだろうと思います、それぞれの業務の特性がありますから。」と述べた。この答弁は、女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務づけることについては、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲であるかどうかが是非の判断の基準になるのではないか(”この辺なんだろう”)という趣旨の答弁であり、雇用者の定める身だしなみ規定についても合理性が必要であるとする判例{郵政事業(身だしなみ基準)事件)とほぼ同趣旨の答弁である[10]。また、パワハラの観点に関しては「当該指示が社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか、これがポイントだと思います。そこでパワハラに当たるかどうかということだろうと思います。一方で、例えば足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合などはパワハラに該当し得ると考えております。」と、パンプス・ヒール着用にパワハラに関する判例と同等の基準[11] が適用されることを述べた。これらの答弁について、ハイヒール・パンプス着用の義務付けに対して「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」であると大臣が答弁したとの報道がされ、多数のSNSユーザーが根本大臣を批判を投稿することとなり、#kutooは更に知名度を上げていった[12][13]。更に海外でも、業務の上で必要かつ適切であればハイヒールの着用を強制することは社会的に受け入れられる、と発言したと報じられた[13][14]厚生労働副大臣高階恵美子は、感想として「強制されるものではないのだろうというふうに思います」と述べた[15]

『Business Insider Japan』は、職場での服装規定に関するアンケート調査を実施した[16]。職場や就職活動でハイヒールの着用を強制された、もしくは、そのような状況を見たことがある、と回答した割合は6割を超えた[16]

2019年11月、2019ユーキャン新語・流行語大賞ノミネート30語に選出される[17]

2020年3月3日 参議院予算委員会で安倍首相は「職場における女性に対するパンプスの着用の強制をなくすよう求めるクー・トゥー運動が行われていることは、これは承知をしております。職場での服装に関しては、単なる苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に強いることは許されないのは、これは当然のこと」とした上で、「職場の服装に関するルールに関しては、まずはそれぞれの職場において関係法令の趣旨も踏まえつつ、労使でよく話し合っていただくことが重要である」と答弁した。加藤勝信大臣は「男性は靴は自由だ、女性はこうだというのは、これはやはり、男女雇用というんですか、均等というんでしょうか、そういった立場からも私は正しくないという対応だというふうには思います。」と答弁した。[18]

日本国外での歴史[編集]

16世紀のペルシア帝国では、騎兵隊の男性兵士たちがハイヒールを着用していた[19]。一方、18世紀のヨーロッパでは、男性と女性の両方がハイヒールを着用していた[19]フランス革命により、ハイヒールを履いたマリー・アントワネットがギロチンで処刑された後、ハイヒールは時代遅れのファッションとなった[19]。その後、ハイヒールの流行は回帰したが、20世紀には、もっぱら「女性の靴」であると考えられた[19]。同時に、ハイヒールは以前よりも高く、細くなり、歩きづらい靴となっていった[19]。1970年代や1980年代には、ハイヒールは女性の勤務用の服装として重要な部分を占めるものであると認識されていた[19]

2015年のカンヌ国際映画祭において、ハイヒールを履いていなかった女性たちが入場を拒否されるという事態が発生した[20]。その後、映画祭側は謝罪した[20]

2016年、ニコラ・ソープ英語版プライスウォーターハウスクーパースに受付係として採用されたが、勤務初日にハイヒールを履いていなかったことから帰宅を命じられた[20]。彼女は、職場でハイヒールの着用を義務づけられていることに抗議する署名を募り、約150,000人が賛同した[20]

2017年、フィリピンブリティッシュ・コロンビア州において、職場で女性にハイヒールの着用を強制することを禁止する法律が立法された[21]

災害時には性差による文化で不利益が生まれることがある。コロンビア大学の調査によると、2001年のアメリカテロ事件9.11では多くの女性が避難途中でハイヒールを脱いで裸足で帰宅したため、避難中にけがした女性は男性の二倍となった。生存者はビル階段に残された多数のハイヒールにつまづいたと報告している[22]

日本航空(JAL)が2020年4月から、女性客室乗務員の靴の着用基準を変更した[23]。また2020年の就航を目指すJAL傘下のLCC「ZIPAIR Tokyo(ジップエア・トーキョー)」では機能性を重視し、客室乗務員や地上職員、操縦士のいずれもスニーカーを着用することになった[24]全日空も、女性の客室乗務員や地上スタッフが勤務中に履く靴に関し、ヒールがあるパンプスタイプ以外も認めるよう社内規定を改定し、グループ会社も含め2020年5月より適用を開始した[25]

国土交通省では、飛行機の非常脱出時にハイヒールを履いたままの脱出について、自身の脱出の遅れや他の旅客の脱出の妨げになるほか自身や他の旅客が負傷したり、鋭利なかかとが脱出スライドを損傷させる原因となりうることから脱出スライドが損傷し使用できなくなるおそれがあることを指摘している。このため乗務員の指示に従って、ハイヒールを脱いで脱出するように指示している[26]。事故時に炎上している、または炎上する可能性のある飛行機から適切に乗客と自身を避難させることが客室乗務員の使命であるが、脱出や全力疾走に適さない規定靴の着用がケガや死亡の可能性を高める危険性がある。機内においても、客室乗務員は強い揺れによる転倒で骨折をする事故が起こっている[27][28]。なお、旅客機の緊急脱出訓練では、客室乗務員は通常の制服とは異なるつなぎの作業服とスニーカーを着用し、実際の非常時の想定とは異なる可動性に優れた服装で訓練を行っている[29]

脚注[編集]

  1. ^ 職場のパンプス強制やめて 厚労省に署名1万8千人分”. 北海道新聞 (2019年6月3日). 2019年6月25日閲覧。
  2. ^ Thousands back Japan high heels campaign”. BBC News (2019年6月3日). 2019年6月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e Chen, Aria Hangyu (2019年3月12日). “Japan's #KuToo Movement Aims to Stop Employers From Requiring Women to Wear Heels”. Time. 2019年6月6日閲覧。
  4. ^ 「外反母趾」”. 公益財団法人日本整形外科学会 (2019年11月6日). 2020年4月11日閲覧。
  5. ^ 靴のサイズが「若い頃より大きくなったら」要注意 50歳で足形は急変する(後編)”. 現代 (2019年11月3日). 2020年4月11日閲覧。
  6. ^ Parker, Maggie (2019年6月20日). “Forcing Women to Wear High Heels to Work Is Gender Discrimination, Says Founder of Japan's #KuToo Movement”. Parade. 2019年6月25日閲覧。
  7. ^ 職場のヒール強制、集まる疑問 「礼儀だから」「足に良さそうな靴はNG」” (2019年6月17日). 2020年5月23日閲覧。
  8. ^ Group files petition to ban dress codes in Japan requiring women to wear high heels at work”. The Japan Times (2019年6月3日). 2019年6月6日閲覧。
  9. ^ 第198回国会 衆議院厚生労働委員会 第22号 令和元年6月5日” (2019年6月3日). 2020年5月23日閲覧。
  10. ^ 職場でのパンプス・ヒールの強制問題” (2019-06-013). 2020年5月23日閲覧。
  11. ^ パワーハラスメントの定義について平成30年10月17日 厚生労働省雇用環境・均等局
  12. ^ ジュリア・ロバーツから #KuToo まで。大臣発言が、海外メディアで批判されるわけ” (2019年6月6日). 2020年5月23日閲覧。
  13. ^ a b Japanese official calls high-heel mandates for women at work "necessary and appropriate," dismissing "KuToo" movement”. CBS News (2019年6月6日). 2019年6月6日閲覧。
  14. ^ パンプス強制、根本答弁は「容認する発言ではない」 厚労省が見解示す” (2019年6月6日). 2020年5月23日閲覧。
  15. ^ Labor minister opposes banning dress codes in Japan that force women to wear high heels”. The Japan Times (2019年6月5日). 2019年6月6日閲覧。
  16. ^ a b Over 60% of women see rules on heels enforced at work, study finds”. The Japan Times (2019年6月12日). 2019年6月25日閲覧。
  17. ^ “『新語・流行語大賞』ノミネート30語発表、「#Kutoo」「上級国民」「セクシー発言」も”. AbemaTIMES. (2019年11月6日). https://times.abema.tv/posts/7027074 2019年11月6日閲覧。 
  18. ^ 201回国会 参議院 予算委員会 第5号 令和2年3月3日” (2020年3月3日). 2020年5月24日閲覧。
  19. ^ a b c d e f Brennan, Summer (2019年6月6日). “Listen to Japan's women: high heels need kicking out of the workplace”. The Guardian. 2019年6月6日閲覧。
  20. ^ a b c d Weaver, Matthew (2019年6月3日). “#KuToo: Japanese women submit anti-high heels petition”. The Guardian. 2019年6月6日閲覧。
  21. ^ Ueno, Hisako; Victor, Daniel (2019年6月4日). “Japanese Women Want a Law Against Mandatory Heels at Work”. The New York Times. 2019年6月6日閲覧。
  22. ^ アマンダ・リプリー『生き残る判断・生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか』筑摩書房、2019年10月。
  23. ^ 【#KuToo】JAL、4月から客室乗務員のパンプス規定を撤廃 乗務員の健康や作業性に配慮”.  キャリコネニュース (2020年3月23日). 2020年4月11日閲覧。
  24. ^ CAはヒール強制?高さまで決められてるの? 航空会社に聞いてみた”. buzzfeed News  (2019年7月2日). 2020年4月11日閲覧。
  25. ^ 全日空もヒールなしOK CAの靴規定見直し”. 共同通信  (2020年5月8日). 2020年5月8日閲覧。
  26. ^ 非常脱出時における適切な対応のお願い”.  国道交通省. 2020年4月11日閲覧。
  27. ^ ANAウイングス、客室乗務員が骨折 愛媛上空で急な揺れ、国交省が航空事故認定|date=2020-4-13”. 2020年4月19日閲覧。
  28. ^ これまでのトラブルの概要とその安全対策 2018年度”.  japan air lines. 2020年4月19日閲覧。
  29. ^ 緊急脱出や救命ボート、普段は目にしない非常時用の食糧試食などJALの最新の訓練設備を体験レポ|2017年03月12日”. 2020年5月9日閲覧。

参考文献[編集]

  • 石川優実『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』現代書館、2019年11月。ISBN 978-4768458686

関連項目[編集]