コルテノール級フリゲート

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コルテノール級フリゲート
HNLMS ABRAHAM CRIJNSSEN (F-816).JPEG
艦級概観
艦種 フリゲート
前級 ホラント級 (駆逐艦)
フリースラント級 (駆逐艦)
次級 ホラント級 (哨戒艦)
性能諸元
排水量 基準:3,050 t
満載:3,630 t
全長 130.5 m
全幅 14.6 m
喫水 4.3m
機関 COGOG方式
RM1Cガスタービンエンジン
(3.7 MW/5,000 hp)
2基
TM3Bガスタービンエンジン
(18.95 MW/25,410 hp)
2基
可変ピッチ・プロペラ 2軸
速力 30.0 ノット
航続距離 18ktで4,500海里
定員 176名
兵装 76mm 単装速射砲 1基
ゴールキーパー 30mmCIWS 1基
シースパロー短SAM 8連装発射機 1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 2基
Mk 32 連装短魚雷発射管 2基
艦載機 リンクスWG-13哨戒ヘリコプター 2機
C4I 海軍戦術情報システム
SEWACO IIリンク 11
レーダー LW-08 対空捜索用 1基
ZW-06 対水上捜索・航法用 1基
WM-25 射撃指揮用 1基
STIR 射撃指揮用 1基
ソナー SQS-505 艦首装備 1基
電子戦 スフィンクス電波探知装置 (前期型)
ラムセス電波探知妨害装置 (後期型)
Mk.137 6連装デコイ発射機 2基

コルテノール級フリゲートオランダ語: Kortenaer klasse fregatten)は、オランダ海軍が運用していた汎用フリゲートの艦級。標準フリゲート(S型フリゲート)とも称される[1][2]

来歴[編集]

本級は、1950年代に建造された戦後第1世代の駆逐艦であるホラント級およびフリースラント級の更新用として計画された。1960年代北大西洋条約機構(NATO)ではフリゲートの標準化を計画していたことから、1968年、オランダ海軍では、当時イギリス海軍が進めていたリアンダー級フリゲート後継艦(後の22型)の計画に参加することとした。1969年初頭の段階では、イギリス海軍が20隻、オランダ海軍が12隻を建造する計画であった。しかし後に、個艦防空ミサイルの機種選定を端緒として、船体設計などの要求事項に差異が顕在化し、1970年11月、オランダは計画から撤退した[3]

これを受けて、オランダ国内での独自設計が着手された。これによって建造されたのが本級である。なお、このように標準フリゲート(Standaardfregatten)としての計画があったことから、S型フリゲート(S-fregatten)とも称される[2]

設計[編集]

船体設計は、同時期のフランス海軍ジョルジュ・レイグ級駆逐艦と類似している。船首は逆向きのシアを付したクリッパー・バウ構造、船体は2層の全通甲板を備えた遮浪甲板船型で、15個の水密区画に区分されていた[1]。舵は半釣合舵1枚であるが、これもジョルジュ・レイグ級と同様である。復原性確保のため、長さ/幅比(L/B比)は9.0と、比較的幅広の船型が採択されたことから、所要の速力性能と両立できるよう、慎重に設計が進められた[2]。またフィンスタビライザー1組も装備されていた[1]

主機関は、先行するトロンプ級と同様、イギリス海軍21型フリゲートのものが踏襲されており、巡航用のロールス・ロイス タインRM1Cと高速用のロールス・ロイス オリンパスTM3Bを組み合わせたCOGOG方式とされた。機関部は高度に自動化されており、機関員はわずか29名で済んでいる[2]

なお機関部はパラレル配置を採用しており、前方から、前部補機室、第1機械室(オリンパス2基)、第2機械室(タイン2基および減速機)、後部補機室の順に配置されている。電源は、450ボルト、60ヘルツの三相交流であり、SEMT ピルスティクPA4ディーゼルエンジンによって駆動される出力750 kWの発電機を4基搭載した。また補助ボイラー2缶およびエバポレーター2基を備えていた[1]

装備[編集]

標準フリゲートとしての計画もあり、本級の装備は原則的にNATOの標準的なものを採用しているが、電子装備については極力国産化された[2]

C4ISR[編集]

本級はシステム艦として構築されており、その中核となる戦術情報処理装置としてはSEWACO-IIが搭載されている[1][2]

レーダーとしては、対空捜索用にはLバンドLW-08、対水上捜索用にはXバンドZW-06を搭載した。またソナーとしては、前期建造艦6隻ではSQS-505、後期建造艦4隻ではSQS-509を搭載した[1]。なお、対空捜索レーダーを3次元式のSMART-Sに換装するとともにAN/SQR-18A曳航ソナーを追加搭載する計画もあったが、これは断念された[2]

武器システム[編集]

艦対艦ミサイルとしては、アメリカ製のハープーンを採用した。平時の搭載数は2発ないし4発であったが、戦時には定数の8発を搭載する計画であった[1][2]

個艦防空ミサイル・システム(PDMS)としては、NATOシー・スパロー・ミサイル・システムを搭載する。艦橋直前の01甲板レベルにMk.29 8連装ミサイル発射機を搭載しており、ミサイルの搭載弾数は24発である。その射撃指揮装置は砲射撃指揮装置と兼用で、前檣上にWM-25を、また艦橋構造物上にSTIRを備えているが、このうちWM-25には捜索中追尾(TWS)能力が付与されていた[1][2]

主砲としてはオート・メラーラ社製の76mm単装速射砲を採用しており、最初の2隻は艦首甲板とハンガー上に1基ずつ装備していた。3番艦以降ではハンガー上の砲は40mm単装機銃に変更され、76mm単装速射砲は艦首甲板の31番砲の1基のみとなったほか、1982年には1番艦の32番砲も40mm単装機銃に換装された。また1984年には、2番艦の32番砲がゴールキーパー 30mmCIWSに換装され、1989年より、残る全艦も同様にゴールキーパーを搭載する改修を受けた[1]

電子戦[編集]

初期建造艦5隻では、電子戦支援機能のみのスフィンクス電波探知装置を搭載していたが、後期建造艦5隻では、電子攻撃にも対応したラムセス電波探知妨害装置に変更された。またデコイ発射機としては、当初はイギリス製のコーバスを搭載していたが、後にアメリカ製のMk 36 SRBOCに換装された[1]

同型艦一覧[編集]

本級は、1974年に8隻、1976年には4隻が発注され、建造は1975年より開始された。ただし、1976年発注分の2隻はギリシャ海軍に売却されたため、1978年から1983年までに10隻就役した。その後、1993年より順次退役を開始し、2003年に「ブロイス・ヴァン・トレスロン」 (F824)が退役したことで、完全に退役した。退役艦は全艦が海外に売却され、8隻がギリシャ海軍、2隻がアラブ首長国連邦海軍で再就役している。また、パフラヴィー朝時代のイラン海軍が改良型コルテノール級を8隻発注したが、こちらは1979年のイラン・イスラム革命勃発によりキャンセルされた。

なお、のちに、本級をもとに設計変更し、主砲や航空設備などとバーターでターター・システムを搭載した防空艦として、ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲートが建造された。

 オランダ海軍 退役/再就役後
# 艦名 造船所 起工 進水 就役 退役 再就役先 # 艦名
F807 コルテノール
HNLMS Kortenaer
ロイヤル
スヘルデ
1975年
4月
1976年
12月
1978年
10月
1997年 ギリシャの旗
ギリシャ海軍
F462 コンドゥリオティス
Κουντουριώτης
F808 カレンブルク
HNLMS Callenburgh
1975年
9月
1977年
3月
1979年
7月
1994年 F459 アドリアス
Αδριάς
F809 ヴァン・キンスベルケン
HNLMS Van Kinsbergen
1975年
9月
1977年
4月
1980年
4月
1995年 F461 ナヴァリノン
Ναβαρίνον
F810 バンケルト
HNLMS Banckert
1976年
2月
1978年
9月
1980年
10月
1993年 F460 アイガイオーン
Αιγαίον
F811 ピエト・ハイン
HNLMS Piet Hein
1977年
4月
1978年
6月
1981年
4月
1998年 アラブ首長国連邦の旗
アラブ首長国連邦海軍
F02 アル・エミラート
Al Emirat
F816 アブラハム・クリンセン
HNLMS Abraham Crijnssen
1978年
10月
1981年
5月
1983年
1月
1997年 F01 アブ・ダビ
Abu Dhabi
F823 フィリップス・ヴァン・アルモンド
HNLMS Philips van Almonde
ウィルトン・
フェイエノールト
1977年
10月
1979年
8月
1981年
12月
2002年 ギリシャの旗
ギリシャ海軍
F465 テミストクレス
Θεμιστοκλής
F824 ブロイス・ヴァン・トレスロン
HNLMS Bloys van Treslong
1978年
5月
1980年
11月
1982年
11月
2003年 F466 ニケフォロス・フォカス
Nikiforos Fokas
F825 ヤン・ヴァン・ブラケル
HNLMS Jan van Brakel
ロイヤル
スヘルデ
1979年
11月
1981年
5月
1983年
4月
2001年 F464 カナリス
Κανάρης
F826 ピーテル・フローリス
HNLMS Pieter Florisz
(ex-Willem van der Zaan)
1981年
1月
1982年
5月
1983年
10月
2001年 F463 ブブリナ
Μπουμπουλίνα

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. pp. 379-380. ISBN 978-0870212505. 
  2. ^ a b c d e f g h i Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 277. ISBN 978-1557501325. 
  3. ^ Norman Friedman (2012). “The Post Carrier Generation”. British Destroyers & Frigates - The Second World War & After. Naval Institute Press. pp. 274-313. ISBN 978-1591149545. 

準同型艦・関連項目[編集]

ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲート
主砲や航空設備などとバーターでターター・システムを搭載した防空艦。2隻が建造され、1985年より就役を開始したが、2005年に2隻そろってチリ海軍に売却された。Mk 74 GMFCSや3次元レーダーを搭載しないなど、アメリカ製のターター・システムとは異なる構成となっており、また、主砲を搭載しない一方でPDMSは残すなど、特徴的な設計である。
ブレーメン級フリゲート ドイツ海軍
機関がCODOG方式のガスタービンエンジン2基とディーゼルエンジン2基で51,600HP、CIWSがゴールキーパー1基からMk 49 RAM近接防御SAM 21連装発射機 2基、艦橋上のレドームの架台形状、煙突前部にラティス・マストの追加などの相違がある。
エリ級フリゲート ギリシャ海軍
ギリシャ海軍が、オランダ海軍の1976年発注分2隻を建造途中に購入。76mm単装砲が2m延長されたヘリコプター格納庫上に追加されている。CIWSが30mm ゴールキーパー×1基から20mm ファランクス×2基に変更されるなどの相違がある。