わたしを離さないで

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。182.164.62.57 (会話) による 2016年3月23日 (水) 08:30個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎放送日程)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

わたしを離さないで
Never Let Me Go
著者 カズオ・イシグロ
訳者 土屋政雄
発行日 イギリスの旗 イギリス 2005年4月5日
日本の旗 日本 2006年4月22日
発行元 イギリスの旗 イギリス Alfred A. Knopf
日本の旗 日本 早川書房
ジャンル サイエンス・フィクション
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
形態 上製本
ページ数 349
公式サイト www.hayakawa-online.co.jp
コード ISBN 978-4-15-208719-5
ISBN 9784151200519文庫本
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

わたしを離さないで』(わたしをはなさないで、原題:Never Let Me Go)は、2005年発表のカズオ・イシグロによる長編小説である。同年のブッカー賞最終候補作。

日本では、2006年4月に土屋政雄翻訳早川書房から単行本が刊行され、2008年8月にハヤカワ文庫版が発刊された。

2010年マーク・ロマネク監督、キャリー・マリガンアンドリュー・ガーフィールドキーラ・ナイトレイ主演により映画化された。2014年には蜷川幸雄演出、多部未華子主演により舞台化された。2016年1月からTBSテレビテレビドラマ化されている[1]

あらすじ

1990年代末のイギリス。「介護人」キャシーは、ヘールシャムと呼ばれる施設で育てられた「提供者」達の世話をしている。そもそも、キャシーも生まれながらにしてヘールシャムで育った提供者である。施設を出て、大人となったキャシーは、閉鎖的なヘールシャムでの子供時代を回想していく。

ヘールシャムでの教育は、至って奇妙なものであった。「保護官」と呼ばれる教員達により「展覧会」に出展するための絵画や詩などを作る創作活動や、毎週の健康診断などが実施されていた。キャシーが12・3歳の頃、彼女にはトミーという親友がいた。彼は周囲の能力の差についていけずに教室内で度々癇癪を起こす生徒だった。しかし、ある日を境にトミーは騒ぎを起こさなくなり、それがキャシーにとっては疑問であった。ある日キャシーは、トミーに騒ぎを起こさなくなった理由について問いただす。彼は「保護官」の一人であるルーシーの影響だと語る。トミー曰く、ルーシーには絵を描きたくなければ描かなくてよい、と言われたという。またルーシーはヘールシャムの方針に不満を抱いていることがトミーの口から明かされる。この話を聞いた頃からキャシーは、ルーシーの事を注視するようになった。

キャシーが15歳になったとき、ヘールシャムでの最後の1年の出来事であった。ある雨の日、ルーシーは生徒の「映画俳優になりたい」という一言を耳にし、突如生徒を集めヘールシャムの真実を語る。「提供者」達は臓器提供のために造られ、摘出手術が終われば死ぬだけのクローンで、ヘールシャムを出るとすぐに臓器提供が始まるから将来の夢など無意味だという真実を。

評価

抑制された文体で人間と社会の新たな関係を描き出した本作は、英文学者の柴田元幸がイシグロの最高傑作と激賞する一方[2]、作家の佐藤亜紀はあまりにエモーショナルな情動を追いすぎていると酷評し、2006年のワースト作品であると公言した[3]

日本語訳書

映画

キャリー・マリガンアンドリュー・ガーフィールドキーラ・ナイトレイ主演、マーク・ロマネク監督で映画化され、2010年に公開された。イシグロ自身も製作総指揮として名を連ねている[4]

舞台

2014年ホリプロの企画制作により舞台化され、彩の国さいたま芸術劇場愛知県芸術劇場シアター・ドラマシティで上演された。演出は蜷川幸雄、脚本は倉持裕[5][6]

キャスト(舞台)

スタッフ(舞台)

上演日程

テレビドラマ

わたしを離さないで
ジャンル テレビドラマ
原作 カズオ・イシグロ
脚本 森下佳子
演出 吉田健
山本剛義
平川雄一朗
出演者 綾瀬はるか
三浦春馬
水川あさみ
真飛聖
伊藤歩
甲本雅裕
麻生祐未
製作
プロデューサー 渡瀬暁彦
飯田和孝
制作 TBS
放送
音声形式ステレオ放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2016年1月15日 - 3月18日
放送時間金曜 22:00 - 22:54
放送枠金曜ドラマ (TBS)
放送分54分
回数10
公式サイト

特記事項:
初回は15分拡大(22:00 - 23:09)
テンプレートを表示

2016年1月15日から3月18日までTBS系「金曜ドラマ」枠にてテレビドラマ[1]。脚本は森下佳子、主演は綾瀬はるか

原作のイギリスから、舞台を日本に移して翻案。主人公は「恭子」、ヘールシャムは「陽光学苑」などに置き換えている[8]。物語は恭子が過去に遡って語るモノローグ(=信頼できない語り手)によって進行し、第1話 - 第3話を「第1章:陽光学苑編」、第4話 - 第6話を「第2章:コテージ編」、第7話以降を「最終章:希望編」としている。

鈴木梨央2013年NHK大河ドラマ八重の桜』に続き、綾瀬演じる主人公の幼少期を演じる[9]

ドラマに先駆け、綾瀬はイギリスにて原作者のイシグロと4時間以上にわたる対談に臨んだ[10][11]

キャスト(テレビドラマ)

主要人物

保科 恭子(ほしな きょうこ)
演 - 綾瀬はるか(幼少期:鈴木梨央
原作でのキャシーに相当。
現在は数人の「介護人」を務める。料理絵画が得意。幼少期は明るくお人好しな優等生で、友彦を常に気にかけ、互いに惹かれていく。
学苑卒業後、友彦、美和と共にコテージ『ブラウン』で生活するが、三人の関係は次第にこじれていき、真実の自決をきっかけに、感情を捨て淡々と自分の使命を受ける事を決意、一人コテージを去る。
その後、美和からの「介護人」リクエストをきっかけに再会する。
土井 友彦(どい ともひこ)
演 - 三浦春馬(幼少期:中川翼)
原作でのトミーに相当。
あだ名は「トモ」。やや押しに弱く優柔不断なところがある。感情が高ぶった時にオナラが出る体質。
幼少期は絵が苦手かつ癇癪持ちである事で、からかいの対象にされていたが、恭子や龍子の心遣いからサッカー選手への夢を持つ。
「提供者」となった後、恭子とは疎遠になっていたが、美和の「提供」を前に三人で陽光学苑跡地を見に行く約束をし、再会する。
酒井 美和(さかい みわ)
演 - 水川あさみ(幼少期:瑞城さくら)
原作でのルースに相当。「提供者」となり、恭子を「介護人」にリクエストする。
幼少より自分が一番でないと気が済まない、勝気で小悪魔的な性格。恭子が友彦からプレゼントされたCDを盗んだり、強引に友彦と交際を始めたりと恭子を振り回していく。
その反面、恭子がコテージを去ろうとする事に困惑するなど、内心では彼女に依存する言動もみられる。

恭子の元クラスメイト

遠藤 真実(えんどう まなみ)
演 - 中井ノエミ(幼少期:エマ・バーンズ
冷静で勘が鋭く、自身達の出自や学苑の管理にいち早く気づく。
学苑卒業後も恭子と連絡をとり、学苑時代に厳しく止められていたタバコを嗜む。
コテージ『ホワイトマンション』で住人と共に「提供者」の権利運動を行うが、警察に知られ逃亡。街頭で自らナイフで手首を切った後、自身らの境遇を周囲に訴え、首もとにナイフを当て自決する。
大山 珠世(おおやま たまよ)[12]
演 - 馬場園梓(幼少期:本間日陽和)
現在は友彦の介護人で、「提供」の通知が届いている。根っから明るくおおらかな性格。原作でのローラに相当。
花(はな)
演 - 大西礼芳(幼少期:濱田ここね
大人しい性格で、内心で美和を苦手に思う。美和の話によると、「介護人」講習で友彦と再会し、絵画の指導をしていたらしい。原作でのハナに相当。
三村 広樹(みむら ひろき)
演 - 小林喜日
学苑でのガキ大将的な存在で、絵が苦手な友彦をからかっていた。梯子を使い聖人と共に学苑の外に出て、その日以降消息を絶つ。
聖人(まさと)
演 - 石川樹
広樹と共に学苑の外へ出て消息を絶つ。

陽光学苑 教職員

堀江 龍子(ほりえ たつこ)
演 - 伊藤歩
原作でのルーシー先生に相当。陽光学苑に赴任してきた保健体育教師。
当初は恵美子の教育理念に共感していたが、学苑の現実を目の当たりにし、広樹・聖人の失踪事件を機に心身ともにやつれ果て、心の病を理由に学苑を去る。
元々は「提供者」への支援団体に参加し、教師退職後は提供者にまつわるライターの仕事に就く。
街中で恭子と再会、三度目の「提供」が迫った友彦を少年サッカーの観戦に誘う。
克枝(かつえ)
演 - 山野海
寮母兼食堂担当。
山崎 次郎(やまざき じろう)
演 - 甲本雅裕
美術部顧問。明るく教育熱心で、美和に慕われていた。原作でのジェラルディン先生に相当。
神川 恵美子(かみがわ えみこ)
演 - 麻生祐未
陽光学苑の校長および創立者。
表向きは穏やかで凛とした印象だが、生徒達を「特別な使命を持った“天使”」と洗脳まがいに教育し、学苑の管理のためには冷徹で手段を選ばない。
実父はクローン研究の一人者であり、 当時は自分や身内の細胞を使いクローンの研究を行っていた。恵美子自身、実母をルーツにしたクローンであり、人間のクローンとしては初の成功例であった。
原作でのエミリー先生に相当(原作にはクローンという設定はない)。

コテージ ブラウン

立花 浩介(たちばな こうすけ)
演 - 井上芳雄
コテージ住人のリーダー。コテージで孤立する恭子を慰め、体の関係も持つ。「介護人」となる事が決まり、いち早くコテージを去る。
峰岸(みねぎし)
演 - 梶原善
コテージ管理人。「提供者」の存在を軽蔑し、コテージ住人に何かと悪態をつく。原作のケファーズに相当。
金井 あぐり(かない あぐり)
演 - 白羽ゆり
コテージでの恭子の行動で自分の立場がなくなる事で、内心で恭子を疎ましく思う。美和が語った噂話の「提供の猶予」を信じている。原作のクリシーに相当。
譲二(じょうじ)
演 - 阿部進之介
あぐりの彼氏。原作のロドニーに相当。
信(しん)
演 - 川村陽介
陽光とは異なる「ホーム」という施設の出身。気さくな性格。
桃(もも)
演 - 松岡恵望子
信と同じ施設の出身。性に奔放。陽光出身者の待遇に不満を抱く。

その他

マダム
演 - 真飛聖
時おり陽光学苑に訪問しては、生徒たちの作品を選別して持ち帰っていく謎めいた女性。
作品を政財界などに紹介し、「提供者」の持つ才能を世間に知らせる役目を担っていた。
加藤(かとう)
演 - 柄本佑
恭子が介護人を担当する「提供者」の一人で、恭子の良き相談相手となっている。
中村 彩(なかむら あや)
演 - 水崎綾女
珠世に代わり、友彦の「介護人」を務める。

ゲスト

第5話
古着屋店長
演 - 大友康平
恭子と友彦が訪れた「のぞみが崎」(原作でのノーフォークに相当)付近の古着屋で出会った男性。かつて友彦が恭子にプレゼントしたものと同じCDを譲る。
かつて「提供」を受け、命を助けられた事がある模様。
第8話
少女
演 - 鈴木梨央
陽光学苑跡地に設立された「ホーム」にいた、幼少期の恭子と瓜二つの少女。恭子と同じルーツを持つクローンと推測される。
第9話
古井(ふるい)
演 - 八代英輝
出版社に勤める編集者。幼少期の恭子が描いた絵が本の表紙に使われていた事から、恭子たちが恵美子と再会するきっかけを作る。
最終話
少年サッカーの父兄
演 - 槙尾ユウスケ
子供の頃に心臓の「提供」を受けている。

スタッフ(テレビドラマ)

放送日程

各話 放送日 サブタイトル 演出 視聴率[15]
第1話 1月15日 ドラマ史上最も哀しい運命…衝撃の結末へ愛しく儚い命の果ての希望とは 吉田健 6.2%
第2話 1月22日 因縁の再開…20年前の嘘が今、3人の運命を動かす 6.2%
第3話 1月29日 初恋の行方は…閉ざされた未来に見た儚い夢と希望 山本剛義 7.7%
第4話 2月05日 開かれた扉…新たな恋は希望か絶望か 吉田健 7.4%
第5話 2月12日 ついに見えた希望!!提供の"猶予"が導く波乱の恋 山本剛義 7.7%
第6話 2月19日 第2章完結!!求めた愛と希望の行末は…永遠の別れ 平川雄一朗 6.8%
第7話 2月26日 最終章へ…再会の夢近づく終末に望むのは許しと愛 6.7%
第8話 3月04日 友との別れ…解ける因縁、託されたのは最期の希望 吉田健 6.2%
第9話 3月11日 未来を取り戻す!!最後の希望の行方…全ての真実が明かされる運命の瞬間 山本剛義 6.5%
最終話 3月18日 愛と希望の結末は…生きること愛することそして生まれてきた意味とは? 吉田健 6.7%
平均視聴率6.8%[16]

(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)

TBS 金曜ドラマ
前番組 番組名 次番組
コウノドリ
(2015.10.16 - 12.18)
わたしを離さないで
(2016.1.15 - 3.18)

脚注

  1. ^ a b “綾瀬はるか&三浦春馬&水川あさみが共演!「わたしを離さないで」初のドラマ化決定”. シネマカフェ (株式会社イード). (2015年11月19日). http://www.cinemacafe.net/article/2015/11/19/35775.html 2015年11月19日閲覧。 
  2. ^ ハヤカワepi文庫の解説
  3. ^ 熊本日日新聞「佐藤亜紀が読む」、2006年8月6日。
  4. ^ 映画公式サイト
  5. ^ 蜷川幸雄×倉持裕がカズオ・イシグロの傑作を舞台化 多部未華子&三浦涼介&木村文乃出演『わたしを離さないで』が来年春に上演”. シアターガイド (2013年11月12日). 2015年11月19日閲覧。
  6. ^ a b 『わたしを離さないで』”. 彩の国さいたま芸術劇場. 2015年11月19日閲覧。
  7. ^ a b c d わたしを離さないで|朝日放送”. 朝日放送ホームページ. 2015年11月19日閲覧。
  8. ^ 綾瀬はるか×三浦春馬×水川あさみ共演『わたしを離さないで』連ドラ化”. ORICON STYLE (2015年11月19日). 2015年11月19日閲覧。
  9. ^ “鈴木梨央 再び綾瀬の幼少期役「わたしを離さないで」序盤牽引”. スポニチアネックス. (2016年1月15日). http://www.sponichi.co.jp/entertainment/yomimono/drama/2016/01_03/hanasanaide/kiji/K20160115011964430.html 2016年2月7日閲覧。 
  10. ^ “撮影レポート”. 金曜ドラマ『わたしを離さないで』 (TBSテレビ). (2015年12月23日). http://www.tbs.co.jp/never-let-me-go/report/2.html/ 2016年2月7日閲覧。 
  11. ^ “綾瀬はるか、主演ドラマ『わたしを離さないで』原作者と4時間超えの対談”. ORICON STYLE (株式会社oricon ME). (2015年12月23日). http://www.oricon.co.jp/news/2064306/full/ 2016年2月7日閲覧。 
  12. ^ 名字は第3話での提供開始通知に記載されている。
  13. ^ “挿入歌情報”. 金曜ドラマ『わたしを離さないで』 (TBSテレビ). (2016年1月29日). http://www.tbs.co.jp/never-let-me-go/news/#n3 2016年2月7日閲覧。 
  14. ^ “ドラマ『わたしを離さないで』話題の劇中歌を配信”. ORICON STYLE (株式会社oricon ME). (2016年1月29日). http://www.oricon.co.jp/news/2066116/full/ 2016年1月29日閲覧。 
  15. ^ 綾瀬はるか主演「わたしを離さないで」最終回視聴率は6.7%”. スポニチアネックス (2016年3月22日). 2016年3月23日閲覧。
  16. ^ 綾瀬はるか、『わたしを離さないで』今期最低も……「入浴シーン披露」で新ドラマ2ケタ突破!”. サイゾーウーマン (2016年3月23日). 2016年3月23日閲覧。

外部リンク