酒石酸カリウムナトリウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
酒石酸カリウムナトリウム
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 304-59-6 (無水物), 
6381-59-5(4水和物)
PubChem 9855836
ChemSpider 8031536
UNII QH257BPV3J
日化辞番号 J2.573I
EINECS 206-156-8
特性
化学式 KNaC4H4O6·4H2O
モル質量 282.1 g/mol
外観 無色または青白色の結晶
融点

75 °C

沸点

220 °C

への溶解度 63 g/100 mL (20 °C)
[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酒石酸カリウムナトリウム(しゅせきさんカリウムナトリウム、Potassium sodium tartrate)は、2価のカルボン酸である酒石酸ナトリウムおよびカリウムと塩を形成した構造をもつ複塩。1675年ごろにラ・ロシェルの薬学者ピエール・セニエット (Pierre Seignette) によって初めて合成されたことから、ロッシェル塩またはセニエット塩とも呼ばれる。

性質と用途[編集]

無色または青白色をした斜方晶で、通常4分子の結晶水を含み化学式 KNaC4H4O6・4H2O で表される。に非常によく溶ける (1111 g/L) がアルコールには難溶。

やや塩辛く清涼感のある風味を持ち、EUでは食品添加物として認められている(E337[2]。薬学分野では下剤利尿剤として用いられる。

穏和な還元作用をもつため、無電解めっきを行う場合に還元剤として用いられる。古くは板ガラスからを作製する際に利用された。

圧電効果[編集]

単結晶は4000程度の高い比誘電率を示す強誘電体であるが、下限のキュリー温度をもち、255-297 Kの温度範囲でしか強誘電性を示さないという特徴を持つ[3]

1921年に強誘電体であることが報告[4]されて以降、クリスタルイヤホンクリスタルマイクなどの圧電素子として盛んに利用された[5]第2次世界大戦中は通信等に不可欠な軍需物質[6]として、葡萄園などから原料が大量に集められた。現在ではリン酸二水素カリウム (KDP) やチタン酸バリウム (BT) など他の材料が発見されたため、湿気に弱いロッシェル塩は圧電素子としてはほとんど利用されていない。

キレート作用[編集]

水への溶解度が高く、また水中で電離キレート作用を持つ酒石酸イオンが生じるため、弱塩基性キレート剤として広く利用されている。工業的にはめっき液の成分として、化学分析においてはフェーリング試験ベルトラン試液ビウレット試験ネスラー試験[7]カドミウム定量[8]などで試薬のひとつとして加えられる。

有機合成においては、キレート作用によって分液操作時のエマルション沈殿の形成を抑止するために、特にLAHDIBAL-Hなどの水素化アルミニウム系試薬を用いた反応の後処理に利用される[9]

調製[編集]

スカイラブ上で成長させたロッシェル塩の大きな結晶

酒石酸カリウムナトリウム (NaKC4H4O6) は、1モルの酒石酸水素カリウム (KHC4H4O6) を含む加熱溶液に 0.5モルの炭酸ナトリウムを添加することで調製できる。溶液は熱い内に濾過する。この溶液を乾燥することで固体の酒石酸カリウムナトリウムが晶子英語版として析出する。

スカイラブ上の微小重力および対流条件下でロッシェル塩の大きな結晶への成長実験が行われた[10]

脚注[編集]

  1. ^ Potassium sodium tartrate tetrahydrate”. chemBlink. 2011年11月20日閲覧。
  2. ^ Food Standards Agency. “Current EU approved additives and their E Numbers”. 2011年11月20日閲覧。
  3. ^ 国立天文台 編『理科年表 平成18年版』(「強誘電体と反強誘電体」の項)、丸善、2005.
  4. ^ Valasek, J. (1921). “Piezo-Electric and Allied Phenomena in Rochelle Salt”. Phys. Rev. 17: 475-481. doi:10.1103/PhysRev.17.475. 
  5. ^ Newnham, R. E.; Cross, L. Eric (November 2005). “Ferroelectricity: The Foundation of a Field from Form to Function”. MRS Bulletin 30: 845–846. http://theeestory.com/files/nov05_newnham.pdf. 
  6. ^ 深田栄一. “河合平司先生を偲ぶ”. 小林理研ニュースNo.92_2. 2011年11月20日閲覧。
  7. ^ 国税庁 (1991年6月7日). “「国税庁所定分析法」の全部改正について”. 2011年11月20日閲覧。
  8. ^ 総務省 (2010年6月16日). “農用地土壌汚染対策地域の指定要件に係るカドミウムの量の検定の方法を定める省令”. 2011年11月20日閲覧。
  9. ^ Fieser, L. F.; Fieser, M. (1967). Reagents for Organic Synthesis. Vol.1. New York: Wiley. pp. 983. 
  10. ^ SP-401 Skylab, Classroom in Space”. NASA. 2009年6月6日閲覧。