サイ

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サイ科
生息年代: 始新世現世
White rhinos.jpg
シロサイCeratotherium simum
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: 奇蹄目 Perissodactyla
: サイ科 Rhinocerotidae
現生するサイの 5 種
シロサイ。真白ではなくグレー。
クロサイ。 嘴のように尖った唇が特徴。肌はシロサイと同じようにグレー。
インドサイ。角が1つなのが特徴。
ジャワサイ。こちらも角が1つ。インドサイより小柄。
スマトラサイ。5種の中で最も小さい。

サイ; 英語: rhinoceros もしくは rhino (ライノー); ギリシア語: ῥινόκερωςを持つもの」の意[1])は、奇蹄目サイ科(Rhinocerotidae)に属する哺乳類の総称。

分布[編集]

世界には5種類のサイが現生しており、アフリカ大陸の東部と南部(シロサイ、クロサイ)、インド北部からネパール南部(インドサイ)、マレーシアインドネシアの限られた地域(ジャワサイ、スマトラサイ)に分布している。現生のサイは体毛がなく(或いは薄く)、寒冷な地域には全く分布していない。

サイ科とサイ科の祖先は、漸新世から中新世にかけて他の奇蹄目と同様に豊富な種をもち、北米、ヨーロッパ、アジアに広く生息していた。寒冷な地域にも分布していた。進化の過程で数百種類のサイが存在していたとの研究結果もある[2]。そのため、北米、ヨーロッパ、アジアの広い地域で化石が発掘されている。

形態[編集]

ゾウに次ぐ大型の陸棲哺乳類である。最大の種であるシロサイのオスは体長3.7~4m、平均体重2300kg[3](最大で3600tという記録がある[4])。オスはメスより大きい(要出典)。

皮膚は非常に分厚く硬質で、1.5~5cmの厚みを持ち、格子構造になったコラーゲンが層をなしている。鋭い草や棘のある低木から身を守るための適応の結果とみられている。皮膚はあらゆる動物の中でも最硬といわれ、肉食獣の爪や牙を容易には通さない。インドサイ等は、だぶついた硬い皮膚が特徴的で、体全体がで覆われているように見える。

スマトラサイを除き体毛がない。しかし耳介の外縁や尾の先端にのみ毛を残している。幼獣は成獣より毛深いが、成熟するにつれて体毛が薄くなる。スマトラサイは耳介も含めて全身が粗く長い茶褐色の体毛で被われているものの、野生種では泥にまみれ、抜け落ち、ほとんど目立たない。

サイは頭部に1本または2本の硬いを持つ。他の現生哺乳類の角は骨の変化した器官であるが、サイの角は骨質ではなく、爪や毛に似た器官である。サイの角は空洞がなく、体毛や蹄と同じケラチン角質)で満たされた表皮細胞の死骸でできている。「中実角」とも呼ばれる。角は髪と同じように伸び続ける。サイの角は肉食動物に抵抗するときなどに使われる。オスのほうがメスより角が大きく、一部の種のメスには角のない個体がみられる(要出典)。

目は小さく視力は弱いが、鋭い嗅覚と聴覚をもつ。脳は哺乳類の中で比較的小さい(400~600g)。後腸には発酵能力があり、植物の葉を消化できる。必要とあらば樹皮のような硬い植物繊維質も食料源とすることができる。

アフリカのサイ2種は前歯を持たず、その代わりに唇で餌を摘み取る。唇の形状は種によって異なり、種によって食性が違うことを示している。[5]例えばクロサイは上向きの尖った唇をしており、主に樹木や低木から唇で葉や果実を摘まむように食料を摂取する。シロサイは角ばった唇をしており、地面に這わせながら草を食む。

生態[編集]

夜行性あるいは薄明薄暮性である。

食性は植物食で、草や葉、樹皮や枝、果実などを食べる。水生植物を食べる種もある。

草原や森林、熱帯雨林、湿地に生息する。スマトラサイとジャワサイ特に河川や沼の周辺に好んで生息する。

基本的に単独で生活するが、草原で生息するシロサイは小さな群れをつくることがある。雄は通常、縄張りを持ち、尿でマーキングすることで縄張りを主張する。

硬い皮膚と大きな体躯を持つことで、肉食獣に襲われて捕食されることはあまり多くない。しかし、幼獣はその限りではない[6]

行動範囲が広い。そのため生息域の保護が難しい。一日の行動距離が大きく、また上手に泳げる種もある。海を泳ぐ様子が観察された種もある。(要出典)最高時速50kmで走ると言われる。(種は?要出典)

分類[編集]

5種類のサイの大きさ比較。
Rhinocerotidae


Ceratotherium simum



Diceros bicornis





Dicerorhinus sumatrensis




Rhinoceros unicornis



Rhinoceros sondaicus





サイの系統樹[7]

世界には4属5種類のサイが生存している。

クロサイ属 Diceros
生息域はアフリカのみ。
シロサイ属 Ceratotherium
生息域はアフリカのみ。
スマトラサイ属 Dicerorhinus
体長 2.5 - 3.2 m、体高 1.1 - 1.5 m、体重約 1.5 t のサイ科最小種。前後 2 本の角をもつ。タイスマトラカリマンタンなどの東南アジアの森林に生息している。木の葉が主食。森林伐採や密猟により、絶滅の危機に瀕している。
インドサイ属 Rhinoceros
生息域はネパールとインド北東部。
体長約 3.5 m、体高約 1.7 m、体重約 1.4 t。最も生息数が少ないサイ。ジャワ島にのみ生息。ベトナムラオスの国境地帯の森林に生息していた個体群は、2011年に密猟によって絶滅した。

進化[編集]

ヒラコドン。角がない。仔馬のよう。
アミノドン科メタミノドン。角がない。水生生活に適応。
サイ科エラスモテリウム。氷河期を生き抜いた。

サイの進化は、他の奇蹄目の進化よりも複雑である。サイは新生代初期に多種多様な変化を遂げた。特に漸新世から中新世においては他の奇蹄目と同様に豊富な種をもち、広範に分布していた。しかし、現在は絶滅の方向に向かっているように見受けられる。[8]サイのいくつかの系統には、平行進化の痕跡が見られるため、[9]ここでは最古のサイから現生のサイへ続く系統に絞って記述する。したがって、記述は主に始新世漸新世に限定される。

サイは始新世前期に他の奇蹄目から分岐した。角のない小さなサイの祖先ヒラキウス(Hyrachyus)属のhyrachyus eximiusは、北米で発見された。このサイはサイというより、バクや小さなに似ている。これをサイ上科でなくバク上科に分類する専門家も多い。[10]ウマ科の最古の祖先として有名なヒラコテリウム(Hyracotherium)ともよく似ている。このヒラキウス(或いはヒラキウスに似たバク科の種)から、最古のサイとされるヒラコドン科トリプロプス(Triplopus)が誕生した。

しかしこの説には若干の疑いが残っている。始新世中期後半のヒラキウスの種と、始新世後期のトリプロプスの種の間に、歯科形態の類似性が見られることがこの説の根拠となっているが、ヒラキウスの蹄の数は前肢4つ後肢3つであるのに対しトリプロプスは四肢すべてが3つの蹄である等の相違点もあるからだ。またヒラコドン科の多くが体長5フィート肩高1.5-2フィート程度の大型動物であるのに対し、ヒラコドン科トリプロプスが特筆すべき小ささであることも注意すべき点である。[11]

いづれにせよ、始新世後期までにサイは、ヒラコドン科アミノドン科サイ科の3科になった。これらは、しばしばサイ上科(Rhinocerotoidea)としてまとめられる。


ヒラコドン科 Hyracodontidae

始新世中期から中新世前期(5580-2200万年前)にかけて北米、ヨーロッパ、アジアに広がっていた。絶滅した科。を持たない。ヒラコドン科は「走るサイ(running rhinos)」として知られ、脚が細長く快速に疾走することができ、現生のサイよりも馬に似ていた。ただ、歯の構造は既にサイそのものだった。最小のヒラコドン科の種は犬程度の大きさだったが、最大のものはパラケラテリウム(Paraceratherium)で、体長10メートル体高7メートル体重15トン程度と推定されており、これは史上最大の陸上哺乳類であると考えられている。キリンのように木から葉を食べた。なお、この科が後述のサイ科の祖先であることがわかっている。


アミノドン科 Amynodontidae

始新世中期から漸新世前期にかけて北米、ヨーロッパ、アジアに広く分散、生息していた。一部の種は漸新世後期まで残っていたものの、絶滅した。角を持たない。アミノドン科は「水生サイ(aquatic rhinos)」として知られている。この科の種はカバのような生態や外観をもち、川や湖に生息し、水草も食べるなど、カバと同じような水生適応を多く持つ。祖先がバク類であることは判明しているが、他の2科に比べその祖先が不明確。日本の炭田でもたびたび化石が発見されており、ワタナベサイ(Amynodontidae Watanabi)などの例がある。


サイ科 Rhinocerotidae

サイ科(Rhinocerotidae)は始新世後期にユーラシア大陸で誕生し、すべての現生のサイはこれに属している。かつて、サイ科の種は小型且つ豊富だった。漸新世中期における絶滅の波が小型種をのほぼ全て一掃するまでは、少なくとも26属がユーラシアと北アメリカに生息していた。この絶滅の波の後でも、いくつかの独立した系統は生き残った。Menocerasは豚程度大きさで、鼻の上部に左右に並ぶ角を持っていた。北米のテレオケラス(Teleoceras)は樽型の胴体と短い肢を持ち、約500万年前まで生息していた。アメリカでは鮮新世にすべてが絶滅した。

現生のサイは、中新世にアジアから拡散し始めたと考えられている。最新の氷河期を生き抜いたケブカサイ(Coelodonta antiquitatis/毛深犀)とエラスモテリウム(Elasmotherium)がそれにあたり、この両種は1万年前という最近までヨーロッパに定住していた。ケブカサイは中国周辺で約100万年前にいた事が確認されており、60万年前にはヨーロッパに到着していた。20万年前にヨーロッパで再び確認され、ケナガマンモス同様繁栄していた。しかし、最終的には初期の人間によって狩られ、絶滅した。またエラスモテリウムは体長5メートル、体高2メートル、体重5トン、前頭骨に三角ハットのような巨大な一本の角、長冠歯、早く走れる長い肢を持ち、更新世中期氷河時代を生き抜いた巨大なサイとして知られている。ユニコーン伝説の正体と考えられることもある。[12]

角のあるサイは、漸新世終盤から中新世にかけてやっと歴史に登場した。最古のサイの現生種は、1500万年以上前に出現したスマトラサイ(Dicerorhinus)。前後2本の角をもつ。スマトラサイは他の現生種との関係よりケブカサイとの関係が密接だった。インドサイ属のジャワサイインドサイの二種は、イッカクサイ(Rhinoceros)とも呼ばれ、角を1つ持つ。中新世中期までその祖先を遡れる。インドサイとジャワサイは密接に関連しながら、アジアにおけるサイの主流となった。インドサイとジャワサイの祖先は200-400万年前に分岐した。[13]現生のアフリカのサイの起源は、中新世後期(600万年前)のCeratotherium neumayriParadiceros mukiriなど諸説ある。現生種の両系統は、クロサイの祖先と思われるDiceros praecoxの化石が示す鮮新世前期(150万年前)に分岐したとされる。シロサイとクロサイは現在も非常に近縁かつ密接に関係し、互いに交尾し正常に子孫を残すことができる。[14]

上記の3科以外にも、北米で一般化したAphelopsテレオセラスTeleocerasのように、新生代には多くの種が発生した。


人間との関係[編集]

角の利用と密猟、乱獲

前述のとおり現生のサイは5種で、そのいずれもが絶滅の危機に瀕している。生息数減少の主な原因は人間による乱獲であり、現在でも角を目当てにした密猟が絶えない。 角は工芸品や漢方薬の材料(犀角)として珍重され(もっとも角に薬としての効用は実はほぼない(要出典))乱獲が進んでいる[15]。サイ科の5種すべてが絶滅の危機にあり、国際自然保護連合IUCNはジャワサイクロサイスマトラサイの3種を絶滅危惧 IA 類、絶滅寸前(Critically Endangered)に指定した。とりわけ、ジャワサイ Rhinoceros sondaicus は地球上で最も数が少ない大型獣として知られており、1967年から1968年に行われた調査では生息数が 25 頭まで減少したとされた。あらかじめ角を切り落としておくことで密猟されないようにする保護対策が行われている。

文化への影響

現存する人類最古の絵画であるフランスのショーヴェ洞窟壁画にもサイは描かれており、これは1~3万年前のものである。

1515年、アルブレヒト・デューラーはサイがリスボンに輸入された時の様子が描かれた無名の画家のスケッチを元にして、有名な 犀の木版画を創作した。デューラーは実物を見ることができず、描写はいくぶん不正確だが、(要出典)この木版画は「動物を描写した作品のうち、これほど芸術分野に多大な影響を与えたものはおそらく存在しない」とまでいわれている絵でもある。[16]『犀』は西洋において何度も参照され、絵画や彫刻に影響を与えた。『犀』は『動物図譜』に記載され、日本に伝わり、谷文晁がそれを模写をした『犀図』が残されている。[17]

ビルマ、インド、マレーシアでは、サイが火を潰すとする伝説がある。神話のサイはbadak api (マレー語) の名称で呼ばれ、badakは犀、apiは火を意味する。森林の中で火が燃え広がるとサイが現れ、それを踏み消すとされる。[18]なお、この事実は確認されたことはない。しかし、この伝説は映画「The Gods Must Be Crazy(邦題ミラクル・ワールド ブッシュマン)」で紹介され有名になった。

日本や中国[19]では、水犀(みずさい)と呼ばれる動物が絵画などに見られる。頭には角、背中に甲羅、足には蹄を持つとされる。平安末期の国宝鳥獣人物戯画の乙巻には、獅子麒麟といった海外の動物や架空の動物とともに水犀が描かれている。江戸末期の北斎漫画にも水犀が描かれている。日光東照宮の拝殿東面、妻虹梁下に水犀(通天犀とも)が彫刻されている。

中国では、現在でも犀の角で作られた彫刻や工芸品が重宝され売買されている。中国の検索サイトで犀の角を検索すると、検索結果に価格や鑑定方法が列挙される。ドイツのミュンヘンにあるサーカスcircus kroneでは犀を使うショープログラムがある。都市伝説やジョークとして、約一万年前に絶滅したサイ科エラスモテリウムを、ユニコーン伝説の正体とみなすことがある。[20]

犀と文化
世界遺産日光東照宮拝殿東面、妻虹梁下にある犀の彫刻。
国宝鳥獣人物戯画 乙巻 水犀 陶板模写
ドイツのCircus Kroneのステージでショーをするシロサイの牡。
ウィキメディア・コモンズには、サイに関するカテゴリがあります。

脚注[編集]

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  1. ^ ῥινος」+ κέρας
  2. ^ 野生生物種の絶滅 山形大学公式サイト
  3. ^ Macdonald, D. (2001). The New Encyclopedia of Mammals. Oxford University Press, Oxford. ISBN 0198508239.
  4. ^ Groves, C. P. (1972). "Ceratotherium simum". Mammalian species. 8 (8): 1–6. doi:10.2307/3503966. JSTOR 3503966.
  5. ^ ナショジオ Black Rhinoceros by Diceros bicornis
  6. ^ 1985年から1995年の間にインドのカジランガ国立公園において行われた調査では、インドサイのトラによる捕食が密猟に次ぐ脅威になっているとの報告があり、178頭のサイが公園内で虎の被害に遭ったと報告している。ただし、この中の149頭(83.7%)は幼獣である [1]
  7. ^ Tougard, C. et al. (2001) Phylogenetic relationships of the five extant Rhinoceros species (Rhinocerotidae, Perissodactyla) based on mitochondrial cytochrome b and 12S rRNA genes.
  8. ^ Martin, E. B. 1984. "They're Killing off the Rhino." National Geographic, 165:404-422.
  9. ^ Title: Basic Created Kinds and the Fossil Record of Perissodactyls. Author(s): James S. Monroe National Center for Science Education 米カルフォルニア機関
  10. ^ Title: Basic Created Kinds and the Fossil Record of Perissodactyls. Author(s): James S. Monroe National Center for Science Education 米カルフォルニア機関
  11. ^ Lucas, S. G. et al. 1981. "The Systematics of Forstercooperia, a Middle to Late Eocene Hyracodontid (Perissodactyla: Rhinocerotoidea) from Asia and Western North America." Journal of Paleontology, 55:826-84 1.
  12. ^ やはり伝説のユニコーンは実在していた! 2万6千年前の人類と「エラスモテリウム」の出会いで判明か!? tocana.jp
  13. ^ Lacombat, Frédéric (2005). “The evolution of the rhinoceros”. In Fulconis, R.. Save the rhinos: EAZA Rhino Campaign 2005/6. London: European Association of Zoos and Aquaria. pp. 46–49. 
  14. ^ Robinson, Terry J.; V. Trifonov; I. Espie; E.H. Harley (January 2005). “Interspecific hybridization in rhinoceroses: Confirmation of a Black × White rhinoceros hybrid by karyotype, fluorescence in situ hybridization (FISH) and microsatellite analysis”. Conservation Genetics 6 (1): 141–145. doi:10.1007/s10592-004-7750-9. http://www.springerlink.com/openurl.asp?genre=article&doi=10.1007/s10592-004-7750-9. 
  15. ^ ケニアの2013年サイ密猟数、前年の2倍に フランス通信社 2014年03月01日観覧
  16. ^ Clarke, T. H. (1986). The Rhinoceros from Dürer to Stubbs: 1515–1799. London: Sotheby's Publications. ISBN 0-85667-322-6. 20ページ
  17. ^ 『平賀源内展カタログ』(2003年)p.118
  18. ^ Rhinoceros Frequently Asked Questions”. Sosrhino.org. 2010年9月23日閲覧。
  19. ^ 《国语·越语上》:“今 夫差 衣水犀之甲者亿有三千。” 韦昭 注:“犀形似豕而大。今徼外所送,有山犀、水犀。”
  20. ^ やはり伝説のユニコーンは実在していた! 2万6千年前の人類と「エラスモテリウム」の出会いで判明か!? tocana.jp

関連項目[編集]