茶髪

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茶髪(ちゃぱつ)とは、茶色に染めた、或いは脱色したの毛をさす俗語。

髪をブリーチで明るくしている少年

茶髪の流行

白髪染めからおしゃれ染めへ

  • 毛染めの歴史は古く、日本では1183年寿永2)、斉藤実盛が年老いていると敵に侮られぬよう、白髪を墨で黒く染め、木曾義仲との合戦に挑んだと源平盛衰記平家物語で記録されている。[1]
  • その後明治半ばまで、タンニン酸鉄分を用いたおはぐろ式白髪染めが用いられるものの、1907年明治40年)、西洋から輸入された酸化染料を用いた毛染めが発売され、大正時代には過酸化水素水を用いたもの、1960年代には黒、褐色、栗色などのバリエーション豊かな毛染めが出回った。
  • それまで主に白髪染めとしての方便でしか用いられなかった毛染めは、1970年代には若い女性の間でおしゃれ染めとして利用されるようになる。しかし新生毛の手入れの煩わしさ、髪が傷む等の理由により、再び染毛剤は、白髪染めが中心となる。
  • 1980年代には、ヤンキー暴走族の増加、ロックの影響を受けた一部の反社会的な若者の間でブロンドハイライト(髪型の一部をブリーチして明るく染める髪型、現代では「メッシュ」とも呼ばれる)が流行し、同時に松田聖子など髪を染めない清純派アイドルも支持され、それ以来若者の髪への染色は反社会的なものとみなされ排他される風潮が生じるようになった。ちなみに当時は今のような明るい脱色剤はほぼ流通しておらず、オキシドールを髪に塗る方法が用いられていた。

1990年代の茶髪ブーム

  • サーファーブーム1990年に入ると、サーフィンを愛好する人々(サーファー)が青年の羨望の的となり、太陽と潮風で自然に焼けたサーファーの髪を真似した丘サーファーが増加。ヤンキーとは違ったライトで爽やかな脱色を施す一部の若者が出現する。それまで白髪染めでしか販売されていなかった染毛剤は、おしゃれ染めを目的とするヘアカラー・ヘアマニキュア・ブリーチ(脱色剤)として販売を始める。
  • Jリーグ開幕景気1993年にはJリーグが設立され、1990年代の茶髪ブームが本格化する始まりとなった。当時のJリーガーは元より、当時中学生や高校生だった1970年代後半生まれの世代にも、サーファー風の脱色や茶色に染めた髪の毛が流行した。
  • コギャルブーム1996年から1999年にかけては、安室奈美恵のファッションが1980年代前半生まれの少年層で大ブレイクし、その中でも女性は「コギャル」と呼ばれるムーヴメントを巻き起こした。このコギャルのファッションに見られる茶色い髪の毛が、「茶髪」としてマスコミなどで大々的に紹介された。

1995年には『現代用語の基礎知識』に初収録され、1998年には広辞苑第五版にも収録された。

大衆化する茶髪

  • それに伴いヘアカラーの市場も爆発的に拡大し、ドラッグストアからスーパーマーケットコンビニエンスストアまで幅広く流通されるようになる。「髪が黒いと重く見える」という考えが広がり、安価かつ容易にイメージチェンジもできることから、徐々に茶髪は若者の間で広がり、中年女性まで支持された。かつての染髪に対する悪いイメージも「仕事ができれば茶髪もかまわない」という考えを持つ人々が増加し、1997年、ポーラ文化研究所では「もはや黒は日本人の髪の象徴ではなく、黒は選択肢のひとつに過ぎない」と発表した[2]
  • 社会人の間でも、企業や職種によって茶髪の規制緩和は進んでおり[3]、男性はデザイン・アパレル、ファッションなどの職業やプログラマブルーカラー職種を中心に、女性は一部の大手企業を除き[4]公務員も含め、ほとんどの業種で落ち着いた色調の茶髪に限り許容されるようになってきている。大阪府知事就任直後の橋下徹は、大相撲春場所の大阪府知事賞の表彰に出席した時、茶髪であったが、今は黒髪に戻っている。
茶髪はヤンママの間でも流行した。

枝分かれする茶髪文化

若者の黒髪回帰

  • 茶髪人口が増加する一方で、2002年頃から若年層向けのファッション雑誌にも黒髪で登場するモデルが増えるなど、黒髪の魅力が再認識される流れも広がり、髪色の流行も一時の茶髪一辺倒から変化し始める。[5]2003年10月中島美嘉がリリースしたCD「雪の華」のヒットにより、当時の中島の黒髪ソフトウルフヘアは特に社会に影響を与え、黒髪のギャルも増加。チェ・ジウ等のアジアスターの人気も因果関係があるとされ、年配女性の茶髪化が進む一方、若者の黒髪回帰が進むという「老若逆転現象」が起こった。[6]明るい色調がメインストリームだったヘアカラーも、次第に黒に近い色調の市場が拡大されていく。

茶髪への批判と染髪をめぐる社会問題

  • おしゃれのスタイルの一つとして市民権を得たヘアカラーだが、薬剤に含まれるパラフェニレンジアミンアナフィラキシーショックや発癌性腎臓障害など保健面の懸念も指摘され、安全性が確立されているとはいえない(詳細は下記茶髪に否定的な外部リンクの例を参照のこと)。しかし、一部専門家からは、「発がん性の可能性はほとんどない」という発表もある。[7]
  • 茶髪については、依然として「不良DQN)のシンボル」「日本人にはマッチしておらず、不快(または滑稽)」と嫌悪する見解も幅広い層から多く見られる。[8]
  • 子供の茶髪と、それを施す親の倫理意識については強い反対意見が多く、今後も親子の茶髪は許容してはならないという世論が支持される傾向にある。[要出典]

学校における染髪をめぐる問題

  • 多くの小学校、殆どの中学校高等学校でも先天的な黒髪の生徒へのヘアカラーを無条件に禁止し、また世論も圧倒的多数が無批判でその方針を支持している。[9]秋田経済法科大学秋田栄養短期大学のように大学で茶髪に罰則を設けるケースも存在する。[10]中には生まれつき髪の色が黒くない生徒にも「学生らしくない」と黒く染めることを強要する場合があり、2005年には生まれつき髪が赤茶けている生徒に、教員から黒髪を繰り返し強要・黒いスプレーを髪にかけられるなど退学を迫らせたとして、学校を提訴する事件も起きている。[11]
  • 遺伝などにより、先天的な(生まれつきの)茶髪であることを主張しても「染めている」と決めつけられるか、疑いの目を向けられる。また、それを証明する手段も限定され、証明できても不快に見られることもある。先述のように、黒髪に染めるよう求められることもある。

社会人における染髪をめぐる問題

  • 業界によっては茶髪が社会人にふさわしくないと敬遠・批判する風潮も依然として存在する。暗いトーンの茶髪を含め、中高年の白髪染めを除いた従業員の一切の茶髪を禁じる会社も多い[12]
  • アパレルショップでは店長に茶髪に染めることを強要され、拒否したスタッフが解雇された例がある[13]

スポーツ選手の茶髪をめぐる論議

関連項目

茶髪に否定的な外部リンクの例

補足・参考文献

  1. ^ 読売オンライン ホーユー社長 水野 新平さん 広がるおしゃれ選択肢[1]
  2. ^ ポーラ文化研究所調べ[2]
  3. ^ 産経ニュース 茶髪、長髪はOK、ひげはNG? 管理職アンケート[3]
  4. ^ 2004年3月20日朝日新聞『『どこまで認める?意見多様で企業悩む ヘアカラー基準は色々』によると、”ヘアカラーを一切認めない”企業…全日空(客室部門)イトーヨーカ堂ファーストリティリングセブン-イレブン・ジャパン(本社)”日本ヘアカラー協会レベルスケール6”(限りなく黒に近い)…日本航空”日本ヘアカラー協会レベルスケール5”(ほとんど黒に近い)…パレスホテルホテルオークラ東京三越(日本橋本店)
  5. ^ 夕刊フジ2004年5月1日 『茶髪は老けて・・・女の黒髪、人気も伸びてます』 町に黒髪の女性が目立ってきた。オフィス街でも茶髪が見慣れた風景となり、一時は1億人茶髪時代といわれたが、最近は美の基準が西洋人からアジア人にシフト。 黒髪への"回帰"が見られる。 拡大の一途だったヘアカラー市場は、縮小しつつある。毛染めメーカーのホーユーの推計では、黒髪をカラーリングする「黒髪用」の市販の市場は、01年の292億円をピークに一昨年263億円、昨年223億円と続落している。
  6. ^ 毎日新聞 若い女性、"黒髪"回帰進む…逆に、年配女性は"茶髪"に2006年5月24日[4]
  7. ^ 『茶髪、発ガンの心配ない 米医学誌に発表へ 専門家から反論も』産経新聞 2005年5月25日[5]
  8. ^ 『美味しんぼ』雁屋哲 「茶髪、金髪何とかなりませんか」(J-CASTニュース)[6]
  9. ^ 神奈川県「裏基準」高校入試 県教委に「学校擁護」意見が殺到(J-CAST NEWS)[7]
  10. ^ 茶髪、ピアスやめたら1万円-秋田経法大(ウィキニュース)[8]
  11. ^ 黒スプレーかけられた 宮城の女子生徒が提訴[9]
  12. ^ 男性だけ白髪染め以外のヘアカラーを認めない企業もあり、差別ではないか、女性にもヘアカラーを禁止にすべきだ、と不満を持つ男性も存在している
  13. ^ 茶髪を拒否したら解雇!〜シリーズ「解雇理由」3月・4月分
  14. ^ 47news ピアスは支障のない範囲で 日本水連がHPで説明[10]
  15. ^ 茶髪禁止令 シンクロ・水球・飛び込み選手らも asahi.com2010年2月21日[11]
  16. ^ 野村イズム継承…楽天、茶髪&長髪“NG” スポニチ2010年3月13日[12]
  17. ^ 茶髪&ひげ禁止!巻き返し図る横浜とロッテの本気度 夕刊フジ2009年11月7日号[13]
  18. ^ 茶髪禁止!岡田監督「教育的始動」 デイリースポーツ2009年10月25日[14]

参考サイト