「電子辞書」の版間の差分

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'''電子辞書'''(でんしじしょ)とは、[[CD-ROM]]や[[フラッシュメモリ]]などの[[メディア (媒体)|記憶媒体]]や[[コンピュータネットワーク|ネットワーク]]上に保存されている[[辞典|辞書]]・[[百科事典|事典]]の内容を記録した[[データ]]を、[[コンピュータ]]や[[携帯機器|携帯端末]]によって読み出し、[[検索]]・表示・再生する[[電子機器]]または[[ソフトウェア]]の総称<ref>{{Cite web|url=http://www.jepa.or.jp/ebookpedia/201507_2512/|title=電子辞書 - ebookpedia|publisher=[[日本電子出版協会]] (JEPA)|date=2015-07-27|accessdate=2017-11-26}}</ref>。
{{複数の問題

| 独自研究 = 2009年7月
== 概要 ==
| 出典の明記 = 2014年10月
[[File:SHARP e-dictionary PW-C6000.jpg|thumb|180px|シャープ製の電子辞書 (PW-C6000)]]
| 宣伝 = 2017年11月
電子辞書という語が指し示す範囲は広範にわたる。具体的には、専用の電子機器の内蔵ICメモリに辞書データを収録した携帯型の[[#IC電子辞書|電子辞書専用機(IC電子辞書)]]、インターネット上の辞書検索サイトに代表される[[#オンライン辞書|オンライン辞書]]、パソコンやスマートフォン・タブレットなどの汎用OSを搭載したコンピュータにインストールして利用する[[#辞書アプリ|辞書アプリ]]、パソコンなどの光ディスクドライブで読み込んで利用する[[#CD-ROM辞書|CD-ROM辞書]](DVD-ROM辞書)、[[#電子書籍端末の辞書機能|電子書籍端末に付属する辞書機能]]などがある。さらに、[[日本語入力システム|かな漢字変換システム]]に組み込まれた語義表示機能などもこれに含められ得る。日本で一般に電子辞書といえば、最初に挙げた携帯型の電子辞書専用機(狭義の電子辞書)を指すことが多い<ref>{{harvnb|荻野綱男|田野村忠温|2011|p=57}}</ref>。
}}
[[File:SHARP Brain PW-GC590.JPG|thumb|シャープ Brain PW-GC590<br />広辞苑を始め多くのコンテンツを収録し、カラー液晶画面やタッチパネル、リスニングなど多彩な機能を備えた電子辞書である<ref>シャープ「[http://www.sharp.co.jp/support/dictionary/product/pw-gc590.html 電子辞書(ブレーン) 機種別情報 (PW-GC590)]」2013年10月27日閲覧。</ref>。]]
[[File:Casio XD-GW6800.JPG|thumb|カシオ エクスワード XD-GW6800<br />カシオは2005年から2014年までの10年間における日本国内の電子辞書シェアNo. 1である<ref>カシオ「[http://casio.jp/enjoy/ranking/ 2015年 受賞・ランキング一覧]」2015年11月25日閲覧。</ref>。]]
'''電子辞書'''(でんしじしょ)とは、広義には、[[CD-ROM]]や[[フラッシュメモリ]]などの物理的な[[メディア (媒体)|媒体]]や[[コンピュータネットワーク|ネットワーク]]上に保存されている[[辞典|辞書]]・[[百科事典]]の内容を記録した[[データ]]を、[[コンピュータ]]や[[携帯機器]]などの[[電子機器]]によって読み出し、[[検索]]・表示などを行う[[装置]]([[情報機器]])または[[ソフトウェア]]の総称。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
特徴としては、
紙の辞書と比較した場合の電子辞書の特徴としては、

* 紙の辞書に比べて高速な検索ができる。<ref>荻野・田野村 (2011, pp.67-69)</ref>
* 項目数の多い辞書でも、分厚い紙の辞書に比べて、高速な検索ができる<ref name="ALL7-8">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=7&ndash;8}}</ref><ref>{{harvnb|荻野綱男|田野村忠温|2011|pp=67-69}}</ref>。
* 何百冊分もの辞書の大量な情報を小さな[[記憶装置]]に集約でき、場所をとらない。
* 全文検索・部分一致検索・前方一致検索・後方一致検索など、多様な検索方法が用意されている<ref name="ALL7-8"/><ref>{{harvnb|荻野綱男|田野村忠温|2011|p=71}}</ref>。特に、共通規格で記録された辞書ファイルに対しては、一括で検索をかけることができる(これは俗に「串刺し検索」と呼ばれる)<ref>{{harvnb|荻野綱男|田野村忠温|2011|pp=72, 76}}</ref>。
* 紙の辞書よりも軽量で小型のため持ち運びしやすい。
* 書籍にして数百冊分の大量の情報を小さな記憶媒体に集約できるため、収納・保存に場所を取らない。また、オンライン辞書の場合、辞書データはネットワーク上に保持されるため、辞書データを収めるための記憶容量は無限に近い<ref name="ALL7-8"/>。
* 全文検索・部分一致検索・前方一致検索・後方一致検索など、多様な検索ができる。<ref>荻野・田野村 (2011, p.71)</ref>
* 関連項目などの別項目へも、[[ハイパーリンク]]の要領で、項目間、さらには辞書間を簡単に移動できる(いわゆる「ジャンプ機能」)<ref name="ALL7-8"/>。
* 共通な規格で記録された辞書ファイルに対して一括で検索をかけることができる(これは俗に「串刺し検索」と呼ばれる)<ref>荻野・田野村 (2011, p.72, 76)</ref>

などがある。
などがある。


<!-- == 規格 == -->
== 規格・形式 ==
市販されている電子辞書・百科事典ソフトウェアは数多あるが、電子化された辞書データのファイル形式やディレクトリ構造など、そのフォーマット(形式や規格)については、複数のメーカーが共同で策定した共通規格 (EBやEPWINGなど) のほか、メーカーごとの独自規格で作成されたソフトウェア製品も相当数存在する<ref>{{Cite web|url=http://ebstudio.info/manual/EBStudio/3_1.html|title=EPWINGと電子ブック|accessdate=2017-11-26}}</ref>。
電子化された[[データベース]]から語義を検索するのが電子辞書の大きな特徴であるが、たいてい規格がオープンでない。2000年代後半頃から現在にかけて、電子辞書専用機として売られているものは、大抵がメーカーごとの独自規格となっており、データを取り出すこともできない。場合によっては外部辞書に限って仕様が公開されている機種もあるがごく少数である。

主な電子辞書ソフトウェアの[[ファイルフォーマット]]には、


* [[電子ブック (規格)|電子ブック]] (EB/EBXA/S-EBXA)
一方でいわゆる電子辞書ソフトウェアの[[ファイルフォーマット]]には
* [[電子ブック (規格)|電子ブック]]
* [[EPWING]] ([[JIS X 4081]])
* [[EPWING]] ([[JIS X 4081]])
* [[ONESWING]](EPWINGの後継規格)
* BAS
* BAS
* {{仮リンク|StarDict|en|Stardict}}
* {{仮リンク|StarDict|en|StarDict}}
* [[LEXicographical eXtensible Markup Language|LeXML]](辞書・事典用に特化した[[Extensible Markup Language|XML]])<ref>{{Cite web|url=http://www.jepa.or.jp/ebookpedia/201605_2984/|title=LeXML - ebookpedia|publisher=[[日本電子出版協会]]|accessdate=2017-11-28}}</ref>
などの規格があり、オープン規格のものもある。電子ブックを除けば多くが[[Microsoft Windows]]などの[[パソコン]]をメインターゲットとした規格となる。規格が策定されていても非公開となる場合も少なくない。これは、[[デジタル著作権管理|著作権保護]]の観点の他に[[ベンダロックイン]]を狙ったものであるとも考えられる。


などがある。電子ブックを除けば、多くが[[Microsoft Windows]]などの[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]向けの規格である。また、規格が策定されていても、その仕様が非公開となる場合も少なくない。これは、[[デジタル著作権管理|著作権保護]]の観点のほかに、[[ベンダーロックイン]]を狙ったものであるとも考えられる。
<!-- == 紙の辞書との比較 == -->
紙の辞書は一覧性が高いが携帯性や検索効率で劣る。電子辞書は一発で複数の辞書に検索を行え、効率や携帯性に富むが一覧性で劣り、機械の画面を見るという関係上[[ユーザインタフェース]]によっては万人向けではない。ただしこれは一般的な話であり、ポケットに入るサイズの小型の紙媒体の辞書など例外も多い。
<!--
電子辞書は、見出し語を引くまでの時間の短さや、簡単な操作で同じ辞書の関連語句・連携している他の辞書にジャンプ([[ハイパーリンク]]またはスーパージャンプ)できる、単語帳登録が過去に調べたものから抜粋してできる、ヒストリーで過去の閲覧履歴を見ることができるなどの面で紙の辞書を凌駕している。また紙の辞書の場合、何冊も抱えて通勤・通学あるいは旅行をするのは困難を伴うが、専用装置型電子辞書ならばそれが容易になる。オンライン辞書はアップデート(改版)が容易であるため、最新の語句・用例が素早く反映されるという強みがある。ローカル型の辞書でも、なんらかのメディアや、オンラインによるアップデートに対応しているものもある。


== CD-ROM辞書 ==
しかし、高齢者を中心に愛着のある紙の辞書を好む人は多い{{要出典|date=2010年2月}}。メーカーサイドは、視力の弱い年配者に配慮して音声出力や文字の拡大表示を可能にするなど、紙の辞書にはない便利さをアピールしている。更に、キーボードを触ったことのない人にとっては難しいであろうと考えられるJIS配列キーボードを[[五十音]]配列にするといった配慮もなされている。紙の辞書ではどうしても情報量とサイズは[[トレードオフ]]の関係になる。少ないスペースにより多くの情報量を詰め込むことが可能な電子辞書は、今後も大容量化が進み、情報量において紙の辞書を圧倒することは必然といえる。
開発時の歴史的背景としては、まず[[1980年]](昭和55年)に[[ソニー]]と[[フィリップス]]が共同で策定した規格、[[CD-DA]](音楽CD)用に開発された記憶媒体である[[コンパクトディスク]] (CD) <ref name="CDROMDIC">{{harvnb|長谷川秀記|2016|pp=588&ndash;591}}</ref>を、コンピュータの外部記憶媒体として利用する[[CD-ROM]]の仕様(イエローブック)が[[1983年]](昭和58年)に提案されたことがあった<ref name="ALL10-11">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=10&ndash;11}}</ref>。CD-ROMは、一枚当たりの容量が約600[[メガバイト|MB]]という、当時としては非常に大きな記憶容量を持ち、音楽CDと同じ生産ラインが使えるために安価に量産が可能であるという2つの利点があった。さらに、致命的な欠点とされていた「書き換え不可能」という特性を逆に利用して、データ集や出版物、それも大きな記憶容量を十分に生かせる、辞書や百科事典の記憶媒体として期待されていた<ref name="CDROMDIC"/><ref name="ALL10-11"/>。


そして、[[1985年]](昭和60年)に日本で最初のCD-ROM辞書『最新科学技術用語辞典』が[[三修社]]から発売された<ref name="CDROMDIC"/><ref name="ALL10-11"/><ref>{{Cite web|url=https://www.sanshusha.co.jp/company/|title=会社案内|publisher=[[三修社]]|accessdate=2017-11-24}}</ref>。その翌年の[[1986年]](昭和61年)に、当時の[[富士通]]のワープロ専用機[[OASYS]]向けの『[[広辞苑]]第三版CD-ROM版』の試作が発表され、翌々年の[[1987年]](昭和62年)に発売された<ref name="CDROMDIC"/><ref name="ALL10-11"/>。この『[[広辞苑]]第三版CD-ROM版』は、富士通・ソニー・[[岩波書店]]・[[大日本印刷]]により共同開発され<ref name="CDROMDIC"/>、WING規約と呼ばれたその辞書形式は他社にも無料で提供された<ref name="ALL10-11"/>。その結果、[[1988年]](昭和63年)の[[三省堂]]『模範六法昭和62年版CD-ROM版』と[[自由国民社]]『[[現代用語の基礎知識]]CD-ROM版』の発売に続いて、多くの辞書がこの形式で制作され、発売された<ref name="CDROMDIC"/><ref name="ALL10-11"/>。
ただし紙の辞書は一覧性があり、言葉の広がりや繋がりを知るためにはこちらのほうが適していると言われている。さらに、英単語の学習などでは紙の辞書を引いたほうが記憶に残りやすいという実験結果もでていることから、入門者には紙の辞書を薦める教育者も多い{{要出典|date=2010年2月}}。だが[[六法]]全書のように内容の更新が多い分野は、オンラインでの即時更新ができる電子辞書化のメリットが大きいと推測される。


その後、WING規約は[[EPWING]]と名称を変え、出版社、印刷会社、ソフトウェアメーカー、ハードウェアメーカーが集まって[[1991年]](平成3年)に設立された団体「EPWINGコンソーシアム」による普及活動もあって、EPWINGは日本のパソコンで動作する電子辞書形式の[[デファクトスタンダード]]となり、ついに[[1997年]](平成9年)には「日本語電子出版検索データ構造」 ([[JIS X 4081]]) という名称でJIS規格化された<ref name="CDROMDIC"/><ref name="ALL10-11"/>。EPWING形式の電子辞書は[[2012年]](平成24年)10月30日をもって販売を終了し、以降は後継規格である[[ONESWING]]に移行している<ref>{{Cite web|title=EPWING 今までに発表した製品 - 販売終了のお知らせ|url=http://www.fujitsu.com/jp/products/software/applications/applications/epwing/archive/|publisher=[[富士通]]|accessdate=2017-11-25}}</ref>。
また2009年前後から、実用に耐える電子ペーパーを利用した電子書籍用端末の販売が活発化したため、インターフェイスの設計次第では「紙の辞書のように一覧表示できる電子辞書」も可能である。今後紙の辞書は実用品ではなく、愛好家向けや贈答用などの、電子辞書では不可能な[[プレミア]]市場向けとして残っていく{{要出典|date=2010年8月}}と推測される。
-->


WING規約から派生したもう一つの電子辞書フォーマットに、ソニー独自の[[電子ブック (規格)|電子ブック (EB) ]]がある<ref name="ALL11-13">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=11&ndash;13}}</ref>。富士通主導でEPWINGコンソーシアムが設立されたのと同じ年に、ソニーが中心となって、同様の団体である「電子ブックコミッティー」が組織され、電子ブックの普及活動が展開された<ref name="ALL11-13"/>。電子ブックは通常のCD-ROMとは違い、8cm CD-ROMを[[キャディ|キャディー]]と呼ばれるケースに入れて、専用のハードウェア「電子ブックプレーヤー」で利用する形態をとる<ref name="ALL11-13"/>。最初の電子ブックプレーヤーは[[1990年]](平成2年)にソニーから発売された「DATA Discman DD-1」で、後に[[三洋電機]]、[[松下電器産業]]からもプレーヤーが発売された<ref name="ALL11-13"/>。当初は、キャディーを取り外した状態のCD-ROMを直接パソコンなどで利用することは禁止されていたが、[[1994年]](平成6年)に解禁され、フリーウェアの辞書検索ソフト(電子ブックビューアー)の登場も手伝って、パソコン用の電子辞書としても普及した<ref name="ALL11-13"/>。電子ブックプレーヤーの販売は[[2000年]](平成12年)に終了した<ref>{{Cite web|url=https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-6527#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29|title=「電子ブック」 - [[コトバンク]]の[[日本大百科全書]](ニッポニカ)の項目|publisher=[[小学館]]|accessdate=2017-11-25}}</ref>。
== 分類 ==
電子辞書という語が指し示す範囲は広範に渡る。電子辞書の分類として、辞書専用機の専用装置型、インターネットの辞書検索サイト等のオンライン型、パソコンやスマートフォン等の汎用装置に辞書ソフトウェアをインストールする[[アプリケーションソフトウェア|アプリ]](アプリケーション)型、電子書籍端末の付属機能の電子書籍端末付属型がある。さらに、[[日本語入力システム]]の語義表示機能などもこれに含められ得る。日本で一般に電子辞書といったときは、携帯型の専用装置(狭義の電子辞書)を指すことが多い<ref>荻野・田野村 (2011, p.57)</ref>。媒体もしくは情報の保存場所による分類は以下のとおり。


以上述べたように、日本のCD-ROM辞書の標準形式はEPWINGと電子ブックであったが、そのどちらでもない独自規格のCD-ROM辞書も各社から開発・販売された<ref name="ALL11-13"/>。中でも代表的なのは、[[平凡社]]の『[[世界大百科事典]]』(1992年)、[[マイクロソフト]]社の『[[Microsoft Bookshelf]]』(1997年)、[[小学館]]の『[[日本大百科全書|スーパー・ニッポニカ]]』(1998年)である<ref name="ALL11-13"/>。
=== 専用装置型 ===
[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]と[[液晶]]画面を搭載し、[[Read Only Memory|ROM]]に辞書データを収録した、携帯型の専用装置。専用装置でディスク媒体を使用し、辞書の追加が可能なものもある。また、<!--ローカル型との違いは辞書の追加や更新ができないことだったが、-->ROMカードなどを用いることで辞書の入れ替え・追加可能なものもある。一般的には'''電子辞書'''というとこの印象が強い。小さい機種であれば洋服のポケットにも入るものもある。


== IC電子辞書 ==
日本市場ではシャープが[[1979年]]11月に投入した。当時は'''ポケット電訳機''' (IQ-3000) という名前で<ref>阿部 (2007, p.5下)</ref><ref>横山 (2007, p.43下)</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.sharp.co.jp/blog/201201/11/ |title=【新製品紹介】“手軽に持ち歩く辞書”の原点 |date=2012-01-11 |publisher=シャープ広報部 |accessdate=2015-11-25 }}</ref>、当時としてはかなり高価な39800円だった。スタンダード型が基本だったが、近年はメモリ価格の下落と技術の向上から、フルコンテンツ、しかも多数の辞書を搭載している機種も多い。辞書を100冊以上収録している機種ももはや当たり前になっている。また[[ヘッドフォン|イヤホン]]や[[スピーカー]]から外国語音声などを聞ける機種も多い。画面はカラー液晶のものが主流となっている。廉価版や販売年が古い機種でモノクロ液晶のものが見られる。電源は、乾電池式、充電池式、USBからの電源供給式などがある。
CD-ROM辞書の発売に前後して、電子辞書の記憶媒体は[[CD-ROM]]から[[半導体メモリ|ICメモリ]]に移行していき<ref name="ICDIC">{{harvnb|長谷川秀記|2016|p=591}}</ref>、記憶媒体と検索・表示装置が一体となったIC電子辞書が登場する。

<!-- 画面は基本的にモノクロだが、シャープとカシオの一部機種ではカラー液晶を装備しており、カシオの主力2010年モデルでは全機種搭載。カラー機種はカラーコンテンツの表示が可能になるだけではなく、文字も著しく見やすくなる。多くの製品では、[[黄土色]]・粘土色の背景に焦茶色の文字で表示される低コストの反射型液晶を用いているため、コントラスト比が低く、外光を取り込んで表示するという性質から暗い場所では見づらい。バックライトを備えているものもある。透過型及び反射/透過ハイブリッド型カラー液晶の場合、背景が白い故に文字と背景のコントラスト比が高く、バックライトにより暗所でも見えるため、通常の文字情報の表示も見やすくなっている。ただし照明を使うと消費電力が大きくなり、電池の持ちは悪くなる。シャープの機種 (Brain) では大容量の[[二次電池|リチウムイオン電池]]を搭載することでモノクロ液晶の機種と同等の駆動時間を実現している。 -->
[[SDメモリーカード]]スロットを装備し、別売りの辞書などのコンテンツを追加できるもの、パソコンで作成したテキストファイルやデジタルカメラ写真の表示ができるものなどがある。


<gallery>
<gallery>
File:Casio XD-ST4800.JPG|カシオの電子辞書 (XD-ST4800)
File:SII IC Dictionary SL-LT3.jpg|セイコーインスツルの電子辞書 (SL-LT3)
File:Denshijisho.jpg|ソニーの電子辞書 (DD-IC2050)
File:Պարսկերէն-անգլերէն բառարան.JPG|液晶画面を小型化した電子辞書
File:CASIO DI-2150.jpg|カード型の電子辞書
File:CASIO DI-2150.jpg|カード型の電子辞書
File:Casio XD-ST4800.JPG|カシオ製の電子辞書 (XD-ST4800)
File:SII IC Dictionary SL-LT3.jpg|セイコーインスツル製の電子辞書 (SL-LT3)
File:Denshijisho.jpg|ソニー製の電子辞書 (DD-IC2050)
</gallery>
</gallery>


=== 沿革 ===
==== 日本における市場規模 ====
==== 第一世代(1979年 - 1985年): 電卓型の電子単語帳 ====
[[File:Tokyo Akihabara gadgets.jpg|thumb|電器店に陳列された電子辞書]]
日本国内市場では、[[シャープ]]が[[1979年]](昭和54年)11月に発売した'''ポケット電訳機''' (IQ-3000) が最初で<ref>{{harvnb|阿部圭子|2007|p=5下}}</ref><ref>{{harvnb|横山晶一|2007|p=43下}}</ref><ref name="MBS">{{Cite web|url=http://mobile.jbmia.or.jp/calculator_dic/history.htm|title=電子辞書の歴史について|publisher=一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会モバイルシステム部会|accessdate=2017-11-25}}</ref><ref name="SHARP_BLOG">{{Cite web |url=http://www.sharp.co.jp/blog/201201/11/ |title=【新製品紹介】“手軽に持ち歩く辞書”の原点 |date=2012-01-11 |publisher=シャープ広報部 |accessdate=2015-11-25 }}</ref>、当時としてはかなり高価な39,800円だった{{要出典|date=2017年11月}}。これは[[孫正義]]が学生時代に発明した自動翻訳機が元になっているともいわれる<ref>{{Cite news|url=https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/615194.html|title=懐かしの読書端末や電子辞書が大集合! 当時の関係者が思い出話&苦労話|author=鷹野凌|publisher=[[インプレス|Impress Watch]]|date=2013-9-12|accessdate=2017-11-26}}</ref>。IQ-3000は、英和約2800語、和英約5000語を収録していた<ref name="SHARP_BLOG"/>が、技術的には[[電卓]]技術を応用したもので<ref name="IT_CASIO">{{Cite news|url=http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0411/15/news013.html|title=ただ今、急成長中――カシオが語る、これからの電子辞書のあり方|author=渡邊宏|publisher=[[ITmedia]]|date=2004-11-15|accessdate=2017-11-25}}</ref>、その16桁×1行のモノクロ液晶画面に表示できたのはアルファベットとカタカナのみだった<ref name="MBS"/><ref name="ALL9-10">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=9&ndash;10}}</ref>。内容も辞書というより単語集のようなものであり、[[単語帳]]機能付き電卓とでも呼ぶべき製品だった<ref name="MBS"/><ref name="ALL9-10"/>。当時はICメモリと液晶ディスプレイの製造コストが高かったために、安価な小容量の搭載メモリと小型の液晶画面が採用されたことで<ref name="IT_CASIO"/>、辞書の収録語数は頭打ちになり、液晶画面の表示能力にも限界があった<ref name="MBS"/>。
[[一般社団法人]][[ビジネス機械・情報システム産業協会]]まとめの出荷推移は以下の通り(日本市場)<ref>{{Cite web |url=http://mobile.jbmia.or.jp/market/densi-jisyo-1996-2016.pdf |title=電子辞書の年別出荷実績推移 |date=2017-02-23 |format=PDF |accessdate=2016-7-25 }}</ref>。

{| class="wikitable"
[[1980年代]]に入ると、[[1980年]](昭和55年)4月に[[キヤノン]]が電子英単語「LA-1000」(英和1320語と日本語訳2180語を収録)を発売、[[1981年]](昭和56年)10月には[[カシオ計算機]]も電子英和辞典「TR-2000」(英単語・熟語を約2000語収録)を発売し<ref>{{Cite web|url=https://www.casio.co.jp/company/history/nenpyo/|title=カシオの歴史>主要製品年表|accessdate=2017-11-25}}</ref>、市場に参入した<ref name="ALL9-10"/>。しかし、一冊の辞書を完全収録するには、ICメモリの大容量化と低価格化を待たなければならなかった<ref name="ICDIC"/>。
|-

!2006年
==== 第二世代(1986年 - 1989年): 収録語数の増加と画面表示の改良 ====
|251万台 / 374億円
1980年代後半には、[[1987年]](昭和62年)3月に[[三洋電機]]が日本語を漢字仮名まじりで表示できる<ref name="ALL9-10"/>IC辞書「電字林 PD-1」(英和約3万5000語を収録)を発売、同年7月には[[セイコーインスツル|セイコー電子工業]]がカード英和「DF-310」(英和約6000語と訳語約1万2000語を収録)<!-- 当時の価格は4,100円(http://www.qprc.jp/Stationery/Card/SII-DF.html) -->を発売して<ref name="NI">{{Cite journal|url=http://www.natureinterface.com/j/ni06/P48-51/|title=[開発最前線]電子辞書 ロングセラーの軌跡 -- セイコーインスツルメンツ|issue=6|publisher=ネイチャーインタフェイス|pages=48-51|isbn=4-901581-05-8|date=2001-12-28|accessdate=2017-11-25}}</ref>、電子辞書市場に参入した。この頃には、収録語数だけは紙の辞書と同程度(数万語単位)にまで追いついた<ref name="MBS"/>が、依然として単語帳の域を出ないままだった。
|-

!2007年
==== 第三世代(1990年 - 1995年): フルコンテンツ辞書の登場 ====
|281万台 / 463億円
CD-ROM辞書の開発から派生した携帯型の電子辞書として、ソニーから電子ブックプレーヤーの「DATA Discman DD-1」が1990年(平成2年)7月に発売された(詳細は[[#CD-ROM辞書|CD-ROM辞書]]参照)。そして、日本で最初の本格的なIC電子辞書は、[[研究社]]とセイコー電子工業が[[1992年]](平成4年)1月に発売したIC辞書「TR-700」で、研究社の『新英和・和英中辞典』の二冊の文字情報をすべて収録し、フルコンテンツ辞書と呼ばれた<ref name="ICDIC"/><ref name="MBS"/><ref name="NI"/>。これ以降、電子辞書の主流はIC電子辞書へと移り<ref name="ICDIC"/>、そのIC辞書も主に使い勝手や形状の差から、フルコンテンツ型の本格派電子辞書と、スタンダード型と呼ばれる安価な簡易型電子辞書に二極化していく<ref name="MBS"/>。
|-

!2008年
==== 第四世代(1996年 - 1999年): フルコンテンツ型の市場拡大 ====
|250万台 / 413億円
ICメモリと液晶ディスプレイの低価格化が進み、大型の液晶画面と複数の辞書を収録したフルコンテンツ型の電子辞書が登場し、日本国内のIC電子辞書市場が大きく成長し始めた<ref name="MBS"/>。また、ソニーのDD-ICシリーズ<ref>{{Cite web|url=http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200009/00-0919/|title=新商品 電子辞書で初めてジョグダイヤルを搭載して、快適な操作性を追求 国語・英和・和英・漢字辞書をまるごと収録したIC電子辞書 発売|publisher=[[ソニー]]|date=2000-09-19|accessdate=2017-11-26}}</ref>のような、名刺ケース並みの大きさのフルコンテンツ辞書も登場した<ref name="MBS"/>。電子辞書の需要が増し、買い求める客層も拡大したが、この頃の電子辞書市場で主流を占めていたのは安価なスタンダード型だった<ref name="MBS"/>。
|-

!2009年
==== 第五世代(2000年 - 2002年): 収録辞書の拡充と品揃えの多様化 ====
|217万台 / 352億円
半導体価格の下落が加速したことと、電子化済みの辞書データが出版社から提供されることも増えたことから、一台に多くの辞書データを収録することが可能となり、何冊もの辞書を収録した製品が登場した<ref name="MBS"/>。以後、各社は競って収録辞書数を増やしていくようになる<ref name="MBS"/>。また、高校生から高齢者、女性まで電子辞書の利用者層が多様化していくのに応じて、それぞれの購買層に合わせた製品開発が行われるようになった<ref name="MBS"/>。これによって、様々なフルコンテンツ型の電子辞書が発売されるようになり、電子辞書市場はますます拡大した<ref name="MBS"/>。それとともに、市場の主流もスタンダード型からフルコンテンツ型へと移行していった<ref name="MBS"/>。
|-

!2010年
==== 第六世代(2003年 - 2006年): 辞書の多機能化 ====
|214万台 / 332億円
他社製品と差別化を図るため、各社とも特色ある機能を持たせた製品が開発されるようになる<ref name="MBS"/>。具体的には、音声発音機能、拡張メモリーカードによるコンテンツの追加機能、カラー液晶の搭載(業界初は[[2002年]]発売のシャープ「PW-C5000」)、手書き入力システムの採用などである<ref name="MBS"/>。収録されるコンテンツも、専門辞書、大型辞書、各国語辞書、百科事典などの辞書・事典にとどまらず、学習書や趣味・実用書なども盛んに収録された<ref name="MBS"/>。また、日本国内だけでなく、海外市場を見据えた製品開発もみられるようになった一方で、スタンダード型の市場は衰退していった<ref name="MBS"/>。
|-

!2011年
==== 第七世代(2006年 - ): 単なる辞書を超えた電子辞書 ====
|187万台 / 314億円
2006年(平成18年)頃から[[2010年]](平成22年)頃にかけてはモノクロ液晶からカラー液晶に移る過渡期だったと考えられる<ref name="MBS"/>。そのほか、液晶ディスプレイの高精細化、手書き入力パッドやタッチパネル液晶の導入、多言語発音機能とテキスト読み上げ (TTS) 機能の搭載、動画コンテンツの収録、英語学習支援機能の搭載、[[ワンセグ]]機能の搭載など、多彩な特色を持つ製品が次々に開発された<ref name="MBS"/>。しかしながら、[[スマートフォン]]の登場と[[#辞書アプリ|辞書アプリ]]の普及、およびインターネットの無料辞書サイトの台頭などにより、[[2008年]](平成20年)以降は販売台数が右肩下がりである<ref name="ICDIC"/>。一方で、そのような苦境にあっても、高校生・大学生向けの学習用電子辞書の需要は健在なようである<ref name="ICDIC"/><ref>{{Cite news|url=http://news.mynavi.jp/news/2016/07/25/017/|title=カシオの電子辞書「EX-word」、20周年記念プレスイベントで語られた歴史|author=小林哲雄|publisher=[[マイナビ]]|date=2016-07-25|accessdate=2017-11-25}}</ref>。
|-

!2012年
=== 現状 ===
|173万台 / 291億円
現状では、専用の小型筐体に[[QWERTY配列]]の物理[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]と[[液晶ディスプレイ]]を搭載し、本体に内蔵された[[Read only memory|ROM]]に辞書データを収録した、携帯型のIC電子辞書(電子辞書専用機)が主流である。
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!2013年
[[2017年]]現在は、辞書コンテンツを200冊収録した製品もあり、文字情報だけでなく、音声、写真、図表などのデータを収録したものも一般的になっている。画面は、廉価版モデルや発売年が古いものではモノクロ液晶のものも見られるが、[[バックライト]]付きのカラー液晶を搭載したモデルが主流であり、[[タッチパネル]]上に[[スタイラス|タッチペン]]で手書き入力が可能な機種も少なくない。[[ヘッドフォン|イヤホン]]や[[スピーカー]]から、あらかじめ収録された外国語のネイティブ音声が聞けるものや、[[音声合成]]によるテキスト読み上げ機能 (TTS) を搭載した機種もある。専用の[[メモリーカード]]スロットや[[Random Access Memory|RAM]]を搭載した機種は、別売りの追加データカードなどを使用して、辞書コンテンツの入れ替えや追加が可能である。電源方式には、[[乾電池]]式、[[充電池]]式、[[ユニバーサル・シリアル・バス#USB給電|USB給電]]式などがある。
|151万台 / 248億円
|-
!2014年
|139万台 / 242億円
|-
!2015年
|117万台 / 205億円
|-
!2016年
|112万台 / 195億円
|}


=== 代表的なメーカー ===
出荷台数・出荷額とも2007年をピークに下がり続けており、いずれも半減以下となっている。原因は少子化や、スマートフォンの普及とそのアプリの充実と考えられている。近年では需要が見込まれる小・中・高校生向け端末の開発にシフトしつつある<ref>{{Cite news |title=ネットで何でも検索できる時代 電子辞書は生き残れるのか |newspaper=J-CASTニュース |date=2014-10-18 |url=http://www.j-cast.com/2014/10/18218505.html?p=all |accessdate=2015-11-25 }}</ref>。
==== 日本国内 ====
* [[カシオ計算機]]([[エクスワード|EX-word]]ブランドは[[1996年]]7月発売の「XD-500」から<ref name="ALL87-94">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=87&ndash;94}}</ref>)
* [[キヤノン]]({{仮リンク|Wordtank|en|Wordtank|label=wordtank}}ブランドは[[1988年]]発売の「ID-7000」から<ref name="ALL87-94"/>)
* [[シャープ]]([[Papyrus (電子辞書)|Papyrus]]ブランドは[[2005年]]8月発売の「PW-A8400」から<ref>{{Cite news|url=http://ascii.jp/elem/000/000/349/349238/index.html|title=シャープ、100種類のコンテンツを収録した電子辞書『PW-A8400』を発売――電子辞書のブランドを“Papyrus”に|publisher=[[アスキー・メディアワークス|ASCII.jp]]|date=2005-08-09|accessdate=2017-11-26}}</ref>、[[Brain (電子辞書)|Brain]]ブランドは[[2008年]]8月発売の「PW-AC880/AC830」から<ref>{{Cite web|url=http://www.sharp.co.jp/corporate/news/080728-b.html|title=カラー電子辞書“Brain(ブレーン)”<PW-AC880/AC830>を発売|publisher=[[シャープ]]|date=2008-07-28|accessdate=2017-11-26}}</ref>)
* [[セイコーインスツル]](<!-- PASORAMAは2008年11月発売の「SR-G9001」から(筆者注:メーカーによるとPASORAMAはブランドではなく機能の一つらしいので省略) -->[[DAYFILER]]ブランドは[[2013年]]1月発売の「DF-X8000/X9000」から<ref>{{Cite web|url=https://www.sii.co.jp/jp/news/release/2012/11/27/3508/|title=タッチ操作のカラー電子辞書「DAYFILER(デイファイラー)」を発売|publisher=[[セイコーインスツル]]|date=2012-11-27|accessdate=2017-11-26}}</ref>)
* [[ソニー]](IC電子辞書)

ソニーは市場シェアの低迷や競争力の低下に伴い、[[2006年]](平成18年)に電子辞書事業から撤退した<ref>{{Cite news |title=ソニー、電子辞書から撤退 |newspaper=[[ITmedia]] |date=2006-07-27 |author=岡田有花 |url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/27/news087.html |accessdate=2015-11-25}}</ref>。セイコーインスツル (SII) も、[[2015年]](平成27年)3月末に電子辞書事業から一旦撤退したが<ref>{{Cite web |url=http://www.sii.co.jp/jp/news/2014/10/07/11409/ |title=電子辞書ビジネスからの撤退について |publisher=セイコーインスツル株式会社 |date=2014-10-07 |accessdate=2015-11-25 }}</ref>、[[2016年]](平成28年)4月に[[iOS (アップル)|iOS]]向けの辞書アプリ市場 ([[App Store]]) に参入したことを発表した<ref>{{Cite web|url=http://www.seiko-sol.co.jp/archives/16341/|title=大学生向け・高校生向けの電子辞書アプリとコンテンツのダウンロード販売を開始|publisher=セイコーソリューションズ|date=2016-04-05|accessdate=2017-11-25}}</ref>。また、2017年現在、キヤノンはスタンダード型電子辞書の販売を続けているが、[[2012年]](平成24年)以降は新製品の発表がない。

[[File:Tokyo Akihabara gadgets.jpg|thumb|電器店に陳列された電子辞書(2008年)]]
2016年における日本の有力家電量販店の販売実績を基に算定されたメーカー別数量シェアは以下の通り<ref>{{Cite web |url=https://www.bcnaward.jp/award/section/detail/contents_type=277 |title=BCN AWARD 2017 電子辞書部門 |publisher=BCN AWARD |accessdate=2017-11-26 }}</ref>。日本における電子辞書市場は[[寡占|寡占市場]]の一つである<ref>{{Cite web|url=https://www.bcnretail.com/news/detail/051108_2631.html|title=辞書を「押す」時代到来、普及進む電子辞書、売れ筋ランキング|publisher=[[BCN (企業)|]]|date=2005-11-08|accessdate=2017-11-26}}</ref>。


2016年における日本の有力家電量販店販売実績を基に算定されたメーカー別数量シェアは以下の通り<ref>{{Cite web |url=http://bcnranking.jp/award/section/hard/hard56.html |title=BCN AWARD 2016 電子辞書部門 |publisher=BCN AWARD |accessdate=2016-05-30 }}</ref>。
日本における電子辞書市場は[[寡占|寡占市場]]の一つである。
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|}
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==== 収録範囲からの分類 ====
===== 市場規模 =====
日本市場のIC辞書は、出荷台数と出荷額が共に2007年(平成19年)の281万台 / 463億円をピークに下がり続けており、2016年(平成28年)には最盛期の半分以下(112万台 / 195億円)となっている<ref>{{Cite web |url=http://mobile.jbmia.or.jp/market/densi-jisyo-1996-2016.pdf |title=電子辞書の年別出荷実績推移 |date=2017-02-27 |format=PDF |accessdate=2017-11-26 }}</ref>。市場規模が縮小した背景には、[[少子化]]や、[[スマートフォン]]の普及と[[#辞書アプリ|辞書アプリ]]の充実があると考えられている。成熟した日本のIC電子辞書市場は、今後も一定の需要が見込まれている、小・中・高校生向け端末の開発にシフトしつつある<ref>{{Cite news |title=ネットで何でも検索できる時代 電子辞書は生き残れるのか |newspaper=J-CASTニュース |date=2014-10-18 |url=http://www.j-cast.com/2014/10/18218505.html?p=all |accessdate=2015-11-25 }}</ref>。
* '''フルコンテンツ(本格収録)型''' 書籍版辞書の内容をすべて電子データ化し、収録しているもの。2015年現在、主流である。<ref>荻野・田野村 (2011, p.65)</ref><!-- [[#媒体による分類|ローカル型]]では基本的にこのタイプ。 -->
* '''スタンダード型''' 書籍版辞書または書籍版が刊行されていない辞書のデータの内容の一部だけを収録したタイプ。<ref>荻野・田野村 (2011, p.65)</ref>画像類は無論のこと、一般的に使用しない項目を削除して軽量化を計っている。一部の[[#専用装置型|専用装置型]]では、書籍版辞書にある家系図や表などを取扱説明書内に記載している。ある時期までの電子辞書は、低容量で高価だった[[メモリ]]容量を節約するため、簡略化されたスタンダード型が多く採用され主流だったが<ref>荻野・田野村 (2011, p.65)</ref>、メモリの低価格化によって新規機種の発売は減少しつつあり、廃止になる製品も相次いでいる。フルコンテンツと分けるべき時代はもうすぐ終わる、との指摘さえある。オンライン型の無料版ではこの形式で公開しているものも多い。


==== 収録内容からの分類 ====
==== 海外 ====
[[File:2008 Taipei IT Month Day9 Besta CD-868 in white.jpg|thumb|180px|台湾の電子辞書 Besta CD-868]]
[[2014年]]現在、専用装置型ではデータカードによる[[コンテンツ]]追加機能もあるが<ref>荻野・田野村 (2011, p.76)</ref>、初期収録コンテンツに比べ一般に割高なため、メーカーは初期収録コンテンツによって製品の特徴を出している。
日本国外の主な電子辞書メーカーを以下に挙げる<ref name="ALL74-78">{{harvnb|日本電子出版協会レファレンス委員会|2016|pp=74&ndash;78}}</ref>。
* '''汎用'''・日常生活型 [[国語辞典]]・[[英和辞典]]・医学辞典・[[冠婚葬祭]]事典・外国旅行会話集などの実用的なコンテンツを網羅したタイプ。「家庭に一台」というコンセプトで販売される場合がある。最近では[[カシオ計算機]]と[[シャープ]]を中心に収録コンテンツ数が増加しており、2014年現在は100 - 170コンテンツ収録モデルが主流。
* '''英語重視型''' [[英和辞典]]・[[和英辞典]]・[[英英辞典]]などのコンテンツを重視。大規模英和辞典をフルコンテンツ収録している場合が多い。[[英会話]]学習や、ビジネスマンが業務で使用するために購入することを想定してい専用装置型る。高校生・大学生の学習用などに購入される例も多く、また、上位機種は研究者にも重宝がられるレベルに達している。一部機種では単語やフレーズの発音を音声データとして収録している。英語の[[コーパス]]を搭載したものも存在する。[[セイコーインスツル]]は、このタイプの製品を重視したラインナップ構成を取っている。
* '''国語重視型''' [[国語]]・[[古文]]の学習・研究目的のために、[[古語辞典]]などを収録している。ただし[[漢和辞典]]は[[文字コード]]の問題から、研究者が使用できるレベルのものは皆無と言われる。
* '''中学および高校学習・受験対策型''' 英単語集・英熟語集や「暗記本」など中学・高校生の日常学習と試験対策を重視している。国語辞典・英和辞典を難易度に応じ複数収録したものもある。古語辞典や[[日本史]]・[[世界史]]事典等も収録。理数系科目についても、用語事典や公式集などを収録。また学習効果を得るために[[単語帳]]機能などの暗記を促進するための機能を持つものも見られる。英語では[[デジタルオーディオプレーヤー]]機能でリスニング学習をこなす機種も見られ、[[大学入試センター試験]]のリスニングの模試が可能な機種もある。
* '''外国語重視型''' 2014年現在、[[中国語]]・[[韓国語]]・[[ドイツ語]]・[[フランス語]]・[[イタリア語]]・[[スペイン語]]・[[ポルトガル語]]・[[ロシア語]]の日本語辞典を収録した機種が発売されている。外国語学習者や現地に駐在するビジネスマンに役立つ。これらの一部モデルにも、発音機能と手書き入力ができる。これらは英語系・国語系などの辞書も収録している。一部機種にはCD-ROMやデータカードで他の言語や各種辞書の追加が可能。
* '''医学重視型''' カシオ計算機が発売している医学電子辞書。主に[[医師]]・[[看護師]]・[[薬剤師]]・医学生に利用され、基礎医学・臨床医学に役立つ用語が豊富に収録されている。医学系辞書が複数冊収録されている。この電子辞書も医学以外にも英語系・国語系・英会話などの辞書を収録している。


;アメリカ合衆国
==== 専用装置型電子辞書メーカー ====
* [[:en:Franklin Electronic Publishers|Franklin Electronic Publishers]](1981年創業の老舗メーカー)
国産メーカーとしては、[[カシオ計算機]]([[エクスワード]]ブランド)、[[シャープ]]([[Papyrus (電子辞書)|Papyrus]]ブランド、[[Brain (電子辞書)|Brain]]ブランド)、[[キヤノン]](wordtankブランド)などから発売されている。[[ソニー]]はシェアの低落にともない、2006年7月に電子辞書事業から撤退した<ref>{{Cite news |title=ソニー、電子辞書から撤退 |newspaper=ITmediaニュース |date=2006-07-27 |author=岡田有花 |url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/27/news087.html |accessdate=2015-11-25}}</ref>。[[セイコーインスツル]]は2015年3月末に撤退したが<ref>{{Cite web |url=http://www.sii.co.jp/jp/news/2014/10/07/11409/ |title=電子辞書ビジネスからの撤退について |publisher=セイコーインスツル株式会社 |date=2014-10-07 |accessdate=2015-11-25 }}</ref>、2016年にiOS上の辞書アプリ市場に参入したことを発表した<ref>[http://www.seiko-sol.co.jp/archives/16341/ 大学生向け・高校生向けの電子辞書アプリとコンテンツのダウンロード販売を開始]</ref>。
* [[:en:Ectaco|Ectaco]](多言語対応の翻訳者指向のメーカー)


;中国
海外メーカーとしては、[[:zh:好易通科技|Besta]]、[[:en:Franklin Electronic Publishers|Franklin Electronic Publishers]]、[[:en:Ectaco|Ectaco]]などから販売されている。ただし、日本国内の家電販売店で海外メーカー製の電子辞書を展示しているケースは稀である。
* [[:zh:步步高电子|歩歩高]](中・低価格帯電子辞書メーカー)
* [[:zh:文曲星 (品牌)|文曲星]](中・低価格帯電子辞書メーカー)
* 名人(中・低価格帯電子辞書メーカー)
* 快易典(中・低価格帯電子辞書メーカー)


;香港
=== オンライン型 ===
* [[:zh:權智(國際)|GSL (Group Sense Ltd.)]](「快譯通 (Instant-Dict)」ブランド)
インターネット上の[[サーバ]]などに格納された辞書データに対して[[スマートフォン]]、[[iPhone]]、[[タブレット (コンピュータ)|タブレット]]、[[パーソナルコンピュータ|PC]]などの端末から[[ウェブブラウザ]]経由でアクセスして閲覧するシステム。無料版と有料版とがある。有料版の形態としては、フルコンテンツ版に対して課金しスタンダード版・リミテッド版を無料で公開している場合や、紙媒体にオンライン型辞書のアクセスキーを付与している場合などがある。紙媒体辞書にオンライン型辞書のキーを付録として付与しているものとしては、[[ロングマン現代英英辞典]]第6版が例として挙げられる。オンライン辞書のサービス形態としては、辞書の紙媒体の出版社が直接辞書検索サービスを提供している場合と、辞書検索サービス専門会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供している場合がある。以下の分類表では、サービス提供の形態について前者を垂直統合型、後者を水平分業型とする。

{| class="wikitable"
;台湾
|-
* [[:zh:好易通科技|Besta]](台湾向けブランド「[[:zh:無敵科技|無敵]]」と中国向けブランド「[[:zh:好易通科技|好易通]]」で知られる)
! サイト名 !! width="10%"|サービス提供形態 !! 備考

|-
;韓国
| [[ウィクショナリー]] || || [[GNU Free Documentation License|フリーな]]オンライン型電子辞書。
* [[アイリバー|iRiver]](多機能・高価格帯電子辞書メーカー)
|-

| [[Weblio]] || 水平分業 || 大部分が無料で利用可能。課金サービスもある。
日本勢の海外展開としては、カシオ計算機が中国、韓国、アメリカ合衆国、ドイツ、フランスなど、シャープがイギリス、イタリア、ドイツ、中国、韓国など、セイコーインスツル (SII) が英国では「SEIKO」ブランド、米国では「Franklin」ブランドで、それぞれ製品を販売している<ref name="ALL74-78"/>。
|-

| [[goo辞書]] || 水平分業 ||
== オンライン辞書 ==
|-
{{See also|インターネット百科事典|オンライン辞書の一覧|オンライン百科事典の一覧}}
| [[コトバンク]] || 水平分業 || 朝日新聞社が主体となって形成。
[[インターネット]]上の[[サーバ]]などに格納された辞書データに対して、[[スマートフォン]]や[[タブレット (コンピュータ)|タブレット]]端末、[[パーソナルコンピュータ|PC]]などから、[[ウェブブラウザ]]経由でアクセスして閲覧するシステムが代表的である。オンライン辞書サイトには、無料版と有料版とがある。有料版の形態としては、フルコンテンツ版に対して利用料を課す代わりに、利用制限のある版を無料で公開している例や、オンライン版のアクセス権を付与したキーを、紙媒体の辞書の付録として頒布している例などがある。オンライン版のアクセスキーを付録としている例には、[[ロングマン現代英英辞典]]6訂版が挙げられる<ref name="LDOCE6">{{Cite web|url=http://www.pearson.co.jp/catalog/product.php?item=140000&cat=009|title=LDOCE6 Longman Dictionary of Contemporary English 6th Edition|publisher=[[ピアソン (企業)|Pearson]]|accessdate=2017-11-29}}</ref>。
|-

| [[ジャパンナレッジ]] || 水平分業<br/>垂直統合 || 有料会員制サイト。
=== 沿革 ===
|-
[[1999年]](平成11年)2月22日に[[NTTドコモ]]が[[iモード]]のサービスを開始すると、[[携帯電話]]で[[携帯電話IP接続サービス|IP接続]]が可能になった<ref name="WEBDIC">{{harvnb|長谷川秀記|2016|pp=591&ndash;592}}</ref>。このiモードの公式サイトにて、[[三省堂]]が月額50円の利用料で国語辞典『[[大辞林]]』など3点を提供し始めた<ref name="WEBDIC"/>のを筆頭に、会員制の携帯辞書サイトという新しい市場が生まれた<ref name="WEBDIC"/>。[[2001年]](平成13年)、[[World Wide Web]]上では、3月に三省堂の「Web Dictionary」(有料会員制)が、4月に[[小学館]]グループ([[ネットアドバンス]])の「[[ジャパンナレッジ]]」(同年6月に有料化)が、5月にユーザー参加型のフリー百科事典[[ウィキペディア日本語版]]が、それぞれサービスを開始した<ref name="WEBDIC"/>。[[ポータルサイト]]が運営する無料辞書検索サイトの先駆けとしては、[[goo辞書]](1999年8月開設)と[[Yahoo!辞書]](2000年7月開設)があり<ref name="WEBDIC"/>、多くの日本語ポータルサイトがそれらに続いた。インターネットで提供される有料辞書サービスの多くは、無料のオンライン辞書・事典の台頭で苦戦しているが、そのうち「ジャパンナレッジ」は[[企業間取引|B2B]]市場の開拓に成功し、安定した運営を続けている<ref name="WEBDIC"/>。[[朝日新聞社]]と複数の出版社が集まって開設した[[コトバンク]]は、[[検索連動型広告]](キーワード広告)を収益源とする運営システムを採用し、消費者向けの無料辞書サービスを実現している<ref name="WEBDIC"/>。<!--
| [[Yahoo!辞書]] || 水平分業 || コトバンクと技術提携している。
|-
| [http://dictionary.reference.com/ Dictionary.com] || 水平分業 || 英英(Random House Dictionary)、英英(Collins English Dictionary - Complete & Unabridged)、語源(Etymology Dictionary)、英英シソーラス(Roget's 21st Century Thesaurus, Third Edition) などが検索可能。
|-
| [http://dictionary.reverso.net/english-definition/ Reverso] || 水平分業 || 英英(English Collins Dictionary)、英英シソーラス、学習者英英(Cobuild Collins Dictionary) などが検索可能。
|-
| [http://dictionary.cambridge.org/ Cambridge Free English Dictionary and Thesaurus] || 垂直統合 || 英和/英英(イギリス)/英英(アメリカ)/ビジネス英英/学習者英英 などが検索可能。
|-
| [http://www.oxforddictionaries.com/ Oxford Dictionaries] || 垂直統合 || 英英/類語英英辞書。
|-
|[http://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ Oxford Learner's Dictionaries]
|垂直統合
|学習者英英辞書。購入者専用サイトで[[オックスフォード現代英英辞典]] 第9版付属のアクセスコードを入力すると、DVD-ROMの機能を利用することができる <ref>[http://www.obunsha.co.jp/01/075299 オックスフォード現代英英辞典 第9版 旺文社]</ref>。
|-
| [http://www.ldoceonline.com/ Longman English Dictionary Online] || 垂直統合 || 英英辞書。
|-
| [http://www.collinsdictionary.com/ Collins English Dictionary] || 垂直統合 || 英英(イギリス)/英英(アメリカ)辞書。主に以下の検索機能を提供。
* 英英辞書(Collins English Dictionary) と学習者英英(COBUILD learner's dictionary)の同時検索機能
* 類語英英辞典
* 英独、英伊辞書など[[マルチリンガル辞書]]
|-
| [http://www.merriam-webster.com/ Dictionary and Thesaurus - Merriam-Webster Online] || 垂直統合 || 英英(アメリカ)辞書、類語英英辞書。姉妹サイトに学習者英英辞書([http://www.learnersdictionary.com/ Merriam-Webster's Learner's Dictionary])、ネイティブの小中学生向け英英辞書([http://www.wordcentral.com/ Merriam-Webster's Word Central])などが提供されている。
|-
| [http://www.macmillandictionary.com/ Macmillan Dictionary and Thesaurus] || 垂直統合 || 英英辞書、類語英英辞書。類語辞書は検索結果として関連類語の定義を同時に表示する点が特徴。
|}


=== アプリ型 ===
=== 代表的な辞書サイト ===
オンライン辞書のサービス形態としては、辞書の紙媒体の出版社が直接辞書検索サービスを提供している場合と、辞書検索サービス専門会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供している場合がある。以下の分類表では、サービス提供の形態について前者を垂直統合型、後者を水平分業型と呼ぶことにする。
[[スマートフォン]]、[[iPhone]]、[[タブレット (コンピュータ)|タブレット]]、[[パーソナルコンピュータ|PC]]などの専用[[アプリ]](アプリケーション)としてインストールし使用するもの。ダウンロード済みの辞書データを検索するオフライン型と検索用インターフェイスのみを提供しサーバーに格納された辞書データを検索するオンライン型、用語の定義のみをアプリとして各デバイスに保存し、音声はオンラインのサーバーから取得する複合型に分類される。辞書の紙媒体の出版社が直接辞書検索アプリを提供している場合と、辞書アプリ専門会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供している場合など形態は様々である。通信機能を持つスマートフォン、iPhone、タブレットは、携帯性に優れている上、オンライン型電子辞書アプリであっても電波圏内であれば使用できることから広く使用されるようになった。スマートフォン、iPhone、タブレット用アプリでは、広告付きの無料のものや、1000円以下の安価なもの、5000円程度の高価なものなど多様なものが提供されている。PC用としては、CD-ROM、[[DVD-ROM]]などのメディア経由で媒体に辞書データと閲覧ソフトをアプリケーションとしてインストールする場合がある。CD-ROM、DVD-ROMなどの辞書メディアは、単体でソフトウェアとして販売されている場合と、紙媒体の辞典とセットで販売されている場合がある。英英辞書の[[オックスフォード現代英英辞典]]、[[ロングマン現代英英辞典]]5訂版などはDVD-ROM付属版が販売されている。


* 三省堂『Web Dictionary』『Dual Dictionary』
=== 電子書籍端末付属型 ===
* 研究社『KOD』
[[Amazon Kindle]]や[[コボ|楽天Kobo]]などの電子書籍端末では、電子辞書機能が付属しており、電子書籍中の文字列を選択することで、選択箇所の用語の定義を確認することができる。Amazon Kindleでは、「大辞泉」「プログレッシブ英和中辞典」「New Oxford American Dictionary([[新オックスフォード米語辞典]])」「Oxford Dictionary of English(オックスフォード英英辞典)」のほか、他言語の辞書も付属していることに加え、「[[英辞郎]]」、「Merriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary(メリアム・ウェブスター英英辞典)」など他の辞書を購入して追加することが可能である。
* ネットアドバンス『[[ジャパンナレッジ]]』
* [[Yahoo!辞書]]
* [[コトバンク]]
* [[goo辞書]]
* [[Weblio]]
* [[JLogos]]
* [[ウィクショナリー]]-->

== 辞書アプリ ==
[[スマートフォン]]や[[タブレット (コンピュータ)|タブレット]]端末、[[パーソナルコンピュータ|PC]]などに[[アプリケーションソフトウェア]](アプリ)の形でインストールして利用する電子辞書が辞書アプリである。辞書アプリは、辞書データの格納場所の差異により、完全な辞書データを含んだアプリをダウンロードして利用するオフライン型アプリ、検索・閲覧用[[ユーザインタフェース|UI]]のみを[[クライアント (コンピュータ)|クライアント]](アプリ)側で提供した上で、インターネットに接続して[[サーバ|サーバー]]に格納された辞書データを参照するオンライン型アプリ、最低限の語の定義データのみをクライアント機器に保存し、音声などの付加的なデータはインターネット上のサーバーから取得する複合型アプリの3種類に大別される。辞書の紙媒体の出版社が直々に辞書アプリを提供する例や、辞書アプリの開発を専門とする会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供する例など、実際のサービスの形態はさまざまである。

[[2008年]](平成20年)に[[iPhone]]が日本で発売開始されて以来、スマートフォンが普及するにつれ、電子辞書の主要形態も会員制の辞書検索サイトから辞書アプリへと変化していった<ref name="WEBDIC"/>。携帯性に優れるスマートフォンやタブレット端末は通信機能を持つため、オンライン型アプリであっても電波の届く圏内にいる限りは、どこでも辞書を利用できる利便性の良さから、広く使用されるようになった{{要出典|date=2017年11月}}。

[[iOS (アップル)|iOS]]端末と[[Android]]端末用の辞書アプリでは、広告付きの無料のものから5000円以上の高級なものまで、多様な辞書アプリが開発・提供されている<ref>{{Cite web |url=https://itunes.apple.com/jp/genre/ios-%E8%BE%9E%E6%9B%B8-%E8%BE%9E%E5%85%B8-%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96/id6006?mt=8 |title=iTunes プレビュー App Store > 辞書/辞典/その他 |publisher=[[アップル (企業)|Apple]] |accessdate=2017-11-29 }}</ref><ref>{{Cite web |url=https://play.google.com/store/apps/category/BOOKS_AND_REFERENCE |title=Google Play アプリ > 書籍&参考書 |publisher=[[Google]] |accessdate=2017-11-29 }}</ref>。PC用の辞書アプリは、[[CD-ROM]]や[[DVD-ROM]]経由で、または[[Microsoftストア]] (Windows) や[[Mac App Store]] (mac OS) などのオンラインのアプリストアからダウンロードして<ref>{{Cite web|url=https://www.microsoft.com/ja-jp/store/most-popular/apps/pc?target=apps,,books%20%26%20reference|title=Microsoft Store Windowsアプリ > 書籍|publisher=[[マイクロソフト|Microsoft]]|accessdate=2017-11-29}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://itunes.apple.com/jp/genre/mac-%E8%BE%9E%E6%9B%B8-%E8%BE%9E%E5%85%B8-%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96/id12015?mt=12|title=Mac App Store プレビュー Mac App Store > 辞書/辞典/その他|publisher=[[アップル (企業)|Apple]]|accessdate=2017-11-29}}</ref>、PCに内蔵された記憶媒体([[ハードディスクドライブ|HDD]]や[[ソリッドステートドライブ|SSD]])に辞書アプリをインストールして利用する形態がある。CD-ROMやDVD-ROMに辞書を収録した記録メディアは、単独でソフトウェアとして販売されている場合もあれば、紙媒体の辞書とセットで販売されている場合もある。英英辞書の[[オックスフォード現代英英辞典]] (OALD) は第8版(2010年)<!-- CD-ROMの付属は第6版から -->と第9版(2015年)、[[ロングマン現代英英辞典]] (LDOCE) は5訂版(2009年)で、各々DVD-ROMが付属する書籍版が販売されている。最近では、LDOCE 6訂版(2014年)のように、オンライン版のアクセスキーが付属するものもある<ref name="LDOCE6"/>。

辞書アプリのデベロッパーとしては、[[イースト (ソフトウェア会社)|イースト]]、[[物書堂]]、[[ロゴヴィスタ]]などが知られている。

== 電子書籍端末の辞書機能 ==
[[Amazon Kindle]]や[[コボ|楽天Kobo]]などの[[電子書籍]]端末には辞書機能が付属しており、電子書籍の本文中の文字列を選択することで、選択した箇所の語の定義を調べることができる。Amazon Kindleには、『[[大辞泉]]』『[[プログレッシブ (辞典)|プログレッシブ英和中辞典]]』『''[[新オックスフォード米語辞典|New Oxford American Dictionary]]''』、『''[[オックスフォード英英辞典|Oxford Dictionary of English]]''』のほか、他言語の辞書も付属していることに加え、『[[英辞郎]]』、『''Merriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary''』など、他の辞書を購入して追加することが可能である。


== 脚注・出典 ==
== 脚注・出典 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite journal |和書 |author=阿部圭子 |title=電子辞書の使用実態と普及の要因 |date=2007-07-10 |publisher=明治書院 |journal=日本語学 |volume=26 |issue=8 |issn=0288-0822 |naid=40015548383 |pages=4-17 }}
* {{Cite journal |和書 |author=阿部圭子 |title=電子辞書の使用実態と普及の要因 |year=2007 |publisher=明治書院 |journal=日本語学 |volume=26 |issue=8 |issn=0288-0822 |naid=40015548383 |pages=4-17 |ref=harv }}
* {{Cite journal |和書 |author=横山晶一 |title=国語辞書の電子化の流れ―ネット辞書・パソコン辞書・電子辞書― |date=2007-07-10 |publisher=明治書院 |journal=日本語学 |volume=26 |issue=8 |issn=0288-0822 |naid=40015548386 |pages=38-46 }}
* {{Cite journal |和書 |author=横山晶一 |title=国語辞書の電子化の流れ―ネット辞書・パソコン辞書・電子辞書― |year=2007 |publisher=明治書院 |journal=日本語学 |volume=26 |issue=8 |issn=0288-0822 |naid=40015548386 |pages=38-46 |ref=harv }}
* {{Cite book |和書 |author=荻野綱男 |author2=田野村忠温 |year=2011 |title=講座 ITと日本語研究 1 コンピュータ利用の基礎知識 |publisher=明治書院 |isbn=978-4-625-43438-9 }}
* {{Cite book |和書 |author1=荻野綱男 |author2=田野村忠温 |year=2011 |title=講座 ITと日本語研究 1 コンピュータ利用の基礎知識 |publisher=明治書院 |isbn=978-4-625-43438-9 |ref=harv }}
* {{Cite book |和書 |author=日本電子出版協会レファレンス委員会 |year=2016 |title=電子辞書のすべて |publisher=インプレスR&D |isbn=978-4-8020-9066-7 |ref=harv }}
* {{Cite journal |和書 |author=長谷川秀記 |title=日本の電子出版30年の軌跡: 電子辞書・電子書籍の黎明期から現在まで |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/9/59_587/_pdf |year=2016 |publisher=科学技術振興機構 |journal=情報管理 |volume=59 |issue=9 |issn=0021-7298 |naid=130005170320 |pages=587-598 |format=PDF |ref=harv }}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Electronic dictionaries}}
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* [[電子出版]]
* [[電子書籍]]
* [[電子手帳]]
* [[電子手帳]]
* [[電子ブックリーダー]]
* [[情報機器]]
* [[インターネット百科事典]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.jepa.or.jp/ebookpedia/201507_2512/ 電子辞書 - いまさら聞けない電子出版のABC 〜ebookpedia〜](JEPA=日本電子出版協会)
* [http://www.dims.ne.jp/timelyresearch/enq/060328_2/ ネットリサーチのDIMSDRIVE『電子辞書』に関するアンケート]
* [https://www.slideshare.net/JEPAslide/jepa30 JEPA30周年:私の電子辞書【映像あり】]
* [http://sekky.tripod.com/edichist.html 電子辞書の歴史とこれから]([http://sekky.tripod.com/jisho.html 関山健治 - 沖縄大学])
* [http://sekky.tripod.com/edichist.html 電子辞書の歴史とこれから]([http://sekky.tripod.com/jisho.html 関山健治 - 沖縄大学])


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2017年11月30日 (木) 15:00時点における版

電子辞書(でんしじしょ)とは、CD-ROMフラッシュメモリなどの記憶媒体ネットワーク上に保存されている辞書事典の内容を記録したデータを、コンピュータ携帯端末によって読み出し、検索・表示・再生する電子機器またはソフトウェアの総称[1]

概要

シャープ製の電子辞書 (PW-C6000)

電子辞書という語が指し示す範囲は広範にわたる。具体的には、専用の電子機器の内蔵ICメモリに辞書データを収録した携帯型の電子辞書専用機(IC電子辞書)、インターネット上の辞書検索サイトに代表されるオンライン辞書、パソコンやスマートフォン・タブレットなどの汎用OSを搭載したコンピュータにインストールして利用する辞書アプリ、パソコンなどの光ディスクドライブで読み込んで利用するCD-ROM辞書(DVD-ROM辞書)、電子書籍端末に付属する辞書機能などがある。さらに、かな漢字変換システムに組み込まれた語義表示機能などもこれに含められ得る。日本で一般に電子辞書といえば、最初に挙げた携帯型の電子辞書専用機(狭義の電子辞書)を指すことが多い[2]

特徴

紙の辞書と比較した場合の電子辞書の特徴としては、

  • 項目数の多い辞書でも、分厚い紙の辞書に比べて、高速な検索ができる[3][4]
  • 全文検索・部分一致検索・前方一致検索・後方一致検索など、多様な検索方法が用意されている[3][5]。特に、共通規格で記録された辞書ファイルに対しては、一括で検索をかけることができる(これは俗に「串刺し検索」と呼ばれる)[6]
  • 書籍にして数百冊分の大量の情報を小さな記憶媒体に集約できるため、収納・保存に場所を取らない。また、オンライン辞書の場合、辞書データはネットワーク上に保持されるため、辞書データを収めるための記憶容量は無限に近い[3]
  • 関連項目などの別項目へも、ハイパーリンクの要領で、項目間、さらには辞書間を簡単に移動できる(いわゆる「ジャンプ機能」)[3]

などがある。

規格・形式

市販されている電子辞書・百科事典ソフトウェアは数多あるが、電子化された辞書データのファイル形式やディレクトリ構造など、そのフォーマット(形式や規格)については、複数のメーカーが共同で策定した共通規格 (EBやEPWINGなど) のほか、メーカーごとの独自規格で作成されたソフトウェア製品も相当数存在する[7]

主な電子辞書ソフトウェアのファイルフォーマットには、

などがある。電子ブックを除けば、多くがMicrosoft Windowsなどのパソコン向けの規格である。また、規格が策定されていても、その仕様が非公開となる場合も少なくない。これは、著作権保護の観点のほかに、ベンダーロックインを狙ったものであるとも考えられる。

CD-ROM辞書

開発時の歴史的背景としては、まず1980年(昭和55年)にソニーフィリップスが共同で策定した規格、CD-DA(音楽CD)用に開発された記憶媒体であるコンパクトディスク (CD) [9]を、コンピュータの外部記憶媒体として利用するCD-ROMの仕様(イエローブック)が1983年(昭和58年)に提案されたことがあった[10]。CD-ROMは、一枚当たりの容量が約600MBという、当時としては非常に大きな記憶容量を持ち、音楽CDと同じ生産ラインが使えるために安価に量産が可能であるという2つの利点があった。さらに、致命的な欠点とされていた「書き換え不可能」という特性を逆に利用して、データ集や出版物、それも大きな記憶容量を十分に生かせる、辞書や百科事典の記憶媒体として期待されていた[9][10]

そして、1985年(昭和60年)に日本で最初のCD-ROM辞書『最新科学技術用語辞典』が三修社から発売された[9][10][11]。その翌年の1986年(昭和61年)に、当時の富士通のワープロ専用機OASYS向けの『広辞苑第三版CD-ROM版』の試作が発表され、翌々年の1987年(昭和62年)に発売された[9][10]。この『広辞苑第三版CD-ROM版』は、富士通・ソニー・岩波書店大日本印刷により共同開発され[9]、WING規約と呼ばれたその辞書形式は他社にも無料で提供された[10]。その結果、1988年(昭和63年)の三省堂『模範六法昭和62年版CD-ROM版』と自由国民社現代用語の基礎知識CD-ROM版』の発売に続いて、多くの辞書がこの形式で制作され、発売された[9][10]

その後、WING規約はEPWINGと名称を変え、出版社、印刷会社、ソフトウェアメーカー、ハードウェアメーカーが集まって1991年(平成3年)に設立された団体「EPWINGコンソーシアム」による普及活動もあって、EPWINGは日本のパソコンで動作する電子辞書形式のデファクトスタンダードとなり、ついに1997年(平成9年)には「日本語電子出版検索データ構造」 (JIS X 4081) という名称でJIS規格化された[9][10]。EPWING形式の電子辞書は2012年(平成24年)10月30日をもって販売を終了し、以降は後継規格であるONESWINGに移行している[12]

WING規約から派生したもう一つの電子辞書フォーマットに、ソニー独自の電子ブック (EB) がある[13]。富士通主導でEPWINGコンソーシアムが設立されたのと同じ年に、ソニーが中心となって、同様の団体である「電子ブックコミッティー」が組織され、電子ブックの普及活動が展開された[13]。電子ブックは通常のCD-ROMとは違い、8cm CD-ROMをキャディーと呼ばれるケースに入れて、専用のハードウェア「電子ブックプレーヤー」で利用する形態をとる[13]。最初の電子ブックプレーヤーは1990年(平成2年)にソニーから発売された「DATA Discman DD-1」で、後に三洋電機松下電器産業からもプレーヤーが発売された[13]。当初は、キャディーを取り外した状態のCD-ROMを直接パソコンなどで利用することは禁止されていたが、1994年(平成6年)に解禁され、フリーウェアの辞書検索ソフト(電子ブックビューアー)の登場も手伝って、パソコン用の電子辞書としても普及した[13]。電子ブックプレーヤーの販売は2000年(平成12年)に終了した[14]

以上述べたように、日本のCD-ROM辞書の標準形式はEPWINGと電子ブックであったが、そのどちらでもない独自規格のCD-ROM辞書も各社から開発・販売された[13]。中でも代表的なのは、平凡社の『世界大百科事典』(1992年)、マイクロソフト社の『Microsoft Bookshelf』(1997年)、小学館の『スーパー・ニッポニカ』(1998年)である[13]

IC電子辞書

CD-ROM辞書の発売に前後して、電子辞書の記憶媒体はCD-ROMからICメモリに移行していき[15]、記憶媒体と検索・表示装置が一体となったIC電子辞書が登場する。

沿革

第一世代(1979年 - 1985年): 電卓型の電子単語帳

日本国内市場では、シャープ1979年(昭和54年)11月に発売したポケット電訳機 (IQ-3000) が最初で[16][17][18][19]、当時としてはかなり高価な39,800円だった[要出典]。これは孫正義が学生時代に発明した自動翻訳機が元になっているともいわれる[20]。IQ-3000は、英和約2800語、和英約5000語を収録していた[19]が、技術的には電卓技術を応用したもので[21]、その16桁×1行のモノクロ液晶画面に表示できたのはアルファベットとカタカナのみだった[18][22]。内容も辞書というより単語集のようなものであり、単語帳機能付き電卓とでも呼ぶべき製品だった[18][22]。当時はICメモリと液晶ディスプレイの製造コストが高かったために、安価な小容量の搭載メモリと小型の液晶画面が採用されたことで[21]、辞書の収録語数は頭打ちになり、液晶画面の表示能力にも限界があった[18]

1980年代に入ると、1980年(昭和55年)4月にキヤノンが電子英単語「LA-1000」(英和1320語と日本語訳2180語を収録)を発売、1981年(昭和56年)10月にはカシオ計算機も電子英和辞典「TR-2000」(英単語・熟語を約2000語収録)を発売し[23]、市場に参入した[22]。しかし、一冊の辞書を完全収録するには、ICメモリの大容量化と低価格化を待たなければならなかった[15]

第二世代(1986年 - 1989年): 収録語数の増加と画面表示の改良

1980年代後半には、1987年(昭和62年)3月に三洋電機が日本語を漢字仮名まじりで表示できる[22]IC辞書「電字林 PD-1」(英和約3万5000語を収録)を発売、同年7月にはセイコー電子工業がカード英和「DF-310」(英和約6000語と訳語約1万2000語を収録)を発売して[24]、電子辞書市場に参入した。この頃には、収録語数だけは紙の辞書と同程度(数万語単位)にまで追いついた[18]が、依然として単語帳の域を出ないままだった。

第三世代(1990年 - 1995年): フルコンテンツ辞書の登場

CD-ROM辞書の開発から派生した携帯型の電子辞書として、ソニーから電子ブックプレーヤーの「DATA Discman DD-1」が1990年(平成2年)7月に発売された(詳細はCD-ROM辞書参照)。そして、日本で最初の本格的なIC電子辞書は、研究社とセイコー電子工業が1992年(平成4年)1月に発売したIC辞書「TR-700」で、研究社の『新英和・和英中辞典』の二冊の文字情報をすべて収録し、フルコンテンツ辞書と呼ばれた[15][18][24]。これ以降、電子辞書の主流はIC電子辞書へと移り[15]、そのIC辞書も主に使い勝手や形状の差から、フルコンテンツ型の本格派電子辞書と、スタンダード型と呼ばれる安価な簡易型電子辞書に二極化していく[18]

第四世代(1996年 - 1999年): フルコンテンツ型の市場拡大

ICメモリと液晶ディスプレイの低価格化が進み、大型の液晶画面と複数の辞書を収録したフルコンテンツ型の電子辞書が登場し、日本国内のIC電子辞書市場が大きく成長し始めた[18]。また、ソニーのDD-ICシリーズ[25]のような、名刺ケース並みの大きさのフルコンテンツ辞書も登場した[18]。電子辞書の需要が増し、買い求める客層も拡大したが、この頃の電子辞書市場で主流を占めていたのは安価なスタンダード型だった[18]

第五世代(2000年 - 2002年): 収録辞書の拡充と品揃えの多様化

半導体価格の下落が加速したことと、電子化済みの辞書データが出版社から提供されることも増えたことから、一台に多くの辞書データを収録することが可能となり、何冊もの辞書を収録した製品が登場した[18]。以後、各社は競って収録辞書数を増やしていくようになる[18]。また、高校生から高齢者、女性まで電子辞書の利用者層が多様化していくのに応じて、それぞれの購買層に合わせた製品開発が行われるようになった[18]。これによって、様々なフルコンテンツ型の電子辞書が発売されるようになり、電子辞書市場はますます拡大した[18]。それとともに、市場の主流もスタンダード型からフルコンテンツ型へと移行していった[18]

第六世代(2003年 - 2006年): 辞書の多機能化

他社製品と差別化を図るため、各社とも特色ある機能を持たせた製品が開発されるようになる[18]。具体的には、音声発音機能、拡張メモリーカードによるコンテンツの追加機能、カラー液晶の搭載(業界初は2002年発売のシャープ「PW-C5000」)、手書き入力システムの採用などである[18]。収録されるコンテンツも、専門辞書、大型辞書、各国語辞書、百科事典などの辞書・事典にとどまらず、学習書や趣味・実用書なども盛んに収録された[18]。また、日本国内だけでなく、海外市場を見据えた製品開発もみられるようになった一方で、スタンダード型の市場は衰退していった[18]

第七世代(2006年 - ): 単なる辞書を超えた電子辞書

2006年(平成18年)頃から2010年(平成22年)頃にかけてはモノクロ液晶からカラー液晶に移る過渡期だったと考えられる[18]。そのほか、液晶ディスプレイの高精細化、手書き入力パッドやタッチパネル液晶の導入、多言語発音機能とテキスト読み上げ (TTS) 機能の搭載、動画コンテンツの収録、英語学習支援機能の搭載、ワンセグ機能の搭載など、多彩な特色を持つ製品が次々に開発された[18]。しかしながら、スマートフォンの登場と辞書アプリの普及、およびインターネットの無料辞書サイトの台頭などにより、2008年(平成20年)以降は販売台数が右肩下がりである[15]。一方で、そのような苦境にあっても、高校生・大学生向けの学習用電子辞書の需要は健在なようである[15][26]

現状

現状では、専用の小型筐体にQWERTY配列の物理キーボード液晶ディスプレイを搭載し、本体に内蔵されたROMに辞書データを収録した、携帯型のIC電子辞書(電子辞書専用機)が主流である。

2017年現在は、辞書コンテンツを200冊収録した製品もあり、文字情報だけでなく、音声、写真、図表などのデータを収録したものも一般的になっている。画面は、廉価版モデルや発売年が古いものではモノクロ液晶のものも見られるが、バックライト付きのカラー液晶を搭載したモデルが主流であり、タッチパネル上にタッチペンで手書き入力が可能な機種も少なくない。イヤホンスピーカーから、あらかじめ収録された外国語のネイティブ音声が聞けるものや、音声合成によるテキスト読み上げ機能 (TTS) を搭載した機種もある。専用のメモリーカードスロットやRAMを搭載した機種は、別売りの追加データカードなどを使用して、辞書コンテンツの入れ替えや追加が可能である。電源方式には、乾電池式、充電池式、USB給電式などがある。

代表的なメーカー

日本国内

ソニーは市場シェアの低迷や競争力の低下に伴い、2006年(平成18年)に電子辞書事業から撤退した[31]。セイコーインスツル (SII) も、2015年(平成27年)3月末に電子辞書事業から一旦撤退したが[32]2016年(平成28年)4月にiOS向けの辞書アプリ市場 (App Store) に参入したことを発表した[33]。また、2017年現在、キヤノンはスタンダード型電子辞書の販売を続けているが、2012年(平成24年)以降は新製品の発表がない。

電器店に陳列された電子辞書(2008年)

2016年における日本の有力家電量販店の販売実績を基に算定されたメーカー別数量シェアは以下の通り[34]。日本における電子辞書市場は寡占市場の一つである[35]

順位 メーカー名 年間シェア
1 カシオ計算機 59.3%
2 シャープ 21.5%
3 キヤノン 19.2%
市場規模

日本市場のIC辞書は、出荷台数と出荷額が共に2007年(平成19年)の281万台 / 463億円をピークに下がり続けており、2016年(平成28年)には最盛期の半分以下(112万台 / 195億円)となっている[36]。市場規模が縮小した背景には、少子化や、スマートフォンの普及と辞書アプリの充実があると考えられている。成熟した日本のIC電子辞書市場は、今後も一定の需要が見込まれている、小・中・高校生向け端末の開発にシフトしつつある[37]

海外

台湾の電子辞書 Besta CD-868

日本国外の主な電子辞書メーカーを以下に挙げる[38]

アメリカ合衆国
中国
  • 歩歩高(中・低価格帯電子辞書メーカー)
  • 文曲星(中・低価格帯電子辞書メーカー)
  • 名人(中・低価格帯電子辞書メーカー)
  • 快易典(中・低価格帯電子辞書メーカー)
香港
台湾
  • Besta(台湾向けブランド「無敵」と中国向けブランド「好易通」で知られる)
韓国
  • iRiver(多機能・高価格帯電子辞書メーカー)

日本勢の海外展開としては、カシオ計算機が中国、韓国、アメリカ合衆国、ドイツ、フランスなど、シャープがイギリス、イタリア、ドイツ、中国、韓国など、セイコーインスツル (SII) が英国では「SEIKO」ブランド、米国では「Franklin」ブランドで、それぞれ製品を販売している[38]

オンライン辞書

インターネット上のサーバなどに格納された辞書データに対して、スマートフォンタブレット端末、PCなどから、ウェブブラウザ経由でアクセスして閲覧するシステムが代表的である。オンライン辞書サイトには、無料版と有料版とがある。有料版の形態としては、フルコンテンツ版に対して利用料を課す代わりに、利用制限のある版を無料で公開している例や、オンライン版のアクセス権を付与したキーを、紙媒体の辞書の付録として頒布している例などがある。オンライン版のアクセスキーを付録としている例には、ロングマン現代英英辞典6訂版が挙げられる[39]

沿革

1999年(平成11年)2月22日にNTTドコモiモードのサービスを開始すると、携帯電話IP接続が可能になった[40]。このiモードの公式サイトにて、三省堂が月額50円の利用料で国語辞典『大辞林』など3点を提供し始めた[40]のを筆頭に、会員制の携帯辞書サイトという新しい市場が生まれた[40]2001年(平成13年)、World Wide Web上では、3月に三省堂の「Web Dictionary」(有料会員制)が、4月に小学館グループ(ネットアドバンス)の「ジャパンナレッジ」(同年6月に有料化)が、5月にユーザー参加型のフリー百科事典ウィキペディア日本語版が、それぞれサービスを開始した[40]ポータルサイトが運営する無料辞書検索サイトの先駆けとしては、goo辞書(1999年8月開設)とYahoo!辞書(2000年7月開設)があり[40]、多くの日本語ポータルサイトがそれらに続いた。インターネットで提供される有料辞書サービスの多くは、無料のオンライン辞書・事典の台頭で苦戦しているが、そのうち「ジャパンナレッジ」はB2B市場の開拓に成功し、安定した運営を続けている[40]朝日新聞社と複数の出版社が集まって開設したコトバンクは、検索連動型広告(キーワード広告)を収益源とする運営システムを採用し、消費者向けの無料辞書サービスを実現している[40]

辞書アプリ

スマートフォンタブレット端末、PCなどにアプリケーションソフトウェア(アプリ)の形でインストールして利用する電子辞書が辞書アプリである。辞書アプリは、辞書データの格納場所の差異により、完全な辞書データを含んだアプリをダウンロードして利用するオフライン型アプリ、検索・閲覧用UIのみをクライアント(アプリ)側で提供した上で、インターネットに接続してサーバーに格納された辞書データを参照するオンライン型アプリ、最低限の語の定義データのみをクライアント機器に保存し、音声などの付加的なデータはインターネット上のサーバーから取得する複合型アプリの3種類に大別される。辞書の紙媒体の出版社が直々に辞書アプリを提供する例や、辞書アプリの開発を専門とする会社が複数の辞書データを統合してサービスを提供する例など、実際のサービスの形態はさまざまである。

2008年(平成20年)にiPhoneが日本で発売開始されて以来、スマートフォンが普及するにつれ、電子辞書の主要形態も会員制の辞書検索サイトから辞書アプリへと変化していった[40]。携帯性に優れるスマートフォンやタブレット端末は通信機能を持つため、オンライン型アプリであっても電波の届く圏内にいる限りは、どこでも辞書を利用できる利便性の良さから、広く使用されるようになった[要出典]

iOS端末とAndroid端末用の辞書アプリでは、広告付きの無料のものから5000円以上の高級なものまで、多様な辞書アプリが開発・提供されている[41][42]。PC用の辞書アプリは、CD-ROMDVD-ROM経由で、またはMicrosoftストア (Windows) やMac App Store (mac OS) などのオンラインのアプリストアからダウンロードして[43][44]、PCに内蔵された記憶媒体(HDDSSD)に辞書アプリをインストールして利用する形態がある。CD-ROMやDVD-ROMに辞書を収録した記録メディアは、単独でソフトウェアとして販売されている場合もあれば、紙媒体の辞書とセットで販売されている場合もある。英英辞書のオックスフォード現代英英辞典 (OALD) は第8版(2010年)と第9版(2015年)、ロングマン現代英英辞典 (LDOCE) は5訂版(2009年)で、各々DVD-ROMが付属する書籍版が販売されている。最近では、LDOCE 6訂版(2014年)のように、オンライン版のアクセスキーが付属するものもある[39]

辞書アプリのデベロッパーとしては、イースト物書堂ロゴヴィスタなどが知られている。

電子書籍端末の辞書機能

Amazon Kindle楽天Koboなどの電子書籍端末には辞書機能が付属しており、電子書籍の本文中の文字列を選択することで、選択した箇所の語の定義を調べることができる。Amazon Kindleには、『大辞泉』『プログレッシブ英和中辞典』『New Oxford American Dictionary』、『Oxford Dictionary of English』のほか、他言語の辞書も付属していることに加え、『英辞郎』、『Merriam-Webster's Advanced Learner's Dictionary』など、他の辞書を購入して追加することが可能である。

脚注・出典

  1. ^ 電子辞書 - ebookpedia”. 日本電子出版協会 (JEPA) (2015年7月27日). 2017年11月26日閲覧。
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参考文献

関連項目

外部リンク