マザーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
東京証券取引所

マザーズ: Mothers、「market of the high-growth and emerging stocks」に由来する名称)は、東京証券取引所が開設する新興企業向けの株式市場である。2020年7月31日現在、326社が上場している。

概要[編集]

大阪証券取引所(現大阪取引所)の当時のナスダック・ジャパン(後のヘラクレス市場→現ジャスダックに統合)に対抗する形で、1999年11月に開設され、同年12月22日インターネット総合研究所(IRI)とリキッドオーディオ・ジャパン(現ニューディール)が上場第1号企業として上場した(IRIは2007年に、ニューディールは2009年に上場が廃止されている[1])。なお、2013年7月16日に大阪証券取引所との現物市場取引統合に伴い、大証がこれまで運営していたジャスダックも東証が管理・運営することになったため、東証は2つの新興企業向け市場を運営する形となった。

基準・条件[編集]

上場基準が、東証などの一部や二部市場より大幅に緩いため起業して間もない企業や、成長性は見込めるものの先行投資等により赤字決算企業も新規に上場している。また、上場審査が一部や二部に比べて、3分の1(約1ヶ月)程度に短縮されている。

他方で、マザーズ上場企業には一部や二部上場の企業よりもさらに高い経営の透明性情報公開が要求され続ける。マザーズ上場企業は、一部や二部で求められる法定開示やタイムリーディスクロージャーに加え、第一、第三四半期業績の開示と投資に関する会社説明会を年2回以上開催することが義務づけられている。

マザーズ上場企業(マザーズから東証一部・二部への指定替えを行った企業も含む)における特設注意市場銘柄へ指定された企業は、ジャスダック上場企業に次いで2番目に多く、2020年現在では省電舎ホールディングス(マザーズから東証二部へ指定替え)が特設注意市場銘柄の指定を受けている。ほとんどの企業は内部管理体制などが改善されたとして特設注意市場銘柄の指定が解除されているが、京王ズホールディングスフード・プラネット(マザーズから東証二部へ指定替え)の2社は内部管理体制確認書の審査結果により上場廃止となっており(京王ズホールディングスは有価証券上場規程改正前の上場廃止基準により2015年に、フード・プラネットは有価証券上場規程改正後の2017年に上場廃止)、フード・プラネットは上場廃止の9日後に破産手続開始決定を受けている。

東証一部・二部への市場変更・市場選択[編集]

マザーズから東証一部への市場変更基準は、株主数、流通株式、時価総額、売買高(流通株式時価総額が20億円以上で、かつ時価総額が40億円以上の場合のみ)、事業継続年数、利益の額又は時価総額、虚偽記載又は不適正意見等、株式事務代行機関の設置、単元株式数、株式の譲渡制限、指定振替機関における取扱い、合併等の実施の見込み等の要件が揃えば東証一部への市場変更が可能となる。マザーズから東証二部への市場変更基準は、東証一部への市場変更基準から売買高以外の全ての要件が揃えば東証二部への市場変更が可能となる。虚偽記載又は不適正意見等に関する規定は、売買高基準が適用され、かつ東証一部への市場変更を行う上場企業は「最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし」でかつ、「最近5年間「無限定適正」または「除外事項を付した限定付適正」」となっており、売買高基準が適用されず、かつ東証一部へ市場変更を行う上場企業と東証二部への市場変更を行う上場企業は「最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」」「最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」」となっている[2]

2020年2月7日に実施された有価証券上場規程改正で、同日以降にマザーズから東証一部・二部へ市場変更を実施した上場企業は、特設注意市場銘柄に指定された場合は同時に、指定替え・市場変更等の特例により、再度マザーズへの市場変更もしくは他の市場への市場変更がそれぞれ行われる[3]

2014年3月、東証一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場という位置付けをさらに明確するため、上場後10年を経過した場合の上場廃止基準の見直しと市場変更を促す市場選択制度を新たに導入し、適用を開始した。具体的には二部市場と同じ上場廃止基準が適用されるとともに(2009年11月9日以降にマザーズへ上場した企業は株価による上場廃止基準も適用)、二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択する必要がある。東証二部上場を選択した場合は、上場後10年を経過した日以降初めて到来する事業年度末の属する月の翌月から起算して5ヶ月目の月初め(市場選択期間開始日の属する月の翌月初)に東証二部へ市場変更となる。マザーズ市場への上場継続を選択した場合、5年後に再度二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択する必要がある。時価総額40億円未満の上場企業がマザーズ市場への上場継続を選択した場合は、市場選択申請書、上場企業が作成した「高い成長可能性に関する説明書面」、上場企業以外の者であって、企業価値又は株価の評価に係る専門的知識及び経験を有するものが作成した「高い成長可能性に係る確認書」の添付が義務付けられる[4]

選択期間は以下の通りである。

  • 2004年3月までにマザーズへ上場した上場企業
    2014年3月以降初めて到来する事業年度末から起算して3ヶ月経過した日の翌日の10営業日の間に最初の市場選択を行い、マザーズに継続上場することを選択した場合は5年後に再度二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択。
  • 2004年4月以降にマザーズへ上場した上場企業
    上場後10年経過した日の属する事業年度末から起算して3ヶ月経過した日の翌日の10営業日の間に最初の市場選択を行い、マザーズに継続上場することを選択した場合は5年後に再度二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択。

沿革[編集]

指数[編集]

市場全体の時価総額を示す指標として、マザーズでは株価指数として東証マザーズ指数が、2003年9月16日より算出されている。2016年7月19日には、東証マザーズ指数を原資産とする株価指数先物商品の東証マザーズ指数先物大阪取引所上場された。

マザーズ指数の算出は東証1部におけるTOPIXと同様であり、普通株式全銘柄を構成銘柄として時価総額加重平均型株価指数の形で行われている。数値は2006年1月16日にピークの2800.68ポイントをつけたものの、その後はライブドアショックを機に下降線をたどり、2008年10月10日には269.41ポイントと、一時はピークの10分の1以下の水準にまで落ち込んだ。株価指数が3年弱で10分の1以下に下落するという騰落率は、先進国の市場においては異例のことである。この要因として、マザーズにおいて圧倒的な取引額・時価総額を誇り、2000年代半ばのマザーズのブームの牽引役であったライブドア(後のライブドアホールディングス→LDH)がライブドア事件を起こし株価を暴落させた挙句に、2006年4月に上場廃止に至ったことや、ライブドア事件を機に投資家や市場関係者の間でマザーズ全体に対する根強い不信感が広がったことなどが挙げられる。その後の2012年まで300ポイント台で終始していたが、2013年から回復し始め、2014年ピークだった2006年の約4割にあたる1000ポイントまで回復した。

また日本における他の新興市場と同様に、マザーズにおいてはデイトレーダーをはじめとする個人投資家による取引が東証1部に比べ活発であったため、サブプライムローン問題のように個人投資家が損失を抱えた場合に追証や売買高減少などの影響をまともに受けやすい環境にあったことも原因となっている。

マザーズを構成する個別銘柄においても、マザーズブームの2000年代中頃に新規上場された企業には、上場時に一株純資産の100倍以上という過剰な期待価格を付けて大量の資金調達に成功しながらも、上場直後の最高値(時には初値)をピークに後にあとは下落の一途という経緯を辿ってしまったものが多い。それらの中にあっては、一時の最高値から見れば10分の1程度の価格に低迷してしまった銘柄は多数あり、さらには最高値の100分の1以下(中には1万分の1以下)という極端な下落をきたし、その後も低調な値動きしか見せられない銘柄も珍しくない。

ライブドア事件以降も、2009年11月に上場したエフオーアイが、実際には売上として申告していた金額のほぼ全てが粉飾決算という内容で上場審査を通過して株式を上場しており、半年後にこれが発覚して上場廃止が決定するやたちまち経営破綻するという不祥事を起こしている。 これらの事象から、マザーズにおいては上場審査のシステムが正常に機能していないのではないか、という批判が市場関係者や専門家から聞かれることもあり、マザーズ市場そのものの信頼性が揺らいでいる。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 旧リキッドオーディオ、上場廃止 マザーズ1号企業、2社とも姿消す
  2. ^ 市場変更基準(マザーズから一部・二部)日本取引所グループ (2018年9月19日閲覧)
  3. ^ 上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正について東京証券取引所 2020年2月5日
  4. ^ 上場後10年を経過したマザーズ上場会社による上場市場の選択日本取引所グループ (2018年9月19日閲覧)

外部リンク[編集]