あぶくま型護衛艦

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あぶくま型護衛艦
JS Abukuma (DE-229) (1).jpg
DE-229「あぶくま」
艦級概観
種別 乙型
艦種 護衛艦(DE)
艦名 日本の河川名
建造期間 1988年 - 1993年
就役期間 1989年 - 就役中
前級 ゆうばり型(DE)
次級 3900トン型(FFM)
性能諸元
排水量 基準:2,000トン
満載:2,900トン
全長 109.0 m
全幅 13.4 m
深さ 7.8 m
吃水 3.8 m
機関 CODOG方式
三菱S12U-MTK ディーゼルエンジン (5,000ps) 2基
SM1Aガスタービンエンジン (13,500ps) 2基
可変ピッチ・プロペラ 2軸
速力 最大27ノット以上
航続距離 5,624海里 (18ノット巡航時)[1]
乗員 120名
兵装 62口径76mm単装速射砲 1基
高性能20mm機関砲CIWS 1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 2基
74式アスロック8連装発射機 1基
324mm3連装短魚雷発射管 2基
艦載機 着艦・運用設備なし
VERTREPHIFRのみ可能
FCS FCS-2-21B 主砲用 1基
SFCS-8 水中用 1基
レーダー OPS-14C 対空捜索用 1基
OPS-28C 対水上捜索用 1基
OPS-20 航海用
※01DEのみ装備
1基
ソナー OQS-8 船首装備 1基
電子戦
対抗手段
NOLQ-8 電波探知装置
OLT-3 電波妨害装置
Mk.137 6連装デコイ発射機 2基

あぶくま型護衛艦(あぶくまがたごえいかん、英語: Abukuma-class destroyer escort)は海上自衛隊護衛艦の艦級。地方隊の中核を担う護衛艦(DE)として、昭和61年度から平成元年度で計6隻が建造された[注 1]ネームシップの建造単価は250億円[3]

来歴[編集]

海上自衛隊では、第1次防衛力整備計画下で整備したいすず型(34DE)が昭和60年代後半に、またその発展型として第3次防衛力整備計画下で整備したちくご型(42DE)も昭和70年代前半には除籍時期を迎えることから、日本海での作戦を考慮したDE型護衛艦の計画に着手した。まず56中業で、ゆうばり型(54DE)の発展型として、昭和58年度計画で1,600トン型3隻の建造が検討された。この58DEでは、水中放射雑音低減などのため主機関をCODOG方式からオリンパスTM3Bのみによる構成に変更するとともに、凌波性向上のため船型を長船首楼型に改正していたが、同年度は58DDGや58DDなど大型護衛艦の予算要求があったこともあって、大蔵省の査定落ちとなった[3]

その後の昭和60年度計画では、54DEの運用実績も加味して58DEの計画を修正して、OYQ-5改級の戦術情報処理装置個艦防空ミサイル・システムを搭載するなど装備面でも強化し、基準排水量2,200トン級で計画された。しかしPDMS搭載について、DDとの関係性の整理やシステム構成の面で海上幕僚長の了解が得られず、再検討の結果、基準排水量1,900トン、RAM近接防空ミサイルの後日装備で落ち着いた。これは内局審議で58DEとの整合性などが問題視され、61中期防に持ち越しとなった。

昭和61年度計画では、海上幕僚監部内で再び2,200トン型を基本とした検討を実施し、同年度予算の他項目との関係性考慮の結果、再度1,900トン型として予算要求を実施、やっと同年度で2隻の予算が成立した。これによって建造されたのが本型である[3]

設計[編集]

基本計画番号はE114[4]

船体[編集]

船型は全体的にあさぎり型(58DD)に類似しており、遮浪甲板型に近い、全通上甲板を有する長船首楼型の採用やクリッパー型の艦首形状も同様である。ただし本型では、上部構造は従来通りの形状であるものの、船体の外舷には約7度の傾斜がかけられている。海上自衛隊の護衛艦として初めてステルス性を導入した設計ともされているが、実際には、これは水中抵抗を低減しつつ艦内容積を確保するための措置であり、特にレーダー反射断面積の低減を意図したものではなかった[3]

また乗組員の居住環境向上をはかるため、従来の3段ベッドにかえて2段ベッドを採用した最初の護衛艦でもある[5]。また歓談用のレストエリアなども導入されており、これらの居住性向上策の結果として、排水量は当初計画の1,900トンよりも増大した。しかし海幕防衛部では、やまぐも型(37DDK)を極力超えないこととする方針を示したことから、技術研究本部では上限を2,050トンとし、最終的に2,037トンとして基本計画がまとめられた[3]

対潜戦に重要な哨戒ヘリコプターの搭載能力はないものの、後部甲板は、HIFR(飛行中のヘリコプターに対する給油)やVERTREPヘリコプターによる補給)に対応できるアプローチスペースが備えられており、後檣には進入角水平指示灯を装備したほか、船体安定化のためフィンスタビライザー1組を装備している[3]

機関[編集]

主機としては、「いしかり」(52DE)以来のCODOG方式が採用されたものの、52〜55DEでは1組のCODOG機関の出力を減速機を介して両舷2軸に分配する方式であったのに対し、本型においては左右2軸に1組ずつを配する方式とされた。また機種も刷新されており、高速機としては、58DDと同じくロールス・ロイス・川崎 スペイSM1Aガスタービンエンジンが搭載された。一方、巡航機としては、海上保安庁みはし型巡視船に搭載されたのと同型の三菱S12U-MTK 4サイクル直列12気筒ディーゼルエンジンが搭載された。機関配置も58DDと同様で、前部の第1機械室に左舷軸機を、後部の第2機械室に右舷軸機を収容している[6]。ただしDDと異なり、中間区画は設定されておらず、抗堪性は最低限のものとなっている[3]

冷戦末期のソビエト連邦海軍潜水艦の高速化に対応して、速力は27ノットに引き上げられた[3]。また58DDと同様、水中放射雑音の低減のため、推進器はハイスキューの翼を採用するとともに低回転化が図られており、52DE(340 rpm)の約4分の3となった[6]

電源としては、出力1,000 kWのガスタービン主発電機1基、500 kWのディーゼル主発電機2基、300 kWのディーゼル非常発電機1基を搭載した。ガスタービン主発電機の原動機は、第1世代DDと同じ川崎重工業M1A-02ガスタービンエンジンであり[7]、また発電機の総出力2,300 kWは、DD型護衛艦にも比肩しうる強力なものであった[3]

装備[編集]

C4ISR[編集]

レーダーは58DDと同構成であり、対空捜索用としてOPS-14C、対水上捜索用としてOPS-28Cを搭載した。また01DEでは、なだしお事件の再発防止策としてOPS-20航海レーダーを搭載しており、このため、前檣を1.5メートル高めてステージ1段を増設している[3]

電波探知装置(ESM)も、60DDで装備化されたNOLQ-8を搭載した。当初は後檣に設置される予定だったが、58DDで同様に後檣に設置したところ排煙の影響を受けた教訓から、前檣に変更された[3]。また60DDと同様にOLT-3電波妨害装置を搭載して、DEとして初めて電子攻撃機能を付与されている[8]

ソナーとしては、アメリカレイセオン社の中周波ソナーであるDE-1167のライセンス生産によるOQS-8をバウ・ドームに収容して搭載した[3]

なお、戦術情報処理装置を搭載したという説もあったが[4]、実際には戦闘指揮所は戦術情報処理装置をもたない在来型であり、搭載武器システムの全能発揮上の制約となった。簡易型の戦術情報処理装置や曳航ソナーの後日装備予定が盛り込まれているものの、具体的な計画には至っていない[3]

武器システム[編集]

武器システムの性能としては、個艦防空ミサイル哨戒ヘリコプターを持たない点を除けば、おおむねはつゆき型(52DD)と同様となっている[4]

対潜兵器として、「いしかり」(52DE)及びゆうばり型(54DE)では375mm4連装対潜ロケット砲(71式ボフォースロケットランチャ)を搭載していたのに対し、本型では、再びちくご型(42DE)と同じくアスロック対潜ミサイルを搭載した。ちくご型と同様、アスロックの予備弾は搭載されていないので、搭載弾は、8連装発射機に装填された即応弾8発のみとなる。発射機は前後煙突間の中部甲板に設置されているが、これはやまぐも型(37DDK)以降、2000トン級以下の護衛艦にアスロックを搭載する場合の標準的な要領であった。37DDKで採用された際、艦首尾方向で相当の射界の制約があることが指摘されていたが、当時、攻撃の際には複数艦で敵潜を包囲し、各艦がソナー探知を維持しつつ円運動しながら攻撃するという「サーキュラー・アタック」と呼ばれる手法が採用されていたことから、用兵者の強い不満には至らなかった[9][注 2]

対空兵器としては、52DEで導入された62口径76mm単装速射砲に加えて、船尾甲板に高性能20mm機関砲CIWS)を搭載した。本土防空圏内での活動を前提としていることから艦対空ミサイルは搭載されておらず、76mm単装速射砲と艦橋の間にRAM近接防空ミサイルの搭載スペースが用意されているものの、具体的な装備計画には至っていない[5]

対艦兵器としてはハープーン艦対艦ミサイルを搭載した。装備形態としては、58DDと同様、両舷にむけて発射する方式とされている[4]

兵装配置
前甲板に76ミリ単装砲、後部甲板にSSM発射筒とCIWS。煙突間にASROC発射機
SUMの装備要領 CIWS、SSMの装備要領 (SSMは定数の半分のみ搭載した状態)
SUMの装備要領
CIWS、SSMの装備要領 (SSMは定数の半分のみ搭載した状態)

同型艦[編集]

一覧表[編集]

艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 所属
DE-229 あぶくま 三井造船
玉野事業所
1988年
(昭和63年)
3月17日
1988年
(昭和63年)
12月31日
1989年
(平成元年)
12月21日
護衛艦隊第12護衛隊
呉基地
DE-230 じんつう 日立造船
舞鶴工場
1988年
(昭和63年)
4月14日
1989年
(平成元年)
1月31日
1990年
(平成2年)
2月28日
 護衛艦隊第13護衛隊
佐世保基地
DE-231 おおよど 三井造船
玉野事業所
1989年
(平成元年)
3月8日
1989年
(平成元年)
12月19日
1991年
(平成3年)
1月23日
護衛艦隊第15護衛隊
大湊基地
DE-232 せんだい 住友重工
追浜造船所浦賀工場
1989年
(平成元年)
4月14日
1990年
(平成2年)
1月26日
1991年
(平成3年)
3月15日
護衛艦隊第14護衛隊
舞鶴基地
DE-233 ちくま 日立造船
舞鶴工場
1991年
(平成3年)
2月14日
1992年
(平成4年)
1月22日
1993年
(平成5年)
2月24日
護衛艦隊第15護衛隊
(大湊基地)
DE-234 とね 住友重工
追浜造船所浦賀工場
1991年
(平成3年)
2月8日
1991年
(平成3年)
12月6日
1993年
(平成5年)
2月8日
護衛艦隊第12護衛隊
(呉基地)

運用史[編集]

本型は昭和61・62・平成元年度に2隻ずつ、計6隻が建造された。しかしこの時点で海幕は、DEの建造を打ち切るかわりにDDの建造を継続し、これによって護衛隊群から押し出されるはつゆき型(52DD)を地方隊[注 1]に配備することで、旧型DEの更新に充当する方針とした。これは、護衛隊群は新鋭DD、地方隊はDEと旧型DDという構図を崩すことになることから、内局や政府部内からの反発も強かった。しかし護衛隊群の護衛艦の更新を継続し、質的な水準の確保をはかるためには必要な施策であることから、最終的には承認された[3]

これによって本型の建造はそれ以上行われず、以降、DEの新造はしばらく中断した。しかし、26中期防において、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させ、先述の2桁護衛隊所属の本型及び旧型DD全て、並びに ミサイル艇の後継、さらには掃海艇をも肩代わりする構想の3,900トン型(FFM)の建造が予定されている[10]

また平成24年度から27年度予算までに、のべ12隻分の艦齢延伸のための先行的部品調達予算と4隻分の改修予算が計上された。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより5~10年程度延伸する計画を予定している[11]

登場作品[編集]

漫画[編集]

亡国のイージス
「おおよど」が登場。沿岸部を航行していた際、海岸にいたDAISに入る前の如月行から大声で呼びかけられ、それに対して汽笛で返答する。

小説[編集]

『超時空世界大戦』(文庫名:『超時空世界大戦 第三帝国撃滅!』)
「ちくま」と「とね」が登場。ナチス・ドイツが世界制覇目前という異なる歴史を歩む第二次世界大戦時にタイムスリップした日本へ資源を運ぶ輸送船団を、Uボートから護衛する。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b 地方隊に配備されていた第21~26護衛隊(いわゆる2桁護衛隊)は、2008年3月の改編によって第11~16護衛隊に改編され、護衛艦隊直轄下に移された[2]
  2. ^ ただし機関部雑音の影響もあって、曳航ソナーを装備していない艦の場合は船体前方セクターでの探知が主となっており、世界的に見ても、多くの駆逐艦のアスロック装備位置は、前方射界を重視したものとされていた[9]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 阿部, 安雄「海上自衛隊護衛艦整備の歩み (海上自衛隊護衛艦史1953-2000)」、『世界の艦船』第571号、海人社、2000年7月、 NAID 40002155854
  • 勝山, 拓「海上自衛隊艦載兵器の回顧と展望 (特集 海上自衛隊の艦載兵器)」、『世界の艦船』第721号、海人社、2010年3月、 75-79頁、 NAID 40016963804
  • 香田, 洋二「護衛艦隊の誕生と発展 1961-2011 (特集 護衛艦隊の50年)」、『世界の艦船』第750号、海人社、2011年11月、 76-85頁、 NAID 40019002769
  • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」、『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、 NAID 40020655404
  • 寺田, 政信「1994年における舶用機関技術の進歩」、『日本舶用機関学会誌』第30巻第7号、1995年7月、 489-527頁、 NAID 130001338063
  • 『自衛隊装備年鑑2006-2007』 朝雲新聞社、2006年ISBN 978-4750910277

外部リンク[編集]