メインベルト彗星

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Asteroid 彗星のような外観のシャイラ (小惑星)(2010年12月12日)

メインベルト彗星 (main-belt comet, MBC) は、小惑星帯内を周回し、軌道の一部において彗星のような活動が見られた天体である。

ジェット推進研究所は、メインベルトの小惑星を、軌道長半径が2天文単位以上、3.2天文単位未満であって、近日点が1.6天文単位以上のものと定義している[1]

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のデビッド・C・ジューイットは、これらの天体は彗星での氷の昇華ではなく小惑星の塵の動きである可能性が高いと指摘し、「active asteroids」と呼ぶようになった[2]

最初に発見されたメインベルト彗星は、エルスト・ピサロ彗星である。この彗星は1979年に発見され、1996年にエリック・エルストとGuido Pizarroにより尾が発見され、「エルスト・ピサロ彗星(133P / Elst-Pizarro)」と彗星に指定された。[3][4]

軌道[編集]

ハッブル宇宙望遠鏡で観測された崩壊する小惑星P/2013 R3(2014年3月6日)[5]

太陽からの距離が木星やそれより遠くで多くの時間を費やす軌道となる彗星には似ず、メインベルト彗星は ほぼ円軌道を辿り、多くの小惑星帯の標準的な小惑星と区別がつかない。かなり多数の短周期彗星は木星軌道上に軌道長半径を持つが、メインベルト彗星はメインベルトの小惑星と同様に小さな軌道離心率軌道傾斜角を持つ点が異なる。最初に識別された3つのメインベルト彗星は全て、小惑星帯の外縁部を周回している。[6]

他の彗星のような太陽系外縁の天体が、軌道離心率が小さい一般的な小惑星帯の軌道にどのようにして入ったのかはわかっておらず、惑星による弱い摂動が考えられる。従って他の彗星とは異なり、メインベルト彗星は現在の位置に近い太陽系内縁部で形成された単に氷の小惑星と仮定され、このような天体が他にも存在している可能性が高いとされる。[6]

活動[編集]

いくつかのメインベルト彗星は、近日点付近の軌道の一部で、彗星のような塵の尾を見せる。エルスト・ピサロ彗星の活動は繰り返されている事が、直近3回の近日点で観測されている。[3]活動は5年から6年の軌道で1ヶ月から数ヶ月持続しており、恐らく100年から1000年前の弱い衝動により氷の覆いが取られた事による[6]。これらの衝動は、表面の揮発性物質の穴を掘って太陽の放射にさらす事を助けると思われる[6]

LINEAR彗星 (P/2010 A2)は、2010年1月に発見された当初は彗星と指定され そのように考えられてきたが[7]、現在は小惑星同士の衝突の残骸と考えられている[8][9]シャイラでは、直径約35メートルの他の小惑星との衝突により大量の塵を出した事が観測されている。

P/2013 R3[編集]

小惑星P2013 R3の崩壊[10]

2013年10月、スペインカナリア諸島ラ・パルマ島の10.4mのカナリア大望遠鏡での観測は、この天体は崩壊している事を示した[11]。10月11日と12日に撮影されたCCDイメージを解析した結果、the main-belt comet presented a central bright condensation that was accompanied on its movement by three more fragments, A,B,C. 最も明るい断片Aは、10月12日にグラナダシエラ・ネバダ天文台の1.52m望遠鏡で撮影されたCCDイメージでも報告された位置で検出された。[11]

NASAは、2013年10月29日から2014年1月14日の間にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した一連の画像より、4つへ分離している事を報告した[12]。太陽光によるヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック効果で、ラブルパイル天体遠心力で分離するまで回転速度を増加させた[12]

組成[編集]

彗星を起源とした場合に地球の海の重水素と水素の比率が低すぎるため、メインベルト彗星は地球の水の源かもしれないとする仮説もある[13]

メンバー[編集]

メインベルト彗星(main-belt comet)という用語は、軌道と形態に基づく分類である。これらの天体は、彗星、彗星のように核を取り囲む物質が揮発・昇華した事を示唆しない。

メインベルト彗星に分類されたメンバーは以下の通り

Full Name
Hsieh[6]
Jewitt[3]
軌道長半径 (a)
近日点 (q)
Perihelion date
133P/Elst–Pizarro [(7968) Elst–Pizarro, P/1996 N2] Y Y 3.15 2.64 2013-02-09
176P/LINEAR [(118401) LINEAR] Y Y 3.19 2.57 2011-07-01
238P/Read [P/2005 U1] Y Y 3.16 2.36 2011-03-11
259P/Garradd [P/2008 R1] Y Y 2.72 1.79 2013-01-25
P/2010 A2 (LINEAR) N Y 2.29 2.00 2013-05-23
324P/La Sagra [P/2010 R2] Y Y 3.10 2.62 2015-11-30
(596) Scheila N Y 2.92 2.44 2012-05-19
(300163) 2006 VW139 Y Y 3.05 2.44 2011-07-18
331P/Gibbs N Y 3.00 2.88 2010-03-26
P/2012 T1 (PANSTARRS) Y Y 3.15 2.41 2012-09-11
311P/PANSTARRS [P/2013 P5] N Y 2.19 1.95 2014-04-16
P/2013 R3 (Catalina-PANSTARRS) Y Y 3.03 2.20 2013-08-05

出典[編集]

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  1. ^ JPL "Main-belt Asteroid" Orbit Classification”. JPL Solar System Dynamics. 2010年12月15日閲覧。
  2. ^ Hubble Observes Six Tails from an Unusual Asteroid”. Space Telescope Science Institute (STScI), official YouTube channel for the Hubble Space Telescope. 2014年11月15日閲覧。
  3. ^ a b c デビッド・C・ジューイット. “Main Belt Comets”. UCLA, Department of Earth and Space Sciences. 2010年12月15日閲覧。
  4. ^ Hsieh, Henry (2004年1月20日). “133P/Elst-Pizarro”. UH Institute for Astronomy. 2012年6月22日閲覧。
  5. ^ RELEASE 14-060 NASA's Hubble Telescope Witnesses Asteroid's Mysterious Disintegration”. NASA (2014年3月6日). 2014年3月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e Henry H. Hsieh (2010年5月). “Main Belt Comets”. Hawaii. 2010年12月15日閲覧。 (older 2010 site) Archived 2009-08-10 at the Wayback Machine.
  7. ^ MPEC 2010-A51 : COMET P/2010 A2 (LINEAR)
  8. ^ Jewitt, David; Weaver, Harold; Agarwal, Jessica; Mutchler, Max; Drahus, Michal (2010). “A recent disruption of the main-belt asteroid P/2010?A2”. Nature 467 (7317): 817–9. Bibcode 2010Natur.467..817J. doi:10.1038/nature09456. PMID 20944743. 
  9. ^ Snodgrass, Colin; Tubiana, Cecilia; Vincent, Jean-Baptiste; Sierks, Holger; Hviid, Stubbe; Moissl, Richard; Boehnhardt, Hermann; Barbieri, Cesare et al. (2010). “A collision in 2009 as the origin of the debris trail of asteroid P/2010?A2”. Nature 467 (7317): 814–6. arXiv:1010.2883. Bibcode 2010Natur.467..814S. doi:10.1038/nature09453. PMID 20944742. 
  10. ^ “Hubble witnesses an asteroid mysteriously disintegrating”. ESA / HUBBLE. http://www.spacetelescope.org/news/heic1405/ 2014年3月12日閲覧。 
  11. ^ a b Licandro, Javier. “Main Belt Comet P/2013 R3 is breaking apart”. IAC Press Release. 2013年10月17日閲覧。
  12. ^ a b https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2014/06mar_asteroid/
  13. ^ Main-Belt Comets May Have Been Source Of Earths Water, Space Daily, Mar 23, (2006).

関連項目[編集]

外部リンク[編集]