ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え
『ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え』(ルパンさんせい ナポレオンのじしょをうばえ)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のTVスペシャルシリーズ第3作。1991年8月9日に日本テレビ系の『金曜ロードショー』にて放送された。
概要
湾岸戦争終結後の世界中の財政難を打開すべく、「ルパン帝国」の財宝のありかが記されているという「ナポレオンの辞書」をめぐる、ルパンファミリーと多国籍軍の争奪戦を描く。
あらすじ
ニューヨークのプラザホテルにG7の各国首脳が集まり、先の湾岸戦争によって崩壊した経済の立て直しを図るべく会議を始める。
時同じ頃、ニューヨーク近代美術館にルパン三世からの犯行予告が届き、さっそく銭形警部がやってくるのだが、警備に呼ばれたニューヨーク市警察のやる気のない警察官ばかりたったの4人…あきれた銭形警部であったが、犯行予告の時間が迫っていたため、仕方なく4人の警察官と共にルパンに対することとなる。
その頃、首脳会議では1人の老学者が経済立て直しの、ある案を説明していた。その打開策とは、中世ヨーロッパで栄華を誇っていた「ルパン帝国」の財宝を探し出し、今の金額にして2千億$とも言われる財宝を経済の建て直しに利用するというもの。その財宝のありかを知っているこの世でただ1人のルパン一族の末裔、ルパン三世を探し出せばよいことを知った各国首脳達は、自国に問い合わせてルパン三世捕獲作戦を開始する。その際、アメリカ代表であるヘーカーは近代美術館にルパンが現れるということを知り、ニューヨーク中の警察官を全て近代美術館に向かわせるように指示する。
一方、近代美術館にはついにルパンが現れ、銭形警部たちとのオニゴッコが始まる。なにを盗むかと思いきや、ルパンは1908年製のクラシックカー「パッカード」を盗んで近代美術館を後にする。実はルパンは女とのデートに車を使うためにパッカードを盗んだのであったが、その女は別の男と去っていき、さらに大勢の警官隊を率いた銭形警部に取り囲まれる。しかし、パッカードにつけたスイッチを入れると、どこからともなくヘリコプターが飛来し、ルパンはパッカードごと逃走に成功する。
ルパンは、そのパッカードを利用してマルチンベック財団の主催するマドリード~パリ間のクラシックカーレースに参戦すると言いだす。そのレースの優勝者への賞品とは「ナポレオンの辞書」。ナポレオンの辞書は、あの有名なナポレオンが所有していた辞書であったが、ナポレオン3世の時代に盗まれたという。そして、その辞書を盗んだ女が、ルパンの祖父であるアルセーヌ・ルパンと結婚したというのだ。
こうしてナポレオン家からルパン一族の元へ所有権が移ったナポレオンの辞書であったが、ルパン一世はルパンいわく「ケタ外れの遊び人で毎晩女を集めて宴会をやっていた」というのだ。あきれた妻は財宝を隠し、その隠し場所をナポレオンの辞書に記載した。案の定ルパン帝国は崩壊……唯一残されたナポレオンの辞書は息子のルパン二世が所有していたのだが、その二世も父親に似た遊び人で、辞書を酒の飲み代として奪われてしまい、それっきり行方不明になってしまっていたものが、今回のレースの賞品として出てきたのだという。
クラシックカーレースのトップ集団に追いついたルパンと次元は、その集団内に不二子がいることを知る。だが、さっそくアメリカCIAのエージェントであるホークたちに捕まってしまい、車内に監禁されてしまう。しかし、その情報をつかんだフランスの外人部隊とイスラエルのモサッドが協力してルパンを奪うべくやってくる。あっという間に戦闘が開始され、ルパンと次元が逃走手段を考えていた矢先に五ェ門が登場。縄を斬ってもらったルパンと次元は逃走に成功する。
一方、ルパンを追っている日本を除く各国は、湾岸戦争時と同じように「多国籍軍」を再び結成。ルパン三世包囲網を築く。
ナポレオンの辞書を争奪戦の末、やっとのことで手に入れたルパンは、財宝のありかがノルマンディーの孤島にある先祖の別荘「ニプル城」にあることを知る。さっそくノルマンディーに向かったルパンたちであったが、情報をつかんでいた多国籍軍も陸・海・空から大軍隊を送り込んでくる。
かくしてルパンVS多国籍軍による財宝争奪戦が始まる。果たしてルパン帝国の財宝とは?そしてルパンたちの運命は…。
ゲストキャラクター
ゲストヒロイン
- 木戸 千恵子
- 声 - 戸田恵子
- 国家保安局の捜査官。海辺首相の命令で銭形と共にルパンを追うが、銭形(実はルパンの変装)と行動を共にする内にルパン達や銭形が「本当の意味で自由」だと思い、ルパンを追う自分に対して疑問を抱く。終盤では戦闘ヘリに搭乗して3機もの米軍戦闘機を撃墜しており、頭脳面でも行動力でも優れている女傑。かなりの美人でもある。別れ際のルパンの言葉から自分が接して憧れていた銭形がルパンの変装であったことに気がついた。
- 所謂「ゲストのマドンナ役」のキャラであるが、ルパン達の敵である捜査官として登場する例は珍しい。
CIA
- ロバート・ホーク
- 声 - 吉水慶
- CIA特務班班長。ヘーカー財務長官から直々に、ルパン捕獲の任を受ける。当初はアメリカ政府の命令に忠実に振る舞っていたが、実際は政府や世界各国を出し抜いてルパン帝国の財宝を手に入れようとしていた。彼曰く「星条旗に忠誠を誓うには給料が安すぎる」とのこと。
- カーレースの出場者であるエリックと共謀し、不二子を人質にとってルパンに財宝の在処を白状させようとするも、銭形の横槍により失敗。その後、ルパンが財宝の在処をまだ突き止めていないことを知ると彼を殺そうとしたが、逆に次元に射殺される。死に際に次元から「欲をかかないで、公務員やってりゃよかったんだよ」と皮肉を言われた。
- マッカラム
- 声 - 大塚明夫
- CIA特務班の副班長で、ホーク直属の部下。離反したホークに代わって特務班を率いてルパンを追い、物語後半では多国籍軍の最前線部隊を指揮する。ルパンがボルドーのホテルにいることを突き止めて突入を図るも、そこで銭形に変装したルパンに偽者(銭形)を掴まされたり、ホークの襲撃によって多数の部下が死傷するなど散々な目に遭う。
その他
- ヘーカー
- 声 - 大平透
- アメリカ財務長官。典型的な米国至上主義者で他国を子分のように遇しており、特に日本の事は「経費を出させる存在」としか見ていない。態度や物腰も、政治家とは思えないほど傲慢で横柄。G7にアメリカ代表として出席するが、失業率6%を越えるアメリカ経済に頭を悩まし、ルパン帝国の2000億ドルともいわれる遺産に目を付けてCIAにルパンを捕獲させようとする。その後は他国政府に愚痴を言われ、再び多国籍軍を結成する。
- エリック
- 声 - 速水奨
- マルチンベック財団主催のクラシック・カー・レースの出場者。甘いマスクの持ち主で、同じくレースに出場していた不二子と親密になる。実はルパン帝国の財宝入手のためにホークと手を組んでおり、不二子に接近したのも彼女を人質にしてルパンに財宝の在処を吐かせるためだった。ホークと共にルパン一味を追い詰めるが、列車激突後は一切登場しないため、生死は不明。
- マルチンベック
- 声 - 大木民夫
- マルチンベック財団の会長で、クラシック・カー・レースを主催。優勝賞品として、財団秘蔵のナポレオンの辞書を用意した。部下からは「勿体ない」と言われるが、彼曰く「ナポレオンが使っていたというだけで何の価値もないよ」とのことで、彼自身は辞書にさほどの価値を見出していない。ゴール地点に辞書を持っていく途中でルパンに奪われてしまい、車ごとゴールに突っ込んだためにスタッフから優勝者と勘違いされ、シャンパンの雨を浴びせられた。
- 海辺
- 声 - 秋元羊介
- 日本の首相。「幹事長とも相談しますが」が口癖で、これは当時の自民党幹事長だった小沢一郎に頭が上がらなかった海部俊樹首相をモデルとしている。ルパン帝国の遺産に目を付け、ルパン逮捕のために銭形の月給を100万円にして経費も使いたい放題にする。
用語
- ナポレオンの辞書
- マルチンベック財団主催のクラシックカーレースの優勝賞品。ナポレオンが使用していたフランス語の辞書で、彼の侍女が盗み出し、後にルパン一世と結婚したことでルパン家に渡る。彼女が隠したルパン帝国の財宝の在りかが記されているが、ルパン二世が飲み代の形代として奪われてしまい、以降行方不明となっていた。ちなみに、ナポレオンは「我が辞書に不可能の文字はない」と豪語したが、この辞書にはしっかり「不可能」の項目が載っている。
- ルパン帝国の財宝
- ルパン一世が世界中の宝を盗みまくって築いた莫大な財宝。現在の価格にして2000億ドルと言われる。ルパン一世は毎晩美女を集めて宴会を開き散財していたため、それに呆れた彼の妻はルパン帝国の財宝を隠し、その場所をナポレオンの辞書に記した。財宝の正体は真空管ラジオの特許で、ルパン一世が生きていた当時はお宝だったが、ICなどが開発された今となってはガラクタ同然である。
- ニプル城
- フランスのノルマンディにある城で、ルパン家の別荘。ルパン帝国の財宝が隠されている。ちなみに「ニプル(NIPUL)」とは、「ルパン(LUPIN)」の綴りを逆から読んだものである。
- 多国籍軍
- アメリカを中心とした各国が結成した連合軍。湾岸戦争後の経済難の打開にルパン帝国の財宝を利用するため、ルパンを捕らえようとする。CIA所属のマッカラムが指揮官を務める。
- 1908年製パッカード
- ルパンがニューヨーク近代美術館から盗み出したクラシックカー。クラシックカーレースに出場するためルパンによって大改造された。
声の出演
- ルパン三世 - 山田康雄
- 次元大介 - 小林清志
- 石川五ェ門 - 井上真樹夫
- 峰不二子 - 増山江威子
- 銭形警部 - 納谷悟朗
- 木戸千恵子 - 戸田恵子
- ヘーカー - 大平透
- ロバート・ホーク - 吉水慶
- マッカラム - 大塚明夫
- エリック - 速水奨
- ハマー - 田原アルノ
- マルチンベック - 大木民夫
- 老学者 - 北村弘一
- ホテルの職員 - 星野充昭
- 海辺首相 - 秋元羊介
- 日本代表 - 小形満
- イギリス代表 - 塚田正昭
- フランス代表 - 池水通洋
- ドイツ代表 - 島香裕
- 荒川太郎
- 河原佳代子
スタッフ
- 原作 - モンキー・パンチ(中央公論社刊)
- 企画 - 武井英彦
- 監修 - 出崎統
- 脚本 - 柏原寛司
- 音楽 - 大野雄二
- 音楽監督 - 鈴木清司
- 録音監督 - 加藤敏
- 音響効果 - 糸川幸良
- 録音制作 - 東北新社
- 音響制作担当 - 古川直正
- 美術 - 畑井大輔、光元博行
- 作画監督 - 本橋秀之、寺沢伸介、長岡康史、細山正樹、工藤鮎美
- 絵コンテ - 中村隆太郎、尾鷲英俊、川越淳、寺沢伸介、深町洋子
- キャラクターデザイン - 工藤正明
- メカデザイン監修 - 大塚康生
- メカデザイン - 村田五郎、杉田篤彦(スタジオOX)
- 撮影監督 - 長谷川肇
- 編集 - 鶴渕允寿
- プロデューサー - 伊藤響、松元理人
- アシスタントプロデューサー - 福与雅子、長井圭次
- 音楽プロデューサー - 島田義三、山田慎也
- シナリオディレクター - 飯岡順一
- 演出 - 岡崎幸男、元永慶太郎
- 主題歌「見果てぬ夢を追いかけて」
- 作詞 - 倉橋ルイ子
- 作曲 - 大野雄二
- 唄 - 倉橋ルイ子
- 企画協力 - WOrds inc.
- 制作協力 - ミゾ企画
- 企画制作 - 日本テレビ
- 製作 - 東京ムービー新社