ゲシュタポ
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ゲシュタポ(独:Gestapo。Geheime Staatspolizei)はナチス・ドイツの秘密警察の略称。活動はドイツおよびヨーロッパ占領地におけるレジスタンスの弾圧、スパイ摘発、ユダヤ人の狩り立て・移送、反ヒトラー陰謀の捜査に関して厳格な取扱いなどであった。
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[編集] 沿革
ドイツでは憲法に基づく地方自治が確立され、警察権も中央政府になく州政府に委ねられていた。1933年ナチスが政権を獲得した後、共産主義の牙城である赤い首都を掃除するために、ヘルマン・ゲーリングは首都ベルリンのあるプロイセン州の内務大臣を任じられた。彼は政治的敵性分子を掃除する道具としてプロイセン州警察の政治警察部門(Abteilung 1A)を1933年4月26日付通達でプロイセン州秘密警察局(Preussisches Geheimes Staatspolizeiamt)と改名した。これがゲシュタポの原点である。この名称は、ある郵便局員がスタンプを作る際、「GESTAPO」という郵便略号を提案したという。初代局長にルドルフ・ディールス(Rudolph Diels)を任じた。この外、ゲーリングは32人の現職警察署長のうち22人をナチス突撃隊員や親衛隊員に挿げ替えた。
1934年4月20日ゲーリングはヒムラーをゲシュタポの長官代理に任命(Inspekteur des preussischen Geheimen Staatspolizeiamts)、ヒムラーは更にラインハルト・ハイドリヒをプロイセン州秘密警察長官に任命した。
1936年6月、ヒムラーは全ドイツ警察長官(Chef der Deutschen Polizei)として州政府の警察権を中央政府に移管させ、政治警察であるゲシュタポとクリポを保安警察(Amt Sicherheitspolizei, 略号:Sipo)として束ね、ラインハルト・ハイドリヒ親衛隊大将に委ねた。同じくクルト・ダリューゲに秩序警察(政治警察でない通常警察)を任せた。
1939年9月、ラインハルト・ハイドリヒは、第二段階として国家機関である保安警察と党機関である親衛隊情報部(SD)の二つの組織を新設した親衛隊の国家保安本部の傘の下に束ねた。SD を同本部の第III局(Amt III)、ゲシュタポを第IV局(Amt IV)、クリポを第V局(Amt V)に配した。国家機関と党機関の区別はなくなり、ナチ党が国家機関を飲み込んだ型になった。こうしてゲシュタポは親衛隊の国家保安本部の一部局となり、ハインリッヒ・ミュラー局長の下に職員数は約45,000人に膨張した。
ドイツ国内や占領地域において、ナチス・ドイツの暴力装置として機能し、「夜と霧」と呼ばれる深夜から夜明けにかけての予期せぬ突然の逮捕、厳しい訊問や残酷な拷問、劣悪な待遇や拘禁などで知られ、ヨーロッパ中を震え上がらせた。これは、人材の配分が武装親衛隊、国防軍、警察の順になっていたため、ゲシュタポに回ってくるのが社会的不適格者が多かったのが原因とも言われている。ゲシュタポ要員は、その身なりも黒い外套や手袋、黒眼鏡などを用いて人々に不吉な印象を与え、恐怖心を煽るためにやや芝居がかった茶番劇のような手法をとった。さらに粗暴、野蛮さ、気まぐれな振る舞い、怠け癖、皮肉な態度や、時には欺瞞的な温容ささえ示して、思いのままに被疑者を調べ上げる権限を行使した。そのような彼らに対して、ドイツ国民は諦めの気持ちで従順に従った。個人で抵抗するにはあまりにも危険な組織であった。また、国外に逃亡したとしても、ゲシュタポの目からは逃れられなかった。ゲシュタポ構成員は、世界各国のドイツ大使館に派遣され、海外に亡命した反ナチスのドイツ人やユダヤ人の監視・摘発の任務に当たっていた。
戦局が悪化する中、ゲシュタポの権力は肥大化し、ハインリヒ・ヒムラーですらゲシュタポの影に悩まされることになった。著名なロケット技術者のヴェルナー・フォン・ブラウンが、無断で有人ロケット開発の資金繰りをしているという情報を掴み、ゲシュタポは彼を逮捕し、処刑しようとしたが、ヒトラーの仲介により取り止めになっている。その際、ヒトラーはフォン・ブラウンに「私でも説得するのに苦労したよ」と言ったという。ナチス・ドイツにおいて、ゲシュタポはその存在自体、ある種の法律のようなもので、その命令や行動は司法機関の定めた法律の審査や干渉を受けないものとされた。
ニュルンベルク裁判ではゲシュタポを含め、親衛隊の機関はすべて犯罪組織であると宣告された。一部の構成員はその経験や能力を買われ、第二次世界大戦後の東側諸国ではシュタージ等、西側ではBND、CIA等の構成員となり、中東や南米では治安機関の育成にあたった。
ゲシュタポ本部はベルリンのプリンツ・アルブレヒト街に置かれ、1945年2月の空襲と同年4月の市街戦で廃墟となったが、ドイツ再統一後の1990年代に整地、「Topographie des Terrors」というオープンエアの博物館として公開されている。
[編集] 階級
ゲシュタポは、先輩機関であるクリポと同様な階級制を採用した。文献にしばしば引用される階級は太文字で表記する。
- Angestellter
- Kriminalassistantenanwärter(Unterfeldwebel)
- Kriminalassistant im Vorbereitungsdienst(Feldwebel)
- Kriminalassistant(Feldwebel)
- Kriminaloberassistant(Oberfeldwebel)
- Kriminalsekretär(Stabsfeldwebel)
- Kriminalobersekretär(Leutnant,少尉)
- Kriminalinspektor(Ober-leutnant,中尉)
- Kriminalkommissar(勤務年数4年以下 Oberleutnant,中尉, 4年以上 Hauptmann,大尉)
- Kriminalrat(勤務年数4年以下 Hauptmann, 4年以上 Major)
- Kriminaldirektor(Major)
- Regierungsund Kriminalrat(Major,少佐)
- Oberregierungs-und Kriminalrat(Oberstleutnat,中佐)
- Regierungs-und Kriminaldirektor(Oberst)
- Reichskriminaldirektor(Oberst,大佐)
[編集] 組織
国家保安本部 第IV局(ゲシュタポ)
- IV A : マルクス主義者、共産主義者、反動主義者、自由主義者等、ナチズムの敵。サボタージュに対する措置及び総合保安措置。その構成下に6班を有した。
- IV B : カトリック及びプロテスタント教会の政治活動、その他宗教会派、ユダヤ人、フリーメーソン。5班に分かれた。アドルフ・アイヒマンはIV B4(第Ⅳ局B課4班)に所属。
- IV C : 強制収容。予防拘束。出版。党業務。ファイルの作成。カード。
- IV D : 占領地。在独外国人労働者
- IV E : 防諜課。6班
- IV E1 : 一般防諜及び工場施設における防諜
- IV E2 : 一般経済問題
- IV E3 : 西欧諸国
- IV E4 : 北欧諸国
- IV E5 : 東欧諸国
- IV E6 : 南欧諸国
- IV F : パスポート。身分証明。外国人監督警察
- IV G : 国境警察。
[編集] 文献
- Jacques Delarue(著)、片岡啓治(訳)、『ゲシュタポ;狂気の歴史』、サイマル出版会、1968年、ISBN 04-377-20020-8
- Roger Manvell(著)、渡辺修(訳)、『ゲシュタポ;恐怖の秘密警察とナチ親衛隊』、サンケイ新聞社出版局、1971年
- Edward Crankshaw(著)、西条信(訳)、『秘密警察;ヒトラー帝国の凶手』、図書出版社、1973年
- Rupart Butler(著)、田口未和(訳)、『ヒトラーの秘密警察 ゲシュタポ;恐怖と狂気の物語』、原書房、2006年、ISBN 04-562-03976-0

