クロサイ

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クロサイ
クロサイ
クロサイ Diceros bicornis
保全状況評価[1][2][3]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 CR.svgワシントン条約附属書I
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 奇蹄目 Perissodactyla
: サイ科 Rhinocerotidae
: クロサイ属
Diceros Gray, 1821[4]
: クロサイ D. bicornis
学名
Diceros bicornis (Linnaeus, 1758)[3][4]
シノニム

Rhinoceros bicornis
Linnaeus, 1758[3][4]
Diceros bicornis major
Drummond, 1876[4]

和名
クロサイ[5][6]
英名
Black rhinoceros[3][4][5][7]
Hooked-lipped rhinoceros[3][5]

クロサイ(Diceros bicornis)は、哺乳綱奇蹄目サイ科クロサイ属に分類される奇蹄類。現生種では本種のみでクロサイ属を構成する[4]

分布[編集]

アンゴラケニアジンバブエタンザニアナミビア南アフリカ共和国モザンビーク[3]エチオピアでは絶滅したと考えられ、カメルーンチャドルワンダでは絶滅した[3]エスワティニザンビアボツワナマラウイに再導入[3]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)は、喜望峰[4]

形態[編集]

頭胴長(体長)280 - 290センチメートル[4]。尾長60センチメートル[6]。肩高132 - 180センチメートル[4]体重350 - 1,300キログラム[5]。雌はこれよりもやや小さい。頭部や胴体は長く、頸部は太い[5]。成獣では耳介や尾の先端を除いて、体毛で被われない[5]。体色は灰色や灰褐色で、生息地の土の色によって異なる[6]。むしろ、口の幅が広く、wide rhinoceros とされるべきところのサイが誤記されて white rhinoceros、つまりシロサイとされてしまったため、それと対照的なもう一方のアフリカのサイをクロサイとしてしまったと考えられている。

耳介は長く筒状[5]。頭部には2つの角がある[5]。属名Diceros、種小名bicornis ともに「2つの角」の意。前角長42 - 135センチメートル[6]。後角長20 - 50センチメートル[6][7]。個体によっては、3本目の小さい角がある[7]。 吻端が尖り、上唇がよく動く[5][6]。これにより木の葉を、口元に大量に引き寄せて食べることができる[6]門歯がない[6]頭にケラチンでできた2本の角が直列してついており、前方の角がより大きく、長さ70cmほどになる。クロサイは頭部と耳がシロサイよりも小さく、額がはっきりとしている。また、クロサイはシロサイのようなはっきりとした肩の瘤を持たない。[要出典]

出産直後の幼獣は体重22 - 45キログラム[5]

適応[編集]

クロサイは生息地に適応して、次のような特徴を有している。

  • 鋭い草や棘のある低木から身を守るために、皮膚は厚く、層状になっている。
  • 足の裏は厚くなっていて、衝撃を吸収し、脚を保護する
  • 若葉や新芽が食べやすいように、上唇は物をつかむのに適応した形になっている。
  • 大きな耳は回転することができ、音の来る方向が分かる。
  • 大きな鼻は捕食者の臭いを敏感に察知する。
  • 2本の大きな角は防御や威嚇に用いられる。

分類[編集]

以下の分類は、IUCN(2012)に従う[3]

Diceros bicornis bicornis (Linnaeus, 1758)
アンゴラ南部、ナミビア、ボツワナ西部、南アフリカ共和国南東部および南西部[3]
Diceros bicornis longipes Zukowsky, 1949(絶滅亜種)
模式産地はチャド[4]最も希少であった亜種。以前はアフリカ西部のサバンナの大部分に生息していた。最後の個体群がカメルーン北部に生き残っていたが、その後の生息地の調査では発見されず、2005年に絶滅が宣言されている[要出典]
Diceros bicornis michaeli Zukowsky, 1965
エチオピア、ケニア、ソマリア、タンザニア中北部、南スーダン[3]。模式産地はタンザニア[4]
Diceros bicornis minor Drummond, 1876
ザンビア、ジンバブエ、タンザニア南部、南アフリカ共和国北東部、モザンビーク[3]。模式産地はズールーランドとされる[4]

生態[編集]

藪地に生息するが、山地の森林に生息することもある[5]。ンゴロンゴロの個体群ではオス26,000ヘクタール、メス259 - 4400ヘクタールの行動圏内で生活する[5]薄明薄暮性で、昼間は木陰などで休む[5]。単独で生活するが、以前は約10頭からなる小規模な群れを形成することもあった[5]。水浴びを好むが、乾季には砂浴びも行う[5]。危険を感じると、突進し威嚇することもある[5]。走行速度は時速50キロメートルに達する[5]。時には母娘で集団をつくっていることもある。

主に低木の葉を食べるが、乾季は草本も食べる[4][5]。共生関係にある生物としてウシツツキ類が挙げられ、外部寄生虫を食べたり危険を知らせてくれる[4][7]アマサギ・テリムクドリ属・オウチュウ類も共生関係になることもある[4]。幼獣の捕食者はブチハイエナライオンが挙げられ、ライオンは成獣も襲ったり殺した報告例がある[4]

交尾は季節によらず行われるが、出産は雨季の終わりの乾燥した環境で行われることが多い。妊娠期間は平均465日(419 -476日)もしくは463日(438 - 480日)とする報告例がある[4]。1回に1頭の幼獣を、2 - 3年に1回だけ産む[5]。授乳期間は1年だが、幼獣は母親が次の幼獣を産む前まで一緒に行動する[5]。オスは生後7 - 8年、メスは生後5 - 7年で性成熟する[7]。寿命は40年以上と考えられている[5]

人間との関係[編集]

角は薬用になると信じられていたり、イエメン北部などではジャンビーヤ(短剣)の柄に用いられる[5][6]

角目的の乱獲により、生息数は激減した[5][6]。1975年のワシントン条約発効時にはワシントン条約附属書IIに掲載され、1977年にはサイ科単位でワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。 1960年の生息数は100,000頭と推定されているが、1960年代から1995年にかけて生息数が約98 %減少した[3]1996年における生息数は、2,408頭と推定されている[5]。地域別ではジンバブエの1980年代における生息数は1,400 - 1,754頭、1990年における生息数は1,700頭、1993年における生息数は381頭、1996年における生息数は315頭と推定されている[5]。タンザニアでの1980 - 1984年における生息数は3,130 - 3,795頭、1996年における生息数は32頭と推定されている[5]

国際サイ基金によると、クロサイの数は徐々に回復しつつあり、2003年には3610頭、2007年には4180頭、2013年には5055頭となっている。しかし、上記の通り依然としてサイの密猟は横行しており、現在も決して楽観できる状況ではない。

D. b. bicornis
2010年における基亜種の生息数は1,920頭[3]
VULNERABLE (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
Status iucn3.1 VU.svg
D. b. longipes
2006年以降は確認例がなく、絶滅したと考えられている[3]
EXTINCT (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
Status iucn3.1 EX.svg
D. b. michaeliD. b. minor
2010年における亜種D. b. michaeliの生息数は740頭、亜種D. b. minor生息数は2,220頭[3]
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
Status iucn3.1 CR.svg

日本ではさい科(サイ科)単位で、特定動物に指定されている[8]。2005年現在は、240頭(亜種D. b. michaeli171頭、亜種D. b. minor69頭)が飼育されている[3]。世界中の動物園等の飼育施設では、飼育下での繁殖によって個体数を増やす努力が続けられている。

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 09/04/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Diceros bicornis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 09/04/2020)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Emslie, R. 2012. Diceros bicornis. The IUCN Red List of Threatened Species 2012: e.T6557A16980917. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2012.RLTS.T6557A16980917.en. Downloaded on 09 April 2020.
    Emslie, R. 2011. Diceros bicornis bicornis. The IUCN Red List of Threatened Species 2011: e.T39318A10197840. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2011-2.RLTS.T39318A10197840.en. Downloaded on 09 April 2020.
    Emslie, R. 2011. Diceros bicornis longipes. The IUCN Red List of Threatened Species 2011: e.T39319A10198340. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2011-2.RLTS.T39319A10198340.en. Downloaded on 09 April 2020.
    Emslie, R. 2011. Diceros bicornis michaeli. The IUCN Red List of Threatened Species 2011: e.T39320A10198874. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2011-2.RLTS.T39320A10198874.en. Downloaded on 09 April 2020.
    Emslie, R. 2012. Diceros bicornis minor. The IUCN Red List of Threatened Species 2012: e.T39321A16981557. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2012.RLTS.T39321A16981557.en. Downloaded on 09 April 2020.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q A. K. Kes Hillman-Smith and Colin P. Groves, "Diceros bicornis," Mammalian Species, No. 455, American Society of Mammalogists, 1994, Pages 1-8.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 小原秀雄 「クロサイ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、46-47、157頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j Norman Owen-smith 「サイ」祖谷勝紀訳『動物大百科 4 大型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、46-51頁。
  7. ^ a b c d e Jennifer Kurnit, 2009. "Diceros bicornis" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed April 09, 2020 at https://animaldiversity.org/accounts/Diceros_bicornis/
  8. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2020年4月9日に利用)

関連項目[編集]