水晶振動子

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小型 4 MHz 水晶振動子 ハーメチックシールされたCANパッケージに収められている
水晶振動子の中身

水晶振動子(すいしょうしんどうし、quartz crystal unit または crystal unit)は、水晶(石英)の圧電効果を利用して高い周波数精度の発振を起こす際に用いられる受動素子の一つである。Xtalと略記されることもある。クォーツ時計無線通信コンピュータなど、現代のエレクトロニクスには欠かせない部品となっている。水晶発振子と呼ばれることがある。

原理[編集]

圧電体である水晶の結晶に電圧を加える(電界印加する)と、圧電体に変形が生ずる。電気的特性としては、通常はコンデンサとして作用するが、その固有振動数に近いある特定の周波数帯でのみコイルのように誘導性リアクタンスをもつものとして動作する。この原理を応用した電子部品が水晶振動子である。一般的な水晶振動子であるAT振動子は圧電体である水晶片(水晶ブランク)を2枚の電極で挟んだ水晶振動体を保持器に収めたものである。

発振回路において、トランジスタコイルコンデンサの接続の組み合わせにより発振の条件が決まる回路がある(ハートレー発振回路、コルピッツ発振回路など)。これらの回路のうち、コイルが発振の条件として必要な部分に水晶振動子を接続すると、その固有振動数の発振出力が得られる。その周波数は106オーダーの精度が容易に得られ、他に類を見ないものであることから、周波数や時間の基準として広く用いられている。その後、原子時計によりさらに精度の良い時間が得られるようになったが、原子時計は標準電波GPS経由で利用する場合も含めて周辺回路が水晶振動子よりも大きくなりがちであるため、回路を小型化・簡便化したい場合や原子時計ほどの精度が要らない場合は現在でも水晶振動子が使用されている。

結晶の大きさの関係から、実用に用いられている水晶振動子は1 - 20MHz程度のものが多い。それ以上の周波数が必要なときは、オーバートーン発振させるか(あるいは高い周波数用の水晶振動子は、オーバートーンで使用する前提のものもある)、周波数逓倍器を用いる。

腕時計など小型の時計用には32.768kHzなど小型で1Hzを求めやすい水晶振動子がよく用いられる。

水晶振動子の発振周波数自体は、水晶振動子の特性によって決まるため、基本的には変更できない。そのため無線通信などでは、用いる周波数に合わせて水晶振動子を差し替える方式が採られることもある。しかしながら、外部のキャパシタンスを調整することによって、±0.数%程度の微調整が可能であり、これを応用したVXO (Variable Xtal Oscillator)、キャパシタンスを可変容量ダイオードに置換して電圧制御できるようにしたVCXO(Voltage Controlled Xtal Oscillator、電圧制御水晶発振器)等の回路がある。また、水晶振動子と電圧制御発振器デジタル回路によるカウンタ回路や位相比較器等を組み合わせた位相同期回路 (PLL) によって、安定した任意の周波数の出力信号を得ることも可能である。

種類[編集]

ASICCPUのような同期回路のパッケージでは発振回路を内蔵し、水晶振動子を接続するだけで使用できるようにしているものが多い。精度を補償するために内部のEEPROMなどに補正値を保存できるようにしているチップもある。

時計用のRTCモジュールなど、特に精度が要求される用途には、単独の水晶振動子ではなく、発振回路と共に一つのパッケージに組み込み、電源を接続すれば出力信号が得られるクロック・モジュールが使用されることもある。

精度が低くてもよい場合の用途では、水晶振動子の代わりに、安価なセラミック発振子が使われることもある。

水晶振動子と温度補償発振回路を一つのパッケージに組み込んだTCXO(temperature compensated crystal oscillator、温度補償水晶発振器)もあり、特に正確さが要求される時計や、無線通信用に使われることが多い。小型化・低価格化も驚くべき速さで進んでいる[要出典]。水晶発信器を実装する恒温槽をオーブンと呼ぶ。

TCXO (Temperature-compensated crystal Oscillator)
温度補償型水晶発振器
VCTCXO (Voltage Controlled Temperature Compensated crystal Oscillator)
アナログ電圧で振動周波数を制御できる温度補償型水晶発振器
DTCXO (Digital Temperature Compensated crystal Oscillator)
デジタル型温度補償発振器
ATCXO (Analog Temperature Controlled crystal Oscillator)
アナログ型温度補償発振器
VCXO (Voltage-Controlled crystal Oscillator)
電圧制御水晶発振器
TCVCXO (Temperature-Compensated Voltage-Controlled crystal Oscillator)
温度補償型電圧制御水晶発振器
OCXO (Oven-Controlled crystal Oscillator)
恒温槽付水晶発振器
OCVCXO (Oven-Controlled Voltage-Controlled crystal Oscillator)
恒温槽付電圧制御水晶発振器
RbXO (Rubidium crystal Oscillators)
消費電力を抑えるためにルビジウム発振器と時々同期を取るようにした水晶発振器
MCXO (Microcomputer-Compensated crystal Oscillator)
マイコン補償水晶発振器
TSXO (Temperature-Sensing crystal Oscillator)
CDXO (Calibrated Dual crystal Oscillator)

その他[編集]

無線通信では、水晶振動子をフィルタ回路の一部として使うことがある。水晶フィルタ、または、クリスタルフィルタと呼ばれる。特に狭い帯域のフィルタ回路が必要な場合に用いられる。それほど狭くない帯域の場合は、SAWフィルタが使われるようになってきており、生産量は減少している。一方、複数のアマチュア無線家が水晶振動子の実測データに基づくフィルタ設計手法や評価を発表したことから、アマチュア無線を中心に自作のクリスタルフィルタがしばしば使用されている。

水晶振動子の表面に物体が付着すると発信周波数が変化するが、これを利用したのがQCMと呼ばれる分子レベルの微量質量を正確に測定するための装置である。

圧力をかけると水晶のひずみに応じて発振周波数が変化する。そこで、これを圧力センサーとして利用する研究が大阪工業大学で行われている。

用途[編集]

規格[編集]

水晶振動子は、その仕様について日本工業規格 (JIS) によって規格化されている。

  • JIS C 6701 水晶振動子通則

参考文献[編集]

  • トランジスタ技術SPECIAL 編 『電子回路部品活用マニュアル 第1集 -性能向上に役立つ受動部品/機構部品の使い方-』 JAN9784789837521

関連項目[編集]

外部リンク[編集]