K9 155mm自走榴弾砲

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K9 155mm自走榴弾砲
2011.2.17 육군6포병여단 k-9,k-55 자주포사격 (7633864346).jpg
性能諸元
全長 12m
車体長 6.114m
全幅 3.4m
全高 3.5m
重量 47t
速度 67km/h
行動距離 360km
主砲 52口径155mm榴弾砲×1
副武装 12.7mm重機関銃M2×1
エンジン MTU 881Ka-500 ディーゼル
1,000hp
乗員 5名
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K9 155mm自走榴弾砲(K9 155ミリじそうりゅうだんほう)は、韓国が開発した自走砲。愛称はThunder/サンダー「雷鳴」。

開発[編集]

北朝鮮は、10,000門以上の火砲(170-240mmクラス)をDMZ沿いに配置、特にM1989 170mm自走砲「コクサン」(谷山砲)は、射程60kmに達する。これに対抗し、韓国陸軍在韓米軍M109 155mm自走榴弾砲などを装備してきたが、1980年代から新型自走砲を開発した(M109A6 パラディンなどによる更新には、新規開発よりもコストを要する)。

概要[編集]

攻撃力[編集]

砲撃の様子

韓国WIA社とADDが開発した52口径155mm榴弾砲を装備し(最大仰角70度)、射撃管制装置により陣地進入から60秒(停止状態から30秒)で射撃を開始できる。

砲撃開始以後最初の3分間の最大連続射撃速度は毎分6発、それ以降の長時間連続射撃速度は毎分2発とされているが、延坪島での実戦射撃でも射撃開始からの5分間で射撃できた弾数は(カタログ上は6発×3分+2発×2分で計22発の発射が可能となっているが)1分30秒に1発の割合で、計4発しか射撃できていない。これは、北朝鮮軍の射撃がK9の射撃訓練が終わった時点で開始されたので、当時K9には、装填された弾薬がなかったからであるとする報道がみられた[3]。バースト射撃(15秒に3発発射)した砲弾を同時に着弾させるToT(Time on Target)機能も射撃管制装置により可能となっている。

ほかにGPSなど高度なシステムを装備している[6][7]

防御力[編集]

155mm砲弾の弾片に耐え、重要部は14.5mm徹甲弾の直撃を防御できる装甲を装備した結果、K55韓国軍装備のM109)と比べて重量は倍近くになった(K55 約25t→K9 約47t)。それにより車体後面から砲撃の衝撃を受け止めるために地面に打ち込む駐鋤は除かれた。

与圧NBC防護装置、内部温度上昇警告システムと自動消火装置に応答式の内部診断システムを備える。

機動力[編集]

エンジンは、独MTU社製のMT881KA-500 ディーゼルを韓国STX社(双竜重工業)がライセンス生産

トランスミッションは、米ゼネラルモーターズ社製のATDX1100-5A3を統一重工がライセンス生産、前進4段後進2段。

サスペンションは、AS-90自走砲にも搭載されている英HDS(Horstman Defence Systems)社製の高性能サスペンション・サブシステムをライセンス生産。

比較[編集]

装軌型自走榴弾砲の比較
アメリカ合衆国の旗M109A6 イギリスの旗AS-90 ドイツの旗PzH.2000 日本の旗99式 大韓民国の旗K9 ロシアの旗2S35
画像 Combined Resolve II 140528-A-EM978-007.jpg Tank on a track, Larkhill Artillery Range - geograph.org.uk - 457037.jpg Dynamic Front 18 (39996237474).jpg JGSDF Type 99.jpg Lippujuhlan päivän 2017 paraati 104 K9 Thunder.JPG Alabino05042017-49.jpg
全長 9.1 m 9.07 m 11.67 m 11.3 m 12 m 11.9m
全幅 3.1 m 3.5 m 3.58 m 3.2 m 3.4 m 3.58 m
全高 3.2 m 2.49 m 3.46 m 3.1 m 3.5 m 2.98 m
重量 29 t 45 t 55.3 t 40 t 47 t 48 - 55 t
主砲 39口径 155mm砲 39口径 or 52口径(ブレイブハート)[8] 155mm砲 52口径 155mm砲 152mm砲
最大射程
  • 45 km BB弾
  • 24 km 通常弾
  • 30 km RAP弾(初期型) [8]
    24.7 km 通常弾(初期型)[8]
    40 km以上 RAP弾(ブレイブハート)[8]
    30 km 通常弾(ブレイブハート)[8]
  • 40 km BB弾
  • 30 km 通常弾
  • 18 km (M107弾)
  • 30 km (RAP弾)
  • 40 km (K307弾)
  • 36 km (K310弾)
  • 53 km (K315 RAP+BB弾)
不明
射撃速度 4発/分 6発/分 8発/分 6発/分以上 6 - 8発/分 不明
最高速度 64 km/h 53 km/h 60 km/h 49.6 km/h 67 km/h
乗員数 4名 5名 4名 5名 3名


派生型[編集]

K10 탄약보급장갑차弾薬運搬車
K9の車体から開発された専用弾薬補給車両、車内に104発の弾薬を搭載し、ベルトコンベアを使い1分あたり12発の弾薬をK9の車内に自動補給する。
T-155 Fırtına(Storm)旋風
トルコは元々PzH2000自走榴弾砲の導入を希望していたが、クルド人問題に対するドイツ政府の圧力で実現しなかった。そのため、トルコは「SP2000」と呼ばれる155mm自走榴弾砲を開発したが、トルコ陸軍の要求に達せずにK9のトルコ型であるT-155を導入することになった。英語版のデータでは56tと、原型のK9(47t)より10t近く重くなっている。また、価格面でのメリットも大きかったと思われる。

採用国[編集]

大韓民国の旗 韓国

大韓民国陸軍
  • K9(1,100)
  • K10
第5軍団の第5砲兵旅団、第6軍団の第6砲兵旅団、第7軍団の第7砲兵旅団などの軍団直轄砲兵、第11機械化歩兵師団の自走砲連隊に1個大隊配置。
大韓民国海兵隊
  • K9(8)
  • K10

トルコの旗 トルコ

10億USドルで10年以上に渡りK9自走砲300両の構成部品を供給の契約を結んでいる。
トルコ陸軍
T-155(2020年までに300両を配備予定)

 フィンランド

フィンランドは、ソ連製の2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲の後継として2011年から韓国と会談し[9]、2016年7月より政府間交渉を開始した[10]。同年後半にはフィンランド国防軍が寒波試験評価を実施し、11月に購入のための了解覚書(MOU)を締結した[9][11]
2017年2月6日、韓国政府筋は韓国陸軍で使用していた中古48両を完全にオーバーホール後、再組立てする廠整備方式でフィンランドに輸出する交渉が最終段階に達していた」とし「来月初めに制式な契約をする予定」と明らかにした。新品ではなく中古のとなったのは耐久性に対する信頼と価格の面で有利であるためで政府関係者は「ふつうK-9の新品1台当たりの価格は45億~50億ウォン」だとし、「中古を導入すれば、1台当たり10億ウォンほど価格を下げることができる」と語った。フィンランドに輸出する48両の価格は2億ドル(約2,270億ウォン)で、後方支援(部品供給)と技術料などの名目で約2億ドル建ての契約も結ぶ予定で、合計は4億ドル(約4,540億ウォン)に達する[11]。3月2日、韓国防衛事業庁と大韓貿易投資振興公社は、フィンランド政府と48両の輸出契約を4,500万ユーロ(約190億円)で締結、2025年までに引き渡しを完了すると発表した[12]

インドの旗 インド

K9をベースにインドの民間企業ラーセン・アンド・トゥブロ(L&T)と共同開発するK9 バジラ(Vajra)を100両購入予定。オプションとして50両の購入も計画されている。インドはサムスンとのジョイントベンチャーの一環として、インド西部プネー近くのL&T Talegaon工場でK9を製造する予定。L&Tの関係者によると、インド向けのK9は防衛調達手続(DPP)の「Buy Global」カテゴリーで調達されており、インド固有のシステムが約50%含まれているという。これには、車体と砲塔構造の製作と、火器管制通信システムなどの14のサブシステムの開発が含まれる。インド国防省は2016年7月にL&Tとの間でK9 100両の供給に関する価格交渉を完了した。契約は約7億5,000万ドル相当とみられている[13]
インド政府は3月29日に6億4,600万ドル(約698億円)に達するK9導入計画を承認、輸出が確定した。報道によると初期に引き渡される10両は韓国で生産され、残りの90両はインド内のL&T工場でハンファテックウィンの技術指導のもと生産される予定。輸出される現地向けモデルはインドの気候や地形に合わせて改良されるという。L&T側によると、ハンファテックウィンと同社の合弁比率は50対50であるため、ハンファテックウィンの輸出額は3億2,000万ドル程度になるとみられる[14]。一方でK10弾薬供給車は入札には含まれていないと業界関係者は述べている[15]

 ノルウェー

ノルウェーは、1960年代に導入したM109A3GNMを置き換えるためにK9(ノルウェー名Vidar)を選択した。24両が契約され、さらに24両以上のオプションがある。契約額は、6両のK10弾薬運搬車を含めて2億1,520万アメリカドル。引き渡しは2019年に始まる予定[16]。2019年9月、1台目のK9とK10が納入された。24両のK9と6両のK10を3億8300万ドルで購入する[17]

検討[編集]

 エストニア

エストニアは、2017年2月6日に韓国との間で調印交渉を開始する覚書に署名した。エストニアのマルガス・ツァクナ国防相は、新兵器陸軍砲撃能力と機動力を大幅に高めると語った。同計画では2021年までに配備される予定で、少なくとも12両を購入する予定だという。エストニアが購入を決めた背景には、クリミア併合など東欧におけるロシア戦闘行動を考慮したバルト三国の懸念の高まりがあるとされる。調達に関してはフィンランドが共同購入を提案し、エストニア政府もこれを快諾したことから共同で実施される見込み[9][18][19]

ほかにはスペインマレーシアサウジアラビアチリエジプトなどと交渉したが、成立していない。このほか、ポーランドデンマークも調達に関心を示している[9]

登場作品[編集]

映画[編集]

『エスケイプ・フロム・イラク』
T-155が登場。イスラム国に拘束されていた女性ジャーナリストを救出したトルコ軍特殊部隊からの要請を受け、3両がイスラム国戦闘員に対して砲撃を行う。

脚注[編集]

  1. ^ 豪と5月からFTA交渉開始…安保協力も拡大へ(1)
  2. ^ Germans Drop Australian Self-Propelled Gun Program
  3. ^ a b 자주포 절반만 작동… 포탄장전도 4발씩만… "안쏜게 아니라 못쐈다"(韓國日報2010年11月26日)
  4. ^ 北朝鮮砲撃:K9の半分が故障、残りも性能発揮できず(朝鮮日報 2010年11月26日)
  5. ^ “韓国原発、「欠陥・事故」続出の恐ろしき実態…偽造部品納入は当たり前、放射能漏れ数値は18倍増に修正”. 産経新聞社. (2014年11月12日). http://www.sankei.com/west/news/141107/wst1411070063-n2.html 2014年11月25日閲覧。 
  6. ^ 2011年に製造されたものには射撃統制システムにIntel486、それ以前のものにはIntel386CPUが使われているものもあるという
  7. ^ 韓国軍のK-9自走砲は時代遅れ?10年前のCPU搭載=韓国(サーチナ 2011/09/21(水) 10:11)
  8. ^ a b c d e AS90 Braveheart 155mm Self-Propelled Howitzer, United Kingdom
  9. ^ a b c d Estonia partners with Finland for K9 howitzer buy
  10. ^ Förnyandet av Arméns artillerimateriel framskrider
  11. ^ a b 進撃の「K-9自走砲」...北欧2カ国に同時輸出
  12. ^ 韓経:韓国、「世界最強」K-9自走砲をフィンランド輸出へ 中央日報日本語版
  13. ^ India completes price negotiations for 100 modified K-9 self-propelled howitzers
  14. ^ 韓国開発の自走砲K9 インドへの100台輸出確定
  15. ^ India's acquisition of 100 K9 SPHs approved
  16. ^ [1]
  17. ^ 中時電子報. “挪威接收首輛韓製K9自走砲 總數24輛 - 軍事” (中国語). 中時電子報. 2020年3月1日閲覧。
  18. ^ Estonia joins Finland in howitzer procurement
  19. ^ Estonia begins K9 artillery negotiations with South Korea | IHS Jane's 360

参考文献[編集]

月刊グランドパワーNo.152 DEFENCE ASIA 2006 韓国の兵器展示展2007,1/1ガリレオ出版

関連項目[編集]

外部リンク[編集]