DQN
DQN(ドキュン)とは、日本で使われるインターネットスラング・蔑称の一つである。ヤンキー(不良)など、粗暴そうな風貌をしている者や実際に粗暴な者、また非常識で知識や知能が乏しい者を指すときに用いられる。
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概要
この言葉はテレビ朝日系で1994年から2002年まで放送されていた『目撃!ドキュン』という番組に由来する。この番組に出演する一般人にいわゆる元ヤンキーが多く、時として非常識な行動が多々見られたことから、インターネットスラングで非常識な人物を指す蔑称としての「ドキュン」という言葉が生まれた。
後に行われたログサルベージによれば、かつて存在した匿名掲示板のあやしいわーるど@メインにて、1998年8月10日 00時55分03秒の投稿を発端として同番組の話題が度々出現し、1998年8月29日には既に学歴関係の煽り文句として使用されるようになった。その後、あやしいわーるどなどの匿名掲示板に出入りしていたマミー石田という固定ハンドル(コテハン)の人物が、この言葉を日常的に使用するようになったと言われている[誰によって?]。彼は自己のウェブサイトにおいて、『目撃!ドキュン』の出演者に多い低学歴者を批判する目的で「ドキュン」という言葉を使用し、次第に匿名掲示板内で定着していった。
2ちゃんねる等に言葉が広まるにつれ、別のインターネットスラングである「厨房」と共通する意味が生まれ、現在では低学歴者に限らず、非常識であったり支離滅裂な主張を表す者一般を指すインターネットスラングとなった。偏差値が低い高校や大学を「DQN高校(大学)」などと蔑んで呼ぶことも多く、「学歴」を意識したスラングであることは今も変わっていない。表記は初めはカタカナ書きの「ドキュン」だったが、発音をアルファベットに当てた「DQN」に主流が移り、それを略した「DQ」という表記や、2ちゃんねるでは独自の用法に従って表記を変更した「ドキュソ」という表記も見られる。示唆的にこれらの英語音声で読まれることもある。
2010年の調査では、一般的なインターネットスラングであるとみなされている[1]。
メディアでの取り上げられ方の一例
プロバイダ責任制限法の関連の情報を伝えるプロバイダ責任制限法対応事業者協議会[2]において、2007年2月に策定された「発信者情報開示関係ガイドライン」[3]の中で、「DQN」が「いずれも侮蔑的な表現を使って原告を誹謗中傷する内容であると認められ、原告の社会的地位を低下させるものであると認められる」(東京地裁平成15年(2003年)9月17日判決)と判示され、初めて司法の場によって「DQN」が侮蔑語として認められたことが示されている[4]。今後匿名掲示板において「DQN」の言葉を用いると、書き込んだ者のリモートホストや氏名などの個人情報が開示される危険性があるとニュースサイトなどのメディアで報道された[5]。
2007年12月2日放送の、NHK「未来観測 つながるテレビ@ヒューマン」内で、「あまり能力が高くない人」という解説で流行語として取り上げられた。
DQNネーム
子供の名前に見られる、暴走族のような当て字や漫画・アニメ・ゲームなど架空のキャラクターからとった当て字の名前のように、読みづらい名前や、常識的に考えがたい言葉を(戸籍上の)名前にすることをDQNネームと呼ぶ場合がある[6]。ただし、三国志にもそれらしい記述があり、落語の寿限無にも見られるように、子供に珍しい名前を付けたがる親というのは現代に始まったことではないようである。
正確な定義はないが、一般的に使われる「珍名」とほぼ同義である。「キラキラネーム」と呼ぶこともある。一説にはベネッセコーポレーション発行の育児雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」およびその増刊号の「名づけ特集」の影響もあるといわれる[7]。
どのような名前がDQNネームにあたるのかは各個人の主観によるため、人によって異なることもある。裁判所の見解では「親権者がほしいままに個人的な好みを入れて恣意的に命名するのは不当で、子供が成長して誇りに思える名をつけるべき」とある。
主な例
- 本来の漢字の読みを無視している。
- 現在の日本の法律(戸籍法)では、人名に使用できる漢字については常用漢字と人名用漢字に限定(戸籍法施行規則第60条)されているが、その読みについては戸籍に記載されないため、全く規制がない。なおかつ戸籍においては漢字よりも読みの方が重要視されているため、突拍子もない読みで住民登録することも可能である。
- 言葉自体に別の意味がある。
- 「当馬(とうま)」(=当て馬)、「心太(しんた)」(=ところてん)など、特に旧来の意味が人名として不適切な場合に問題となる。
- 漢字の別の読み方が、人名として不適切な意味になる。
- 「満子(みちこ)」「佐世子(さよこ)」など。どちらも性的なイメージのある読み方(まんこ、させこ)が可能となる。
- 当て字
- 「夜露四苦」のように無理矢理に当て字するケースや、ハーフでもないのに欧米人のような名前をつけるケースがある。ただし、「じょうじ」や「えりか」といった具合に元々は外国人の名前だったが現在は日本人の名前として一般的になっているケースもあり、多くの人にとって自然に当てはめられるものであるかどうかがポイントとなる。
- 人間外の名前をつける
-
「悪魔ちゃん命名騒動」も参照
- 性別の混同
- 男の子に一般的に女の子の名前とされる名前をつけたり、逆に女の子に男の子の名前をつけたりする場合。例えば、女の子に英語の男性名の「リオン」という名をつけるなど。
- 「あきら」や「ひかる」「のぞみ」「ゆうき」などは、以前から男女ともによく使われる名前でありDQNネームには当たらないが、男女の区別がつきにくいということで、時として違和感を感じる人もいる。
- おこがましい
- 神話における神やその眷属、救世主といった畏れ多いとされる名前。ただしキリスト教圏では聖人やキリストの弟子に由来する名前は普通に命名されており(英John、仏Jean、西Juanなど)、以下の例の通りイエス・キリスト本人に由来する名をつけてもおこがましいとは認識されないケースもある。
- 東洋圏で見ると、中国では自分と同名の人物が皇帝になると暗黙のうちに改名を強要される(避諱)といった事があり、日本でも徳川光圀のことを水戸黄門と呼ぶように名前はおろか名字でさえも口にすることを憚られる雰囲気があった。現在でも軍艦の名前や列車の愛称名、設備名などに人名をつけることは稀であることから、東洋と西洋では名前の考えかたに違いがあるというべきである。なお、後述する孫休は「近頃、立派な名前をつける事がはやっているが、行いが伴っておらず、まるで、盲に伯明(良く見える)という字をつけるみたいで、この風潮を笑ってきた」と述べている。
- 難解な名前
- それ自体は良い意味がある漢字や語句だが、難解なために周囲や本人が理解できず、結果として珍名と変わらない場合。
- 実際に息子に鼎(かなえ)という名前を付けたところ、周囲から変な名前だと馬鹿にされ成人後に改名、それでも収まらず2000年9月、息子が命名した父親を殺害した事件が起きている。
- 被告人は裁判で裁判官から名前の意味を聞かされて初めて自分の名前の深い意味を知ったと証言しており、良い意味の名前であっても周りが理解できずに珍名と同じ苦痛を被っただけでなく、名付けられた本人ですら理解できない難解な名付けだったことから殺人事件にまで発展してしまった。
影響
こういった名前による悪影響はつけた者よりも、むしろつけられた者が大きく負うことになるということが問題とされ、以下のような影響が指摘される。
- 理解させるのに困難
- 読むことの困難な名前をつけられた場合、通常の名前にはない余分な労力を費やす羽目になる。
- 笑われる
- 珍奇な名前や読みが卑語になる名前は嘲笑の対象になり、心に傷を負ったり、いじめを引き起こしたりする。
- 親子関係の悪化
- 笑われることによって、名づけられた子供は名づけた両親に恨みを抱くことがある。戸籍名の変更を申し立てる事例が多いが、上述の通り過去には父親を殺害するにまで至ったケースがある[8]。
- 誤解される
- 語感から得れる人格や能力について偏見を受けてしまう。これは子供だけではなく、名付けた親も受ける。
- 性別の誤認
- 男女両方に用いられる名前の増加により今後は減っていくと思われるが、特に性別を証明する必要があるときに本人かどうかを疑われたりする場合がある。
- なお、戸籍法第107条の2を根拠として、家庭裁判所に判断を仰ぐことで名の変更が可能な場合もあるが、上記のケースもあるため、子が将来になって変更を求める名をつけないようにするほうが望ましいことは言うまでもない(名の変更届も参照)。
エピソード
- 呉の君主である孫休は自分の息子を名づけるにあたって、新しい漢字を創造した。名前は競合するべきでなく、他者が避けやすくするためという理由からであるが、たいへん字画の多い漢字で現代では死字のようになっている。この事に関して裴松之は「被られるのが嫌なら、名前なんてつけなければいいじゃないか」と身も蓋もないような事を述べ、「こんな事をしているから自分の死後に妻子が殺される羽目になるのだ!」と三国志に注釈を入れている。いずれにせよ、DQNネームにまつわる最古の記録の一つではある。
- 古事記にも、のちに神倭伊波礼琵古命(かむやまといわれひこのみこと、神武天皇)の正妃となる富登多多良伊須須岐比売命(ほとたたらいすすきひめのみこと)が、「ほと」という言葉が入っているのを嫌って比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)に名を改めた故事が記されている。
- 吉田兼好は徒然草の百十六段で「人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ(やたらと凝った名前をつけるのは、いかにも教養のない人がやりそうなことである)」と書き記している。
- 織田信長は息子をそれぞれ、奇妙、茶筅、三七(3月7日に生まれたからという)、次、坊、大洞(おおぼら)、小洞(こぼら)、酌、人、良好、縁と名付けた。
- 伊達政宗は正室愛姫との間に結婚15年目にして初めて授かった子が男児でなかったのを惜しみ、「五郎八」と一見男児のような名を付けた。
- 幕臣の榎本武規は「貧しくとも鍋と釜があれば生きていける」と、長男を鍋太郎(のちの武与)、次男を釜次郎(のちの武揚)と名付けた。
- シーボルトの娘こと、楠本イネは強制的な情事によって産み落とした子供に「天がただで授けた子」という意味で「タダ子」と名付けた。後に楠本イネの庇護者であった伊達宗城の命令によって高子と改名している。
- 森鴎外は自身の本名「林太郎」が外国人には読みにくかったことから、子供にそれぞれ於菟(おと、Otto)、茉莉(まり、Marie)、杏奴(あんぬ、Anne)、不律(ふりつ、Fritz)、類(るい、Louis)と、外国人風の名前を付けた。孫にも、鴎外の命名でないものも含め、真章(まくす、Max)、富(とむ、Tom)、礼於(れお、Leo)、樊須(はんす、Hans)、常治(じょうじ、George)、爵(じゃく、Jacques)、亨(とおる、Thor)、五百(いお、Io)という名が付けられている。
- 実業家の松谷正一は、「明治維新の志士のような革命家になってほしい」という願いを込めて長女を「天光光(てんこうこう)」、次女を「天星丸(てんほしまる)」、三女を「天飛人(あまひと)」と名付けた。
- 下條アトムは、父の下條正巳の「将来は日本でもアメリカと同じように名前・苗字の順に呼ばれるようになり、名簿もローマ字順になるだろうからAで始まる名前を」との考えと、「今後の原子力は平和のために使われるはずである」という思いで名づけられたという。なお、手塚治虫が『鉄腕アトム』の連載を始めたのはそれよりも後である。
- 韓国では近年、漢字による伝統的な命名[9]でなく固有語による命名が増えつつあるが、車範根は長女にハナ(하나、朝鮮語で「ひとつ」の意)、長男にドゥリ(두리、朝鮮語の「ふたつ」から派生)、次男にセチ(세찌、「みっつ」から派生)と、現代の韓国人にとってもかなり特異に感じられる名前を付けた。
その他の派生用法
DQN高校
DQN大学
DQNである学生が多いとされる大学のこと。学力が低く(河合塾が作ったFランク大学という造語に重なる)「講義中の私語が絶えず、留年や中退者も多い」といったイメージと対になっている。新設または無名の私立大学・大学生が、多くの場面でこのレッテルを貼られている。また自らの通う学校を指して、自虐的にこの語を使用することもある。また、大学自体が改名を繰り返す、入学者を外国人留学生で水増しするなどの行為を行っている大学は、学校そのものも批判の対象とされ、DQN大学といわれることがある。新設の私立大学に多いとされるが、DQNという言葉が生まれる前からこの手の大学は存在している。
DQN親
モラルの欠如したDQNである親。以下のような事例が挙げられている。
- 保育料や給食費を支払う余裕があるにもかかわらず、難癖をつけ意図的に支払わない(義務教育における「無償」の意味と範囲を曲解し、給食費まで無償だと思い込んでいる。
- レストランや電車の中など、公共施設で子供が騒いだり、走ったりして周りに迷惑をかけているのに注意せず、または子供を引き離そうとしない。
- 子供の教育に悪影響を及ぼす趣味や嗜好を断ち切ろうとせず、自分が楽しむためだけに子供を一緒に連れていく(子連れでゲームセンターやパチンコ店などに入店[11]する)。
- 子供の健全な心身の成長に悪い影響を与えることを奨励し、自分の悪いところを正そうとしない(染髪やピアス[12]、喫煙などを黙認または奨励するなど)。
- 子供に道徳マナーを注意した相手を恫喝(逆ギレ)したり暴行、恐喝行為などに及ぶ。
- 子供がいじめなどで教師や保護者に注意されても、自分と子供に非があることを認めようとしない。
- 自分が染髪しているから、などの理由で子供の髪まで茶や金に染める。子供は頭皮が大人に比べ弱いため、酷い場合は炎症を起こし、一生ハゲになることもある。自分の染髪は直そうとしない。
- 学校に些細なことでクレームをつけたり、無茶な要求をする(→モンスターペアレント)。
- 前述のDQNネームを付ける。
海外の「DQN」
海外にも、教養的・常識的に乏しい集団に対する蔑称は存在する。
- アメリカ合衆国 - ホワイト・トラッシュ、レッドネック、ギャングスタ(有色人種)
- イギリス - チャヴ、パイキー
- フランス - Racaille
- ロシア - Gopnik
- ポーランド - Dres
- メキシコ - Naco
- イスラエル - Arsim
- オーストラリア - Bogan
- 華僑(シンガポール・マレーシア) - 阿明
脚注
- ^ 「orz」「DQN」「ノシ」…ネットスラングいくつ知ってる? 産経新聞 2010年11月10日
- ^ プロバイダ責任制限法対応事業者協議会
- ^ 発信者情報開示関係ガイドライン (PDF)
- ^ 判決文では、「「DQN」が侮辱的表現であることは」、証拠「より明らかである。」と判示されている
- ^ 「DQN」は名誉毀損 2ちゃん語が危ない (J-CAST) や「DQN」で実名開示も?悪質書き込み対策で業界ガイドライン など。
- ^ 考えはどこに 「面白いかどうかで決めるだけ」気分が選挙を制する! 2010年1月4日15時30分 産経新聞[リンク切れ]
- ^ 赤ちゃんの幸せ名前事典を参照
- ^ 『読売新聞』 2001年4月13日 東京朝刊39面
- ^ 親の名前と同一の漢字を使用することは不敬のため忌避され、世代を示す漢字を1文字含めた名前を使用する。「from editor:異常な名前のつけ方[金正日総書記] 産経ニュース 2011.12.26 08:02」。人名#朝鮮半島の人の名前も参照
- ^ 自主的に退学した場合や、長期の病気・怪我や休学で留年になった場合など、本人の責めに帰さない場合は除く。
- ^ 子連れでの入店を断られた場合、子供(特に乳・幼児)を車へ置き去りにすることもあり、最悪の場合猛暑で死亡させる事件に発展することもある。
- ^ 子供のピアスは現在の日本の慣習上好ましくないということであって、諸外国では子供にピアスをすることが階級を問わず恒常化している地域がある。
参考文献
- オタク文化研究会 『オタク用語の基礎知識』 マガジン・ファイブ、2006年。ISBN 4-434-07396-6。