上場廃止

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上場廃止(じょうじょうはいし)とは公開上場)した株式について、証券取引所が上場継続不適と判断し、投資者保護の目的から証券取引所での取引を終了すること。上場廃止基準は各証券取引所によって異なるが、大まかな事由として、上場契約違反、法人格消滅(合併を含む)、完全親会社設立(完全子会社化)、会社の倒産(経営破綻)などがある。また、株式公開している企業が公開のメリットが小さくなったと判断し、自主的に株式上場廃止申請を行う場合もある。

上場廃止基準[編集]

以下のような基準がある。(詳細は外部リンクの各証券取引所の上場廃止基準を参照のこと)実際に発生したケースは強調字体で示す。

  • 株主数・流通株式数が基準を下回る
  • 売買高・時価総額・流通株式時価総額が基準を下回る
  • 債務超過銀行取引の停止破産手続再生手続又は更生手続事業活動の停止(いわゆる経営破綻)
  • 不適当な合併等(いわゆる裏口上場有価証券報告書又は半期報告書の提出遅延・虚偽記載または監査法人による不適正意見(監査意見の不表明)等・上場契約違反
  • 株式事務代行機関への委託契約解除・株式の譲渡制限・完全子会社化指定保管振替機関における取扱いに係る同意の撤回・株主の権利の不当な制限・反社会的勢力の関与全部取得その他(公益・投資者保護)
  • 会社の解散

上場廃止が行われる場合[編集]

日本では通常、上場廃止の恐れがある銘柄の株式は監理銘柄に、上場廃止が決定した銘柄の株式は整理銘柄に指定の上で取引されることになる。なお、TOBではなく、同一市場の上場会社同士の株式交換による完全子会社化・合併が行われる場合は、監理・整理銘柄指定は行われず即時処理される。

監理銘柄[編集]

従来の「監理ポスト」で取り引きされていた銘柄をIT化により改称したもの。ある株式が上場廃止基準に抵触する恐れがある場合、その事実を利用者(投資家)に周知させるため、この区分に指定された上で一般の株式と同じ売買を行う。これの適用期間は取引所が必要と認めた期日から取引所が株式の上場廃止基準に該当するか認定した日までである。

実際には監理銘柄(審査中)・監理銘柄(確認中)の二通りに分けて指定される。監理銘柄(審査中)とされるのは、有価証券報告書等に虚偽を用いたなど犯罪性や社会的影響が想定され、上場資格の審査を行う場合である。監理銘柄(確認中)はそれ以外、単純な上場基準への数値抵触や法定義務過怠があり、その復帰や実行の経過を確認する場合である。

また、監理銘柄指定を受けた場合に必ず上場廃止になるものではないことに注意を要する。基準抵触の恐れがある事項が解消に至れば監理銘柄指定は解除される。

主な事例(※すでに上場廃止もしくは会社が消滅しているものを除く)

整理銘柄[編集]

従来の整理ポストで取り引きされていた銘柄を、東京証券取引所のIT化に伴い改称したもの。証券取引所からの上場廃止(売買不可能となる)が決まった場合、その旨を利用者に周知するための専用区分。原則として、上場廃止当該日までの1か月間(破産、解散の場合は2週間)ここで取引がなされ、通常の株式の売買はできるが、信用取引を新しく行うことはできない。なお、かつては整理ポスト割当から原則として3か月後に上場廃止となっていたが、2002年10月からはその期間が現行の1か月に短縮されている。

特設注意市場銘柄[編集]

初めに東証にて2007年11月に設立された制度。リスクを含意する「灰色銘柄」を区別することで、SOX法に見られる一連の投資家保護の流れを汲み、また落ち度のある企業側にも上場廃止未満の猶予を与えることを目的とする。上場会社が上場廃止基準に抵触する恐れがあり、審査の結果上場廃止までに至らないが、内部管理体制に改善の必要性が高いと判断した場合、この上場会社の銘柄を特設注意市場銘柄に指定することができる。

指定された上場会社は、1年後に内部管理体制の状況等について記載した「内部管理体制確認書」の提出を行わなければならない。内部管理体制に問題がないと認められた場合はこの銘柄の指定が解除されるが、問題がある場合は指定が継続し、1年後に再提出を行わなければならない。3回目の提出でも内部管理体制等に問題があると認められた場合は上場廃止となる。

上場廃止になった例[編集]

経営破綻、合併や完全子会社化などではなく東京証券取引所第1部を上場廃止になった例として、西武鉄道株(株式の大量保有およびその比率に関する有価証券報告書への重大な虚偽記載を行ったことによる)などがある。同じく、同取引所第2部市場を上場廃止になった例は、駿河屋株、丸石ホールディングス株(ともに架空増資を行ったことによる)などがある。

また新興企業を対象とした東証マザーズ市場の上場廃止例としてライブドアライブドアマーケティングの例(有価証券報告書の虚偽記載)がある。

自主的に上場廃止に踏み切った例[編集]

前述の例はいずれも不祥事絡みであるが、不祥事や経営破綻、完全子会社化などではなく、自主的に上場の廃止に踏み切る(非公開化)企業も出現している。なお、理由としては、特に敵対的買収の脅威から逃れることなどが挙げられる。

非公開化に移行する場合、市場に流通している自社株式を企業の関係者が買収して、完全に経営権を掌握する必要があり、自社株式を経営陣が買収する場合MBO、従業員が買収する場合EBOと呼ばれる。外国企業では米ダウ・ケミカル、仏パリバ、韓ポスコなどが上場廃止となっている。

上場廃止を目的するメリットとしては次のようなものが考えられる。

  • 株主の意向(配当率、経営への介入など)に左右されない長期的な視点での経営ができる
  • 情報開示が年一度の有価証券報告書の提出(ただし、半期報告書の提出義務は残る)といった、最小限のレベルで済む
  • 上場企業に比べて各種監査も簡略化できる

一方デメリットとしては

  • 資金調達が銀行からの借り入れ(融資)に限られる
  • 人材獲得の面でハンディキャップを背負う

自主的に上場の廃止に踏み切った例としては、婦人服メーカーの「ワールド」や食品メーカーの「ポッカコーポレーション」、外食業のすかいらーくレックス・ホールディングス青汁キューサイがある。ただし、すかいらーくは、その後、再上場した。

上場廃止予定日までに倒産・解散した例[編集]

特異なケースではあるが、証券取引所により上場廃止が決定された後、廃止予定日までにその企業が倒産・解散したケースもある。その影響で、上場廃止が当初の予定よりも前倒しされたことがある。

東証マザーズに2009年11月に上場したエフオーアイは、わずか半年後の2010年5月に上場審査時の有価証券届出書(目論見書)の虚偽記載が発覚し、5月18日に6月19日での上場廃止が決定すると、その3日後に経営存続が不可能として負債総額約92億円で破産した。これは、そもそも上場を目的に巨額の架空の売上高を計上した目論見書を捏造し、上場審査を通過したという悪質なもので、しかもこれを東証側の上場審査の関係者が見破れずに審査を通過させて上場させてしまったものであった。この破産に伴い、同社の実際の上場廃止は6月15日となった。

また、東証2部に上場していた雪印食品は、雪印牛肉偽装事件と、親会社の雪印乳業(現:雪印メグミルク)が起こした雪印集団食中毒事件の影響で経営破綻に追い込まれた。これを受けて、東京証券取引所は2002年2月14日に同社の株式を整理ポストに割当てた。なお、当時の規則は「整理ポスト割当から3か月後に上場廃止」であったため、本来であれば5月14日に上場廃止となるはずであったが、整理ポスト割当後に4月30日付での解散が決議されたため、上場廃止の期日が当初の予定よりも2週間早い、4月30日に前倒しされた。

重複上場の廃止[編集]

複数の市場へ株式を上場(重複上場)する企業が、そのうち特定の市場のみ上場を廃止する例も存在する。とりわけ、情報化社会のもと取引が東証一極集中する中で、地方証券取引所へ重複上場する意義が薄れ、コストや事務負担の軽減のために重複上場を廃止する事例が多数発生している[2]

上場廃止にならなかった例[編集]

2007年3月期、証券大手「日興コーディアルグループ」は不正会計処理問題により上場基準に抵触したため、上場廃止が見込まれたが、東京証券取引所は「赤字を黒字と偽る粉飾ではない」「組織的・意図的ではない」などを理由として日興の上場維持を決定した。

脚注[編集]

  1. ^ [1]
  2. ^ シャープなど「重複上場」解消 メリット薄く…東証へ一極集中 SankeiBiz、2012年11月8日(2014年2月26日閲覧)。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]