和牛

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和牛(わぎゅう)とは、主に黒毛和種褐毛和種日本短角種無角和種の4品種を指し、明治時代以前からの日本在来のをもとに、外国種などと交配改良を重ねた食肉専用の家畜牛のことである[1]。なお、牛の種類を問わず日本で飼養された牛は「国産牛」と表記され、産地を示している。対して和牛は牛の特定の品種を示すため「外国産和牛」も多く存在する。

和牛(第10回全国和牛能力共進会
田尻松蔵と但馬牛の「ふくえ」号(名牛「田尻」号の母牛)
和牛の肉を販売する精肉店

公正競争規約上の定義

肉専用種で、「黒毛和種」・「褐毛(あかげ)和種」・「日本短角種」・「無角和種」の4品種と、その4品種間の交雑種を和牛という。中でも黒毛和種の飼育数が多く約9割を占めている。主なものに但馬牛神戸牛松阪牛近江牛などの素牛)がある。牛の品種を表した言葉で、「国産の牛」という意味ではない。

そのため、「外国産和牛」も実際に生産されている。但し、食肉流通業界の自主規制と農林水産省の指導により、現在において日本国内で外国産牛が和牛として流通する事は事実上不可能になっている。和牛の内、9割以上を黒毛和牛が占めている。

和牛は、一般に高価である。その理由としては、食用になるまでに一般の牛より時間がかかること、飼育方法に手が込んでいること、大量生産が難しいことなどが挙げられる。

和牛農家

和牛農家は主に繁殖農家と肥育農家に分けられる。

繁殖農家は子取り経営とも言われ、母牛とその母牛から生まれた子牛を飼育しており、子牛を売って経営している。母牛(12ヶ月齢以上の繁殖能力を持った雌牛)に種付けまたは受精卵移植(代理母出産)をして子牛を産ませ、数ヶ月育成した後、セリにかける。セリには約3ヶ月齢で出荷するスモール市場と約9ヶ月齢で出荷する素牛市場がある。

肥育農家は肉用に子牛を太らせ、食肉センターに出荷して経営している。家畜市場で開かれるセリで、肥育用の約3ヶ月齢のスモール牛または約9ヶ月齢の素牛を購入し、濃厚飼料を中心に給与することで体重を増やし、サシ(脂肪交雑)を入れ、およそ30ヶ月齢まで肥育した後出荷する。セリには、食肉センターでと畜して枝肉と呼ばれる状態でサシの入り具合・肉の重量等の情報を実際見ながらセリにかける枝肉市場と生きたまま立ち姿のままサシ・重量等を購買者が予測してセリを行う生体市場とがある。

農林水産省ガイドライン(2007年3月26日発表)

「和牛」と表示する場合には次の3つの条件を満たすよう事業者に自主的な取り組みが促進されることを配慮するよう求めている(「WAGYU」「わぎゅう」「ワギュウ」も同じ)。

  1. 黒毛和種など食肉公正競争規約で「和牛」と認めている品種に該当すること。
  2. 国内で出生し、国内で飼育された牛であること
  3. 上記に該当することが牛トレーサビリティ制度で確認できること。

その他

国外での生産

オーストラリア

オーストラリア和牛協会は日本国外としては最大の和牛畜産団体である[2]。純血種、交配種ともに育成され国内外に供給している。輸出先には台湾、中国、香港、シンガポール、インドネシア、イギリス、フランス、ドイツ、デンマーク、アメリカが含まれる[3]。オーストラリア西部のマーガレット・リバー(Margaret River)地域では赤ワインが飼料として与えられている[4]

アメリカ

アメリカでは和牛はアバディーン・アンガスと交配される。この交配種はアメリカン・スタイル・コーベ・ビーフ(American Style Kobe Beef)と呼ばれる[5]。和牛は2012年のナショナル・ウェスタン・ショウ(National Western Stock Show)に初めて競争相手としてアメリカの市場に登場した[6]。中には日本の和牛の血を受け継ぐ純血種を育てているブリーダーもおり、それらはアメリカン・ワギュウ・アソシエーションが管理している[7]

カナダ

1991年にカナディアン・ワギュウ・アソシエーション(Canadian Wagyu Association)が設立され和牛の生産が始まった。カナダでの和牛生産はアルバータ州[8]オンタリオ州[9]プリンスエドワードアイランド州[10]に限られる。カナダの和牛製品はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、ヨーロッパに輸出される[10]

スコットランド

2011年にハイランド・ワギュウ社(Highland Wagyu)が設立された[11]。このハイランド・ワギュウはスコットランド、ダンブレーン(Dunblane)にあるブラックフォード牧場(Blackford Farms)に本拠地を置く。同社は250頭に加えて2013年7月には300頭の和牛を追加し、イギリスにおける最大の純血和牛生産者となっており、スコットランドをヨーロッパにおける和牛生産の中心地にするという目標を掲げている[12][13][14]

脚注

  1. ^ デジタル大辞泉「わぎゅう(和牛)」 小学館 2013年10月13日閲覧
  2. ^ Australian Wagyu Forum”. 2015年9月3日閲覧。
  3. ^ Exports; Australian Wagyu Association; accessed .
  4. ^ http://www.mrpme.com.au/wine-fed-wagyu
  5. ^ U.S. ranches breed famous Kobe-style beef; 12 August 2011 article in The Japan Times" (from the Associated Press); p. 3; accessed .
  6. ^ Raabe, Steve (2012年1月11日). “Tender Wagyu muscles onto meat scene, makes stock-show exhibition debut”. The Denver Post. http://www.denverpost.com/business/ci_19716708 
  7. ^ Membership | Calf Registration | DNA Tests
  8. ^ Kobe beef on P.E.I.? Veterinarian raising wagyu cattle; The Chronicle Herald online; accessed .
  9. ^ Kuntz First to Breed Wagyu in Ontario; The Post South Bruce; accessed .
  10. ^ a b About Us; Canadian Wagyu online; accessed.
  11. ^ Try a little tenderness: on the farm with Scotland’s Wagyu cattle”. The Herald. 2012年11月19日閲覧。
  12. ^ Scottish farm to make Japanese Wagyu beef”. The Scotsman. 2013年7月29日閲覧。
  13. ^ Highland Wagyu beef firm in expansion drive”. BBC News. 2013年7月29日閲覧。
  14. ^ Perthshire - the Wagyu centre of Europe”. The Scottish Farmer. 2013年8月1日閲覧。

関連項目

外部リンク