こわれもの

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こわれもの
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 ロンドン、アドヴィジョン・スタジオ(1971年9月)
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース イエス、エディ・オフォード
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 4位(アメリカ)
  • 7位(イギリス)[1]
  • 22位(日本)[2]
  • イエス アルバム 年表
    イエス・サード・アルバム
    (1971年)
    こわれもの
    (1971年)
    危機
    (1972年)
    ミュージックビデオ
    「Roundabout」 - YouTube
    テンプレートを表示

    こわれもの』(Fragile)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドイエスが1971年に発表した4作目のアルバム。

    解説[編集]

    ストローブスリック・ウェイクマンを迎えて、後に黄金期メンバーと呼ばれるラインナップが発表した最初の作品。バンドが演奏する4曲とメンバーのソロの5曲から構成されている。

    ウェイクマンが作曲者に名を連ねていないのは、彼にはまだストローブスのメンバーとしてA&Mレコードとの契約が残っていたため、権利関係の問題が起きることを危惧してのことであった。このため、彼はメンバーの協力を得て録音した自作の「ハンドル・ウィズ・ケア」をソロ作品として収録することを諦めざるを得ず、代わりにブラームス交響曲第4番第3楽章をキーボードで多重録音した「キャンズ・アンド・ブラームス」を収録した[3][注釈 1]

    本作のレコーディングは、数日の休日を除いて毎日16時間の労働で4週間から5週間かけて行なわれた[4]。ウェイクマンの談によれば、アルバム名はレコーディング中のバンドの状態から名づけられた。

    本作は、ロジャー・ディーンがジャケット・デザインを担当した最初のイエスのアルバムである。

    収録曲[編集]

    A面
    1. ラウンドアバウト - "Roundabout" (アンダーソン、ハウ)
      シングルカットされ、全米13位を記録。
      ビデオゲーム「GTA5」のLos Santos Rock Radio,2012年日本のテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のエンディングテーマなどにも使用される。
    2. キャンズ・アンド・ブラームス (交響曲第4番ホ短調第3楽章) - "Cans and Brahms" (ブラームス)
      リック・ウェイクマンがブラームス交響曲第4番第3楽章をキーボードで多重録音した。
    3. 天国への架け橋 - "We Have Heaven" (アンダーソン)
      ジョン・アンダーソンボーカルの多重録音。
    4. 南の空 - "South Side of the Sky" (アンダーソン、スクワイア)
    B面
    1. 無益の5% - "5% for Nothing" (ブルーフォード)
      ビル・ブルーフォード作曲の32小節の小曲で、バンド演奏をしている。このタイトルは、前任のマネージャーに支払い続けなければならないロイヤリティについての皮肉。
    2. 遥かなる想い出 - "Long Distance Runaround" (アンダーソン)
    3. ザ・フィッシュ - "The Fish (Schindleria Praematurus)" (スクワイア)
      クリス・スクワイアの7拍子の曲で、「遥かなる思い出」とメドレー形式になっている。タイトルはスクワイアのあだ名で、その由来は彼が長湯(という言い訳)をしてしょっちゅう遅刻し、バンドのスケジュールを狂わすところから来ている。
    4. ムード・フォー・ア・デイ - "Mood for a Day" (ハウ)
      前作での「クラップ」に続くスティーヴ・ハウアコースティック・ギター・ソロ。
    5. 燃える朝やけ - "Heart of the Sunrise" (アンダーソン、スクワイア、ブルーフォード)
      前半部にギターが8分の6拍子、ベースとドラムが4分の4拍子のポリリズムを展開する箇所がある。
      終了後に天国への架け橋のリフレインが再登場する。(隠しトラック扱い)
      1998年米映画『バッファロー'66』、2000年日本のテレビドラマ『QUIZ』、2011年「日産・ジューク」のTV-CMに使用される。

    再発盤[編集]

    リマスター盤[編集]

    2003年にCDのリマスター盤が発売された。音質の向上が図られている他、「アメリカ」と「ラウンドアバウトのアーリー・ラフ・ミックス版」が追加収録されている。

    ティム・ウェイドナーによる5.1ch.サラウンド盤[編集]

    2002年にDVD-Audioでリリースされている[注釈 2]。『マグニフィケイション』でイエスと共同プロデュースを担当したティム・ウェイドナーのリミックスにより5.1chでマルチ・サラウンド化され、さらに96kHz/24bitでマスタリングされているためCDより高音質で聴く事が出来る。尚、ドルビーデジタルdts音声も収録されているので、DVD-Audioに対応していないプレイヤーでも再生は可能。ボーナス・トラックとして「アメリカ」が収録されている。2011年には、DVD-Audioと同一のマスターをDSDに変換した音源が使用されたハイブリッドSACD(品番:WPCR-14167)がリリースされた。なお、1970年代のイエスのアルバムのマルチ・サラウンド盤は、この後2013年にリリースされた『危機』まで存在しなかった。

    スティーヴン・ウィルソンによる5.1ch.サラウンド盤[編集]

    2015年にブルーレイ・オーディオでリリースされている。ミックスはスティーヴン・ウィルソン。2015年にミックスされた24bit/96kHzのサラウンド及びステレオ・トラックの他、上記の2002年盤サラウンド、24ビット/192kHzに変換されたオリジナル・ステレオミックス、LPを再生して24/96に変換したニードルドロップ盤音声トラック等も同時収録されている。紙ジャケット仕様。オリジナルLPに付いていたフォト・ブックも縮小サイズで同封されている[注釈 3]

    レコーディング・メンバー[編集]

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ ChartArchive - Yes - Fragile
    2. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成元年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.73
    3. ^ Morse (1996), p. 29.
    4. ^ Morse (1996), p. 27.

    注釈[編集]

    1. ^ 「ハンドル・ウィズ・ケア」は、いくつかのパートが追加録音されて、ウェイクマンのソロ・アルバム『ヘンリー八世の六人の妻』の1曲目に「アラゴンのキャサリン」というタイトルで収録された。
    2. ^ レーベルはRHINO。日本ではワーナー・ミュージック・ジャパンからリリースされた。品番はAMAY-10018。
    3. ^ レーベルはPANEGYRIC。品番はGYRBD50009。

    参考文献[編集]

    • Morse, Tim (1996), Yesstories: Yes in Their Own Words, St. Martin's Press, ISBN 0-312-14453-9