不正乗車

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不正乗車(ふせいじょうしゃ)とは、鉄道をはじめとする運送機関の旅客が、その旅行(乗車)において、定められた乗車券類を所持せず、運賃・料金を不正に免れようとすること[要出典]をいう。不正乗車と言った場合、運賃や料金の一部を免れようとする行為も含まれる[要出典]が、全部を免れようとする場合は特に無賃乗車と言われる[1]

手法・鉄道での例

経路外乗車

鉄道の運賃は実際に乗車した経路のとおりに計算されることが原則であり[2]、無断で乗車券に表記のない経路に乗車すると、不正乗車として乗車券が無効となる[3]。ただし、大都市近郊区間選択乗車経路特定区間など、乗車券に表記のある経路以外に乗車可能な例外もあるほか、SuicaなどIC乗車カードにおいては最安運賃で自動計算する場合もある。[4]

キセル

鉄道運賃は,乗車駅から降車駅までの乗車券を買わなければならない。仮に乗車駅から降車駅に到達しない切符を購入した際は,車内や駅改札にて乗り越し精算をして降車駅までの乗車券を所持していなければならない。しかし,乗車駅からその近くの途中駅までの乗車券と降車駅の近くの途中駅から降車駅までの2枚の切符を使用して両方の改札を通った場合,これは不正乗車に当たる。これをキセルと呼ぶ。これは,かつてのキセルが両端は金属でできていたのに中央だけが竹でできており,両端だけ金がある(金を払っている)と言う意味で呼ばれていた。なお,乗車券代節約のために乗車券を乗車区間の途中で打ち切って2枚にすることがあるが,これは不正乗車ではない。

鉄道事業者の関係者によるICカードの不正使用

各鉄道事業者および関連企業の従業員が職務乗車証を利用し、他事業者発行の磁気定期券の連続乗車ビットの機能を解除したり、ICカードの入場記録を自分や同僚に消去させる等、不正乗車を繰り返した例がある。

2010年(平成22年)には各鉄道事業者で関係者による不正乗車が多数発覚した。そのほとんどは当事者の減給謹慎処分とされたが、場合によっては訓告、最悪の場合は懲戒解雇処分が下されている。

その他、車掌が勤務中に乗務する特急列車内で私用で乗車した同僚や顔見知りなどに対して特急料金を意図的に収受しなかったり、実乗区間よりも短い区間の自由席特急券を発売した事例もある。[5]

車外での不正乗車

終戦直後の「買い出し列車」で起きた八高線列車脱線転覆事故。屋根上や側面などにしがみついていた客もいたため、犠牲者が増えた。

乗客が乗車できる部分は本来車中の旅客乗用に供される部分に限られており、車両の屋根、外部側面など車外への乗車、荷物車・乗務員室・貨物列車などへの乗車も不正乗車となる。このような乗車方法は、運賃・料金の不正を禁ずる観点とは若干異なり、乗客の生命に危険が及ぶため禁止されている(鉄道営業法第33条など)。

日本では太平洋戦争終戦直後の混乱期に一時見られ[6]、日本国外でも一部の国で列車の屋根や側面にしがみ付く者が見られる。[7]

2000年代以降

2000年代に入ってからも発生例がある。例えば、2002年(平成14年)には、停車駅で列車の連結部外側面にしがみ付いて乗車し、通過駅(JR神戸線住吉駅)で走行中の列車から飛び降り下車する乗客が確認されているが、この乗客は鉄道営業法違反容疑で捜査対象となっている[8]。また、2011年(平成23年)には、湖西線近江舞子駅で、京都大学の学生らが、停車中の貨物列車に無断で乗車する騒ぎがあり、やはり鉄道営業法違反や、業務妨害で取り調べを受けている[9]2012年(平成24年)には、男が京阪神の新快速の連結器部分にしがみ付き、御着駅で取り押さえられ鉄道営業法違反で逮捕されている[10]

発覚した場合の処置

不正乗車が発覚した場合、その交通機関の約款ないしは旅客営業規則による処分により、正規運賃のほかに追徴金(一般的には始点-終点の運賃の2倍の金額、合計で通常の運賃の3倍)を徴収されることがある。

なお、定期券を使用しての不正乗車は、定期券の有効開始日から不正発覚日までの日数に同区間の往復運賃をかけた金額の3倍となる。不正乗車に使用した定期券や回数券、普通乗車券、乗車カード(ICカードを含む)は無効となる場合もある。また常習の場合や悪質な場合は鉄道営業法違反行為や詐欺行為として刑事告訴され、場合によっては逮捕起訴され、刑罰・損害賠償・裁判を受けることもある。キセル乗車について詐欺利得罪(二項詐欺罪)の成立が認められた判例もあるが、これについては運輸判例百選を参照のこと。また、信用乗車方式についても参照せよ。

対策

自動改札システムの改良

1994年(平成6年)9月阪急電鉄が自社の定期券を対象に自動改札機で入場処理と出場処理を交互に行わなければ改札を通過できないようにするシステム「フェアライドシステム」を導入[11]。以降、ストアードフェアシステムの導入による自動改札機の更新などにあわせて、これと同様のシステムの導入を進める事業者が増えた。また、入場から出場までの時間が規定時間を超えている場合、改札を通過できなくする事業者も増えている。

鉄道以外の不正乗車

タクシーへの不正乗車

タクシーに乗車したものの、最終的には運賃を支払わずに検挙される例がある。昨今発生している事例としては、長距離にわたって乗車し最終的には運賃を支払わないなど、1回あたりの被害額が高額になる例も多く報道されている。例えば、東京都大田区から青森までタクシーを走らせ、28万円余りの運賃を支払うことなくタクシーを降りて逃走し、検挙された例がある。[12]

有料道路の不正通行

有料道路高速道路など)にも不正通行というものがあり、東名高速道路などで不正通行により摘発されたケースがある。代表的な不正通行は途中の上下線共用型のサービスエリアなどで通行券を交換し、交換した通行券の入口に近いインターチェンジで出るというものであるが、珍しい例としてフリーウェイクラブによる「無料通行宣言書」というものがある。同団体は首都高速道路公団(現・首都高速道路株式会社)の通行料金値上げに抗議して値上げ分不払いを宣言したことが始まりで、後に日本全国の高速道路無料通行宣言に発展した。鉄道の改札口強行突破に近いが、料金所係員の目前で堂々と「無料通行宣言書」を渡して通り抜けるという手段は他に類を見ない。また、現在ではETC専用レーンを強引に突破するケースもある。両方のケースとも警察当局は最初「民事不介入」を理由に取り締まりに消極的だったが、現在は道路整備特別措置法に基づき取締りを強化し、摘発・逮捕されている。[13]

他に、特大車としか思えない右翼団体所属の街宣車が料金所を通過する際に、脅迫的な口調で係員を脅して軽自動車料金で通行する例があった[14]。また、環状的に大回り走行し最後は入場したインターチェンジの近くで一般道に出て、通行料金を安くする方法もある。通行料金は安くなるものの燃料費がかさむため、一般的には意味がない方法と考えられているが、沿道の風景を楽しみたい場合や、単にドライブを楽しみたい場合、新しく開通した区間を体験したい場合などに実行するドライバーがいるとされている。[15]

航空機への不正搭乗

小児運賃のほか、前述のように割引対象者を装ったりして購入した航空券を不正に使用したり、他人名義の航空券で搭乗する行為がある。さらに韓国インドでは航空機に不正乗車ならぬ不正搭乗して同じく当局に摘発されたケースがある。[16]

脚注

  1. ^ Yahoo!辞書 2011年9月2日閲覧。
  2. ^ JR東日本 旅客営業規則 67条、2011年7月31日閲覧。
  3. ^ JR東日本 旅客営業規則 167条10号、2011年7月31日閲覧。
  4. ^ 東日本旅客鉄道株式会社ICカード乗車券取扱規則、2011年7月31日閲覧。
  5. ^ 車掌、特急券をまた不正発行=私用で乗車の同僚に 時事通信社『時事ドットコム』、2010年9月10日
  6. ^ 都会から地方に買い出しに行く「買い出し列車」の例が有名。車内に入りきれない客が屋根に登る、壁面にしがみ付くなどしていた。そのような状況で起きた事故が八高線列車脱線転覆事故である。
  7. ^ バングラデシュインドネシア等ではドアからはみ出したり、屋根に乗ったまま電車が走行する光景が見られる。
  8. ^ 「時速100キロの新快速から飛び降り、平然と去る――JR住吉駅」神戸新聞社2002年7月4日。
  9. ^ 貨物列車飛び乗り「名水めぐり」 大学生3人を取り調べ 朝日新聞 2011年8月24日
  10. ^ 鉄道営業法違反:新快速にしがみつく 兵庫で男逮捕 毎日新聞 2012年3月3日
  11. ^ 阪急の磁気定期券の場合、出場記録がなくても入場が可能となっており、他社線への乗越しや「フリーパスゲート」(学生専用出口・通勤専用出口、現在は廃止)への対応が図られていた。2008年(平成20年)まで南方駅など一部の駅で、定期券を係員に提示するだけで出場できる臨時出口が存在した。阪急電鉄 - フェアライドシステムに関する「よくあるご質問」にもその旨説明されている。
  12. ^ 東京-青森をタクシーで無賃乗車 詐欺容疑で15歳少女を逮捕 [リンク切れ]
  13. ^ 無料通行宣言書は認めません---JHが今月に入って6件目の強制徴収実施
  14. ^ 高速道路等における不正通行への対応について
  15. ^ 「ぐるり1周激安珍料金 東海の高速道路ループ化」中日新聞 2005年10月3日
  16. ^ 飛行機のトイレから「無賃乗車」大学生を摘発 朝鮮日報、2008年4月25日。

外部リンク