Mk 36 SRBOC

Mk.36 SRBOC(英語: Mark 36 Super Rapid Bloom Offboard Countermeasures)は、アメリカ合衆国が開発した艦載用のデコイ発射装置。海上自衛隊では「MK36チャフロケットシステム」として採用されている[1]。
来歴
[編集]1967年に発生したエイラート撃沈事件は、アメリカ海軍において対艦ミサイルの脅威を強く印象付けた[1]。これを受けて、対艦ミサイルへのソフトキルを想定した緊急対策として開発されたのがRBOC(英語: Rapid Bloom Offboard Countermeasures)である[1]。RBOCには、フリゲート・駆逐艦向けのMk.33と、高速戦闘艇向けのMk.34があり、まず1972年に11セットのMk.33がアメリカ海軍に納入された[2]。
そしてRBOCの発展型として開発されたのがSRBOCである[3]。SRBOC用に開発されたMk.182チャフロケット弾は1977年より就役した[2]。
構成
[編集]SRBOCは、Mk.137 発射機とMk.164 艦橋制御盤、Mk.160 電源装置などによって構成されている[3][2]。
発射機
[編集]SRBOCのMk.137 発射機は、方位・仰角とも固定された発射筒を2列に配置した迫撃砲・臼砲式の発射機という点ではRBOCのMk.135と同様である[3][2]。ただしRBOCでは口径4.4 in (110 mm)だったのに対し、SRBOCでは5.1 in (130 mm)に大型化された[3][2]。これにより使用可能なデコイの種類が増加し、対魚雷用デコイも使用可能になったとされる[2]。
仰角についても、RBOCでは55・65・75度だったのに対し、SRBOCでは45・60度に変更された[3][2]。これはチャフ雲が空間において重ならないように配慮したものといわれる[1]。
再装填は手動であり、発射機近傍には予備弾を収容したRSL(Ready Service Locker)が配置されている[3]。RSLとしては、当初は容量20発のMk.5が用いられていたが、後に35発に増やしたMk.6が開発され[3]、Mod.11以降ではこれが採用された[4]。
| Mod | 発射機 | 弾庫(容量) | 制御装置 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2基 | 2基(40発) | Mk.164艦橋制御盤(SLQ-32と統合)+Mk.158主制御盤 |
| 2 | 4基 | 4基(80発) | |
| 5 | 2基 | 2基(40発) | Mk.164艦橋制御盤(SLQ-32と統合) |
| 6 | 4基 | 4基(80発) | |
| 8 | 8基 | 8基(160発) | Mk.164艦橋制御盤+Mk.158主制御盤 |
| 9 | 4基 | 4基(80発) | Mk.164艦橋制御盤 |
| 10 | 6基 | 6基(120発) | |
| 11 | 4基 | 4基(140発) | |
| 12 | 6基 | 6基(210発) |
- 装填状態のMk.137 発射機
- Mk.214 チャフ・キャニスターの発射
デコイ
[編集]アメリカ海軍では、SRBOCの主たる戦術は「追尾転移」(seduction: ミサイルが艦をロックオンした場合に、チャフによる偽目標へと引き離させる)とされており、また「初期捕捉」(ミサイル・シーカーの捜索中にチャフが偽目標となり、これを捕捉させる)も想定されていた[1]。
- Mk.182
- SRBOCにあわせて装備化されたチャフロケット弾[2]。ペイロード搭載量は、RBOC用のMk.171の4倍となった[2]。
- スーパー・チャフスター(SUPER CHAFFSTAR)として輸出にも供された[3]。
- Mk.214
- 北大西洋条約機構(NATO)のシーナットと共通化された次世代のチャフロケット弾であり、開発は1986年に完了した[2][5]。これにより形成されるレーダー反射断面積(RCS)は、RBOC用に当初用いられていたMk.76の26倍に達する[2][注 1]。
- Mk.218
- 「初期捕捉」などのディストラクション戦術に適したチャフロケット弾[5]。
- Mk.245
- 赤外線デコイ弾。ラインメタル製で、メーカー側の呼称はジャイアント、型番はDM19。持続時間は40秒以上とされる[6]。
アメリカ海軍では、アクティブ・デコイであるヌルカを導入するにあたり、SRBOCの発展型を発射機として用いているが、ヌルカは標準的な130mm発射筒には収まらず、新しい発射筒を追加していることもあって、この発射機にはMk.53という新しい番号が付与された[7]。一方、海上自衛隊の電波妨害弾1型(EJ弾)は、標準的な130mm発射筒で運用されている[8]。
搭載艦艇
[編集]- スリバチ級給兵艦
- ファラガット級ミサイル駆逐艦
- リーヒ級ミサイル巡洋艦
- サクラメント級高速戦闘支援艦
- ベルナップ級ミサイル巡洋艦
- ノックス級フリゲート
- ブルック級ミサイルフリゲート
- 原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」
- ニューポート級戦車揚陸艦
- カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦
- ブルー・リッジ級揚陸指揮艦
- バージニア級原子力ミサイル巡洋艦
- オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート
- スプルーアンス級駆逐艦
- タラワ級強襲揚陸艦
- キッド級ミサイル駆逐艦
- タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦
- ホイッドビー・アイランド級ドック型揚陸艦
- ワスプ級強襲揚陸艦
- ミッドウェイ級航空母艦
- アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦
- サプライ級高速戦闘支援艦
- ハーパーズ・フェリー級ドック型揚陸艦
- サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦
- 82型駆逐艦「ブリストル」
登場作品
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 桑原勲「Mk36 チャフロケットシステムの用法研究」『第5巻 船務・航海』《第2分冊》水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、78-83頁。CRID 1971712334784813582。
- 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616。
- 戸塚孝志「投棄型電波妨害機(EJ弾)の技本開発」『第5巻 船務・航海』《第2分冊》水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、115-122頁。CRID 1971712334784813582。
- Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 978-1557502681
- Hooton, E.R. (2002), “DECOY SYSTEMS, UNITED STATES OF AMERICA”, Jane's Naval Weapon Systems (Issue 23 ed.), Jane's Information Group Ltd, NCID AA11235770
- Streetly, Martin (2005), Jane's Radar and Electronic Warfare Systems (17th ed.), Jane's Information Group, ISBN 978-0710627049
外部リンク
[編集]- www.fas.org (1999年6月30日). “MK 36 SRBOC” (HTML) (英語). 2009年11月18日閲覧。