究極 (アルバム)

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究極
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 1977年
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース イエス
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(イギリス)[1]
  • 8位(アメリカ)[2]
  • 20位(日本)[3]
  • イエス アルバム 年表
    リレイヤー
    (1974年)
    イエスタデイズ
    (1975年)
    究極
    (1977年)
    トーマト
    (1978年)
    ミュージックビデオ
    「Wonderous Stories」 - YouTube
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    究極』(Going for the One)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドイエスが1977年に発表したアルバム。新作のスタジオ・アルバムとしては通算8作目で、ライブ・アルバム『イエスソングス』と編集アルバム『イエスタデイズ』を含めると通算10作目にあたる。

    解説[編集]

    経緯[編集]

    本作はリック・ウェイクマンが再び参加していることで、発表当時、大きな話題を呼んだ。

    ウェイクマンは1973年のアルバム『海洋地形学の物語』の内容に強く不満を抱いて他のメンバーと対立し、1974年5月に発表したソロ・アルバム『地底探検』の売り上げが好調だった[注釈 1]こともあって、6月にイエスを脱退した[4]。イエスは後任にパトリック・モラーツを迎えて、12月に前作『リレイヤー』を発表して、翌1975年にはツアーを行なった。その後、彼らは活動を一時停止してメンバー全員がソロ・アルバムを制作した[注釈 2]

    1976年秋、メンバーは再結集して、税金対策の為にスイスで本作の制作を開始したが、やがてモラーツが脱退した[注釈 3][5]。マネージャーのブライアン・レーンはウェイクマンのマネージャーでもあったので、彼らはウェイクマンにまずサポート・メンバーとして本作の制作への参加を要請し、11月に彼を再び正式メンバーとして迎え入れた。そして1977年7月に本作を約2年半ぶりの新作として発表した。

    内容[編集]

    前作まで共同プロデューサーを務めたエディ・オフォードが降板して、本作はイエスが単独でプロデュースした。

    レコーディングは、スイスモントルーにあるマウンテン・スタジオで行われた。ウェイクマンが「パラレルは宝」と「悟りの境地」で演奏したパイプ・オルガンは、モントルーから約7km離れたレマン湖畔に位置するヴヴェイのとある教会のもの。彼らは録音機材を教会に持ち込む代わりに、教会での演奏を電話を介してスタジオで録音した[注釈 4][6]

    本作では、ロジャー・ディーン[注釈 5]ではなく、ヒプノシスがジャケット・デザインを担当した。ジャケットのビルディングは、アメリカのカリフォルニア州センチュリー・シティに実在するセンチュリー・プラザ・タワーズの写真をコラージュしたものである。

    評価[編集]

    本国イギリスでは『メロディ・メーカー』(Melody Maker)と『レコード・ミラー』(Record Mirror)という、読者の嗜好が相反する2つの音楽誌で1位を獲得した。また、シングル・カットされた「不思議なお話を」も、両誌でトップ10に入った。

    エピソード[編集]

    • モラーツが脱退したのは、リハーサルが始まる前とも始まった後とも言われている。彼は、本作の発表と相前後して1977年の夏に発表したソロ・アルバム "Out in the Sun" に収録した "Time for a Change" という曲を根拠に、「悟りの境地」の作曲には自分も関与した、と主張している[6]。スティーブ・ハウは本作へのモラーツの貢献を認める主旨の発言をしている[7]
    • 日本での初盤LPはジャケットが3面開きで、LPレコード本体はアメリカ生産のものであった。販売するレコード店によってはポスターが添付されていた。
    • レコーディング風景がプロモーション用にビデオ撮影されたが、一般公開されずに終わった。一部の映像がブートレッグ・ビデオとして流出した。
    • レコーディング終了後、同じスタジオでウェイクマンのソロ・アルバム『罪なる舞踏』のレコーディングが始まり、クリス・スクワイアとアラン・ホワイトが全面的に参加した。

    収録曲[編集]

    A面
    1. 究極 - "Going For The One" 5:30
    2. 世紀の曲り角 - "Turn Of The Century" 7:58
    3. パラレルは宝 - "Paralells" 5:52
    B面
    1. 不思議なお話を - "Wonderous Stories" 3:45
    2. 悟りの境地 - "Awaken" 15:38

    リマスター盤[編集]

    2003年にリマスター盤CDが発売された。音質の向上が図られている他、以下の7つのボーナス・トラックが追加収録されている。

    1. モントルーズ・テーマ - "Montreux's Theme" 2:38
    2. ヴェヴェイ - "Vevey (Revisited)" 4:46
    3. アメイジング・グレース - "Amazing Grace" 2:36
    4. 究極 (リハーサル) - "Going for the One (Rehearsal)" 5:10
    5. パラレルは宝 (リハーサル) - "Parallels (Rehearsal)" 6:21
    6. 世紀の曲がり角 (リハーサル) - "Turn of the Century (Rehearsal)" 6:58
    7. イースタン・ナンバーズ (アーリー・ヴァージョン) - "Eastern Numbers (Early Version of "Awaken")" 12:16

    レコーディング・メンバー[編集]

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ ChartArchive - Yes
    2. ^ Going for the One - Yes : Awards : AllMusic
    3. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.73
    4. ^ Morse (1996), p. 49.
    5. ^ Morse (1996), pp. 56–57.
    6. ^ a b Morse (1996), p. 60.
    7. ^ Morse (1995), p. 61.

    注釈[編集]

    1. ^ 発売と同じ5月に、イギリスのアルバム・チャートで首位に立った。これはイエスがあげたことがない成績だった。
    2. ^ この間、アトランティック・レコードは、メンバーが再結集して次作を制作発表するまでの空白期間を埋める為に、初期の音源を中心に編集したアルバム『イエスタデイズ』を1975年3月に発表した。
    3. ^ モラーツが脱退したのは、リハーサルが始まる前とも始まった後とも言われている。彼は、本作の収録曲の作曲の多くに自分も関与したと主張している。
    4. ^ 彼らは電話線を一日借りて教会とスタジオとを繋ぎ、ウェイクマンがスタジオで再生される他のパートを電話を介してヘッドフォンで聴きながらオルガンを弾き、スタジオにいるスタッフが彼の演奏を電話を介して録音した。ウェイクマン曰く「スイスの電話は最高の音質。彼らはみんなこうやって録音している。だから、我々もこの方法を選んだ。」
    5. ^ 1971年のアルバム『こわれもの』以来、前作までジャケット・デザインを担当してきた。

    参考文献[編集]

    • Morse, Tim (1996), Yesstories: Yes in Their Own Words, St. Martin's Press, ISBN 0-312-14453-9