プラネット・ナイン

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プラネット・ナイン
Planet Nine
プラネット・ナインの想像図
プラネット・ナインの想像図
視等級 (V) >22.5[1]
分類 天王星型惑星
軌道の種類 太陽周回軌道
注釈 以下の数値は全て推定である
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 700 au[2]
近日点距離 (q) 約 200 au[2]
遠日点距離 (Q) 約 1200 au[1]
離心率 (e) 0.6[2]
公転周期 (P) 10,000 - 20,000 [2]
軌道傾斜角 (i) 30 ± 20 °[2]
近日点引数 (ω) 約 150 °[2]
昇交点黄経 (Ω) 113 °[3]
物理的性質
直径 26,000 - 52,000 km
半径 2 - 4 R[4]
質量 5 - 10 M[4]
冥王星との相対質量 5000[2]
年齢 4×109 [2]
大気圧 不明
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プラネット・ナイン: Planet Nine[2])は、太陽系外縁に存在すると提唱されている大型の天体天王星型惑星)の仮称である。軌道の大部分がエッジワース・カイパーベルトの外側を周る太陽系外縁天体の一群を研究する過程で、2014年にその存在が提唱された。2016年1月20日カリフォルニア工科大学コンスタンティン・バティギン英語版[5][6][7]コンスタンチン・バトゥイギンロシア語版[8])とマイケル・E・ブラウンは、いくつかの太陽系外縁天体の軌道に関する研究結果から、プラネット・ナインが存在する間接的な証拠を発表した[2]。この惑星は、ニースモデル英語版において木星や土星によって外へと弾き出された仮説上の第5巨大惑星英語版の可能性もある[2]

名称[編集]

Planet Nineは仮称であり、光学観測などで実在が確認されない限り正式名称は付与されない。確認されれば国際天文学連合 (IAUが正式名称を認定するが、その際通常は発見者がつけた名前が優先される[9]。基本的にはギリシャ神話ローマ神話にちなんだ名前になるはずである[10]

Batygin と Brown の原論文では、その物体を単に「perturber」(乱す物)と呼んでおり[2]、のちの報道向け発表で初めて "Planet Nine" という仮称を用いた[11]

Batygin と Brown は他にもヨシャファトやジョージという名前で Planet Nine を呼んでいる。Brown はまた「仲間内では 『Phattie』(coolやawesomeを意味する俗語)と呼んでいる」とも述べている[12]

特徴[編集]

遠日点付近にあるプラネット・ナインの天球上の見え方の、ブラウンが自らのブログで述べた軌道仮説に基づいたイメージ図[1]。およそ2000年かけて、緑線上を西から東へ横切っていく様子。

軌道要素[編集]

計算によると、プラネット・ナインは離心率の大きな楕円軌道を1万年から2万年の周期で公転していると見積られている。軌道長半径は約700 auと海王星の約20倍ほどもあるが、近日点は海王星の約7倍の約200 auまで近づくと想定されており、軌道傾斜角は30 ± 20°傾いているとされている[1][13][14]。一方、軌道離心率が高いため、遠日点は約1200 auまで遠ざかるとされている[15][16]

想定される軌道では、プラネット・ナインの遠日点はオリオン座おうし座付近の方向[17]、逆に近日点はへび座(頭部)、へびつかい座てんびん座付近の方向にあることになる[1][18]

ブラウンは、もしプラネット・ナインの存在が確認され、現在の探査機で向かうなら、わずか20年で到達出来ると考えている[19]

大きさと組成[編集]

プラネット・ナインは巨大氷惑星の天王星と海王星に大きさや組成が似ているとされている[1][4]

プラネット・ナインは地球の10倍の質量[14][20]と、2倍から4倍の大きさを持つと推定されている[4][21]。これまでの探査で冥王星以遠の領域で、海王星サイズの天体が存在する可能性は残されている。赤外線観測衛星広域赤外線探査衛星 (WISEの観測では、太陽から2万6000au以内の領域に木星質量(地球の約318倍)以上の質量を持つ天体は確認されず、また1万au以内に土星質量(地球の約95倍)の天体は確認されなかったが、700auの位置に海王星並みの質量を持つ天体が存在する可能性は否定されなかった[22][23][24]。ブラウンは、たとえプラネット・ナインがどこにあろうと、質量は周辺の小天体を一掃する事が出来るほど大きいとされており、太陽系の外縁部を支配する存在だと考えている。そして、これは惑星の定義には十分当てはまるものだとしている[25]

地球の5 - 10倍の質量を持ち、直径は2 - 4倍ほどと見積られている[4]。ブラウンは、天王星海王星のように岩との混合物で構成され、薄いガスで包まれた巨大な氷の惑星(天王星型惑星)であることがほぼ確実である、としている[1][4]。極端な楕円軌道に弾き出されさえしなければプラネット・ナインは巨大ガス惑星の核へと発達し得ただろうとしている[4]

仮説[編集]

数々の研究者が以下のような経緯を経て、海王星より遠くの惑星を冥王星の発見の時と同様に、間接的に検出しようとしてきた。そのうち、いくつかの観測はプラネット・ナインの仮説に直接、関連している。

セドナの異常な軌道の発見(2004年
2004年に発見されたセドナの異常な軌道は、既知の8惑星よりも遠方にある未知の惑星、あるいは伴星による摂動の影響を受けたためであるという結論に至った。仮に太陽が星団内で誕生したとすると、伴星を従えている可能性があるとされた[26][27][28]
多くの太陽系外縁天体の傾いた軌道(2008年
向井正率いるチームは、多くの太陽系外縁天体の大きな軌道離心率と軌道傾斜角は軌道傾斜角20°、軌道長半径100 - 200au、公転周期約1000年の火星から地球サイズの天体の影響による可能性があると発表した[29][30][31][32]
分離天体の楕円軌道と遠さ(2012年
ブラジル国立天文台英語版のRodney Gomes率いるチームは非常に細長い軌道を持つ太陽系外縁天体の軌道を解析し、未知の惑星が存在する可能性を実証するモデルを作成した。それは、火星から海王星の間の質量を持つ、発見されていない惑星が存在出来る事を示していた。しかし、あまりにも遠すぎるため、内惑星にはほとんど影響を及ぼさないであろう[33][34]。しかし、周辺の小天体を散乱させるには十分な質量である。Gomesは、未知の惑星が存在する事は可能だと確かめたが、結局、惑星の発見には至らなかった[35]
セドナに似た軌道の天体(2014年
2014年3月にセドナを越えた軌道長半径を持つ2012 VP113と呼ばれる小惑星が発見され、他にもいくつか似たような軌道を持つ小惑星もあるとされ、地球大の惑星の影響かもしれないとされた[36][37]

研究[編集]

プラネット・ナイン(赤点線)と6つの太陽系外縁天体の軌道

2014年に、カーネギー研究所のスコット・シェパードとハワイのジェミニ天文台チャドウィック・トルヒージョは、一部の非常に遠い位置にある太陽系外縁天体が持つ極端な軌道は、太陽系の外縁にある非常に重い未知の天体の影響であることを示唆した[38]。カリフォルニア工科大学のバティギンとブラウンは、彼らの仮説を否定するためにコンピューターによるシミュレーションを実施したところ、逆にプラネット・ナインの存在を示唆する結果を得た。

2016年6月、このプラネット・ナインが元々、別の恒星を公転していたのが、太陽の重力に捕らえられて太陽を公転する惑星になってしまったという説が発表された[39]。この説が正しい場合、プラネット・ナインは実質、太陽系外惑星であったという事になる。

間接的な証拠[編集]

この天体が存在すると仮定すると、軌道の大部分がエッジワース・カイパーベルトの外側を周り、その軌道が安定した6個の太陽系外縁天体の軌道が奇妙に似通っていることを説明できる[2]。これらの天体の近日点引数は似通っており、軌道はほぼ同じ平面上にある。このような一致は、シミュレーションによればわずか0.007%の確率でしか起こり得ないとされ[1]、ブラウンは、プラネット・ナインの存在可能性を90%と見込んでいる[4]

カイパーベルトの外側に安定した軌道を持つ6個の太陽系外縁天体とプラネット・ナインの比較[20][40]
名前 P
()
a
(au)
q
(au)
e ω
(°)
視等級 直径
(km)
2012 VP113 4287 263.89 80.31 0.70 292.9 23.4 600
2013 RF98英語版 5862 325.1 36.29 0.89 316.5 24.4 80
2004 VN112英語版 5736 320.42 47.33 0.85 327.2 23.3 200
2010 GB174 7159 371.45 48.67 0.87 347.7 25.2 200
2007 TG422英語版 11304 503.69 35.58 0.93 285.8 21.9 200
セドナ 11429 507.38 76.05 0.85 311.5 21.0 1000
プラネット・ナイン 〜15000 〜700 〜200 0.6 150 >22 26000 - 52000

プラネット・ナインは、先述の6つの太陽系外縁天体とはほぼ正反対の場所にあるとされる。また、計算ではプラネット・ナインの影響によって、既知の惑星の軌道面と垂直な軌道を持つ太陽系外縁天体が存在する可能性が示されているが、実際にそのような軌道を持つと思われる天体が4つ発見されている[41]。シミュレーションは、平均運動共鳴として知られる機構が、これらの太陽系外縁天体がプラネット・ナインと衝突するのを防ぎ、それらを整列させていることを示している[14]

直接検出[編集]

2016年1月の時点においては、この天体はまだ観測されていない。この天体は太陽から極めて遠い距離にあるため、太陽光をほとんど反射しない[4]視等級は22等級より暗いと予測されており、これは冥王星の600分の1の明るさである[1]

2016年2月には、土星探査機カッシーニの観測結果からプラネット・ナインの真近点角が117.8+11
−10
°であると発表された。また、この観測結果より、プラネット・ナインは太陽から約630auの位置にある可能性が示された[3]

もしプラネット・ナインが近日点の近くにあれば、天文学者らは既存の画像の中から惑星を同定できる可能性がある。一方で遠日点近辺にある場合は、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのマウナケア山にあるケック望遠鏡すばる望遠鏡のような地球の最大の望遠鏡が必要となる[14]。特にすばる望遠鏡はケック望遠鏡に比べて75倍もの視野を持っており、このような天体の探索に適している。そのため、ブラウンらはトルヒージョたちと協力してすばる望遠鏡による探索を開始しており、発見には5年程度を要すると予測されている[20]

脚注[編集]

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出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i Michael E. Brown. “Where is Planet Nine?”. The Search For Planet Nine. findplanetnine.com. 2016年1月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m Batygin & Brown (2015)
  3. ^ a b Fienga et al. (2016)
  4. ^ a b c d e f g h i Achenbach & Feltman (2016)
  5. ^ “太陽系に第9惑星存在か=質量地球の10倍-米大研究チーム”. 時事ドットコム (時事通信社). (2016年1月21日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=201601/2016012100163 2016年1月26日閲覧。 
  6. ^ “太陽系に「第9番惑星」存在か 米チーム発表”. AFPBB News (フランス通信社). (2016年1月21日). http://www.afpbb.com/articles/-/3073949?pid=17229005 2016年1月26日閲覧。 
  7. ^ 薬袋摩耶、井田 茂(協力)「第9惑星の存在を予測」、『ニュートン』2016年4月号、ニュートン・プレス、2016年2月26日、 10頁、 ISSN 0286-0651OCLC 28765968ASIN B019NDF48M
  8. ^ “センセーショナルな発見を成し遂げた天文学者へのインタビュー:海王星の軌道の向こうに「第9の惑星」がある(動画)”. Sputnik 日本 (スプートニク). (2016年1月21日). http://jp.sputniknews.com/science/20160121/1468985.html 2016年3月8日閲覧。 
  9. ^ Naming of Astronomical Objects”. IAU. 2016年6月14日閲覧。
  10. ^ Totten, Sanden (2016年1月23日). “Planet 9: What should its name be if it's found?”. Science & Environment. Southern Californa Public Radio on 89.3 KPCC. 2016年6月14日閲覧。 ““We like to be consistent,” said Rosaly Lopes, a senior research scientist at NASA’s Jet Propulsion Laboratory and a member of the IAU’s Working Group for Planetary System Nomenclature. For a planet in our solar system, being consistent means sticking to the theme of giving them names from Greek and Roman mythology.(訳:NASA のジェット推進研究所に所属するシニア研究員であり IAU の天体命名作業部会に参加する Rosaly Lopes は「我々としては一貫性を保ちたい」と述べた。太陽系の惑星に関して言えば、一貫性を保つとは、つまりギリシャとローマの神話に因んだ名前をつけるという意味になる。)”
  11. ^ Konstantin Batygin (2016年1月19日). “Premonition”. The Search for Planet Nine. findplanetnine.com. 2016年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月14日閲覧。
  12. ^ BURDICK (2016)
  13. ^ Witze (2016)
  14. ^ a b c d Fesenmaier, Kimm (2016年1月20日). “Caltech Researchers Find Evidence of a Real Ninth Planet”. California Institute of Technology. 2016年5月28日閲覧。
  15. ^ Drake (2016)
  16. ^ Plait (2016)
  17. ^ Mike Brown (@plutokiller) visits Griffith Observatory to discuss Planet 9 - YouTube
  18. ^ Lemonick (2016)
  19. ^ Becker, Grossman & Aron (2016)
  20. ^ a b c Hand (2016)
  21. ^ Watson (2016)
  22. ^ Lakdawalla, Emily (2009年8月27日). “WISE Guys”. The Planetary Society Blog. The Planetary Society. 2016年5月28日閲覧。
  23. ^ Luhman (2013)
  24. ^ “NASA's WISE Survey Finds Thousands of New Stars, But No 'Planet X'”. Jet Propulsion Laboratory (NASA). (2014年3月7日). http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2014-075 2016年10月7日閲覧。 
  25. ^ Brown, Mike (2016年1月19日). “Is Planet Nine a "planet"?”. 2017年10月22日閲覧。
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  28. ^ Brown, Michael E. (2010年10月28日). “There's something out there – part 2”. Mike Brown's Planets. 2016年7月18日閲覧。
  29. ^ Lykawka & Mukai (2007)
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  31. ^ Than, Ker (2008年6月18日). “Large 'Planet X' May Lurk Beyond Pluto”. Space.com. Purch. 2016年10月26日閲覧。
  32. ^ Hasegawa, Kyoko (2008年2月28日). “Japanese scientists eye mysterious 'Planet X'”. BibliotecaPleyades.net. 2016年10月26日閲覧。
  33. ^ Wolchover, Natalie (2012年5月25日). “Planet X? New Evidence of an Unseen Planet at Solar System's Edge”. LiveScience. Purch. 2016年10月26日閲覧。 “More work is needed to determine whether Sedna and the other scattered disc objects were sent on their circuitous trips round the sun by a star that passed by long ago, or by an unseen planet that exists in the solar system right now. Finding and observing the orbits of other distant objects similar to Sedna will add more data points to astronomers' computer models.”
  34. ^ Gomes, Soares & Brasser (2013)
  35. ^ Lovett (2012)
  36. ^ Sample (2014)
  37. ^ Mortillaro, Nicole (2016年2月9日). “Meet Mike Brown: Pluto killer and the man who brought us Planet 9”. Global News. Global Television Network. 2016年10月26日閲覧。 “'It was that search for more objects like Sedna ... led to the realization ... that they're all being pulled off in one direction by something. And that's what finally led us down the hole that there must be a big planet out there.' – Mike Brown”
  38. ^ Trujillo & Sheppard (2013)
  39. ^ “太陽系第9惑星は他の星から盗まれた惑星かもしれない”. 天文ニュース (AstroArts). (2016年6月2日). http://www.astroarts.co.jp/news/2016/06/02planet9/index-j.shtml 2016年6月7日閲覧。 
  40. ^ MPC list of q>30 and a>250”. IAU Minor Planet Center. IAU. 2016年2月2日閲覧。
  41. ^ “シミュレーションで推測、太陽系第9惑星存在の可能性”. 天文ニュース (AstroArts). (2016年1月21日). http://www.astroarts.co.jp/news/2016/01/21planet9/index-j.shtml 2016年1月22日閲覧。 

参考文献[編集]

原論文[編集]

大衆誌[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]