美白

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美白

美白(びはく、Skin whitening, Skin brightening[1])とは、色素沈着が少ない、白くて明るい肌の色のことである。日本では古くから「色の白いは七難隠す」と言われてきた。

1989年には、ヒトでの臨床試験を経た医薬部外品に「メラニン生成を抑えシミそばかすをふせぐ」という効能表示が行われるようになり、一般に美白化粧品と呼ばれる[2]

生理[編集]

人間の皮膚の色は、人種によってその色合いが異なるが、これは皮膚に存在する色素のメラニンに負うところが大きい[3]。また皮膚が黒くなるのは色素のメラニンによるものが大きい[3]

肌の色には、皮膚下に存在する毛細血管中を流れる血液の色、すなわち赤血球ヘモグロビン)の色も影響する。

小史[編集]

色白を好む価値観は日本で古くから存在し、「色の白いは七難隠す」ということわざもある。色白の女性は、少しぐらい醜い点があっても目立たないという意味である。ウグイスのフンが色白になる洗顔料として利用されていた。

1960年代には小麦色の肌が健康的だとされ日光浴がファッション化し、また育児においても奨励された[2]1990年代初頭から次第に女子高生などに広がったガングロなど、日焼けマシーンを使ってまで過度に日焼けするギャルたちのファッションスタイルによって最高潮に達した感がある。1990年代後半には、「美白」という言葉が美容研究家・料理研究家である鈴木その子によって提唱され流行したともいわれる。

日本で1961年にも「藥効美白クリーム」が販売されている[4]。1980年以前に、医薬部外品のビタミンCやプラセンタエキスに「日焼けによるしみそばかすを防ぐ」という効能表示が行われていたが、ヒトでの臨床試験を行ったものかは定かではない[2]。1980年より有効成分の申請には、ヒトでの臨床試験が必要となり、医薬部外品としてこの制度によって承認を得た1989年のコウジ酸を最初として「メラニン生成を抑えシミそばかすをふせぐ」という効能表示が行われるようになり、一般に美白化粧品と呼ばれるようになった[2]。1990年に日焼け止めの効果指標であるSPFは1990年には最高が20だったものが、各社がしのぎを削り数値を高くしていき1998年には100を超えたが、2000年以降は通常は50であれば十分だという確認からSPF50を最大表示とするようになった[2]

2013年にカネボウ化粧品は、肌がまだらに白くなるとの訴えを受けて自社開発成分のロドデノールを配合する化粧品を回収した[5]。回収時に把握していた39人ではなく、顔に3か所・5センチ以上の白斑を訴えた人数は7月には2250人となり[6]、2018年11月までに約2万人となり、うち1万8千人と合意した[7]

米国のニューヨーク州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、モンタナ州、テキサス州でハイドロキノンが禁止され、2014年には代替成分を利用した美白化粧品が増加してきた。[8]。2019年に、東アフリカ立法会議英語版は、ハイドロキノンを含む美容物質の製造と輸入禁止のための条約の制定を可決した[9]

方法[編集]

肌の黒い色素となるメラニンは、細胞の中に存在するチロシナーゼと呼ばれる酵素が紫外線などにより活性化されることにより生成される。メラニン生成の抑制には、紫外線等の外部刺激から肌を守ること(日焼け止め)、またメラニンの生成を抑える化粧品(美白化粧品)を用いる方法が一般的である。そして、メラニンを老廃物として排出するために健康的な基礎代謝が必要である。

多くの美白有効成分は、メラニンの生成に重要なチロシナーゼに作用しメラニンの形成を阻害しているが、一部の成分には安全上の懸念や副作用による制限事項が存在する[10][11]。そこでメラニン細胞を傷つけずに、チロシナーゼに選択的に作用するような様々な成分が探索されてきた[10]

米国で美白剤として認識され処方されてきたものに、ハイドロキノンレチノイドアゼライン酸がある[12]。ハイドロキノンでまれに起こるアレルギーによる皮膚刺激性や、長期使用による経時変化の後遺症、明確には確認されていない発がん性の噂から代替製品の市場が拡大してきた[12]。またハイドロキノンはチロシナーゼの反応を阻害するというよりも、メラニン細胞(メラノサイト)に対する毒性を通して作用している[13]

日本で、美白化粧品であることを公にうたうためには、薬機法で定められた美白有効成分が配合された医薬部外品である必要があり、例えば「ホワイトニング」という表示はこの基準をクリアしていないと使えない[14]。こうした美白化粧品では、肝斑老人性色素斑を対象に既に存在する色素沈着が改善したかを判定しているが、承認された効能は「メラニン生成を抑制し、シミそばかすをふせぐ」であり、「しみを薄くする」という効能では2015年までで承認を得たことはない[2]。化粧品は、美容目的であり治療をうたうことはできない[14]。医薬部外品として承認された成分は『医薬部外品原料規格2006』(厚生省医薬安全局審査研究会の発行)に記載されている。

医薬部外品として美白の効能表示が認可された美白有効成分[11][2][15][16]
プラセンタエラグ酸コウジ酸トラネキサム酸、トラネキサム酸セチル (TXC)、4MSK (サリチル酸誘導体)、リノール酸S
ニコチン酸アミド(ナイアシンアミド)、デクスパンテノールW
(以下、ビタミンC誘導体)ビタミンCエチル、アスコルビン酸グルコシド
リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム(ビタミンC誘導体ここまで)
アルブチン、カモミラET、マグノリグナン、ルシノールロドデノール(販売中止)
エナジーシグナルAMP(アデノシン-リン酸二ナトリウム)、PCE-DP(ピース・ディーピー)

そのほか、十分な水分に満ちた肌は光をより多く反射し、白く美しく見せる[17]

出典[編集]

  1. ^ Skin brighteningでは、ピーリング作用のある薬剤も含む: 渡辺晋一「市販されているハイドロキノンはどこまで効くか」『臨床皮膚科』第63巻第5号、2009年4月、 105-108頁。
  2. ^ a b c d e f g 長沼雅子「香粧品の有効性の歴史的変遷」『日本香粧品学会誌』第39巻第4号、2015年、 275-285頁、 doi:10.11469/koshohin.39.275
  3. ^ a b 宮地良樹ほか『化粧品・外用薬研究者のための皮膚科学』11頁。
  4. ^ 高須久、湯本繁子「非イオン性界面活性剤の皮膚に及ぼす影響」『日本皮膚科学会雑誌』第71巻第4号、1961年、 381頁、 doi:10.14924/dermatol.71.381
  5. ^ “カネボウは美白化粧品54製品を自主回収、回収費用約50億円”. ロイター. (2013年7月4日). https://jp.reuters.com/article/l3n0fa0pj-kanebo-recall-idJPTYE96303I20130704 2019年4月10日閲覧。 
  6. ^ “カネボウ自主回収の美白化粧品、白斑の症状訴え2250人に拡大”. ロイター. (2013年7月23日). https://jp.reuters.com/article/l4n0ft22x-kenebo-cosmetics-idJPTYE96M05W20130723 2019年4月10日閲覧。 
  7. ^ “カネボウ「白斑」訴訟、39人の調停が成立 東京地裁”. 朝日新聞. (2018年12月18日). https://www.asahi.com/articles/ASLDL432CLDLUBQU004.html 2019年4月10日閲覧。 
  8. ^ Andrew Mcdougall (2015年5月12日). “Hydroquinone-free products on the rise in US professional skin care, says Kline”. Cosmetics Design North America. 2019年7月16日閲覧。
  9. ^ Regional MPs want a ban on beauty products containing hydroquinone”. The East African (2019年5月14日). 2019年7月16日閲覧。
  10. ^ a b Lily Jiang, Peter D. Hino, Ashish Bhatia, Thomas J. Stephens, Felipe Jimenez (2018-12). “Efficacy of Trifecting(R) Night Cream, a Novel Triple acting Skin Brightening Product: A Double-blind, Placebo-controlled Clinical Study”. The Journal of clinical and aesthetic dermatology 11 (12): 21–25. PMC: 6334832. PMID 30666274. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6334832/. 
  11. ^ a b Ando H, Matsui MS, Ichihashi M. (2010-6). “Quasi-drugs developed in Japan for the prevention or treatment of hyperpigmentary disorders”. International journal of molecular sciences 11 (6): 2566–2575. doi:10.3390/ijms11062566. PMID 20640168. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/20640168/. 
  12. ^ a b B. Sofen, G. Prado, J. Emer (2016-1). “Melasma and Post Inflammatory Hyperpigmentation: Management Update and Expert Opinion”. Skin therapy letter 21 (1): 1–7. PMID 27224897. https://www.skintherapyletter.com/melasma/melasma-post-inflammatory-hyperpigmentation-treatment/. 
  13. ^ Anan Abu Ubeid, Longmei Zhao, Ying Wang, Basil M. Hantash (2009-9). “Short-sequence oligopeptides with inhibitory activity against mushroom and human tyrosinase”. The Journal of investigative dermatology 129 (9): 2242–2249. doi:10.1038/jid.2009.124. PMID 19440221. 
  14. ^ a b 朝田康夫、鈴木一成『コスメティックQ&A事典―化粧品のすべてがわかる』中央書院、2011年、全面改訂最新版、14-15頁。ISBN 978-4-88514-043-3
  15. ^ 三井幸雄「凍結酵素抽出法を用いたプラセンタエキスの化粧品への応用 (特集 化粧品新素材と原料の新知見(1))」『Fragrance journal』第47巻第3号、2019年3月、 69-72頁。
  16. ^ 2015年以降に承認された成分の出典はない。
  17. ^ 福井寛『美肌の科学』89頁。

関連項目[編集]