電界効果トランジスタ
電界効果トランジスタ(でんかいこうかトランジスタ、Field effect transistor, FET)は、ゲート電極に電圧をかけ、チャネルの電界により電子または正孔の流れに関門(ゲート)を設ける原理で、ソース・ドレイン端子間の電流を制御するトランジスタである。接合型トランジスタが2種類のキャリアを用いるバイポーラトランジスタの一種であることに対して、電界効果トランジスタはいずれかのキャリアしか用いないユニポーラトランジスタの一種である。
目次 |
概要 [編集]
端子 [編集]
FETには3端子型と4端子型がある。3端子型の端子名は「ソース」「ゲート」「ドレイン」であり、4端子型の端子名は「ソース」「ゲート」「ドレイン」「バックゲート(もしくはバルク)」である。バックゲート端子を固定電位で使用する場合には、4端子型の構造でも、バックゲートを省略した3端子型の素子として扱う場合もある。パワーFET等の高耐圧用途など特殊な用途のFETを除いて通常のFETは対称型素子であり、ソースとドレインに構造的な違いはない。単に電圧を印加した時の2端子を比較して、電圧の高低でドレインとソースを決定する場合が多い。キャリアが電子(n型チャネル)であれば高電圧側の方をドレイン、低電圧側をソース、キャリアがホール(p型チャネル)であればその逆となる。すなわち、キャリアの発生源がソースであり、キャリアの行き先がドレインと呼ばれ、キャリアの導通方向によってソースとドレインの名称が決まる。4端子型が使用される場合でも、バックゲートをn型チャネルでは接地したり、p型チャネルの場合は電源電圧という具合に固定電位にして使用される例が多く、回路図でバックゲート端子を省略して3端子素子として扱う場合もある。
チャネル [編集]
FETでは、電界で流れるキャリアの量を制御し、オン・オフのスイッチングを行なうが、その際に半導体中でキャリアが流れ、制御される部分をチャネルと言う。このチャネルには、半導体にn型とp型が存在するように、n型チャネルとp型チャネルの2種類が存在する。n型チャネルは導電に寄与するキャリアが電子の場合、p型チャネルは導電に寄与するキャリアがホールの場合である。注意すべき点としては、導電に寄与するキャリアのタイプであるため、実際のチャネルを構成する半導体のn型・p型と一致しない場合がある点である。実際に、HEMTでは、チャネル部分の半導体はアンドープであり、MOSFETでは、n型チャネルの場合、p型の半導体中の反転層を電子が流れることになる。このチャネルの型を示すため、FETのタイプの前にnやpの文字をつけて表すこともある(例えば、NMOS、PMOS)。
なお、一般に使用されるCMOS(相補型MOS、Complemetary MOSの略)は、NMOSとPMOSの組み合わせのことを示し、CMOSと呼ばれるMOSのタイプがあるわけではない。
分類 [編集]
ゲート電圧とドレイン電流の関係による分類 [編集]
- エンハンスメント形(enhancement type)=ノーマリーオフ形(normally off type):ゲート電圧をかけないときはチャネルが存在せずドレイン電流が流れないもの。
- ディプレッション形(depletion type)=ノーマリーオン形 (normally on type):ゲート電圧をかけないときにチャネルが存在しドレイン電流が流れるもの。
ゲート接合部の構造による分類 [編集]
- 金属酸化膜型(Metal Oxide Semiconductor FET, MOSFET):ゲート部分が半導体の酸化皮膜上の金属電極になっているもの。現在の集積回路の主流となっている素子であり、p/n両型を同じ回路に持つ場合、両型をまとめてCMOS型(Complemetary MOS:相補型MOS)と呼ぶ。
- 接合形(Junction FET, JFET):ゲート部分がバイポーラトランジスタと同じように、異種半導体の接合(PN接合)になっているもの。MOSFETとは動作原理が異なり、接合面にできる空乏層によって電流を制御する。
- 金属半導体形(Metal Semiconductor FET, MESFET):ゲート部分が金属電極と半導体の直接接合(ショットキー接合)になっているもの。
n型チャネル接合型FETのモデル [編集]
接合型 FET は通常ゲート端子がドレイン・ソース両端子よりも低い電圧で用いる。このときゲート端子は高インピーダンスでほとんど電流を流さない。よって考えるべき電流はドレインからソースへ流れる電流 iDS のみである。 ソース電圧を基準に取り、ゲート電圧を vGS (≤ 0)、ドレイン電圧を vDS と表せば、iDS はこれらの関数としてモデル化される。 ただし以下では vDS ≥ 0 とする。
この関数は、定義域をオーム領域(ohmic region, または線型領域)、飽和領域(saturation region)、ピンチオフ領域(pinch-off region)という3つの領域に分割する。ピンチオフ領域はゲート電圧がピンチオフ電圧(pinch-off voltage)Vp とよばれる負の決まった電圧以下の領域であり、この領域ではドレイン–ソース間に電流は流れない。すなわち、
である。 ピンチオフ電圧は FET の種類により異なるがおよそ Vp ≈ −3 V とされる。
飽和領域は、ゲート電圧がピンチオフ電圧よりも大きく、かつドレイン電圧がピンチオフ電圧からみたゲート電圧よりも大きな領域であり、ここでは実質的にドレイン–ソース電流はゲート電圧のみの関数である。すなわち、電流はドレイン電圧によらず一定である。ゲート電圧に関してはピンチオフ電圧から測って理想的には 2 乗の特性をもち、式では、
と表される。ただし、IDSS はドレイン飽和電流 (drain saturation current) とよばれる正の電流値で vGS = 0 であるときに流れるドレイン–ソース電流に相当する。このドレイン飽和電流は種類によっても個々の FET によってもかなりのばらつきがある。
これに対して、残りのオーム領域ではドレイン電圧が一定であればドレイン–ソース電流はゲート電圧とともに 1 次でしか増加しない。 一方、ドレイン電圧に関してはそれが 0 のときドレイン–ソース電流が 0 となり、ドレイン電圧とともに上に凸の 2 次曲線を描いて非線型で増加する。モデル上は飽和領域でのゲート電圧の上昇に関する電流の増加と、オーム領域でのドレイン電圧の減少に関する電流の減少は、符号を逆にして 2 乗のオーダーでまったく同じである。すなわち、
となる。
飽和領域は主として増幅用途に用いられるが、オーム領域は特に電圧制御抵抗(voltage-controlled resistor)として用いることができる。 またこのモデルの特性に基づけば、ゲート端子とゲート端子への入力 x、およびゲート端子とドレイン端子間に同じ大きさの抵抗をつなぎ、ゲート電圧を入力とドレイン電圧とのちょうど中間の電圧 vGS = (x + vDS) / 2 とすることによって、オーム領域での特性を線型化できる。 すなわち次のように電圧の積に比例した電流を得ることができる。
(オーム領域)
ただしこれは vDS ≥ 0 のオーム領域でのみ成立する補正であることに注意する必要がある。
用途 [編集]
FETはその特徴から、スイッチング素子や増幅素子として利用される。ゲート電流が小さいことに加え、構造が平面的であるため、バイポーラトランジスタと比較して作製や集積化(小型化)が容易である。そのため、現在[いつ?]の電子機器で使用される集積回路では必要不可欠な素子となっている。デジタル回路では、論理回路の基本素子として使用され、アナログ回路では、WLAN等に代表されるトランシーバーにおいて、送受信に使用される各種回路(LNA、フィルタ、ミキサ等)においても使用され、アナログスイッチや電子ボリュームなどにも応用される。極超短波以上ではシリコンよりもキャリアの移動度が高いヒ化ガリウム(GaAs)のような化合物半導体などを用いたFETが用いられている。
定電流ダイオードとして [編集]
FETは「ゲート電圧が一定であればドレイン電流が一定」という性質を持つため、回路に直列に接続しておけば、常に一定の電流が流れる定電流素子として使うことができる。これを一つの電子部品にしたものは定電流ダイオードと呼ばれる。順方向の使用で定電流の性能を発揮し、発光ダイオードの電流制限などに利用されている。 ダイオードと名が付いて外観もよく似ているが、接合型ダイオードとは構造は全く異なり,逆方向の電流を制限する整流作用もない。
参考文献 [編集]
- 最新FET(電界効果トランジスタ)規格表 各年度版(CQ出版社) - 1968年版(初版)から1986年版までは個別特性図が付いていた。1987年版から個別特性図ははずされた。1994年版から初期のFETの規格が外された。
- S. M. Sze, Semiconductor devices, physics and technology, John Wiley & Sons, New York, 1985.
関連項目 [編集]
|
|||||||||||||||||||||||



(オーム領域)