巻き爪

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巻き爪。

巻き爪(まきづめ、まきつめ、彎曲爪)とは、爪甲の先端が内側に巻いたように変形し爪床を挟んだ状態[1]。爪には自ずから巻く力があり、歩くことで逆に巻きを広げる力がかかりこの均衡が崩れた結果であり、狭い靴や過体重など生活習慣も原因となることがある[2]。従来は手術の治療が一般的であったが21世紀には、矯正器具による保存的治療法も増えた[3]

陥入爪は似た状態だが異なり、爪甲側縁が周囲の軟部組織に食い込み疼痛、炎症、肉芽形成、二次感染を引き起こした状態[1]。ただ陥入爪と巻き爪の主な原因には共通する点があり並存することも多い。

症状[編集]

巻き爪の多くは母趾爪甲(足の親指の爪)に生じる[1]。爪の彎曲が大きいと歩行時や運動時に物理的圧迫による疼痛を引き起こすことがある[1]。ただし爪が強く湾曲していても、痛みや炎症がなければ治療の必要ない[4]

原因[編集]

巻き爪や陥入爪の原因には、物理的な外力(幅の狭い靴やハイヒールによる足趾への圧力、加齢や下肢麻痺に伴う歩行荷重の減少に伴う爪の支持組織の萎縮)、爪の切り方(深爪)、足の形(外反母趾)などである[1]。従来は、窮屈な靴や過体重といった外からの圧力が原因とされてきたが、骨折のため歩行しない人でも巻き爪が見られる[2]。爪には自ら巻く力がかかっており、歩行時にこれを逆に広げる力がかかるため、歩かないことで巻いてくることが考えられる[2]。歩行時に爪を広げる力が働くのは、足指を地面に踏み込むと、地面から抗力を受け、その抗力が爪を広げるからである。[5]また一定以上に爪が巻いてくると、歩行時の圧力も巻きを強めるように働いてしまう[2]

抗がん剤(分子標的治療薬等)の副作用が原因で、多趾に巻き爪や陥入爪が見られる場合もある[1]。遺伝が原因ですべての足の指の爪が巻いていることがある[2]

過度な爪切りにより変形が悪化することが多いため、過度な爪切りを控えるべきとされる。ただし食い込んだ箇所の化膿、炎症に対しては対症療法(爪切除、デブリードマン)は行われるべきである。

治療[編集]

治療は従来は外科的な処置(手術)が一般的だったが、1999年に町田英一らがワイヤーを使った方法を紹介し(対応できる病院では)保存的な爪矯正法が選択されることも増えた[3]。保存的方法では難しい場合に手術が選択されることもある[3]。2015年のガイドラインでは、最初にワイヤーなど保存的治療が優先されるが、質の高い研究による決定ではないため今後のランダム化比較試験などの研究が望まれるとされている[6]

矯正[編集]

ワイヤーや金属素材による巻き爪矯正の場合では、手術に比べ疼痛が少ない。自由診療となる[7]

下記以外にも、爪の両端にひっかける[8]、先端にとりつけるタイプの爪矯正器具が2012年に考案されており、1週間以内に痛みがなくなった例が多い[9]。自分で買うこともでき、10-15分の足湯をして爪を軟化させながら行う[8]

また器具を取り付け、同様に湯で軟化させる巻き爪ロボがあり、一度で爪の巻きをだいぶ緩和するが、爪白癬など諸条件では爪が割れることがある[10]

ワイヤー式矯正[編集]

ワイヤー式矯正の種類も数種類あり、矯正器具の調整が必要なため通院と改善までの期間が必要になる。

超弾性ワイヤー法では爪の先端に穴をあけワイヤーを通すことで爪が広がるようにし[2]、ほぼすべての種類の巻き爪に対応できる[4]。多くは6か月から2年で再矯正を望む[4]

3TH-VHO方式では、ワイヤーを爪の両端に引っ掛け、中央でワイヤーを巻き上げて矯正する[2]。VHOでは炎症がない場合、ほぼ万能に対応できる[11]。爪の根元に対応しやすいが、爪の先端や厚い爪では効果が薄い[11]。超弾性ワイヤー法と3TH-VHO方式は併用可能である[2]

無理に強い力を加えて短期間で症状を改善させようとすると、爪が割れたり爪根に疼痛を発生するなど悪影響を及ぼしてしまう点、未対応の症状が多い点、巻き爪の再発および再発の際の特殊変形の発生、矯正器具装着中の外観上の問題等のデメリットもある。

プレート式矯正[編集]

現在では形状記憶素材を用いた疼痛と外観上の問題点を改善させた巻き爪矯正法もある。外観上の問題点を改善させた矯正方法であり病院をはじめ治療院や整骨院・サロンなどで取り入れている所も増えている。

プレート式矯正においても種類が数種類ある。施術所も、単にプレートを貼付する施術所から治療や再発予防に力を入れている施術所、独自の術法を用いる等により様々な症状に対応できる施術所まで様々である。

手術[編集]

手術による治療では、激しい疼痛を伴う場合が多く、再発の確率も決して少なくはない。保険適応となり自己負担が軽減される。矯正等の保存療法に比べ、通院回数が少なく済む場合が多い。痛みを避けたい場合、外科的処置ではなく矯正の方が無難ではある。

爪幅が狭くなる、術後に痛みがある[3]。爪幅を狭くすると以前より圧力がかかり、再び巻き始めたり、爪が厚くなることがあり高度な変形をきたすことがある[2]

また出血・化膿している場合は、手術はしないまでも最低限の外科的な処置は必要である。その場合は医師がいる施設での治療が必要となる。

その他[編集]

爪がある程度広がっていれば歩行が爪を広げる圧力となり、ほかに過体重やハイヒールといった原因の是正が考えられる[2]

陥入爪を含む爪変形は、白癬菌の感染による爪水虫が原因となる場合があり、その際は先に爪水虫に対する治療を行う。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 月刊「ナース専科」2017年1月号、ナース専科編集部、45-45頁
  2. ^ a b c d e f g h i j 菅谷文人、梶川明義、相原正記ほか「巻き爪の発生メカニズムに則した治療方針とは」 (pdf)第42号、2014年。 症例写真あり。
  3. ^ a b c d 本多孝之、柏克彦、小林誠一郎「陥入爪・巻き爪の治療 【陥入爪では保存的治療の選択肢が増加,巻き爪変形では物理的爪矯正法が一般化】」『週刊日本医事新報』第4785号、2016年1月9日。
  4. ^ a b c 青木文彦「巻き爪 ・ 陥入爪に対して保存的治療を選択する理由」『創傷』第3巻第4号、2012年、 174-180頁、 doi:10.11310/jsswc.3.174NAID 130004552981 症例写真あり。
  5. ^ 今倉 章 『靴が人を不健康にする』 株式会社希望 2019年 ISBN 9784909001030
  6. ^ 日本形成外科学会 2015.
  7. ^ 巻き爪の治療”. 日本皮膚科学会. 2018年12月27日閲覧。
  8. ^ a b 米澤幸平、松原秀憲、米澤嘉朗「巻き爪矯正用具「ツメフラ」と重度巻き爪の予備矯正用具「リフター」による巻き爪矯正の追試経験」『中部日本整形外科災害外科学会雑誌』第61巻第1号、2018年、 115-116頁、 doi:10.11359/chubu.2018.115NAID 130006742448
  9. ^ 高山かおる「陥入爪・巻き爪の非侵襲的治療」『形成外科』第60巻第8号、2017年8月、 941-953頁、 NAID 40021281728
  10. ^ 堀口真弓、大澤葉子、山浦小百合、野溝明弘「透析時間を利用した巻き爪ロボによる巻き爪矯正を試みて」『日本フットケア学会雑誌』第16巻第4号、2018年、 208-212頁、 doi:10.18970/footcare.69
  11. ^ a b 河合修三「VHOの使用経験」『皮膚の科学』第5巻第6号、2006年、 466-468頁、 doi:10.11340/skinresearch.5.6_466NAID 130005404685

参考文献[編集]