駅そば
駅そば(えきそば)は、日本の鉄道駅構内において蕎麦(そば)を提供する飲食店及びその蕎麦である。多くが立ち食いそば店の形式で運営されている。
概要
駅構内における立ち食いそば店は、主として、駅弁を販売する業者により運営されてきた店舗と、鉄道事業者(主に旧国鉄)が余剰人員対策として直営(あるいは関連会社)により展開してきた店舗に大別される[1]。明治時代後期には、そばを提供する店が軽井沢駅、長万部駅、森駅にできた[2]。長かった列車の停車時間や乗り換え時などの空き時間に気軽に摂食出来るサービスとしても広まり[3]、またホーム上の駅そば店では停車時間の短縮に対応して、列車内へ持ち込んで食べられるように持ち帰り容器込みで販売される形態も広まった。
しかし元々の運営形態である「駅弁販売業者の運営」と「鉄道事業者の余剰人員対策」は、前者が駅弁事業の不振や経営者の高齢化により事業者が撤退、後者は余剰人員そのものの整理・鉄道事業者内のグループ再編により閉店が相次いでおり、その後継として鉄道事業者系の外食企業が参入するケースが増えており、元々別事業者による運営だったことから駅毎に異なっていた駅そばの味付けが画一化される傾向にあると報じられている(かつてJR東日本駅構内の駅そばの大半を、同社の子会社である日本レストランエンタプライズが「あじさい茶屋」として統一した際、各店の味が同じで味も平凡なために苦情が相次いだという[1])。また(駅弁事業の不振にもつながることだが)鉄道そのものの利便性が向上し、駅に滞在しなければいけない時間が減少していることも、駅そば店にとって逆風となっているとの指摘もある[3]。
屋号
鉄道事業者ごとに、関連会社によるチェーンを展開したり、共通の屋号を設けている例がある。また、駅弁店などが複数の駅で営業している場合も見られる。一方で、駅によって独自の屋号を持つことも多い。
- あじさい茶屋、大江戸そば、あずみ、小竹林:東日本旅客鉄道(JR東日本)・首都圏新都市鉄道
- ちかてつそば、めとろ庵:東京地下鉄(東京メトロ)
- 印旛そば : 京成電鉄
- えきめんや、えきめん茶屋:京浜急行電鉄
- 渋谷しぶそば:東京急行電鉄
- 狭山そば:西武鉄道
- 高幡そば:京王電鉄
- 箱根そば:小田急電鉄
- 汽笛亭:東海旅客鉄道(JR東海)
- 麺家、かぐら、おあがりや:西日本旅客鉄道(JR西日本)
- 麺座、秀吉(ひできち)(※):京阪電気鉄道
- 阿倍野庵、上六庵、鶴橋庵:近畿日本鉄道
- 南海そば:南海電気鉄道
- 阪急そば:阪急電鉄
- 阪神そば、戎屋うどん、六甲庵:阪神電気鉄道
- 山陽そば:山陽電気鉄道
- 高速そば:神戸高速鉄道
- めりけんや(うどん店):四国旅客鉄道(JR四国)
- 壽軒、東筑軒:九州旅客鉄道(JR九州)
- やりうどん:西日本鉄道(西鉄)
西日本、特に関西ではうどんがメニューの中心だが、屋号には「そば」を用いていることが多く、蕎麦の販売割合は4〜5割程度との調査結果がある[4]。要因のひとつとして「そばの方が早く食べられるイメージがある」との見解が示されている[4]。
関連事項
脚注
- ^ a b 伊藤唯行 (2016年3月2日). “変わる首都圏の駅そば 老舗から系列へ…画一化に嘆きも”. 朝日新聞 2016年3月14日閲覧。
- ^ 坂崎仁紀『ちょっとそばでも』廣済堂出版、2013年。
- ^ a b “函館から消える駅そば 五稜郭駅内、店舗老朽化で”. 北海道新聞. (2016年2月28日) 2016年3月14日閲覧。
- ^ a b “<データ読解>駅の立ち食い、うどん優勢”. 日本経済新聞(日経ネット関西版). (2008年3月10日)