電子辞書

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シャープ Brain PW-GC590
広辞苑を始め多くのコンテンツを収録し、カラー液晶画面やタッチパネル、リスニングなど多彩な機能を備えた電子辞書である[1]
カシオ エクスワード XD-GW6800
カシオは2012年における日本国内の電子辞書シェアNo. 1である[2]

電子辞書(でんしじしょ)は、CD-ROMフラッシュメモリなどの物理的な媒体やネットワーク上に保存されている辞書百科事典の内容を、コンピュータ携帯機器などの機器によって検索・表示などを行う装置またはソフトウェアの総称。

特徴[編集]

特徴としては、

  • 紙の辞書に比べて高速な検索ができる。
  • 何百冊分もの辞書の情報量を小さな記憶装置に集約でき、場所をとらない。
  • 大量の情報を入れることができる。
  • 全文検索・部分一致検索など、多様な検索ができる。
  • 共通な規格で記録された辞書ファイルに対して一括で検索をかけることができる(これは俗に「串刺し検索」と呼ばれる)。

などがある。

電子化されたデータベースから語義を検索するのが電子辞書の大きな特徴であるが、たいてい規格がオープンでない。2000年代後半頃から現在にかけて、電子辞書専用機として売られているものは、大抵がメーカーごとの独自規格となっており、データを取り出すこともできない。場合によっては外部辞書に限って仕様が公開されている機種もあるがごく少数である。

一方でいわゆる電子辞書ソフトウェアのファイルフォーマットには

などの規格があり、オープン規格のものもある。電子ブックを除けば多くがMicrosoft Windowsなどのパソコンをメインターゲットとした規格となる。規格が策定されていても非公開となる場合も少なくない。これは、著作権保護の観点の他にベンダロックインを狙ったものであるとも考えられる。

紙の辞書は一覧性が高いが携帯性や検索効率で劣る。電子辞書は一発で複数の辞書に検索を行え、効率や携帯性に富むが一覧性で劣り、機械の画面を見るという関係上ユーザインタフェースによっては万人向けではない。ただしこれは一般的な話であり、ポケットに入るサイズの小型の紙媒体の辞書など例外も多い。

分類[編集]

電子辞書という語が指し示す範囲は広範に渡る。 電子辞書の分類として、辞書専用機の専用装置型、インターネットの辞書検索サイトのオンライン型、辞書ソフトなどの汎用装置に辞書閲覧ソフトウェアをインストールをするアプリ(アプリケーション)型、電子書籍端末の付属機能の電子書籍端末付属型がある。日本語入力システムの語義表示機能などもある。単に電子辞書といった時は携帯型の専用装置を指すことが多い。媒体もしくは情報の保存場所による分類は以下のとおり。

専用装置型[編集]

キーボード液晶画面を搭載し、ROMに辞書データを収録した、携帯型の専用装置。専用装置でディスク媒体を使用し、辞書の追加が可能なものもある。また、ROMカードなどを用いることで辞書の入れ替え・追加可能なものもある。一般的には電子辞書というとこの印象が強い。小さい機種であれば洋服のポケットにも入るものもある。

日本市場ではシャープが1979年11月に投入した。当時はポケット電訳機という名前で、当時としてはかなり高価な39800円だった。スタンダード型が基本だったが、近年はメモリ価格の下落と技術の向上から、フルコンテンツ、しかも多数の辞書を搭載している機種も多い。辞書を100冊以上収録している機種ももはや当たり前になっている。またイヤホンやスピーカーから外国語音声などを聞ける機種も多い。 画面はカラー液晶のものが主流となっている。廉価版や販売年が古い機種でモノクロ液晶のものが見られる。 電源は、乾電池式、充電池式、USBからの電源供給式などがある。

SDメモリーカードスロットを装備し、別売りの辞書などのコンテンツを追加できるもの、パソコンで作成したテキストファイルやデジタルカメラ写真の表示ができるものなどがある。

日本における市場規模[編集]

電器店に陳列された電子辞書

一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会まとめの出荷推移は以下の通り(日本市場)[1](PDF)。

2006年 251万台 / 374億円
2007年 281万台 / 463億円
2008年 250万台 / 413億円
2009年 217万台 / 352億円
2010年 214万台 / 332億円
2011年 187万台 / 314億円
2012年 172万台 / 291億円

出荷額は2007年をピークに下がり続けている。近年では需要が見込まれる高・中・小学生向け端末の開発にシフトしつつある[3]

2011年における日本の有力家電量販店販売実績を基に算定されたメーカー別数量シェアは以下の通り[4]。日本における電子辞書市場は寡占市場の一つである。

順位 メーカー名 年間シェア
1 カシオ計算機 51.1%
2 シャープ 30.4%
3 キヤノン 10.6%

収録範囲からの分類[編集]

  • フルコンテンツ 書籍版辞書の内容をすべて収録しているもの。
  • スタンダード型 書籍版辞書の一部だけを収録したタイプ。画像類は無論のこと、一般的に使用しない項目を削除して軽量化を計っている。一部の専用装置型では、書籍版辞書にある家系図や表などを取扱説明書内に記載している。以前は専用装置型でメモリ容量を節約するため多く採用されたが、メモリの低価格化によって新規機種の発売は減少しつつあり、廃止になる製品も相次いでいる。フルコンテンツと分けるべき時代はもうすぐ終わる、との指摘さえある。オンライン型の無料版ではこの形式で公開しているものも多い。

収録内容からの分類[編集]

2014年現在、専用装置型ではデータカードによるコンテンツ追加機能もあるが初期収録コンテンツに比べ一般に割高なため、メーカーは初期収録コンテンツによって製品の特徴を出している。

  • 汎用・日常生活型 国語辞典英和辞典・医学辞典・冠婚葬祭事典・外国旅行会話集などの実用的なコンテンツを網羅したタイプ。「家庭に一台」というコンセプトで販売される場合がある。最近ではカシオ計算機シャープを中心に収録コンテンツ数が増加しており、2014年現在は100~170コンテンツ収録モデルが主流。
  • 英語重視型 英和辞典和英辞典英英辞典などのコンテンツを重視。大規模英和辞典をフルコンテンツ収録している場合が多い。英会話学習や、ビジネスマンが業務で使用するために購入することを想定してい専用装置型る。高校生・大学生の学習用などに購入される例も多く、また、上位機種は研究者にも重宝がられるレベルに達している。一部機種では単語やフレーズの発音を音声データとして収録している。英語のコーパスを搭載したものも存在する。セイコーインスツルは、このタイプの製品を重視したラインナップ構成を取っている。
  • 国語重視型 国語古文の学習・研究目的のために、古語辞典などを収録している。ただし漢和辞典文字コードの問題から、研究者が使用できるレベルのものは皆無と言われる。
  • 中学および高校学習・受験対策型 英単語集・英熟語集や「暗記本」など中学・高校生の日常学習と試験対策を重視している。国語辞典・英和辞典を難易度に応じ複数収録したものもある。古語辞典や日本史世界史事典等も収録。理数系科目についても、用語事典や公式集などを収録。また学習効果を得るために単語帳機能などの暗記を促進するための機能を持つものも見られる。英語ではデジタルオーディオプレーヤー機能でリスニング学習をこなす機種も見られ、大学入試センター試験のリスニングの模試が可能な機種もある。
  • 外国語重視型 2014年現在、中国語韓国語ドイツ語フランス語イタリア語スペイン語ポルトガル語ロシア語の日本語辞典を収録した機種が発売されている。外国語学習者や現地に駐在するビジネスマンに役立つ。これらの一部モデルにも、発音機能と手書き入力ができる。これらは英語系・国語系などの辞書も収録している。一部機種にはCD-ROMやデータカードで他の言語や各種辞書の追加が可能。
  • 医学重視型 カシオ計算機やセイコーインスツルが発売している医学電子辞書。主に医師看護師薬剤師・医学生に利用され、基礎医学・臨床医学に役立つ用語が豊富に収録されている。医学系辞書が複数冊収録されている。この電子辞書も医学以外にも英語系・国語系・英会話などの辞書を収録している。

専用装置型電子辞書メーカー[編集]

国産メーカーとしては、カシオ計算機エクスワードブランド)、シャープPapyrusブランド、Brainブランド)、キヤノン(wordtankブランド)、セイコーインスツルDAYFILERブランド)などから発売されている。ソニーはシェアの低落にともない、2006年7月に電子辞書事業から撤退した[5]セイコーインスツルは2015年3月末の撤退を発表した [6]

海外メーカーとしては、BestaFranklin Electronic PublishersEctacoなどから販売されている。ただし、日本国内の家電販売店で海外メーカー製の電子辞書を展示しているケースは稀である。

オンライン型[編集]

サーバに格納された辞書データに、パソコンや携帯電話PDAスマートフォンタブレット (コンピュータ)などの端末からアクセスして閲覧するシステム。無料のオンライン型辞書がインターネット上に公開されている。フルコンテンツ版に対して課金し、スタンダード版・リミテッド版を無料で公開している場合もある。また、辞書の紙媒体の出版社が直接辞書検索サービスを提供している場合と、辞書検索サービス専門会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供している場合がある。以下の分類表では、サービス提供の形態について前者を垂直統合型、後者を水平分業型とする。

サイト名 サービス提供形態 備考
ウィクショナリー フリーなオンライン型電子辞書。
Weblio 水平分業 大部分が無料で利用可能。課金サービスもある。
Yahoo辞書 水平分業
Goo辞書 水平分業
Dictionary.com 水平分業 英英(Random House Dictionary)、英英(Collins English Dictionary - Complete & Unabridged)、語源(Etymology Dictionary)、英英シソーラス(Roget's 21st Century Thesaurus, Third Edition) などが検索可能。
Reverso 水平分業 英英(English Collins Dictionary)、英英シソーラス、学習者英英(Cobuild Collins Dictionary) などが検索可能。
Cambridge Free English Dictionary and Thesaurus 垂直統合 英和/英英(イギリス)/英英(アメリカ)/ビジネス英英/学習者英英 などが検索可能。
Oxford Dictionaries 垂直統合 英英/類語英英辞書。
Longman English Dictionary Online 垂直統合 英英辞書。
Collins English Dictionary 垂直統合 英英(イギリス)/英英(アメリカ)辞書。学習者英英(COBUILD)などが検索可能。他にも、英独、英伊辞書など英語を中心としたマルチリンガル辞書が検索可能。
Dictionary and Thesaurus - Merriam-Webster Online 垂直統合 英英(アメリカ)辞書、類語英英辞書。姉妹サイトに学習者英英辞書(Merriam-Webster's Learner's Dictionary)、ネイティブの小中学生向け英英辞書(Merriam-Webster's Word Central)などが提供されている。
Macmillan Dictionary and Thesaurus 垂直統合 英英辞書、類語英英辞書。類語辞書は検索結果として関連類語の定義を同時に表示する点が特徴。

アプリ型[編集]

スマートフォンiPhoneタブレットPCなどの専用アプリ(アプリケーション)としてインストールし使用するもの。ダウンロード済みの辞書データを検索するローカル型と検索のインターフェイスのみ提供しサーバーに格納された辞書データを検索するオンライン型、用語の定義のみローカルに保存し、音声はオンラインのサーバーから取得する複合型に分類される。辞書の紙媒体の出版社が直接辞書検索アプリを提供している場合と、辞書アプリ専門会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供している場合など形態は様々である。通信機能を持つスマートフォンiPhoneタブレットは、携帯性に優れている上、オンライン型電子辞書アプリでであっても電波圏内であれば使用できることから広くしようされるようになった。スマートフォンiPhoneタブレット用アプリでは、広告付きの無料のものや、1000以下の安価なもの、5000円程度の高価なものなど多様なものが提供されている。PC用としては、CD-ROMDVD-ROMなどのメディア経由で媒体に辞書データと閲覧ソフトをアプリケーションとしてインストールする場合がある。CD-ROMDVD-ROMなどの辞書メディアは、単体でソフトウェアととして販売されている場合と、紙媒体の辞典とセットで販売されている場合がある。英英辞書のオックスフォード現代英英辞典[7]ロングマン現代英英辞典[8]などはDVD-ROM付属版が販売されている。

電子書籍端末付属型[編集]

Amazon Kindleや楽天Koboなどの電子書籍端末では電子辞書が付属しており、電子書籍中の文字列を選択することで、選択箇所の用語の定義を確認することができる。Amazon Kindleでは、「大辞泉」「プログレッシブ英和中辞典」「New Oxford American Dictionary」「Oxford Dictionary of English」に加え他言語の辞書も付属していることに加え、「英辞郎」、「Merriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary」など他の辞書を購入し追加することが可能である。

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]