アンプ (音響機器)
音響機器におけるアンプは音声を増幅する役割をもつ機器である。英語名amplifier(アンプリファイア)の略称から慣例的にこのように呼ばれることが多い。用途、出力の大きさ、付加機能によりいくつかの種類がある。
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[編集] 概要
[編集] 分類
レコードプレーヤー、CDプレーヤー、チューナー、カセットプレーヤーなどの音響機器からのライン出力を受け、またセレクタやトーンコントロールなどを内蔵し、主として電圧を増幅し、次のパワーアンプを駆動する増幅器をコントロールアンプあるいは次のメインアンプと対置してプリアンプと呼ぶ。コントロールアンプからの出力を受け、主として電流(ないし電力)を増幅し、スピーカーなどを駆動する増幅器をパワーアンプあるいはプリアンプと対置してメインアンプと呼ぶ。これらを別々のコンポーネントにすることが広く行われたのでそれぞれを「プリアンプ」「メインアンプ」と区別するようになり、更にはそれらを一体化したものとしてプリメインアンプやインテグレーテッドアンプ(総合アンプ)という呼称も生まれた。プリメインアンプの中には、プリ部とメイン部を切り離して使えるものもあった。
[編集] コントロールアンプ
詳細は「プリアンプ」を参照
コントロールアンプ(プリアンプ)は小さな(主としてラインレベルの)入力信号を増幅するだけでなく、音を細かく調整したり、入力を切り替えたりする機能を備えており、そのために高音域、中音域、低音域の音量を個別に調整する「トーン・コントロールつまみ」や、ステレオの左右の音量を調整する「バランス調整つまみ」、入力を選択する「入力切替スイッチ」(入力セレクタ・スイッチ)などを備えている。
レコードが主力の媒体だった時代には、レコード盤の表面の溝のわずかな動きを拾って電気信号に変えるピックアップ・カートリッジの微小な出力を増幅する専用のアンプがプリアンプに備わっていることが一般的であった。特に、単純な増幅だけではなく、MCカートリッジの非常に微小な出力を増幅したり、レコードに記録された信号の「RIAA特性」と呼ばれる周波数特性を、逆特性のフィルターを通して戻すイコライザアンプが必要であった。プリアンプ内蔵ではなく独立させた「フォノアンプ」もあった。1980年代ごろからは主なメディアがCDに移行したため、フォノイコライザを持たない機種が多くなっており、近年はこれらはレコードプレーヤーの側が備えるようになっている。
[編集] パワーアンプ
パワーアンプ(メインアンプ)はプリアンプからの出力を受けて電力増幅を行い、スピーカーなどを駆動する。
電力を増幅するだけであるため、出力調整用の「ボリュームつまみ」が付いているだけ、というものが一般的であり、プリアンプ側にメインボリュームがあることを前提として[1]ボリュームが無いものも少なくない。大出力のものは発熱も大きいので放熱に注意しなければならない。
[編集] プリメインアンプ
プリメインアンプは「インテグレーテッドアンプ」とも呼ばれ、プリアンプとメインアンプを単一の筐体に収めたものである。PAなど業務用機器や一部高級機を除けば、ほとんどがプリメインアンプである。コントロールアンプとしての機能のためのボタン/つまみ類と入力端子類を備え、パワーアンプであるのでスピーカ端子がある。複数系統のスピーカを切り替えられるようになっているものもある。
プリアンプとメインアンプを分ける構成をセパレートなどと呼ぶ。
普及機ではチューナーも内蔵した「チューナーアンプ」など、他の音響機器の機能も内蔵することがある。
[編集] 増幅素子
真空管が発明されると音声増幅が可能になり、通信機、ラジオ、電気蓄音機などに組み込まれた。
現在では真空管に代わってトランジスタやIC等が使われ、電力効率、寿命が著しく向上した。アナログ回路が主流であるが、スイッチング電源に似た原理で出力段の大電力信号を生成するデジタルアンプも実用化されている。電界効果トランジスタも使われる。
現在でも一部オーディオマニアの間では真空管によって増幅された音質が好まれることがあるため、それらの需要を満たすためロシアや東欧、中国で生産され続けていた真空管が用いられるだけでなく、米国ウエスタンエレクトリック社では真空管の再生産を始めた。
[編集] デジタルアンプ
「増幅回路#D級」も参照
級別としてD級とされることもある。
デジタルアンプとはPWMやPDMを増幅に利用するアンプを指す。従って、デジタル入力を備えた製品でも、CDなどから入力されたデジタル信号(PCM信号)をそのまま増幅するわけではないものもある。デジタルアンプでは入力信号により変調されたパルス波のデューティー比ないし頻度を制御するため、最終出力段のトランジスタはONかOFFかの単純なスイッチング動作となり、アナログアンプに比べ電力効率が飛躍的に高いことが最大の特長である。基本的な原理は、電圧可変スイッチング電源の出力電圧を入力(音声)信号に応じて変化させることと等価である。
市販のオーディオアンプでは、1977年に発売されたソニーのTA-N88が非常に初期のものである[2]。これは、自励発振型のPWM変調回路により入力信号からアナログ的にPWM波を生成するものであるため、これを世界初のデジタルアンプとするかについては意見が分かれるものの、今日のデジタルアンプの原型となるアンプである。
また、デジタルアンプはその電力効率の高さからミニコンポやカーオーディオ、携帯音楽プレーヤーなどのアンプ、また多チャンネルを扱うAVアンプ(後述)用としてよく用いられるほか、従来のアナログアンプにない特長を活かしたハイエンド機のアンプとして販売されているものもある。 中でも、1999年8月にシャープが発売したΔΣ1bitデジタルアンプ SM-SX100は有名であり、これは同社が高級オーディオアンプ(標準価格100万円)として十数年ぶりに発売したものである。なお、デジタルアンプ技術としては、ソニーのS-Master/S-Master PRO、オンキヨーのVL Digital、ビクターのDEUSなど、オーディオ機器メーカー各社により独自に開発が進められている。
なお、かつてCDが登場した頃にデジタルアンプと呼ばれたのは、DAコンバータを内蔵しデジタル入力を持つアンプの事で、これとは異なる。またAVアンプについても、デジタルアンプと呼ばれるものが多いが、詳細は後述する。
[編集] AVアンプ
オーディオビジュアルアンプ。AVセンターとも呼ぶ。ホームシアター用のアンプである。AM/FMチューナーが搭載されているものはAVレシーバーと呼ぶ場合がある。映像信号の入出力端子があり、AVセレクターとしての機能を有するのがAVアンプの特徴である。前述のプリアンプ、プリメインアンプの殆どが2chステレオ音声信号のみを扱うのに対して、AVアンプは2.1ch以上(5.1ch等)のサラウンド音声信号も扱う。AVアンプで「デジタルアンプ」を称する製品にはおおむね2系統あり、1980年代に見られたものは、DSP(デジタルシグナルプロセッサないしデジタル信号処理)による処理をおこなっていること、ないしDACを内蔵しデジタル入力を備えていることを以ってデジタルと称していた。一方21世紀に入って以降のものは、パワーアンプが前節(#デジタルアンプ)で説明したような構成になっているデジタルアンプである。
初期のAVアンプの多くは、単にオーディオ用ステレオアンプに映像信号の入出力端子を追加しただけのものであった。その後、サラウンド機能を持つAVアンプが登場する。1980年代半ばよりステレオ再生と互換性のあるドルビーサラウンドが登場し、ビデオソフトの音声としても普及したため、それに対応するAVアンプが増加した。また、通常のステレオ音声であっても、各社独自の信号処理によりサラウンド化するようになった。最初は3chの簡易的なもの(リアchはモノラル)であったが、後にセンター信号と方向強調回路を付加し5chとしたドルビープロロジック方式が登場した。
1990年代後半以降、ドルビーデジタル方式が主にDVD-Videoソフトの普及によって浸透する事となる。一般的にフロント左右、サラウンド左右、センター、ウーハーの5.1ch分(ウーハーは再生する音声信号が低音成分のみの狭い音域のために、0.1chと表現されている)を扱う。DVD-Video・デジタル放送の普及に伴いDTS・AACにも対応した製品が増えた。最近では2chや2.1chで仮想サラウンド再生が可能な製品が多く、ドルビープロロジックⅡ、ドルビープロロジックⅡx、DTS-ESなどが搭載された製品が登場してからは、サラウンドバックなどを加えた6.1ch、7.1ch、9.1ch音声を出力する製品も存在するようになった。
2004年頃からHDMI入出力を備えたAVアンプが登場。BDソフトの登場に伴って、2007年頃から従来のS/PDIF端子では扱えないドルビーTrueHD・DTS-HDマスターオーディオなどのハイレゾ音源に対応(低価格機種はTrueHD・DTS-HD等のデコーダを省略し、再生機側でデコードした非圧縮音声の再生のみ対応する場合がある)するようになり、AVアンプはスペックの底上げが図られ、2008年前後には普及価格帯にも広がった。またHDMIの映像信号を中継するだけでなくアナログ映像入力をデジタル化ないしアップコンバートして出力できる製品も存在する。
2010年頃からは、DLNAやAirPlayによるネットワークオーディオ機能を持つ製品が登場している。
[編集] ヘッドホンアンプ
ヘッドホン専用のアンプ。ヘッドホン端子の無い製品に接続する目的や、より高音質でヘッドホンリスニングする為に使用される。スピーカー駆動に用いるプリメインアンプ等にもヘッドホン端子が存在するが、これらはスピーカー用の大きな出力をヘッドホン用に減衰させるために抵抗を直列に挿入しており音質低下の原因になるとされる。ヘッドホン専用に小さな出力で構成されたヘッドホンアンプにはこの抵抗を用いる必要がない。即ちアンプがヘッドホンを直接駆動する点がヘッドホンアンプの最大の特徴[要出典]である。
複数台のヘッドホンの同時使用が可能な製品も存在し、録音スタジオ向けには複数のミュージシャンがヘッドフォンで同時にモニターする用途に使われる。異なる音源を個々のミュージシャンが好みのバランスでモニターするために、簡単なミキサーを内蔵したものもある。音楽CDを販売する店頭では、新譜の試聴にヘッドホンを用意していることがあり、1台のCDプレーヤーから複数の試聴者へ音楽再生する用途に使われる。
[編集] ICアンプとディスクリートアンプ
アンプには信号増幅をIC(集積回路)で行うICアンプと、集積していない回路(抵抗器、コンデンサー、ダイオードなど個々の電子部品が独立している)で行うディスクリートアンプがある。ICを利用するメリットには、部品点数を減らしてコストを下げられること、全体のサイズを縮小できること、特性の揃った素子を組み合わせる必要がある回路の採用に有利なこと、などがある。ディスクリートのメリットには、安いトランジスタでも一般に普通程度のICより雑音特性が良いこと(普通のICアンプでは無音状態でそれとわかるノイズが乗る)、部品を選定してより良い回路を組めること、などがある。
[編集] 著名なブランド
- 主として高級機を販売している企業やブランド
- 主として普及機を販売している企業やブランド
- かつて販売していた企業やブランド
[編集] 級
「増幅回路#級」も参照
アンプの動作に関する級について述べる。アンプに使われる個々の素子の動作については増幅回路#級を参照のこと。ここではアンプ装置全体としての級、特にオーディオ用のそれについて述べる。
増幅回路の動作にはA級・B級・C級とあり、D級その他は増幅回路の動作というより増幅の方式の名前である。オーディオ用アンプではアンプ装置全体の動作としては普通基本的にA級動作である。
A級アンプとするためにはシングルの構成(構成については増幅回路#代表的な構成方式を参照)では増幅回路をA級動作させなければならない。プッシュプルの構成は、プッシュ側とプル側のそれぞれにB級動作する増幅回路を配置し繋ぎ合わせて、全体としてはA級とするものと基本的には考えられるが、オーディオではその歪み(特に素子の非線形性の影響が大きい小信号時)を問題にする。
古典的なDEPPでは歪みが多く、俗にDEPPを指してB級プッシュプルなどとされることがある。コンプリメンタリ素子を利用したSEPPでは基本的に歪みは少ないが、より歪みを少なくするためにバイアス電流量を多めにしたものを指してAB級、十分に多くして両方の素子がA級動作するようにしたものを純A級などとしたりする(DEPPのB級に対して、あるいは純A級こそが「A級」であるなどとして、通常のSEPPをAB級などともしたりする)。
真空管は、グリッド電圧が正領域まで利用する場合、級に数字の2を添える。負領域のみ利用の場合は、無印か数字の1を添える。
[編集] 擬似A級
全ての素子がA級で動作するいわゆる「純A級」は、歪を極力抑えたものといえるが、消費電力が大きく発熱が問題となり大出力を得ることは難しい。純A級レベルの性能かつ発熱問題を克服したとアピールした製品が1970年代末頃から1980年代にかけ流行した。
信号波形に応じて出力段のバイアス量を変化させるなど、なるべく素子の特性が素直な部分を利用するべく工夫が施された製品であり、総称して(「擬似『純A級』」といったような意味で)「擬似A級」などと呼ばれる。
擬似A級の各社の呼称例
- 「A+級(Class A+)」、「Class AA」、「MOS Class AA」、「New Class A」(テクニクス・パナソニック)
- 「ピュアA級」、「ノンスイッチングA級」、「New Super Optical Class A」(デンオン→現:デノン)
- 「HCA回路」、「Dual Amp Class A」(ヤマハ)
- 「スーパーA」、「アドバンストスーパーA」、「デジタルピュアA」(日本ビクター)
- 「クォーターA」(マランツ)
- 「ノンスイッチング・サーキット」(パイオニア)
他、多数。
Lo-Dでは、信号の大きさによって電源電圧の高低を切り替え、アンプの効率を高める方法が「E級」と呼称したが、動作原理はマランツなどで使用された古典的な擬似A級と同じものである。
[編集] D級その他
#デジタルアンプをD級ともいう。効率の良さが利点であるがSACDのDSDを直接再生するなどをはじめハイファイオーディオにも広まっている。E級(前述のLo-Dとは無関係)・F級もデジタルベースの技術だが高周波応用が主でオーディオとは今のところ関係ない。G級・H級は技術的には前述の擬似A級と類似した省電力化方式で、もっぱらポータブルオーディオなどにおいてD級の次のトピックとなっている。
[編集] 参考文献・出典・脚注