頭髪

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頭髪(とうはつ)は、ヒト頭部に生えるである。毛髪(もうはつ)、髪の毛(かみのけ)、また単に(かみ)ともいう。

構造[編集]

200倍に拡大した髪の毛
髪の毛の構造

頭髪はケラチンという硬質たんぱく質で形成されている。3重構造になっており、中心部にあるのが髄質(毛髄)で、その周囲を皮質(毛鞘)が取り巻き、その外側を毛表皮(クチクラ、キューティクル)が覆っている。ただし髄質は、ないものもあり、その役割ははっきりしない。

頭髪の直径はおよそ0.05mmから0.15mmの範囲であるが、個人差及び人種差が大きい。一般にコーカソイドネグロイドにおいては細く、頭皮1平方cm当たりおよそ400本前後、モンゴロイドでは前二者に比べて太く、1平方cm当たり250本ほどである。頭髪の断面も人種差があり、モンゴロイドでは一般的に円形で、コーカソイドでは楕円、ネグロイドは更に細長い。このためモンゴロイドは直毛であり、コーカソイドでは波状毛と呼ばれるゆるく波打った髪から巻き毛まで変異を示し、ネグロイドでは縮れ毛になりやすい。くせ毛は、毛穴の形により生成される。ただ、唯一思春期においてのみ(個人差あり)癖が変わることがある。思春期独特のホルモンバランスの変化という説が有力である。他には、骨格の変化により毛穴の形が変わりくせが変化することもある。

尚、ショックにより一日で頭髪が真っ白になるという話が伝わっているが、医学的にはメラニン色素が一日で髪の毛から抜ける物理現象はありえない。

生理[編集]

成長の速度もやはり個人差や人種差があるが、東アジア民族でおよそ11 cm/年 = 0.3 mm/日 = 3 nm/秒である。

頭髪の色は、皮質に含まれるメラニンの量によって決まる。人類の大部分は多量のメラニンを含んだ黒色の頭髪であるが、コーカソイドの一部は二次的に生じた色素脱落により、金髪(ブロンド)・茶髪(ブルーネット)が見られる。

毛の根元にある毛胞は非常に速く成長する。そのため抗がん剤投与などの化学療法によりしばしば頭髪を失うことがある。抗がん剤は速く成長する細胞に働くため、がん細胞だけでなく毛包にも作用することによる。毛細胞の代謝を抑える為に冷却して低温に保つ事で脱毛を抑える事もある。

毛は丈夫である。1本の毛は100gの重さを、頭髪全体では12トンの重さを支えることができるとされる。これはアルミニウムの強さに匹敵する。京都の東本願寺では、明治初期の建築工事に際し、通常の綱では用をなさない重い建材の運搬移動に、信者の女性が寄進した髪の毛によって作った綱を用いた事はよく知られている。

毛はその環境および、機械的、化学的な経歴に対応する。例えば、湿っている毛を成型し乾燥させると、その型を保つ。その型は再び毛が湿ると失われる。これは髪の毛の結合に水素結合が含まれているためである。また、湿っている状態でないときでも熱風を加え、瞬時に冷やすことで型を保つことも可能である。さらに恒久的なスタイリングのためには、化学的な処理(パーマネントウエーブ)によってジスルフィド結合を破壊し、再構成する。

加齢による毛の変化[編集]

老人は毛の内部の色素が失われるため、灰色の(実際には色の無い)毛に発達する傾向がある。非常に薄い色の金髪が加齢に伴っての同様の色素喪失を来した場合は真っ白に見える。このように加齢変化した頭髪を白髪(しらが)という。白髪は通常の加齢の特徴と考えられている。

白髪が生ずる年齢は人によって異なるが、一般に男性は女性よりも白髪になりやすい。一般的に75歳以上になるとほとんどの人が少なくとも白髪交じりであり、85歳までにほとんどの人が元の色の毛を失って総白髪になる。

加工品[編集]

漢方薬[編集]

人髪を黒焼きにしたものを乱髪霜と呼び、止血効果があるとされる。 値段は長さ50センチほどの髪が、1キログラム当たり5400元(約9万円)程度で売れることもある。

エクステンション[編集]

国際貿易センター(ITC)の統計によれば、2012年段階で中国が生産する人毛製品は、世界の流通量の大半を占める。特に、ファッションの一部として用いられるエクステンションウィッグは、中国の中でも安徽省阜陽市太和県一帯において加工、流通の集積が進んでおり、原材料も地元中国のほかミャンマーベトナムなどからも取り寄せられている[1]

L-システイン[編集]

パンなどに含まれている食品添加物のL-システインには、中国の人毛から製造したものが出回っている[2]。EUの法律では、人毛から作られたL-システインを禁止している[2]

人毛醤油[編集]

文化史[編集]

頭髪は、単に人体の一部という役割を超えて、神聖視されたり、特別な意味合いを付与されたりすることもあった。旧約聖書士師記においてサムソンは髪を切られたためにその力を失った。現在でも正教会においては、地域によっては気候・習慣等の要因から髪を切る修道士もいるが、修道士は頭髪を切らない事が基本的伝統とされる。

また、芸術作品では悲嘆する場面で髪を振り乱す、髪を掻きむしるなど、髪を使った感情表現が古代ギリシアの時代から見られる。古代の地中海世界では髪は感情や生命力が宿る場所とされ、葬儀の際には死者や参列者の髪を切って奉献し喪に服した[3]

日本の平安時代貴族女性において、髪の長さは美しさであった。村上天皇の宣耀殿の女御の髪の長さは、大鏡に記述がある。

ネグロイドでは、頭髪をそのままにしておくと、きつく曲がって成長し、ドレッドと呼ばれる独特の髪形になる。アメリカ合衆国においては、1960年代まではコーカソイドのネグロイドに対する差別が根強く、ネグロイド自身も差別される事を嫌って、化学処理や装置を使って毛を真っ直ぐにする場合があったが(いわゆるストレートパーマ)、60年代以降、公民権運動が成果を上げてネグロイドの地位が向上すると彼らの考えも変化発展し、縮毛を活かしたドレッドやアフロヘアーを誇示するようになり、コーカソイドにも浸透するようになった。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ “中国の人毛加工製品、輸出が急成長”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年8月22日). http://www.afpbb.com/articles/-/3023875?ctm_campaign=txt_topics 2014年8月23日閲覧。 
  2. ^ a b Is there human hair in Dutch bread? DutchNews.nl 2014年2月5日
  3. ^ 小池寿子『死を見つめる美術史』ポーラ文化研究所 1999年、ISBN 4938547473 pp.25-29