トーマト

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トーマト
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 1978年
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース イエス
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 8位(イギリス)[1]
  • 10位(アメリカ)[2]
  • 41位(日本)[3]
  • イエス アルバム 年表
    究極
    (1977年)
    トーマト
    (1978年)
    ドラマ
    (1980年)
    ミュージックビデオ
    「Don't Kill The Whale」 - YouTube
    「Madrigal」 - YouTube
    テンプレートを表示

    トーマト』(Tormato)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドイエスが1978年に発表したアルバム。新作のスタジオ・アルバムとしては通算9作目で、ライブ・アルバム『イエスソングス』と編集アルバム『イエスタデイズ』を含めると通算11作目にあたる[注釈 1]

    解説[編集]

    内容[編集]

    「天国のサーカス」の中で聞かれる子供の声は、ジョン・アンダーソンの息子で当時6歳だったダミアンのもの。

    「オンワード」では、1970年に発表された2作目のアルバム『時間と言葉』に引き続いて、オーケストラが起用された。作者のクリス・スクワイアは1975年に発表したソロ・アルバム『未知への飛翔』に続いて旧知のアンドリュー・ジャックマン[注釈 2]に編曲を依頼した[4]

    リック・ウェイクマンは自ら開発資金を出していた「バイロトロン (Birotron)」を使用している[5]。この楽器はメロトロンを改良したキーボードで、アメリカ人の考案者のデヴィッド・バイロがアメリカをツアー中のウェイクマンの楽屋を訪ねて来て、アドバイスと資金の提供を求めたものである。

    タイトルとジャケット[編集]

    本作の元々のタイトルは、スティーブ・ハウの提案で "Tor" であった[注釈 3]。ハウはサウス・ウェスト・イングランドデヴォンダートムーアYes Tor という名前の露頭が実在する[注釈 4]のを見つけて、その白黒写真をジャケットに使うことまで提案していた[5]

    ある日、マネージャーのブライアン・レーンの秘書のジル[注釈 5]が Yes Tor の写真を見て「潰れたトマト」を連想し、それが元でタイトルは "Tormato" という造語に変更になった。そして、前作『究極』に続いてジャケット・デザインを担当したヒプノシスが、Yes Tor の写真にトマトがぶつけられたジャケットを作成した[注釈 6]

    収録曲[編集]

    A面
    1. A. 輝く明日 - "Future Times" B.歓喜 - "Rejoice" (A.アンダーソン、スクワイア、ハウ、ウェイクマン、ホワイト/B.アンダーソン)
    2. クジラに愛を - "Don't Kill The Whale" (アンダーソン、スクワイア)
    3. マドリガル - "Madrigal" (アンダーソン、ウェイクマン)
    4. 自由の解放 - "Release, Release" (アンダーソン、ホワイト、スクワイア)
    B面
    1. UFOの到来 - "Arriving UFO" (アンダーソン、ハウ、ウェイクマン)
    2. 天国のサーカス - "Circus Of Heaven" (アンダーソン)
    3. オンワード - "Onward" (スクワイア)
    4. 自由の翼 - "On The Silent Wings Of Freedom" (アンダーソン、スクワイア)

    リマスター盤[編集]

    2004年にCDのリマスター盤が発売された。音質の向上が図られている他、以下10曲のボーナス・トラックが追加収録されている。

    1. "Abilene" - 「クジラに愛を」がシングル・カットされた際にB面に収録された曲。
    2. "Money" - リック・ウェイクマンによる当時の英国の財務大臣であったデニス・ヒーリーのスピーチの物真似を添え、成功したミュージシャンに対して高い税率を課した彼を皮肉った風刺曲。初出は『イエスイヤーズ』。
    3. "Picasso"
    4. "Some Are Born" - ジョン・アンダーソンが自身のソロ・アルバム『七つの詩』(Song Of Seven) で再録音・収録。
    5. "You Can Be Saved"
    6. "High"
    7. "Days" - こちらも『七つの詩』で再録音・収録。ここではア・カペラで収録。
    8. "Countryside" - スティーブ・ハウのソロ・アルバム『タービュランス』(Turbulence) の「コークスクリュー」(Corkscrew) として後に収録。
    9. "Everybody's Song" - 次作『ドラマ』に収録されている「夢の出来事」(Does It Really Happen?) のアーリー・デモ・バージョン。
    10. "Onward (Orchestral Version)" - 「オンワード」の作曲者クリス・スクワイアのベースとオーケストラ部分のみを抽出したインストゥルメンタル・バージョン。隠しトラックであるためジャケットにはクレジットされていない。

    レコーディング・メンバー[編集]

    エピソード[編集]

    • 「クジラに愛を」がシングル・カットされている。B面はアルバム未収録曲(リマスター盤には収録)の「Abilene」。
    • 「自由の翼」、「クジラに愛を」、「マドリガル」のプロモーション・ビデオが制作されている。
    • ウェイクマンは当時のインタビューにて、自分は9曲の収録曲のうち4曲を主にアンダーソンと共作したとして「各曲の作詞・作曲の記載を信用してはいけない」と語っている[6]

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ ChartArchive - Yes
    2. ^ Tormato - Yes : Awards : AllMusic
    3. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.73
    4. ^ Morse (1966), p. 65.
    5. ^ a b Morse (1996), p. 63.
    6. ^ Morse (1996), p. 61.

    注釈[編集]

    1. ^ 日本盤のオビには通算10作目と記載されている。
    2. ^ スクワイアがイエスの前身のメイベル・グリアーズ・トイショップに加入する前に在籍していたザ・シンでオルガンを担当していた。
    3. ^ Torとは「岩石露頭」の意味で、特にサウス・ウェスト・イングランドデヴォンダートムーアコーンウォールボッドミン・ムーアに存在するものを指す。
    4. ^ 海抜619メートルの露頭で、ダートムーアの露頭の中で2番目に高い。
    5. ^ 後にジョン・ウェットンと結婚したが、やがて離婚した。
    6. ^ タイトルが変更された経緯とジャケット・デザインの由来については諸説がある。

    参考文献[編集]

    • Morse, Tim (1996), Yesstories: Yes in Their Own Words, St. Martin's Press, ISBN 0-312-14453-9