ASF-X 震電II

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ASF-X/F-3 震電II

ASF-X/F-3 震電II: ASF-X/F-3 Shinden II)は、バンダイナムコゲームス(後のバンダイナムコエンターテインメント)プレイステーション3およびXbox 360フライトシューティングゲームACE COMBAT ASSAULT HORIZON』、及びプレイステーション3専用フライトシューティングゲーム『ACE COMBAT INFINITY』に登場する架空軍用機

近未来の自衛隊が運用する機体という設定で、本編のストーリーとは関連性のないダウンロードコンテンツ用の追加機体として制作された。河森正治メカニックデザインを担当しており、このことは公式ウェブサイトなどでゲーム発売前から大きくアピールされた。

また、外部の著名デザイナーの起用は、エースコンバットシリーズ国内第11作目にして初めてのこととなっている。

以下、本項における解説は書籍『ACE COMBAT ASSAULT HORIZON MASTER FILE ASF-X SHINDENⅡ』に準じたものとする。

概要

ASF-Xは、自衛隊が「Advanced Support Fighter-X」として開発した支援戦闘機。愛称の「震電II」は、日本海軍の試作局地戦闘機震電」の開発者の子孫が開発チームにいた事に由来する。

日本の特殊な運用環境に適応したマルチロール機であり、領海に侵入した敵艦艇への対艦攻撃や上陸戦力の迎撃、山岳部での防衛戦に於ける近接航空支援といった多彩な任務を想定。地上基地や護衛艦での運用性向上のため、STOVL(短距離離陸垂直着陸)能力を有するなど、状況に応じた様々な運用を可能としている。

運用目的別に、A型、B型、C型と、機体設計が異なったものが存在する。

特徴

ASF-X及びA型とB型とC型の比較表
ASF-X(CTOL型) ASF-X(STOVL型) F-3A F-3B F-3C
乗員 1名
全長 19.5m 17.6m
全幅 14.0m 13.04m
全高 3.56m(ギア含まず) 3.43m
翼面積 54.2m² 48.23m²
空虚重量 15,300kg 16,800kg 13,300kg 14,800kg
機内燃料重量 2,500kg+ 1,700kg
最大離陸重量 31,200kg 33,000kg 28,900kg 31,000kg
エンジン EJ社製EJ2020×2 RR社製F144×1 F145×1 EJ社製EJ2020×2 RR社製F144×1 F145×1
ターボファン
推力 ドライ時8,000kgf リヒート時10,420kgf
最大速度 M1.6 M1.4 M1.8 M1.6
巡航速度 M1.2 M1.0 M1.2 M1.1
航続距離 800km 720km 680km
実用上昇限度 19,500m 19,000m 19,800m 19,000m

ASF-X

2002年の「同時多発的領空侵犯事件」の教訓を基に大河重工の主導で開発された新型支援戦闘機。1号機の初飛行は2013年8月。将来F-4EJ/F-4EJ改の後継機として採用されるModel-35の開発遅延の際に発生する防空の穴を埋める目的で開発された。『アサルト・ホライゾン』、『インフィニティ』においてプレイヤーが操縦できるのはこの機体。 翼構成は、全遊動式カナード前進翼[1]、斜め双垂直尾翼で構成されるエンテ型。主翼の動翼フラッペロンのみで、ロールの際はフラッペロンに加えてカナードを併用する。また、ラダーベーターエアブレーキとしても使用される。主翼の翼端と垂直尾翼には可変機構があり、主翼を水平に、尾翼をV字型とした通常モード、主翼翼端を折り畳み下反角を付け、垂直尾翼を内側に畳み八の字型に変形させたSSC(ステルススーパー・クルーズ)モード、同じく主翼翼端を折り畳み、垂直尾翼を開き逆V字型にしたSTOVLモードという飛行状況に応じた3種の変形パターンを持つ。

エンジンは双発で、その配置は胴体内で上下に重ねるという独特の形となっている。これは冗長性の確保のため単発エンジンを避けたことや、通常飛行時はデットウェイトとなってしまうリフトファンを使用しない垂直離着陸機構を採用したための構造である。上下に重なったエンジンの下側のエンジンは、搭載位置を機体前方にずらしてあり、垂直離着陸時は機体腹部前方のダクトファンと中央の排気ノズルを開き、推力偏向によって機体を持ち上げる。エアインテークは変則的なエンジンの搭載位置に合わせて3箇所あり、全て境界層分離板のないダイバーターレス型となっている。機体側面の2箇所が下部エンジン用、背面の1箇所が上部エンジン用であるが、垂直離着陸時には排気温度の低減のため、上部エアインテークの吸気を下部エンジンの排気に合成している。通常飛行時に使用する機体後部の排気ノズルは、上下2枚と上下エンジンの中間に1枚の計3枚のパドルを用いた垂直方向に稼動する2次元推力偏向ノズルとなっている。

ステルス性を向上させるため、機体前部ウェポンベイに短射程ミサイルを、機体後部ウェポンベイに空対艦ミサイルを搭載できるが、さらに主翼下ハードポイントに6発の長射程空対空ミサイル、および70mmロケット弾も搭載できる。コックピット後部左側には1門の固定式機銃を搭載している。

ステルス性自体はModel-35には及ばないだろうとされているが、これは一般的なステルス機の運用方針である「遠距離から安全に敵を攻撃する為のステルス性」ではなく、「あくまでもステルス機に対抗する為のステルス性」と割り切って開発されているからであり、主要兵装も中・長距離空対空ミサイルではなくステルス機とのドッグファイトを意識して開発された短距離空対空ミサイルを装備している。

本機で得られた開発・実戦データを基に機体の再設計などが施された"F-3"が開発された。

F-3

ASF-Xの制式採用型。全体的に各部の設計が改められており、航空護衛艦に多数が搭載できるサイズにまで小型化されている。翼構成はほぼASF-Xと同様だが、動翼部はフラップエルロンに分割されている。固定機関砲も胴体左側から右側に移動しており、ASF-Xには機関砲口のステルス性を保つ為の"蓋"が取り付けられていたが、F-3ではそれが無くなっているなどの違いがある。

ASF-X同様その戦闘能力は非常に高く、米軍と初めて行ったDACTにおいてModel-22に圧勝したという。

F-3A

航空自衛隊が運用するCTOL方式のモデル。最高速度や航続距離の面において3タイプの中でポテンシャルが最も高い。塗装は主にF-2同様の洋上迷彩が施される。

F-3B

海上自衛隊が運用するSTOVL方式のモデル。航空護衛艦の艦載機として運用する事を前提にしている為、最高速度や航続距離などが比較的低く抑えられているのが特徴。塗装は主に上面が青、下面が白で構成された航空迷彩が施されている。

F-3C

イギリス軍が運用するモデル。名称は"震電"を英訳した「Sea Magnificent Lightning II」。海軍が運用するSTOVL型は「FA.1」、空軍が運用するCTOL型は「FG.1」と呼称される。

武装

固定武装
その他

関連メカニック

TFJ-01 ゴールドスター
「マスターファイル」に登場する、大河重工が震電IIに先立って開発した双発のビジネスジェット。機体構成に前進翼とカナードを配している事が大きな特徴[3]。速度はマッハ0.92を誇り、アメリカ同時多発テロ事件以降低迷していた航空業界においてベストセラー機となった。
ひゅうが改型DDV
「マスターファイル」に登場する、海上自衛隊護衛艦ひゅうが」を震電IIの発着艦研究・練習艦用途として改修が施されたSTOVL空母。改修点としては飛行甲板を可能な限り延長し、震電IIの発着艦にも耐えられるよう耐熱処理を施している。また、後部エレベータを撤去、代わりに舷側エレベータを設置している。
マスターファイル内では「ひゅうが」の改修のみが言及されており、同型艦である「いせ」がどのような扱いになっているのかについては不明である。
のと型DDV
「マスターファイル」に登場する、海上自衛隊の新型護衛艦。当初はひゅうが型の発展拡大型として設計されていたが、世界情勢の変化に伴い設計を大幅に変更、STOVL空母として完成した。全長250m、全幅46m、艦橋部は前部艦橋と後部艦橋に分かれており、イギリスデューク・オブ・エジンバラ級航空母艦に酷似した艦容となっている。
ネームシップである「のと」の他、同型艦として「とさ」「あわ」の建造予算も承認されている。
しらはえ型DDA
「マスターファイル」に登場する、DDVの専属護衛艦として建造された高速型DDA(英語名:Arsenal Destroyer)。アーセナル(火薬庫)の名の通り甲板上に大量のVLSを装備している。自衛隊が高速補給艦として運用している「N-Rera」「N-World」と同じICT社との共同設計によって完成したウェーブ・ピアシングカタマラン[4]
時速40ノットという高速航行性能を活かし、DDVに接近する敵勢力の"露払い"の役目を担う。1番艦の名前である「しらはえ(白南風)」とは梅雨の後に吹く強い南風を表す季節用語。
潜水型DDA
「マスターファイル」に登場する、しらはえ型に遅れて建造が進められているDDA。潜水型とあるが潜水艦のように完全に海面下に潜るわけではなく喫水線が著しく低い艦船と言える。船体の大半が海面下にある関係上、主に敵の潜水艦など海中の脅威に対処する。
反面、海上の脅威に対処する能力は低く、DDVの支援が必須となる。
りょうかみ型護衛艦
「マスターファイル」に登場する、海上自衛隊の新型イージス護衛艦。就役は2018年3月。高いステルス性能を持ち、"首都防空戦"の際には三陸沖に展開し、敵勢力の撃退に従事した。
ネームシップである「りょうかみ」の名は両神山に由来する。
Q-X
「イカロス・イン・ザ・スカイ」に登場する無人戦闘機。読み方は「クオックス」。
震電IIと同時期に開発が進められており、無人機としては高い能力を持つことから、"共和国"に機体を狙われる事となった。
後に、『インフィニティ』において設定上は同一の機体である「MQ-90 クオックス」が登場しているが、これは「イカロス・イン・ザ・スカイ」の著者である山本平次郎氏が設定考証に参加した事により実現したという旨が公式ツイッターで語られている[5]

登場作品

  • ACE COMBAT ASSAULT HORIZON
    • プレイヤー機として登場。本編ストーリーとは無関係なダウンロードコンテンツ用の追加機体として2011年10月26日に配信。
    • 自衛隊機風のカラーリング2種と、シリーズのマスコットキャラクターである「ケイ・ナガセ」の専用カラーが用意されている。
    • 設定上存在する垂直着陸機構は完全には再現されていないものの、極端な低速での滞空が可能となっている。
  • 『エースコンバット・ショート・ストーリー』 Scene 00 「エンカウンター・バトル」
    • 『月刊電撃ホビーマガジン』2011年12月号にて、ショートストーリーの主役機として登場。CFA-44 ノスフェラトとの空戦が描かれている。
    • 試作一号機(ゼロワン)と試作二号機(ゼロツー)が登場する。一号機は飛行特性の試験機であるため、STOVL機構を搭載していない。
    • 試作二号機にはパイロットとしてケイ・ナガセが搭乗する。試作一号機のパイロットについては詳細不明。
  • 『エースコンバット イカロス・イン・ザ・スカイ』
    • 「エンカウンター・バトル」に大幅な書下ろしを加えた航空小説。
    • 2002年の"同時多発的領空侵犯事件"に端を発する「ASF」(次期支援戦闘機)開発計画。そのテストパイロットに抜擢されたナガセ ケイ三尉の物語。
    • AH及びマスターファイルと世界観を共有しているが、前述の領空侵犯事件や"羽田沖事件"を除けば他作品の単語が登場する事はなく、その関係性は希薄なものとなっている。
  • 『エースコンバット アサルト・ホライゾン マスターファイル ASF-X 震電II』
  • ACE COMBAT INFINITY
    • キャンペーンモードにて国連軍所属のリッジバックス隊専用の機体として登場。カラーリングは漆黒を基調に機体上部に白い一本線があるのが特徴のオリジナルである。この作品もエッジことケイ・ナガセ(イカロス・イン・ザ・スカイとは別人)がこの機体に搭乗している。また、エースコンバットシリーズ共通で登場しているスラッシュ(こちらも他作品とは別人で本名も公表されていない模様)もこの機体に搭乗している。2014年8月よりプレイヤー機として入手可能となった。
    • なお、「近未来の自衛隊が運用する」という基本設定に変更は無いが、『アサルト・ホライゾン』と『インフィニティ』の間にストーリーや世界観の繋がりはない事に留意されたい。

参考資料

脚注

  1. ^ 前進翼は逆にステルス性を損なう翼形状であるが、河森曰く「当初はオードソックスなひし形翼も検討したが、形状のインパクトに欠けるので前進翼を採用した」という旨の記述を「月刊電撃ホビーマガジン12月号」196頁から窺い知ることが出来る
  2. ^ 「Attacker Launched FIRE-and-forget」の略であり、ヘルファイアミサイルを航空機から発射できるように改良されたもの。
  3. ^ 前進翼を持ったビジネスジェット機、及びカナードを持ったビジネスジェット機は実際に存在し、前者はHFB 320 ハンザジェット、後者はビーチクラフト スターシップなどが挙げられる
  4. ^ しかし、マスターファイル内に示されたイラストではインディペンデンス級LCSのようなトリマランに見受けられる
  5. ^ PROJECT ACES 公式ツイッター