ボーイング有人飛行試験
アトラスVロケットに搭載されて有人飛行試験に打ち上げられるボーイング スターライナー カリプソ | |
名称 | Boe-CFT[1] |
---|---|
任務種別 | 試験飛行 |
運用者 | ボーイング |
COSPAR ID | 20204-109A |
SATCAT № | 59968 |
任務期間 | 2日 16時間 22分 (~8日(計画) |
特性 | |
宇宙機 | ボーイング スターライナー カリプソ |
宇宙機種別 | ボーイング CST-100 スターライナー |
製造者 | ボーイング |
乗員 | |
乗員数 | 2 |
乗員 | |
任務開始 | |
打ち上げ日 | 2024年6月5日 14:52:14 UTC |
ロケット | アトラスV N22[注釈 1] |
打上げ場所 | ケープ・カナベラル、SLC-41 |
打ち上げ請負者 | ユナイテッド・ローンチ・アライアンス[注釈 2] |
任務終了 | |
着陸日 | 2024年6月14日(計画) |
着陸地点 | TBD[注釈 3] |
軌道特性 | |
参照座標 | 地球周回軌道 |
体制 | 低軌道 |
傾斜角 | 51.66° |
ISSのドッキング(捕捉) | |
ドッキング | ハーモニー 前方側 |
ドッキング(捕捉)日 | 2024年6月6日 17:34 UTC |
分離日 | TBD(計画) |
ドッキング時間 | 1日 13時間 40分(進行中) |
ファイル:Boeing CFT patch.png ボーイング有人飛行試験の徽章 ウィリアムズ(左)とウィルモア(右) |
ボーイング有人飛行試験(ボーイングゆうじんひこうしけん、Boeing Crew Flight Test、Boe-CFT)はボーイング スターライナーの初めての有人ミッションである飛行試験であるとともに、2019年と2022年に行われたスターライナーの2回の無人飛行試験であるBoe-OFTおよびBoe-OFT 2に続く3回目の軌道飛行試験。
最初の有人試験飛行は当初は2017年の実施が計画されていた[2]。さまざまな遅延によって、CTFミッションの打ち上げは2023年7月21日以降に行われることになったが[3]、2023年8月にボーイングはパラシュートシステム、配線ハーネスおよび更なる調査のために2024年3月以降に遅延すると発表した[4]。
このミッションには、バリー・E・ウィルモアおよびスニータ・ウィリアムズの2名のNASAの宇宙飛行士からなる乗員を一週間の試験飛行のために国際宇宙ステーションに飛行させることが含まれている。宇宙船は打ち上げに備えて2024年4月16日にアトラスロケットに結合された[5]。
このフライトは5月7日 02:34 UTC(日本時間同日午前11:34、東部標準時2024年5月6日 10:34 PM)の打ち上げが予定されていたが、離昇2時間前に延期された[6]。ミッション中止の原因はユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のアトラスVの酸素バルブの問題だった[注釈 2][7][8]。最初の打ち上げ中止以降、打ち上げはスターライナーのサービスモジュールにおけるヘリウム漏洩のために繰り返し遅延している[9]。
2回目の打ち上げの試みは6月1日 16:25 UTCに行われたが、電源の欠陥のために地上の打ち上げシーケンスコンピューターが冗長性の損失を記録したことから離昇の3分50秒前に中止された。6月5日 14:52 UTCに行われた3回目の打ち上げの試みは成功した。
宇宙カプセル[編集]
CFTは、最初の軌道飛行試験で使用されたスターライナー カリプソ宇宙カプセルの2回目のミッションである。NASAは、ボーイング社が2020年8月のCFTミッションに向けて、複数回の点検を経て機体を飛行用に再組み立てする準備を整え、新しいパラシュートとエアバッグを装着すると発表した。 CFTカプセルのドッキングシステムは、OFT2試験飛行で初公開された新しい再突入カバーに対応するために改造された[10]。
クルー[編集]
当初、ニコール・オーナプ・マンが軌道宇宙船の初飛行で飛行する最初の女性飛行士としてこのミッションに割り当てられていたが、その後、スペースX Crew-5ミッションでNASAの商業乗員輸送の打ち上げで初めての女性指揮官として再割り当てされた[11]。2018年8月にこのミッションのパイロットして当初割り当てられていたエリック・ボーは、医学的理由で2019年1月22日にマイケル・フィンクと交替した。ボーはフィンケの後任として、NASAのジョンソン宇宙センターにある宇宙飛行士事務所の商業乗組員担当主任補佐に就任することになっている[12]。ボーイングの宇宙飛行士クリストファー・ファーガソンが指揮官としてこのフライトに割り当てられていたが、2020年10月7日にNASAの宇宙飛行士バリー・E・ウィルモアと交替した。ファーガソンは交替の理由として家族の事情を挙げた[13]。マシュー・ドミニクが予備クルーとしてウィルモアに代わって加わった[14]。
2022年4月18日に、NASAはバリー・E・ウィルモア、マイケル・フィンクおよびスニータ・ウィリアムズといった幹部クラスの宇宙飛行士の誰がこのミッションないしスターライナーの最初の実用ミッションに搭乗するかの最終決定はなされていないと述べた[15]。2022年6月16日、NASAはこのCFTミッションがウィルモアとウィリアムズによる2名搭乗の飛行試験であり、フィンクは予備の宇宙船テストパイロトとして訓練を受けて将来のミッションに割り当てられる有資格者にのこることを認めた[16]。ウィリアムズは、いずれかの形式の軌道宇宙船の初飛行に女性として搭乗する初めての宇宙飛行士となった(ジュディス・レズニックはスペースシャトル・ディスカバリーの初飛行に搭乗した)。
正クルー[編集]
地位 | 乗組員 | |
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宇宙船指揮官 | バリー・E・ウィルモア, NASA 3回目の宇宙飛行 | |
パイロット | スニータ・ウィリアムズ, NASA 3回目の宇宙飛行 |
予備クルー[編集]
地位 | 乗組員 | |
---|---|---|
宇宙船指揮官 | マイケル・フィンク, NASA |
ミッション[編集]
3回目のアトラスV N22型の打ち上げは2名搭乗したスターライナーを打ち上げる。宇宙船は国際宇宙ステーションにドッキングし、地球への帰還ではアメリカ合衆国南西部に着陸する。カプセルは地表におよそ6.4キロメートル毎時 (1.8 m/s; 350 ft/min)の速度で接近し、6個のエアバッグに載って着地する。
カプセルと同じく「カリプソ」と命名されたおもちゃのイッカクが、宇宙船が無重量状態に達した際にわかるように無重力インジケーターとして乗員に使用された[17]。
これはアトラスVロケットによる初めての有人宇宙船の打ち上げとなった。Boe-CFTは、1963年5月15日にゴードン・クーパーが登場したマーキュリー・アトラス9号以来となるアトラス ファミリーのロケットを使用する有人宇宙船の初めての打ち上げであり[18]、1968年10月のアポロ7号以来のケープカナベラル宇宙軍施設からの初めての有人宇宙船の打ち上げとなった[18]。
宇宙ステーションのリソースとスケジュールのニーズに基づくと、2名のの宇宙飛行士テスト パイロットによる短期間のミッションで、宇宙ステーションへの有人運用ミッションを安全に飛行できるスターライナーの能力を実証することを含むCFTに関するNASAとボーイングのすべてのテスト目標を満たすのに十分である。宇宙ステーションへの乗組員輸送における不測の事態から保護するため、NASAはCFTのドッキング期間を最大6か月延長し、必要に応じて後で宇宙飛行士を追加する可能性がある[16]。
このスターライナーは、アメリカ合衆国から打ち上げられた有人カプセルとして初めて陸上に着陸する。大気圏再突入後、3つのパラシュートが展開されてカプセルの速度を4マイル毎時 (350 ft/min; 1.8 m/s)まで減速され、地上に到達する前に6基のエアバッグが着地の衝撃を軽減するために展開される。ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場に2カ所、アリゾナ州のウィルコックス・プラヤとユタ州のダグウェイ実験場それぞれ1カ所の計4ヶ所が優先的着陸地点とされている。カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地は緊急時の着陸地点として用意されている[19]。
打ち上げ[編集]
回目 | 時刻 | 結果 | 再準備期間 | 理由 | 決定時間 | 好天確率 (%) | 補足 |
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1 | 2024年5月6日10:34:00 pm | 中止 | --- | セントールのLOXバルブの問題 | 2024年5月6日8:32:00 pm(-02:01:30前) | 95 | |
2 | 2024年6月1日12:25:40 pm | 中止 | 25日13時間52分 | 地上の打ち上げシーケンスコンピューターの異常 | 2024年6月1日12:22:05 pm(-00:03:35前) | 90 | |
3 | 2024年6月5日10:52:15 am | 成功 | 3日22時間27分 | 90 |
時刻 | イベント |
---|---|
L−6:00:00 | アトラスV 燃料注入 |
L−4:00:00 | アトラスV 燃料注入完了 / 安定は一 |
L−4:30:00 | 乗員の宇宙服着用開始 |
L−4:04:00 | 4分間ホールド開始 |
L−3:20:00 | 宇宙服着用完了 / 打ち上げパッドに向けて出発departs for launch pad |
L−3:10:00 | 乗員モジュールの準備開始 |
L−2:50:00 | 乗員がパッドに到着 |
L−1:20:00 | ハッチ閉鎖完了 |
L−0:50:00 | 船室の密閉チェック / 船室の与圧完了 |
L−0:35:00 | 乗員から地上への通信チェック |
L−0:22:00 | フライトディレクター:最終秒読み許可 |
L−0:20:00 | 乗員のバイザーを打ち上げ位置に |
L−0:18:00 | スターライナーが最終秒読みをポーリング |
L−0:18:00 | スターライナーが内部電源に切り替え |
L−0:11:00 | 乗員アクセスアーム引き離し |
L−0:07:00 | アトラスVロケットが最終秒読みをポーリング |
L−0:07:00 | スターライナー最終秒読み状態 |
L−0:05:00 | スターライナーが上昇配置にStarliner configured for ascent |
L−0:04:00 | 4分間ホールド解除 |
L−0:00:02.7 | RD-180エンジン点火 |
L+0:00:01.1 | 離昇(推力重量比 > 1) |
L+0:00:06.0 | ピッチ/ヨー機動開始 |
L+0:01:01.7 | 最大動圧点 |
L+0:01:05.3 | マッハ1 |
L+0:02:20.4 | SRB投棄 |
L+0:04:28.9 | アトラスロケットエンジン停止(BECO) |
L+0:04:34.9 | アトラスとセントールが分離 |
L+0:04:40.9 | 上昇カバー投棄 |
L+0:04:44.9 | セントール第一主エンジン燃焼開始(MES-1) |
L+0:05:04.9 | 空力スカート投棄 |
L+0:11:55.4 | セントール第一主エンジン停止(MECO-1) |
L+0:14:55.4 | スターライナー分離 |
ドッキング[編集]
スターライナーは、打ち上げのほぼ27時間後となる東部夏時間6月6日午後1時34分にISSのハーモニーモジュール前方側ポートにドッキングした。ドッキングは、アプローチ中に発生した宇宙船の姿勢制御システムの問題のために一時間以上遅延した[22]。
関連項目[編集]
- 商業乗員輸送開発
- ドラゴン2
- Crew Dragon Demo-2、スペースXのカプセルを用いた最初の有人ミッション
脚注[編集]
注釈[編集]
出展[編集]
- ^ “International Space Station Status”. NASA. 2024年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月13日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
- ^ “Boeing and SpaceX Selected to Build America's New Crew Space Transportation System”. NASA. (2014年9月16日). オリジナルの2017年5月22日時点におけるアーカイブ。 2023年4月1日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
- ^ Foust, Jeff (2023年3月29日). “Starliner crewed test flight delayed to July”. SpaceNews. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Berger, Eric (2023年8月7日). “Starliner undergoing three independent investigations as flight slips to 2024” (英語). Ars Technica. オリジナルの2023年8月7日時点におけるアーカイブ。 2023年8月7日閲覧。
- ^ “Boeing, ULA roll Starliner spacecraft out to pad 41 ahead of Crew Flight Test launch in May” (英語). SpaceflightNow. 2024年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月16日閲覧。
- ^ Speck, Emilee (2024年5月5日). “Watch live: Boeing Starliner ready to launch NASA astronauts from Florida” (英語). Fox Weather 2024年5月7日閲覧。
- ^ Speck, Emilee (2024年5月5日). “Watch live: Boeing Starliner ready to launch NASA astronauts from Florida”. Fox Weather. オリジナルの2024年5月7日時点におけるアーカイブ。 2024年5月7日閲覧。
- ^ Harood. “Starliner launch scrubbed by trouble with a valve in the Atlas 5's Centaur upper stage”. SpaceflightNow. 2024年5月7日閲覧。
- ^ Harwood, William (2024年5月21日). “NASA orders yet another delay for Boeing's hard-luck Starliner”. CBS News. 2024年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月22日閲覧。
- ^ Clark, Stephen (2020年8月25日). “Boeing plans second Starliner test flight in December 2020 or January 2021”. Spaceflight Now. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。 2020年8月26日閲覧。
- ^ Potter, Sean (6 October 2021). "NASA Announces Astronaut Changes for Upcoming Commercial Crew Missions" (Press release). NASA. 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
- ^ Granath, Bob (22 January 2019). "NASA Announces Updated Crew Assignment for Boeing Flight Test" (Press release). NASA. 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月24日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
- ^ Roulette, Joey (2020年10月7日). “Boeing's top Starliner astronaut pulls out of space mission role”. Reuters. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。 2020年10月7日閲覧。
- ^ Evans, Ben (2021年2月13日). “Lindgren, Hines Assigned to Crew-4 Dragon Mission, Will Launch Next Year”. AmericaSpace.com. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。 2022年5月18日閲覧。
- ^ Clark, Stephen (2022年5月18日). “Starliner astronauts eager to see results of crew capsule test flight”. Spaceflight Now. オリジナルの2022年5月23日時点におけるアーカイブ。 2022年5月19日閲覧。
- ^ a b Potter, Sean (2022年6月16日). “NASA Updates Astronaut Assignments for Boeing Starliner Test Flight”. NASA. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月17日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
- ^ “'Sparkly' narwhal toy trades sea for space as Starliner zero-g indicator”. collectSPACE (2024年5月6日). 2024年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月8日閲覧。
- ^ “NASA's Boeing Crew Flight Test Mission Overview” (英語). NASA. 2024年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月1日閲覧。
- ^ “NASA's Boeing Crew Flight Test: Atlas V Fueling Underway – NASA's Boeing Crew Flight Test” (2024年5月6日). 2024年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月5日閲覧。
- ^ “Atlas V Starliner CFT”. 2024年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月5日閲覧。
- ^ “Starliner docks with International Space Station on crewed test flight”. 2024年6月7日閲覧。