ホバート級駆逐艦
| ホバート級駆逐艦 | |
|---|---|
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| 基本情報 | |
| 艦種 | ミサイル駆逐艦 |
| 命名基準 | オーストラリアの都市名 |
| 運用者 |
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| 建造期間 | 2012年 - 2020年[1] |
| 就役期間 | 2017年 - 就役中 |
| 原型艦 |
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| 建造数 | 3隻 |
| 前級 | パース級駆逐艦 |
| 要目 | |
| 満載排水量 | 6,350 t |
| 全長 | 146.7 m[1] |
| 最大幅 | 18.6 m |
| 吃水 | 7.2 m |
| 機関 | CODOG方式 [1] |
| 主機 |
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| 推進 | スクリュープロペラ×2軸 |
| 最大速力 | 28ノット (52 km/h)[1] |
| 航続距離 | 5,000海里(18kt巡航時) |
| 乗員 | 205名[1] |
| 兵装 |
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| 搭載機 | LAMPSヘリコプター×1機[1] |
| C4ISTAR | |
| FCS |
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| レーダー | |
| ソナー |
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| 電子戦・ 対抗手段 | |
ホバート級駆逐艦(ホバートきゅうくちくかん、英語: Hobart-class destroyer)は、オーストラリア海軍のミサイル駆逐艦の艦級[注 1]。イージス艦であり、スペイン海軍のアルバロ・デ・バサン級を元に設計を修正した派生型である。
来歴
[編集]オーストラリア海軍では、もともとは軍事技術はイギリス海軍に頼っていたが、1960年代に入って世界的に駆逐艦のミサイル艦化が進むと、諸外国の趨勢にあわせてアメリカ合衆国製のターター・システムの導入を図り、1962年・1963年にパース級3隻を発注した[3]。同級はチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の設計を修正したもので、海上自衛隊では「あまつかぜ」とほぼ同世代にあたり、オーストラリア海軍の主力として長く運用されたものの、老朽化・陳腐化に伴って2000年までに運用を終了した[4]。
オーストラリア海軍には、パース級以外の艦隊防空ミサイル搭載艦として、アメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートをライセンス生産したアデレード級フリゲートがあったものの、同級は3次元レーダーを備えていなかったことから、パース級の退役により、同海軍の艦隊防空能力に深刻な問題が生じることになった[5]。このため、SEA1400計画として、新防空艦の建造が模索されるようになった(後にSEA4000と改称)。計画そのものは1990年代より開始されていたものの、財政・政治的な問題から遅れを生じた[6]。この間、キッド級ミサイル駆逐艦の購入も検討されたものの、費用対効果の問題などから断念されている[5]。
その後、パース級の運用終了後になって具体的な検討が進められるようになった。アメリカ合衆国のギブス&コックス社はアーレイ・バーク級派生型[注 2]、スペインのナバンティア社はアルバロ・デ・バサン級派生型、ドイツのブローム・ウント・フォス社はザクセン級派生型、イギリスのBAE社は45型派生型を提示しており、2005年8月にはギブス&コックス社案の採択が報道されたこともあったものの、2007年6月、ナバンティア社案の採択が決定され、10月に建造契約が締結された。これによって建造されたのが本級である[6]。
設計
[編集]上記の経緯より、基本設計はスペイン海軍のアルバロ・デ・バサン級フリゲートを元に、その5番艦である「クリストーバル・コロン」(F-105)に準じた修正を加えるとともに、オーストラリア海軍の要求に基づいて変更したものとなっている[2]。船体設計の面では、全長にして30センチ、幅にして7センチ拡大し、排水量にして400トン大型化しただけで、艦橋のうえに多機能レーダーのアンテナを貼り付けた塔状構造物を配するという全般配置や、その装備高を確保するための傾斜船型は踏襲されており、外見的には大きな変化はない。ただし艦橋周囲の配置や艦橋後部・前部煙突の形状変更、後部イルミネーターが設置された台の形状など、細かい差異が生じている[6]。
機関はバサン級と同様で、キャタピラー社製ディーゼルエンジンとゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンによるCODOG方式が採用された。ただしF-105に準じた修正としてバウスラスターが導入されている[2]。また航続距離も延伸されており、上記の排水量増大の一環として、燃料タンクも拡張されたものとみられている[6]。
装備
[編集]C4ISTAR
[編集]本級の中核的な装備となるのがイージス武器システム(AWS)であり、その主センサーとなるAN/SPY-1D(V)のアンテナは、艦橋構造物の四方に固定配置されている。搭載するバージョンはベースライン7.1であり、戦術データ・リンクとしてリンク 11および16に対応するほか、共同交戦能力(CEC)に対応するため、AN/USG-2A CETPSも搭載される[6]。
なおイージスシステムを選定するにあたり、アメリカ製の複雑なイージスシステムを国内建造の艦にマッチングしうるかが不安視されたことから、既にイージス艦の運用経験を積んでいた海上自衛隊からの助言を受けている[7]。
2020年5月から6月にかけて、「ホバート」「ブリスベン」のイージスシステムはアップグレードを受けた[8]。
武器システム
[編集]艦対空ミサイルの発射装置として、艦首甲板に48セルのMk.41 VLSを備えている。ミサイルとしては、SM-2ブロックIIIBを32発、ESSMを64発搭載予定とされており、いずれも原型艦と同様の構成となっている。ただし2022年以降、SM-2ブロックIIIBは、より長射程でアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)に対応したSM-6により更新される予定である。また下記のトマホークの運用が開始された場合、ミサイルの搭載数にも変動が予想される[9]。
艦対艦ミサイルとしてはハープーンの4連装発射筒を2基搭載する設計だったが[6]、3番艦ではNSMに変更された[10]。また本級では、対地火力投射用として、トマホーク巡航ミサイルの運用にも対応予定とされ[9]、「ブリスベン」は2024年12月にアメリカ西海岸沖で、オーストラリア海軍の艦艇として初めてトマホーク巡航ミサイルの発射に成功した[11]。
艦砲としては、原型艦と同系列だがより長砲身の62口径127mm単装砲(Mk.45 mod.4 5インチ砲)を1基備える。またCIWSについては、原型艦ではメロカを後日装備予定とされつつ実現していないのに対し、本級では、従来よりオーストラリア海軍が採用してきたファランクスが搭載されている[6][4]。
搭載機
[編集]船楼後端には中型ヘリコプター1機を収容できる格納庫が設置されており、船尾甲板には26.4×17メートルのヘリコプター甲板が設置されている[4]。搭載機としてはMH-60R LAMPSヘリコプター[1]や、無人航空機(UAV)の運用能力も付与される[9]。
比較表
[編集]バッチ1
AMOD改修艦
フライトIIA
(SM-2MR, SM-3, 07式)
(SM-2, SM-6, ESSM)
(SM-2)
(SM-2, VLA, TLAM)
(SM-2, ESSM, VLA, TLAM)
(天竜, 紅鮫)
同型艦
[編集]一覧表
[編集]| 艦番号 | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 |
|---|---|---|---|---|
| DDG 39 | ホバート HMAS Hobart |
2012年 9月6日 |
2015年 5月23日 |
2017年 9月23日 |
| DDG 41 | ブリスベン HMAS Brisbane |
2014年 2月3日 |
2016年 12月15日 |
2018年 10月27日 |
| DDG 42 | シドニー HMAS Sydney |
2015年 11月19日 |
2018年 5月19日 |
2020年 5月18日 |
運用史
[編集]「ホバート」は2022年に日本で開催された国際観艦式に参加した[12]。
「シドニー」は補給と休養のため2025年6月3日から6月14日まで海上自衛隊横須賀基地に寄港[13][14]。
「ブリスベン」は2025年8月にイギリス海軍航空母艦「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心とした空母打撃群(CSG25)に参加し、9月14日から16日にかけては海上自衛隊護衛艦「かが」と対潜戦やLINKEXといった各種戦術訓練、洋上補給、クロスデッキなどを実施している[15]。9月19日、護衛艦「くまの」と共同訓練を実施した[16]のち、海上自衛隊横須賀基地に入港した。「ブリスベン」は、オーストラリア軍艦として初めて日本側の維持整備を受けた[11][15][17]。
画像集
[編集]- 国際観艦式に参加中の「ホバート」
- 海自護衛艦「くまの」と共同訓練を実施中の「ブリスベン」
- 海自護衛艦「はぐろ」と共同訓練を実施中の「シドニー」
脚注
[編集]注釈
[編集]- ↑ 公式の艦種呼称は「防空駆逐艦」(Air Warfare Destroyer, AWD)とされている[2]。
- ↑ ギブス&コックス社の案では、基準排水量にして5,900トンに艦型を縮小し、多機能レーダーもAN/SPY-1Fにダウングレードするものとされていた[6]。
- ↑ DDG-79とDDG-80は54口径。DDG-81から62口径
- ↑ DDG-85から後部の1基のみ
- ↑ 1番艦は90式、2番艦は17式
- ↑ フライトIIまではハープーン4連装発射筒が2基搭載されていたが、フライトIIA以降から搭載されなくなった。しかし、必要時には搭載できるようにスペースは確保されている。
- ↑ 通常は搭載されていない。
出典
[編集]- 1 2 3 4 5 6 7 海人社 2020.
- 1 2 3 AWD Alliance 2017.
- ↑ 高須 2000.
- 1 2 3 海人社 2016.
- 1 2 岡部 2000.
- 1 2 3 4 5 6 7 8 大塚 2013.
- ↑ 香田 2016.
- ↑ Ridzwan Rahmat (2020年6月30日). “Australia carries out in-country upgrades, maintenance of Aegis systems on Hobart class”. janes.com. 2025年1月25日閲覧。
- 1 2 3 大塚 2016.
- ↑ Ben Felton (2024-06-06), “HMAS Sydney fitted with Naval Strike Missile”, Australian Defence Magazine
- 1 2 高橋浩祐 (2025年9月19日). “豪イージス艦ブリスベン、海自横須賀基地に寄港 トマホーク発射能力有する 日本が初の維持整備へ”. Yahoo!ニュース (ヤフー株式会社) 2025年9月20日閲覧。
- ↑ “海自「国際観艦式」に参加した12カ国の艦艇を一挙紹介!”. MAMOR-WEB (2023年6月23日). 2025年9月20日閲覧。
- ↑ “豪駆逐艦が横須賀に入港”. 産経新聞 (2025年6月3日). 2025年9月21日閲覧。
- ↑ “横須賀基地に豪海軍「シドニー」寄港”. 神奈川新聞 (2025年6月3日). 2025年9月21日閲覧。
- 1 2 “急きょ来日の「見慣れぬイージス艦」横須賀に入港したワケとは? じつは豪州軍艦として “史上初” するため来ました!”. 乗りものニュース (2025年9月20日). 2025年9月20日閲覧。
- ↑ 日豪共同訓練(日豪トライデント25-3)について 海上幕僚監部(2025年9月19日)
- ↑ “豪州の艦艇、日本で初めて維持整備へ 海自横須賀基地に入港”. 日本経済新聞 (2025年9月19日). 2025年10月18日閲覧。
参考文献
[編集]- AWD Alliance (2017) (英語), The Hobart Class - Differences from the F100 Class 2018年1月6日閲覧。
- 海人社 編「世界の新型水上戦闘艦 ラインナップ (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、78-89頁、2016年3月。 NAID 40020720329。
- 海人社 編「異例の洋上式典 豪イージス駆逐艦「シドニー」就役!」『世界の艦船』第929号、海人社、69-73頁、2020年8月。 NAID 40022294390。
- 大塚好古「ホバート級DDG (世界の新型水上戦闘艦ラインナップ)」『世界の艦船』第782号、海人社、82-83頁、2013年8月。 NAID 40019721131。
- 大塚好古「世界のイージス艦総覧 (特集・世界のイージス艦)」『世界の艦船』第844号、海人社、78-87頁、2016年9月。 NAID 40020917927。
- 岡部いさく「注目のANZAC海軍艦艇」『世界の艦船』第575号、海人社、94-99頁、2000年11月。 NAID 40002155931。
- 香田洋二「現代水上戦闘艦の新傾向を読む (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、70-77頁、2016年3月。 NAID 40020720323。
- 高須廣一「ANZAC海軍 その過去・現在・未来」『世界の艦船』第575号、海人社、82-87頁、2000年11月。 NAID 40002155929。
関連項目
[編集]- ハンター級フリゲート - 本級に続いてオーストラリア海軍が建造しているイージス艦。こちらは汎用艦と位置付けられている。