アニメソング
アニメソングは、主にアニメ作品で使用される主題歌・挿入歌・イメージソングなどの歌曲、楽曲の総称。略して「アニソン」とも称される。レコード、CDの販売やインターネット配信で、主にアニメと分類されるジャンルの曲を指す。
概要
単語の成り立ちは、日本でのアニメーション(animation)の略語であるアニメ(anime)と、歌、曲を意味するソング(song)を組み合わせた新語または造語であり、英語圏では使用されない和製英語である。また、おたく文化の象徴としてのアニメ、および類似するコンテンツの歌曲、楽曲の総称としてマスコミなどで使用されることもある。
アニメ作品で使用される主題歌・挿入歌・イメージソング以外にも、インスト曲やBGM、そしてゲーム・ラジオドラマ・ドラマCD・声優・特撮などの曲もアニメソングと称されることがある。例えば、日本コロムビアの該当カテゴリは「アニメ・特撮」である。また、特撮に限定した「特撮ソング(特ソン)」という呼称も存在する[1]。
世界各地のアニメソング
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アメリカ
ウォルト・ディズニー・カンパニーのアニメーション作品で、オリジナル曲の第一号は、1930年の「ミニーのユー・フー!」(Minnie's Yoo Hoo)である[2]。この曲はミッキーマウスのテーマソングの一つである。1932年に「ベティ・ブープ」の劇中歌としてキャブ・キャロウェイが歌った「ミニー・ザ・ムーチャ」(Minnie the Moocher)は、後にコットンクラブで演奏されるなど当時のアニメソングとしては異例の大ヒットを飛ばした。この曲でキャブの名声は不動のものとなり、彼の代名詞となる。
『アーチーでなくっちゃ!』のキャラクターによって結成された架空のバンド「アーチーズ」が、モンキーズらを手がけたドン・カーシュナーのプロデュースによって現実世界でもデビューし(実際にはスタジオ・ミュージシャンらによる歌唱)、1969年にシュガー・シュガー」が大ヒットした。
日本のアニメソング
日本のアニメソングの歴史は、1929年、レコード・トーキーによる実験映画『黒ニャゴ』(1931年公開)が製作され、市販のレコードがサウンドトラックとして使用された事が始まりと言われている。
東映動画が本格的に長編まんが映画を制作し始める以前、および東映動画の初期の作品では、アニメソングは主に登場人物によって歌唱される劇中歌の扱いが多く、主題歌はテレビ・ラジオドラマで主に使用されていた。それらのアニメソングはレコードとして発売される事は少なく、ほとんどの曲は未発売である。東映動画の総天然色長編漫画映画の劇中歌は後にCD-BOX『東映長編アニメ音楽大全集』(1996年発売)に収録された。
朝日ソノラマの『まんがソノシート』のヒット、連続テレビまんがの放映開始、主題歌フォノシートの各社競作発売、日本コロムビアの専用規格での参入から「まんがの歌(=アニメソング)」はほぼ成立し[3][4]、「テレビまんが」「まんが映画」から「アニメ」と呼称の変化を経て、「アニメソング」はジャンルとして確立した。
商業史
朝日ソノラマの『まんがソノシート』のヒットから、「まんがの歌」の本格的な商品展開が始まり[3]、テレビまんがの登場、アニメブーム、声優ブームなどを経て、その規模を大きく広げている。
朝日ソノラマの『まんがソノシート』の安価で、ドラマや絵物語等の掲載された冊子が充実したフォノシート、音質に勝るが収録内容に劣るレコード、ともに子供たちに支持されて売り上げをのばす[4]。
当初の音源は、本編用・レコード用等に分けて[5]作品の製作会社や朝日ソノラマが製作していたが、やがてレコード会社がオリジナル曲の独占使用を目的として原盤製作を行うようになった[3]。
1977年に日本コロムビアから『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』、1978年にキングレコードからオムニバス盤『ウルトラマン大百科』が発売され、ヒットした。『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』は以降のアニメ・特撮のサントラ盤『組曲シリーズ』の発売に、『ウルトラマン大百科』は『無敵超人ザンボット3』(1977年)のサントラ盤発売につながり、それらのヒットから以降の特撮・アニメサントラ盤の発売へと繋がった[6]。『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』などのヒットにより、購買層は中高生層まで広がり、多くのレコード会社がアニメソングに着目するようになったといわれる[7]。
1980年代の第二次声優ブーム、青年層が中心のアニメブーム、レコード会社のタイアップ戦略などの結果、頻繁に交代する主題歌、キャラクター別CD、同人誌のようなセルフパロディCD、声優によるオリジナルCDの発売など、多数のオーディオビジュアルアイテムが発売されるようになった。また、限定盤を除いてレコード盤の製造・販売が終了した。以降、コレクターズアイテムとしてレコード盤は一部の作品のみの数量限定生産となった。
1987年、「絵の出るCD」としてCDVが発売された。アニメでは、音声トラックに既発売の曲を収録したほか、ビデオトラックにノンテロップOP、EDを収録した「きまぐれオレンジロード」、新作PVを収録した「バブルガムクライシス」のほか、ビデオトラックのみにPVと主題歌を収録した「毎日が日曜日」などが発売された。
2000年代前半頃から、音楽配信サイトでのダウンロード販売が増え始めた。また、音楽配信サイトだけではなく、一部のアニメ関連サイトでも専用のダウンロードコーナーが設置されるようになった。
2001年、俗に「限定版商法」または「同梱商法」と呼ばれる販売手法が始まる。初回生産分のみに何らかの特典が付く商品[8]とは違い、何らかの特典が付いた初回限定版と、特典が最初から付いていない通常版がそれぞれ販売される[9]もので、当初は音楽ソフトとは全く関係のないグッズが同梱されていた[10]が、後にミュージッククリップなどが収録されたDVDソフトやボーナスCDが同梱されることが多くなった。ちなみに、DVDソフトの「限定版商法」では、当初はフィギュアなどのグッズを同梱することが多かったが、後に主題歌CDやドラマCD、サントラCDなどが同梱される事が多くなった[11]。
2002年、DVDオーディオ、DVD music、DVDシングルなどのDVDを利用した音楽ソフトが発売された[12]。
2010年、一部新番組の宣伝用としてOP/EDのTVサイズとボイスメッセージ等を収録したレンタル専用のサンプラー CDの発売が開始された[13]。レンタル専用なので一般販売はしていないが、レンタル落ちCDとして入手可能。
2011年頃から、アイテム化されていない楽曲の音楽ダウンロードサイトでの販売が始まる[14]。
2012年、アイテム発売に先駆けてTVサイズ楽曲のダウンロード販売が始まる。
主な出来事
- 1944年
- 映画『フクチャンの潜水艦』では、主題歌『フクちゃん部隊出撃の歌』と『潜水艦の台所』が作られ、SPレコードが発売された。アニメのために作られた楽曲の発売は日本初。
- 1965年
- 1966年
- テレビまんが『ジャングル大帝』の主題歌・挿入歌を収録したLPレコード『ジャングル大帝 ヒット・パレード』が、劇伴音楽を交響曲として再構成したLPレコード『子どものための交響詩 ジャングル大帝』が発売された。どちらも日本初。
- 5月に発売された「オバQ音頭」はミリオンセラーとなった。売上はレコードだけで200万枚以上。
- 石川進の「オバケのQ太郎」が第8回日本レコード大賞の童謡賞を受賞する。
- 1970年
- 玉川砂記子(玉川さきこ)の「ムーミンのテーマ」が第12回日本レコード大賞の童謡賞を受賞する。これはビクターエンタテインメント版カバーバージョンで、オリジナル歌手は藤田淑子である。
- 1973年
- 12月。日本初のテレビまんがのオリジナル音楽集LP、『冒険コロボックル』が発売された。
- 1976年
- 10月1日。4枚組LP『テレビまんが主題歌のあゆみ』が発売され、当時のテレビまんがのLPとしては異例の12万セット(単品換算48万枚)の売り上げを記録した[15]。続編も発売され、後にはCD化・デジタルリマスター版も発売されるなど、ロングセラーのシリーズとなっている。
- 1977年
- ささきいさおの「宇宙戦艦ヤマト」、堀江美都子の「キャンディ・キャンディ」がオリジナル・コンフィデンス主催・第10回日本レコードセールス大賞の「オリコン特別賞」を受賞する[16]。前者はオリコンLPチャートで6週連続1位(1977年8月29日付〜10月3日付)、シングルもヒットした。後者は1976年12月13日付〜1977年末時点でオリコン「TVまんが・童謡部門」チャートで56週連続1位、その後も記録更新した。
- 1978年
- 『宇宙戦艦ヤマト三部作』が第20回日本レコード大賞の企画賞を受賞する。
- 1980年
- 7月。キングレコード・セブンシーズレーベルより主題歌・挿入歌の入ったカセットに絵本が付いた「絵本付きカセット」が発売される。確認されているのは「機動戦士ガンダム」2種と「宇宙戦士バルディオス」の合計3種類。歌4曲、または歌4曲とBGMを収録。絵本付き商品はその後、アポロンの『アポッコ』シリーズ、日本コロムビアの『コロちゃんパック』などが発売された。
- アニメ映画『ヤマトよ永遠に』の主題歌として使われた布施明の「愛よその日まで」が、「第31回NHK紅白歌合戦」の曲目として起用される。
- 1990年
- 『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとして使われた(後にオープニングテーマにも起用)B.B.クイーンズの「おどるポンポコリン」が第32回日本レコード大賞のポップス・ロック部門大賞を受賞する。
- 1994年
- 7月。アニメ映画『ストリートファイターII MOVIE』の主題歌として使われた篠原涼子の「恋しさと せつなさと 心強さと」が発売され、アニメタイアップのシングル盤として、オリコン史上歴代1位の売上枚数を達成する[17]。
- 『怪獣王〜日本SF・幻想・映画・音楽体系』が第36回日本レコード大賞の企画賞を受賞する。
- 2000年
- 2001年
- 『犬夜叉』のエンディングテーマとして使われた浜崎あゆみの「Dearest」が、第43回日本レコード大賞の大賞を受賞する。
- 2002年
- 2008年
- 2010年
- 12月1日。Billboard JAPANが、アニメソング・アニメ声優の楽曲を対象とした音楽チャート「Hot Animation」を開始させる。第一回(2010年12月6日付)の1位は寿美菜子の「Startline」[20]。
資料・参考文献
- 「アニメ・ソング資料集」上・下・年鑑1:アニメソングうたう会・自費出版。1989年〜1992年。
- 「特ソン超百科 -準備稿 - 」:アニメソングうたう会・自費出版。1987年刊
- 「特ソン資料集」「致死量の毒」シリーズ:地球防衛群・自費出版
- 「THE アニメソング」:木村英俊 著・角川書店1999年刊
- 「THE ART OF 劇場アニメ70年史」:徳間書店・リスト制作委員会
- 「THE ART OF TVアニメ25年史」:徳間書店・リスト制作委員会
- 「アニソンバカ一代」:キムラケイサクK&Bパブリッシャーズ2010年刊(串田アキラ・小林亜星・山本正之インタビュー収録)
脚注・出典
- ^ 資料・参考文献節を参照。
- ^ Tin Pan Alley, David A. Jasen(Google ブックス)
- ^ a b c 木村英俊『THE アニメソング』を参照。
- ^ a b 競作発売など当時の音盤事情に関しては「ウルトラマン大全集(講談社・1987年)」の「空想特撮シリーズ音盤目録」の項を参照。
- ^ 『TVサイズ!メタルヒーロー全主題歌集』(2002年)解説書を参照。
- ^ 『アニメ大好き!』(徳間書店)1982年、149頁参照。
- ^ 『アニメージュ』1980年4月号、142頁参照。
- ^ 設定資料集付きでBOX仕様の「新世紀エヴァンゲリオン」サントラシリーズや林原めぐみの写真集付きアルバムなどが有名。再生産分(規格番号と価格は同じ)からは特典は付かない。
- ^ 別商品のため規格番号と価格はそれぞれ別。
- ^ 第一弾は恐らく「NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK II」。トールケース仕様でマウスパッド付きの限定版の規格番号がVIZL-55(3200円)、特典の付かない通常版の規格番号がVICL-60738(2913円)。ちなみに「NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK I」は初回生産分のみトールケース仕様でマウスパッド付き、再生産分からは特典なしのジュエルケースに入った通常仕様CD(規格番号も価格も同じ)だった。
- ^ 映像ソフトの初回生産分に特典として音楽ソフトが付く事はビデオカセットの時代からあった。
- ^ DVDオーディオの第一弾は「AKIRA」DTSバージョン、DVD musicの第一弾はChangin' My Lifeの「ETERNAL SNOW」(満月をさがしてED主題歌)
- ^ 第一弾は恐らく『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』
- ^ 例えば東京ムービーが発売元の子門真人版「王者!侍ジャイアンツ」full sizeなど
- ^ アニメソング25年史、木村英俊、ジーベック音楽出版、90頁。
- ^ 『コンフィデンス年鑑』1978年版、97頁。
- ^ 『オリコン・ウィーク The Ichiban』2001年1月1・8日号(第23巻第1号、通巻1079号)オリコン(現:オリコン・エンタテインメント)、46頁。(2000年8月28日付現在の情報)
- ^ 天地テーマソングダウンロード開始します!
- ^ たいやきくんプロフィール
- ^ ビルボードがアニメ楽曲チャート開始 1位に寿美菜子「Startline」、Animeanime.jp、2010年12月1日。(2010/12/1閲覧)
関連項目
- 年代別アニメソング一覧 (オープニング曲)
- 年代別アニメソング一覧 (エンディング曲)
- 年代別アニメソング一覧 (その他)
- アニメ・特撮ソング
- MUSIC JAPAN 新世紀アニソンSP
- アニうた KITAKYUSHU
- オープニングアニメーション
- エンディングアニメーション
外部リンク
- TVアニメソング25年史(木村英俊、(有)ジーベック音楽出版ウェブサイト)