CASSHERN

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CASSHERN
監督 紀里谷和明
脚本 紀里谷和明
菅正太郎
佐藤大
製作 若林利明
出演者 伊勢谷友介
麻生久美子
唐沢寿明
寺尾聰
樋口可南子
音楽 鷺巣詩郎
主題歌 宇多田ヒカル
誰かの願いが叶うころ
撮影 紀里谷和明
森下彰三
編集 紀里谷和明
配給 松竹
公開 日本の旗 2004年4月24日
オランダの旗 2005年2月10日
イギリスの旗 2005年2月25日
大韓民国の旗 2005年7月7日
フランスの旗 2005年10月26日
イタリアの旗 2006年7月14日
上映時間 141分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 6億円
興行収入 15.3億円[1]
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CASSHERN』(キャシャーン)は、2004年公開の日本映画1973年から1974年フジテレビ系列で放送された、タツノコプロによるテレビアニメ新造人間キャシャーン』を原作とする実写映画である。

概要[編集]

映像作家・紀里谷和明の商業映画監督デビュー作品。主題歌を妻(当時)の宇多田ヒカルが担当して話題になった[2]。また、豪華なキャスト陣も注目された。

主要人物の名前や家族構成、主人公のスーツやロボットのデザインイメージを原作から継承しているが、設定変更も多く、ほぼ総ての登場人物が凄惨な死を遂げる悲劇翻案されている。理由について紀里谷は「何故戦いはなくならないのかを表現したい」[3]ハムレットにインスパイアを受けた」[4]「見た後に、その人が何かを考える作品」[要出典]と説明している。 美術面ではCGマット画によるロシア構成主義様式の都市景観やスチームパンクな移動機械群が登場する。舞台劇を観ているような立ち位置、台詞、構図のシーンと、細かいカットに分断され劇画的な構図変化を強調する殺陣・アクションシーンとが混在する。照明・色彩・質感は全編にわたり加工されている。本作の荒廃した世界観は2008年に製作・放映されたテレビアニメキャシャーン Sins』に受け継がれた。

撮影[編集]

ほぼ全編スタジオ撮影で[注釈 1]グリーンバック合成が多用された[2]助監督は何人も交代している[5][注釈 2]宮迫博之は、水槽からの初登場のシーンで紀里谷からの「目を開けたまま出てきて欲しい」という要求に応えて眼病を患った[6][注釈 3]。老医師役を演じた三橋達也は本作が遺作となった。

ストーリー[編集]

現実とは異なる歴史を歩んだ世界。超大国大亜細亜連邦共和国ヨーロッパ連合との50年間の戦争に勝利したが、国内は環境破壊により公害病が蔓延していた。また人種階級差別を是とする政治体制へ反発する内紛も続いていた。

遺伝子工学の第一人者の東光太郎(以下「東博士」と表記)は、画期的な再生医療を可能とする新理論新造細胞を学会で発表し、実用化のため理解と支援を広く求めた。学会の反応は冷たかったが、国家元首の上条将軍は、貿易商社「日興ハイラル」の社員内藤を通じて支援を申し出る。難病を患う妻ミドリのために、一刻も早く研究を完成させたかった東博士は申し出を受ける。

東博士の一人息子鉄也は、長年研究のみに没頭し、家庭を顧みない父への反発から従軍を決意する。鉄也の出兵の前日、東一家は鉄也の婚約者上月ルナとその父の上月竜三(以下「上月博士」と表記)を招いて記念撮影を行う。東博士は、ルナや病の母のため出兵を思い留まるよう鉄也を促すが口論となる。東博士は撮影を中座して仕事に戻ってしまう。

一年後、鉄也はテロ激戦区とされるユーラシア第七管区にて上官に強要されて無抵抗の女性住民を撃ち殺したことから心に深い傷を負う。そのしばらく後、自分達の攻撃によって死亡した女性が抱きしめていた赤子を抱き上げようとして、同じ女性が隠し持っていた手榴弾を起爆させ命を落とす。

葬儀のため鉄也の遺体が陸軍本部に届く直前、稲妻状の巨大な構造物が空から落下し、本部棟内の東博士の研究施設を貫く。すると新造細胞培養槽内の生体部品がひとりでに結合を始め、無数の人の姿(以下「蘇生体」と表記)となって蘇り始める。内藤は蘇生体を破壊するよう軍に命令し、多くの蘇生体は虐殺される。

奇跡的に逃げ延びた蘇生体のリーダーブライキング・ボス(以下「ブライ」と表記)と仲間のサグレー[注釈 4]バラシンアクボーンは、人質のミドリを連れて逃避行を続け、旅の果てにかつてのヨーロッパ連合軍の要塞と大量のロボット兵器群を発見する。 ブライらは要塞に居を構え、仲間の命を理不尽に奪った人間に復讐を誓い、自らを新造人間と名乗り始める。一方、東博士が鉄也の遺体を培養槽に浸すと鉄也も蘇生する。東博士は居合わせた上月博士に鉄也の身柄を託す。鉄也には激しい筋肉の増殖によって皮膚が割ける異変が起きていたが、上月博士は新開発の戦闘用ボディスーツを鉄也に着せて身体を保護した。

新造人間は全人類殲滅を布告し、ロボット兵器群による侵攻は激しさを増していたが、上条将軍等は新造細胞開発の遅滞に焦れていた。将軍の息子上条ミキオ中佐は国難よりも自身の延命に固執している父達を見限り、側近一名を軍刀で斬り殺し、その他を拘束してクーデターを起こす。

設定[編集]

新造細胞
東博士の研究テーマ。ある少数民族の体内で見つかった特殊細胞を適切に操作培養することで、万人に移植可能な人体臓器を自由自在に作り出すことが出来るというもの。『ES細胞』をヒントに設定された。この細胞を用いることで人間のスペアパーツを作り出し、患部に移植または交換することで完全な治療が可能となる。[7]
研究所の新造細胞培養槽に稲妻が落ちて以後、想定外の機能を示すようになる。
新造人間
新造細胞培養槽から生まれた「ブライキング・ボス」が自らの種に付けた呼称。人間と変わらない知性と容姿を持つが、超人的身体能力を有している。それ故、肉体に負荷を与える結果となり、寿命は非常に短い。だが、ブライキング・ボスたち新造人間は放浪の末にかつてのヨーロッパ連合の要塞を発見し、その研究所に残されていた薬品を独学で解読して調合・投与することによって克服した。
鉄也の場合、蘇生後に異形の稲妻のエネルギーにより筋肉が異常に発達し、そのままでは皮膚が耐え切れず破裂してしまう状態にあった。だが、上月博士が試作の高機能ボディアーマーを着装させ、外から抑え込むことで解決することが出来た。
大亜細亜連邦共和国
ユーラシア大陸ほぼ全域を支配する巨大な多民族国家。将軍の「上条又一郎」がカリスマ的政治実権を握り、民族優位主義政策を採っている。半世紀にも及ぶ戦争と、化学物質や細菌兵器による環境汚染により国土は広く荒廃し、一部の国民には異常な突然変異が発生している。
民族優位主義政策
出自民族により厳格に社会地位を分ける階級制度。下層階級出身者には手首を一周する刺青がある。
ユーラシア第七管区
大亜細亜連邦の地域のひとつ。環境汚染の被害を強く受けている。鉄也とその部隊はテロリスト殲滅の命令を受けてこの地に派兵され、虐殺を行った。異形の稲妻が落ちた後、新造細胞の実験体である人体確保のため再び大亜細亜連邦軍に襲撃されることとなり、同時に科学者・技術者拉致のため赴いた新造人間も加わり、鉄也と三つ巴乱戦の場と化す。
ユーラシア第七管区住民
大亜細亜連邦共和国内でテロにより抵抗を続けている少数民族[注釈 5]。容姿は現実世界の日本人に酷似しており、生活水準は低く貧困層にある。過去、戦乱に巻き込まれたことから、外部の人間に対して異常なまでに警戒心が強い。物語の終盤において、実は地球人類の全ての始祖となる『オリジナル・ヒューマン』であったことが明かされる。新造細胞の実験のため乱獲されたのはこれが理由であった。
キャシャーン(CASSHERN)
第七管区の民族が信仰する守り神。神像は両手に雷を握り背中に羽根を持った青年の姿[注釈 6]。逃避行中に汚染地域を通ったため発病したルナと鉄也を第七管区の老医師が助けるが、その老医師から「この村を救えるか?」と問われ、鉄也はキャシャーンを名乗って再襲撃した大亜細亜連邦軍や新造人間の「バラシン」と戦う。
高機能ボディアーマー
兵装学者である上月博士が歩兵用に開発していた外骨格スーツ。劇中で登場するのは未完成のプロトタイプのみで、本来はヘルメットを含み完全体となる[要出典][注釈 7]。あらゆる外圧から兵士を守り、迅速に攻撃が出来るように設計されている。鉄也は復活後このスーツによって異常増殖により自己分裂するはずだった筋肉が保持され、ブライキング・ボスを除く新造人間と互角に渡り合える身体能力を得ることが出来た。未完成ながら爆風などの衝撃に耐えられるほどの強度を持ち、腰部に装着しているスラスターで飛行が可能であるほか、スラスターの先端部に装備しているワイヤー付きのニードルハーケンで攻撃できる。また、マスク部分には本来は戦意高揚のために開発したモルヒネ散布口があり、この薬物効果によりある程度の痛覚を軽減することが可能。
造形を担当した百武朋は、紀里谷からは「ヒロインが抱きしめたくなるような美しいスーツ」と注文されたと述べている[8]
爆発ロボ
新造人間の要塞に格納されている嘗てのヨーロッパ連合軍が製造した最終兵器[要出典]。水滴型の大型爆弾の本体に、二本の脚と、右側面より前方に筒状のロケットランチャーを突き出した形状で、全高76m[9]移動速度は戦車の後進速度を超える[要出典]。右肩部にアナログ時計型のカウントダウンタイマーがあり、時針と分針が対方向から12時で重なった時に信管が作動する。
稲妻
陸軍本部に突如として落ちてきた稲妻形状の巨大構造物。幾何学模様の稲光を発し、落雷後は金属とも岩石ともつかない物質を成して天を突く高さで固まる。この稲妻の持つ未知なるエネルギーにより培養槽の細胞が再び人体を形成し、新造人間を誕生させることとなった。培養槽には以後も稲妻のエネルギーが残留し、死が存在しない特異点となっている。[要出典]
ラストシーンにて、この稲妻の正体が異星人の魂と願いの集合体であったという描写が見られる。[要出典]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

テーマソング・挿入歌[編集]

キャッチコピー[編集]

  • キャシャーンがやらねば誰がやる
    • 原作テレビアニメのオープニングナレーションからの引用(ただし全文ではない)。予告編など広告で用いられた。原作のナレーションは納谷悟郎だが、本作予告編ではブライキング・ボス役の唐沢寿明が語った(納谷は本作でも冒頭のナレーションを担当しているが、この口上は含まれていない)。本フレーズは後に製作された『キャシャーン Sins』のCMでも使われている。
  • この地に生まれた、愛する人々に捧ぐ。


TV放送[編集]

地上波テレビでは2006年2月12日に『日曜洋画劇場』で本編を約120分にカットして放送された[注釈 11]

2013年3月26日にはニコニコチャンネルで「人類vsコンピュータ映画特集」の一作として放送された。

海外展開[編集]

北米ではドリームワークス2004年11月に配給権を獲得していたが2007年10月16日にDVDとしてリリースした[注釈 12]アジアヨーロッパ各国でも公開されVHS、DVDが発売されている。また、国内に先行して2008年にイタリアで、2010年にドイツでBlu-ray Discがそれぞれ発売されている。

評価[編集]

公開期のマスコミ評価は押しなべて低調だった。特に2005年1月の日本映画のワーストを評価する週刊文春主催の「文春きいちご賞」では『デビルマン』に次ぐワースト2位を受賞した。主に、原作と大幅に異なる世界観や、アクションシーンが強調された予告編と本編のギャップなどが批判の対象となり、監督の身内が主題歌を担当したことについても当時妻であった「宇多田ヒカルの新曲のプロモーション映像だ」などと辛辣なコメントで評された。

一方で製作費6億円[注釈 13]に対し、興行収入約15億3000万円と商業的に成功しており[2]。紀里谷は、2009年の『SPA!』5/5・12合併号のインタビューで「出資者に出資額を130%にして返したんです。なのに世の中的には『コケた』ってことに。」と語った[要ページ番号]

受賞[編集]

関連商品[編集]

ノベライズ[編集]

映像ソフト[編集]

DVD

※ 2015年現在、日本国内ではBlu-ray Discは未発売。

オリジナル・サウンドトラック[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 新造人間の屋内逃亡シーンと戦場シーンの一部は廃工場ロケ
  2. ^ 通常の映画では助監督は2人 - 4人だが、本作では6-7人がクレジットされている。
  3. ^ 本編では、目を閉じたまま出てくるテイクが使用されている。
  4. ^ 名前の由来は原作である旧アニメ版に登場したアンドロイド「サグレー」だが、女性という設定は『キャシャーン(1993年のOVA)』に登場した女性型アンドロイド「サグリア」を継承している。
  5. ^ 上条ミキオの演説によると、彼の母親もこの民族のテロにより死亡したとされる。
  6. ^ 鉄也はブライキング・ボスとの闘い破れ、その後に流れ着いた土地でキャシャーンの像を見たとき、ここが以前に自分が襲撃と虐殺を行った第七管区であることを知り、罪の意識が蘇り動揺する。
  7. ^ ヘルメットは劇中でラックに収められている状態で登場するが、鉄也とサグレーとの戦闘の衝撃により装備されないまま破壊される。
  8. ^ 旧アニメ版および1993年OVA版では「東みどり」。
  9. ^ エキストラとして特別出演。
  10. ^ 納谷は旧アニメ版でもオープニングナレーションを担当していた。
  11. ^ この放送では、本編のラスト数分にエンディングテーマが被っており、登場人物の台詞が聴き取れなくなっている。
  12. ^ これがハリウッド関係者の目に止まり、紀里谷はハリウッドのエージェンシーと契約を果たした。
  13. ^ 元々は予算6000万円ほどのインディーズ規模だったが、結婚後一気に名が知れ渡り、スポンサー数が増え、制作費が増えたという。

出典[編集]

  1. ^ 2004年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  2. ^ a b c 「巻末とじこみ付録 宇宙船 DATA BOOK 2005」、『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ2005年5月1日、 147頁、 雑誌コード:01843-05。
  3. ^ 宇多田も参加?「CASSHERN」記者会見 : 映画ニュース - 映画.com” (2003年9月9日). 2018年6月29日閲覧。
  4. ^ 映画パンフレット「プロダクション・ノート」
  5. ^ 紀里谷和明、バラエティー番組出演のワケ 2 - NewsCafe
  6. ^ 宮迫、紀里谷監督に激怒の過去告白 泥水での撮影で眼病「ド突いてやろう」 : スポーツ報知
  7. ^ ※『再生医学』参照。
  8. ^ 取材・文 神武団四郎「INTERVIEW 特殊メイク・特殊造形・キャラクターデザイナー 百武朋」、『別冊映画秘宝 特撮秘宝』vol.3、洋泉社2016年3月13日、 pp.154-156、 ISBN 978-4-8003-0865-8
  9. ^ DVD3巻「コンセプチャルデザインギャラリー」-「プロダクションデザイン集1」

外部リンク[編集]