ドゥルガー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ドゥルガー

ドゥルガーदुर्गा durgā)は、ヒンドゥー教女神。その名は「近づき難い者」を意味する。外見は優美で美しいが、実際は恐るべき戦いの女神である。10本あるいは18本の腕にそれぞれ神授の武器を持つ。神々の要請によって魔族と戦った。シヴァ神の神妃とされ、パールヴァティーと同一視された。

神話によると、アスラの王マヒシャースラがアスラ族の軍勢を率いて天界を攻め、天界に住んでいた神々を追放してしまった。破れた神々はシヴァヴィシュヌに助けを求め、それを聞いたシヴァとヴィシュヌは怒り、光を発した。他の神々も光を発し、たぐいまれなき光が一つに集まり女神チャンディー(ドゥルガー)が生まれた。チャンディーは魔神討伐のため神々から以下のものを授かった。

授かったもの 与えた神
シヴァ
円盤(チャクラム) クリシュナ(ヴィシュヌ)
法螺貝 ヴァルナ
アグニ
弓と矢筒 ヴァーユ
雷と鈴 インドラ
死の杖 ヤマ
羂索(ケンサク) ヴァルナ
数珠 生類の主
水瓶 ブラフマー
全ての毛穴に光線 スーリヤ(太陽神)
剣と盾 死神
衣と装飾品 乳海
斧と様々な武器と鎧 ヴィシュヴァカルマン
蓮華の花輪
ドゥン(虎もしくはライオン)と宝石 ヒマヴァット(ヒマラヤ山脈の神)
酒杯 クベーラ(富の王)
蛇族の首飾り ナーガ(蛇の王)

チャンディーはアスラの軍勢を次々と殲滅し、最後に水牛の姿をしたマヒシャースラを討ち取った。ドゥルガーがシヴァ神の三叉槍でマヒシャにとどめをさす図マヒシャマルディニーはこの話に由来する。これらの神話はヒンドゥー教の聖典マールカンデーヤ・プラーナの一部、デーヴィー・マーハートミャ(女神の栄光)に綴られている。

ドゥルガーという名称は、魔神ドゥルガーを大戦争の末に滅ぼしたとき、記念としてその魔神の名を自らの名前にしたのだという。また、チャンダムンダという悪魔を倒したことからチャームンダーとも呼ばれる。

シュムバ、ニシュムバとの戦いでは、怒りによって黒くなったドゥルガーの額から女神カーリーを生み出した。この女神はドゥルガー以上に純粋に戦闘を楽しむ女神とされる。さらにドゥルガーは逆立った髪から7人(あるいは8人)の戦いの女神・マトリカスを生み出している。

また、ドゥルガーは別名をヴィカラーラ(「恐るべき者」の意)と言い、仏教では興福寺八部衆二十八部衆畢婆迦羅十二神将毘羯羅となっている。また、密教に於いては菩薩天台宗では如来)とされ、六観音、七観音の一尊である准胝観音となっている[1]。黒闇天とも同一視される。また、突伽天女塞天女とも呼ばれ[2]玄奘三蔵の伝記『大慈恩寺三蔵法師伝(慈恩伝)』では突伽という表記で登場する。

10月ごろに行われるドゥルガー・プージャーはドゥルガーを祝う祭であり、とりわけベンガル地方では盛大に執り行われている。

ドゥルガーは元々、インド半島部のデカン高原に住むインド先住民であるデカンの民に崇拝されていた神であったとされている。デカン高原カルナータカ州バーダーミのアイホーレ村の遺跡には、7世紀後期のドゥルガー寺院があり、見事な彫刻が残されている。

出典[編集]

  1. ^ 斎藤昭俊 『インドの神々』 吉川弘文館
  2. ^ 佐藤任 『密教の神々 その文化史的考察』 平凡社

関連項目[編集]