ザクセン級フリゲート

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ザクセン級フリゲート
F219 ザクセン
F219 ザクセン
艦級概観
艦種 フリゲート
艦名 州名
建造期間 1999年 - 2003年
就役期間 2003年 - 就役中
前級 リュッチェンス級駆逐艦
次級 バーデン・ヴュルテンベルク級フリゲート
性能諸元
排水量 満載: 5,690 t
全長 143m
全幅 17.4m
吃水 4.4m
機関 CODAG方式
MTU 20V 1163 TB93ディーゼルエンジン
(10,050bhp / 7.4MW)
2基
LM2500 ガスタービンエンジン
(31,500shp / 23.5MW)
1基
スクリュープロペラ 2軸
速力 29 kt
航続距離 4,000海里 (18kt巡航時)
電力 ディーゼル発電機 (1,000 kW) 4基
乗員 255人(士官39人)
兵装 76mm単装速射砲 1基
MLG 27 27mm機関砲 2門
RAM近SAM 21連装発射機 2基
Mk.41 mod.10 VLS (32セル)
スタンダード SAM
ESSM 短SAM
を発射可能
1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管
(MU90短魚雷用)
2基
艦載機 リンクス Mk.88 or NH90 2機
C4I 海軍戦術情報システム
(SEWACO-FD + リンク 11/16)
レーダー APAR 多機能型 1基
SMART-L 対空捜索用 1基
トリトン-G 対水上捜索用 1基
ソナー DSQS-24BX 艦首装備式
電子戦
対抗手段
FL-1800 S-II ESM/ECM装置
Mk.137 6連装デコイ発射機 6基

ザクセン級フリゲート (ドイツ語: Fregatte SACHSEN-Klasse, : Sachsen-class frigate) は、ドイツ海軍フリゲート124型フリゲート(F124、Type 124)とも呼ばれる。NAAWS戦闘システムを搭載した防空艦で、その外見と性能から、ミニ・イージス艦とも俗称される[1]

来歴[編集]

1980年代後半、NATO加盟8カ国の海軍は、NFR-90 (NATO Frigate Replacement for 1990s) 構想を開始した。これは、各国海軍が保有する1960年代型水上戦闘艦の老朽化が進んでいたことから、これらの代替艦として、NATOで共通のフリゲートを設計・採用し、50隻以上におよぶ大量建造を行なうことによって、相互運用性を向上させ、またコストを削減しようというものであった。西ドイツ海軍も、ハンブルク級駆逐艦 4隻及びリュッチェンス級駆逐艦 3隻を更新するため、この計画に加わっており、合計8隻の建造を予定していた。

しかし、NFR-90計画は事前調整から難航し、始動が遅れたことから、西ドイツ海軍は、老朽化が特に著しかったハンブルク級駆逐艦の更新には間に合いそうもないと判断、NFR90計画とは独立してブランデンブルク級フリゲートの開発を決定し、4隻を就役させてハンブルク級駆逐艦を更新した。

その後、搭載するNAAWS武器システムに関する見解、さらには運用コンセプトそのものの相違から、NFR-90計画は1990年代初頭には空中分解した。その結果、計画の参加国はそれぞれに戦闘艦の開発を続行することとなったが、このうち、ドイツオランダスペインの3カ国は、NFR-90およびNAAWS計画を直接に継承して、TFC (Trilateral Frigate Cooperation: 三国フリゲート共同)計画を開始した。スペイン海軍は、コスト面の問題からのちに計画から離脱し、イージスシステムを採用したアルバロ・デ・バサン級フリゲートを建造したが、残るドイツとオランダは2カ国で計画を続行した。これによって建造されたのが本級であり、また、オランダにおけるTFC計画艦がデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートである。

設計はブローム・ウント・フォス社で、1996年に発注され、2003年から2005年にかけて、ザクセン、ハンブルク及びヘッセンの3隻が就役した。4番艦、テューリンゲンは建造が計画されていたものの、起工には至らなかった。

設計[編集]

本級の船体設計は、多くをブランデンブルク級フリゲート (123型) より受け継いでおり、外見や内部の構造もかなり似通っている。船型は長船首楼型、煙突はV字型配置とされ、船体構造はステルス性を考慮して垂直面を減らしたものとなっている。また、ブランデンブルク級と同じく、対艦ミサイルの直撃から配線やパイプ類を守る特殊な船体構造を採用しており、さらに高張力鋼を使って防御力を増しているといわれている。運用人数も他国の同規模のフリゲートと比較して人数が多く、ドイツ艦らしいダメージコントロールを重視した防御力の高い艦艇となっている。

しかし一方で、主機方式に関しては、ブレーメン級(122型)以来踏襲されてきたCODOG構成ではなく、CODAG構成を採用している。これは戦後ドイツ初の国産戦闘艦であったケルン級(120型)でも採用されていたもので、機関出力に占めるディーゼルエンジンの比率が高いことから、構造が複雑になり、高速時の放射雑音も大きいかわり、高速時にもディーゼルエンジンを使用することで燃費を向上させることができる。巡航機としてはMTU 20V 1163 TB93ディーゼルエンジン、加速機としてはゼネラル・エレクトリック LM2500PF/MLGガスタービンエンジンが各2基搭載されている。推進器としては、5翔の可変ピッチ式スクリュープロペラが両舷に計2軸配置されており、巡航機と高速機は各推進器に1基ずつ、減速機を介して接続されて、これを駆動する[2]

装備[編集]

C4Iシステム[編集]

本級の搭載するすべてのセンサー・武器システムは、オランダのシグナール(Signaal、現 タレス・ネーデルラント)社によって開発されたSEWACO-FD 戦術情報処理装置を中核として連接されて、システム艦を形成している。

本級の搭載するSEWACO-FDは分散処理方式を導入しており、17基のMOC ワークステーション、2基の大型スクリーンを含み、主記憶装置も大容量化されている。またリンク 11およびリンク 16による戦術データ・リンクに対応している。

防空システム[編集]

APAR多機能レーダー

上述のとおり、TFC計画に基づいて開発された本級は、NAAWS (NATO Anti-Air Warfere System: NATO対空戦闘システム)を採用している。本級の搭載するNAAWSは、下記のサブシステムによって構成されている。

また、NAAWSには含まれないが、近距離での防空用としてRAM 近接防空ミサイルのMk.49 21連装発射機、また近距離での対空・対水上戦闘用として、オート・メラーラ社製の76mm単装速射砲が搭載されている。

NAAWSは、TACTICOS 戦術情報処理装置を中核とした半自動システムである。その火力の中核となるのがAPAR 多機能レーダーで、これは、目標を捜索して追尾するとともに、敵機を攻撃する際には、ミサイルの誘導も担当する。APARは、Xバンドを使用するフェーズドアレイレーダーであり、4面のアンテナを塔型マストに固定装備している。アンテナ1面あたり8発のミサイルを誘導できるため、システム全体では、最大で32個の目標と同時に交戦することができるが、敵がごく限られた方向から攻撃してきた場合には、同時交戦可能数はより少なくなる。さらに、200の対空目標と150の対水上目標を同時に処理できると主張されているが、探知距離は150kmと短い。そのため、遠距離での目標捜索を専門とするSMART-L 長距離捜索レーダーも同時に搭載されている。

艦対空ミサイルとしては、長距離用SM-2 Block IIIAと中・短距離用ESSMを搭載しており、アメリカ軍との弾薬共通化が図られている。また、アメリカ海軍と共同開発した近距離対空用RAMを搭載している。

またタレス製の電子光学追尾装置で主砲の射撃指揮が可能で、仮にレーダーが損傷したり、強力なECMで障害を起こしても主砲とRAMは使用可能だと言われる。

対潜・対水上戦システム[編集]

本級は、同世代のあらゆる西欧諸国のフリゲートと同様、中距離以遠での対潜戦闘は艦載哨戒ヘリコプターに依存している。ただし、近距離に敵潜水艦が出現した場合には、Mk.32 3連装短魚雷発射管から発射されるMU90 インパクト短魚雷によって対処することができる。なお、本級の船体設計の基礎となったブランデンブルク級においては、現在、遠距離での潜水艦探知を可能とする曳航ソナーが順次装備されているが、本級には今のところ搭載されてはいない。

一方、対水上火力としては、西側諸国で標準的な艦対艦ミサイルのひとつであるハープーンを4連装発射筒に収容して搭載する。また、哨戒ヘリコプターはシー・スクア空対艦ミサイルを装備可能であるが、これは射程が短いことから、対空火力が貧弱な小型舟艇に対してのみ用いられる。

配備[編集]

ザクセン級フリゲートは、建造当初は3隻とも2000年に編成された第1フリゲート戦隊(1. Fregattengeschwader)に配備されたが、第1フリゲート戦隊は第6フリゲート戦隊(6. Fregattengeschwader:1994年9月28日編成)と共に2006年1月に解隊され、旧第6フリゲート戦隊所属のブランデンブルク級フリゲート4隻とともに、第2フリゲート戦隊(2. Fregattengeschwader:1988年10月1日編成)に編入された。

同型艦一覧
# 艦名 造船所 起工 進水 就役
F219 ザクセン
Sachsen
B+V 1999年
2月1日
2001年
1月20日
2004年
11月4日
F220 ハンブルク
Hamburg
HDW 2000年
9月1日
2002年
8月16日
2004年
12月13日
F221 ヘッセン
Hessen
北海製作所 2001年
9月14日
2003年
7月26日
2006年
4月21日
Heppenser Groden海軍基地に停泊する独艦
手前から2番目にF219 ザクセン、一番奥にF220 ハンブルクが接岸している。
RIM-66 SM-2ミサイルを発射するF219 ザクセン
F220 ハンブルク
F221 ヘッセン


出典[編集]

  1. ^ 「世界のイージス艦とミニ・イージス艦 (特集・イージス艦発達史)」、『世界の艦船』第667号、海人社、2006年12月、 84-89頁、 NAID 40015140494
  2. ^ Wertheim, Eric (2007). Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World: Their Ships, Aircraft, and Systems. Naval Institute Press. ISBN 9781591149552. http://books.google.co.jp/books?id=TJunjRvplU4C. 

外部リンク[編集]