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RIM-174スタンダードERAM

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
RIM-174 ERAM
Standard SM-6
種類 艦対空ミサイル
原開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
運用史
配備期間 2011
配備先  アメリカ海軍
 オーストラリア海軍[1]
 海上自衛隊
開発史
製造業者 レイセオン
製造期間 2009 -
諸元
重量 3,300 lbs (1500 kg)
全長 21 ft 6 in (6.55 m)
直径 21 in (0.53 m) max.

弾頭 爆破破砕弾頭
信管 レーダー・接触信管

エンジン デュアル・スラスト固体燃料ロケット
翼幅 61.8 in (1.57 m)
最大高度 > 110,000 ft (33,000 m)
誘導方式 慣性誘導、アクティブ・レーダー・ホーミング、セミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
発射
プラットフォーム
水上艦、タイフォンミサイルランチャー、戦闘機
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RIM-174スタンダードERAM(RIM-174 Standard Extended Range Active Missile (ERAM))またはスタンダード・ミサイル6 (SM-6) は、アメリカ海軍で運用中の長射程艦対空ミサイル。アメリカの艦対空ミサイル・弾道弾迎撃ミサイルシリーズ「スタンダードミサイル」の最新モデルであり、対艦ミサイルとしての能力も持つ。

概要

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SM-6は固定翼機ヘリコプターUAV、対艦巡航ミサイルなどを対象とする長距離対空ミサイルであり、対艦ミサイルでもある[2]

ミサイル本体はスタンダードミサイルの射程延長型の弾体主要部にSM-2の弾頭AIM-120空対空ミサイルのアクティブ・シーカーを組み合わせており[3]、ブースターによって初期加速を行う。誘導にアクティブ、セミアクティブ双方のモードを利用することができる。優れたシグナル・プロセッシングと誘導制御の能力を得て、高速の目標や艦のイルミネーターの範囲外にいる目標の捕捉も可能となった。これによりイージスシステムのイルミネーターへの負担が軽減され、同時交戦目標数の飛躍的な増加が期待できる。

イージス艦からの発射においては、自艦の誘導波以遠であっても、共同交戦能力(CEC)による中間誘導を受けることで射程が延伸されている。目標近くでは終末アクティブ誘導に切り替わる。対弾道ミサイル、対航空機、対地・対艦巡航ミサイルの迎撃と、対艦ミサイルとしての攻撃用途にも使用できる。もともとはイージス・ベースライン9での運用予定で開発されたが、現在ではイージス・ベースライン5以降の艦から発射が可能である[2]

開発・配備

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SM-6の構造

基本的には、先行するRIM-156 SM-2ERブロックIVを元に、セミ・アクティブ・シーカーをAIM-120のアクティブ・レーダー・ホーミングに置換した[4]ものである。

海軍は2004年に開発を開始し、レイセオンと契約した。実射試験はホワイトサンズ・ミサイル実験場で行われ、一回目の試験は2008年6月に二回目は9月に行われ、目標へ接触したが、完全には破壊できなかった。翌年2009年8月の試験では成功を収め、同年には低率初期生産が開始された[5]。2010年5月に海上での試験に入り[6]、2011年には初期作戦能力を獲得した。

すべてのSM-6はレッドストーン兵器廠にあるレイセオン工場で最終組立がなされる[7]

アメリカ海軍およびオーストラリア海軍が採用を決定しており、オーストラリア海軍はイージスシステムを採用したホバート級駆逐艦へ搭載する予定で、共同交戦能力を介してE-7と連携することで能力をさらに発揮できると期待している[1]

アメリカ国防総省ミサイル防衛局と米海軍は、SM-6を基にして終末段階での弾道ミサイル防衛システム用の弾道弾迎撃ミサイルを開発する予定を立てている。これはSea-based terminal (SBT) と呼ばれており、インクルメント1が2015年頃に、インクルメント2が2018年頃に導入される。開発後にはミッドコース段階での迎撃を担当するRIM-161スタンダード3弾道弾迎撃ミサイル(SM-3)とともにイージス弾道ミサイル防衛システムを構成することになる[8]

2014年10月には、レイセオンが2発のSM-6を用いて対艦ミサイルと巡航ミサイルをエンゲージ・オン・リモートで迎撃したと発表した。このシナリオでは、イージス駆逐艦からの情報を元にイージス巡洋艦が発射したミサイルが両方の目標を迎撃したと伝えられている[9]。エンゲージ・オン・リモートはミサイルを発射する艦以外のセンサー(他のイージス艦SPY-1レーダーなど)で発射から迎撃までの全ての誘導を行えるシステムで、ミサイルの射程を最大限に活かすことができる[10]

2014年に初期作戦能力(IOC)を取得した[2]

2015年5月、SM-6は低率初期生産(LRIP)から量産体制へと移行した。これにより、コストの削減と生産数増加が見込まれる[11]

2016年1月、ハワイのPacific Missile RangeにおいてSM-6の対水上射撃試験を実施、標的艦である退役したO.H.ペリー級ルーベン・ジェームズに対しアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズからSM-6を射撃、標的艦に命中・撃沈に成功し対水上射撃能力を証明した[12][13]

2017年4月27日、ハワイの太平洋ミサイル射場で実施されたアメリカ海軍の試験で、4発発射し4発とも標的に命中し、完全作戦能力(FOC)に達したことが証明された[14]

2018年1月17日、アメリカ海軍は現在の34.29cm(13.5インチ)に代えて53.34cm(21インチ)ロケットモーターを搭載するSM-6ブロックIBの開発計画を承認した。この新型はミサイルの射程と速度を大幅に向上し、極超音速及び長射程の対地上戦能力を可能にする[15][16]

2020年11月、アメリカ陸軍は地上目標を攻撃できる陸上型長距離ミサイルとして中距離能力を得るためにSM-6を選択した。陸軍はSM-6を地上配備型のトマホーク巡航ミサイルと並行して使用し、2023年後半までに実戦配備する計画である[17]

2021年5月、アメリカ国防総省のミサイル防衛局は米海軍と協力し、SM-6による弾道ミサイル迎撃試験を実施した。使用されたのは、弾道ミサイル防衛に対応したDualⅡと呼ばれるタイプのもので、試験区域内(場所未公表)より発射された中距離弾道ミサイル標的に対し、2発のSM-6を一斉射したが、迎撃に失敗した[18][19]

2022年10月、アメリカ国防総省の国防安全保障協力局は、アメリカ国務省が日本政府に対して最大32発のSM-6ブロックⅠとその関連機器を4億5000万ドルで売却することを許可したと発表した[20]

2023年2月、防衛装備庁は米海軍とSM-6の調達について契約した[21]

2023年11月19日、米太平洋陸軍司令官のチャールズ・フリン大将は2024年中にタイフォン ミサイル ランチャーをインド太平洋地域に配備する事を明らかにした。タイフォン・ウェポン・システムはSM−6、トマホークミサイルを地上発射するシステムで、2022年12月7日に米陸軍に引き渡されている。[22]

2024年7月9日、RIMPAC演習に参加している空母カール・ヴィンソン艦載機のF/A18戦闘機にAIM-174Bという名称でSM6の空対空バージョンが公開された。 Naval Newsは「米海軍報道官がSM-6の空対空バージョンを公式に認め、既にAIM-174Bが実戦配備されていると述べた」「恐らくカール・ヴィンソンの第2空母航空団で初期作戦能力を獲得した状態だろう」と報じている[23]

参照

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  1. ^ a b c Defence White Paper 2009”. Australian Government, Department of Defence. 2012年3月30日閲覧。
  2. ^ a b c 「対中国/北朝鮮、イージス艦8隻の国土防衛能力」『軍事研究』2017年7月号、36-37頁
  3. ^ Semaphore Issue 7, June 2009”. Royal Australian Navy (7, June 2009). 2012年3月30日閲覧。
  4. ^ Raytheon Missile Systems Standard Missile 6, Accessed February 10, 2011.
  5. ^ Navy Program Guide 2010”. United States Navy. 2012年3月30日閲覧。
  6. ^ Raytheon's Standard Missile-6 Program Begins Sea-Based Flight Testing
  7. ^ Kenneth Kesner (2012年3月21日). “Raytheon missile plant at Redstone Arsenal on schedule despite storms, federal budget worries (with video)”. The Huntsville Times. http://blog.al.com/huntsville-times-business/2012/03/raytheon_missile_plant_at_reds.html 2012年3月30日閲覧。 
  8. ^ Ronald O'Rourke (2011年4月19日). “Navy Aegis Ballistic Missile Defense (BMD) Program: Background and Issues for Congress” (PDF) (英語). Congressional Research Service. 2012年3月30日閲覧。
  9. ^ Raytheon SM-6s Missiles intercept targets in 'engage on remote' tests” (英語). Raytheon. 2015年7月30日閲覧。
  10. ^ Future Integrated Fire Control ICCRTS 2005” (英語). Northrop Grumman. 2015年7月30日閲覧。
  11. ^ Raytheon's SM-6 Surface-to-Air Missile moves from low-rate to full-rate production”. Raytheon. 2015年7月30日閲覧。
  12. ^ The US Navy Can Now Prove Its New Anti-Ship Missile Is a Real Killer
  13. ^ Navy Sinks Former Frigate USS Reuben James in Test of New Supersonic Anti-Surface Missile
  14. ^ Raytheon: Standard Missile-6 passes rigorous graduation tests - Apr 27, 2017
  15. ^ Navy seeks $38.2 million reprogramming for hypersonic, extended range upgrade to SM-6”. Inside Defense. 2020年3月6日閲覧。
  16. ^ Navy looking to increase range, speed of SM-6 with larger rocket motor”. Inside Defense. 2019年1月20日閲覧。
  17. ^ Army Picks Tomahawk & SM-6 For Mid-Range Missiles. Breaking Defense. 2020年11月6日、2022年8月23日閲覧。
  18. ^ “ミサイル迎撃実験に失敗 米軍”. 時事ドットコムニュース (時事通信). (2021年5月31日). オリジナルの2021年6月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210602213320/https://www.jiji.com/jc/article?k=2021053100197&g=int 2021年5月31日閲覧。 
  19. ^ MDA Test Does Not Intercept Target” (英語). U. S. DEPARTMENT OF DEFENSE MISSILE DEFENSE AGENCY. 2021年5月31日閲覧。
  20. ^ Japan – Standard Missile 6 Block I (SM-6 Blk I) Missiles | Defense Security Cooperation Agency”. www.dsca.mil. 2023年5月1日閲覧。
  21. ^ 令和4年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)防衛装備庁、2023年2月27日契約。2023年4月11日閲覧
  22. ^ Roque, Ashley (2023年11月18日). “Army’s new Typhon strike weapon headed to Indo-Pacific in 2024” (英語). Breaking Defense. 2023年11月20日閲覧。
  23. ^ 米海軍、数年前から噂されてきたSM-6の空対空バージョンを公開”. grandfleet.info (2024年7月9日). 2024年7月15日閲覧。

関連項目

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