キリン

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キリン
キリン
キリン Giraffa camelopardalis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目 Artiodactyla
亜目 : 反芻亜目 Ruminantia
下目 : Pecora
: キリン科 Giraffidae
: キリン属
Giraffa Brisson, 1762[2]
: キリン G. camelopardalis
学名
Giraffa camelopardalis (Linnaeus, 1758)[2]
シノニム

Cervus camelopardalis
Linnaeus, 1758[2]

和名
キリン[3]
英名
Giraffe[2]

分布域

キリンGiraffa camelopardalis)は、偶蹄目キリン科キリン属に分類される偶蹄類。もっとも背が高い動物であり、体にくらべ際立って長い首をもつ。アフリカ中部以南のサバンナや疎林に住む。

名称[ソースを編集]

和名「キリン」は、鄭和が連れ帰ったキリンを中国の伝説の生物である「麒麟」として永楽帝に献上した故事にちなみ、近代になって命名されたものである。 キリンを「麒麟」と呼ぶ例にはほかに韓国語・朝鮮語の「기린」(麒麟文化観光部2000年式:girin、マッキューン=ライシャワー式:kirin)がある。 なお、中国語では(台湾ミン南語を除き)キリンは「麒麟」ではなく、「長頚鹿」(“長いくびの鹿”、繁体字長頸鹿簡体字长颈鹿拼音: chángjǐnglù)と呼ぶ。

種小名camelopardalisは、「ヒョウ模様のラクダ」の意[3]。ローマ時代からの古い言葉である。

英名giraffeは、古代アラビアの呼称で「速く走るもの」を意味する"xirapha"に由来するとされる[3]。日本語でもごくまれに、英名にもとづいて「ジラフ」と呼ぶことがある。

形態[ソースを編集]

キリンの骨格標本。長い首は、ヒト等と同じく7個の頸骨から成る。
キリンの食道気管の標本(国立科学博物館の展示)

長い首をもつ最も背の高い動物であり、オスの体高は平均5.3m に達する。見た目から細い印象があるが、体重が1tを超す場合も多い。多くの哺乳類と同様に頸椎の数は7個であるが、それぞれが大型かつ長い[3]。頭部と長い頸部は発達した筋肉と靭帯で支えられ、肩が隆起する[3]

犬歯は2 - 3又に分かれ、枝から葉だけをしごくのに適している[3]。長さ約45センチメートルに達するを持ち、柔軟性のある唇も合わせて木の枝にある棘を避けながら採食を行うことができる[3]。オス、メスともに頭に2-5本の皮膚におおわれたがある。体は黄褐色の地に茶色のまだら模様になっている。その模様は体毛を剃ると無くなる。

心臓からまでの高低差は約2mある。脳まで血流を押し上げる為、動物の中で最も高い血圧を有する。首の血管には弁がついており、血液が逆流することを防いでいる。

キリン科に属するキリンとオカピの後頭部には「ワンダーネット(奇驚網)」と呼ばれる網目状の毛細血管が張り巡らされている。この「ワンダーネット」が急激な血圧の変化を吸収するため、急に頭を上げ下げをしても、立ちくらみをすることがない。

脚が鬱血しないように、皮膚が硬質化している。

分類[ソースを編集]

(動画) 東武動物公園のアミメキリン

分布域によって9-12亜種に分けられる。2005年現在では6亜種とする説もある[2]。体表の模様などが異なる。脚の模様の有無も重要な判別材料となる。

Giraffa camelopardalis camelopardalis (Linnaeus, 1758)[2] ヌビアキリン
Giraffa camelopardalis giraffa (Schreber, 1784)[2] ケープキリン
ナミビアボツワナジンバブエ南アフリカ共和国にかけて、アフリカ大陸南部に生息。
Giraffa camelopardalis reticulata Winton, 1899[2] アミメキリン[3]
タナ川以北のケニアウガンダエチオピアにかけて生息。動物園でよく見られる。
Giraffa camelopardalis rothschildi Lydekker, 1903[2] ウガンダキリン[3]
ロスチャイルドキリンとも呼ばれる。ウガンダを中心にしてスーダンケニアまで生息。
Giraffa camelopardalis thornicrofti Lydekker, 1911[2] キタローデシアキリン[3]
他の亜種の分布しないザンビアアングアバレー周辺に1,200頭前後で生息。
Giraffa camelopardalis tippelskirchi Matschie, 1898[2] マサイキリン[3]
動物園でよく見られる。
  • ナイジェリアキリン G. c. peralta
  • コルドファンキリン G. c. antiquorum
  • アンゴラキリン G. c. angolensis
ナミビアからアンゴラまでに生息。ケープキリンに含めることもある。

生態[ソースを編集]

前脚を広げ屈むキリン

オスを中心とした2-10頭程度の群れで生活している。食物の葉から摂る水分のみで、水を飲まなくても生きていくことができるため、アフリカに住む他の草食動物と異なり、乾季になっても移住をしない。時速50 - 60キロメートルで走ることができるが[3]、足が長いため加速性は悪い。ライオン等に襲われた時には、リーチを活かしてキックで応戦することもある。このキックは強烈で、ライオンを蹴り殺すことがある。

食性は植物食で、主にアカシア属シクンシ科などの木の葉、若芽、小枝などを食べるが、果実や草本を食べることもある[3]。飲水や低木の葉を食べる時、地面に落ちた果実を食べる時はしゃがまずに前肢を大きく左右に広げ、立ったままで水を飲む[3]。これは敵に襲われたときにすぐに逃げることができるためであると考えられる。

キリンは時おり小鳥などの小動物を食べることもあるという。『キリン ぼくはおちゃめなちびっ子キリン』[4]によると、多摩動物公園のキリンたちがトンカツを食べるので、高タンパクの飼料に切り替えると、めったに肉食しなくなったという[脚注 1]。同書には、当時話題をまいた鳩をくわえた写真や、鳩の背後で舌を伸ばす写真が掲載されている。

オスは背比べにより優劣を決定するが、オス同士が首をぶつけ合い儀式的に争う(ネッキング)ことがあり特に若齢個体のオスで多い[3]。妊娠期間は15か月。体高1.7-2mの子供を1頭出産する。生まれた子供は20分程度で立つことができるようになる。

アフリカではキリンは土と骨を舐める事によりミネラルを摂取し、まとわりつくダニウシツツキが食べている。

通常は直立したまま休息や睡眠を行うが、安全が確保されていれば2 - 3時間にわたり座って休むこともある[3]。前肢と片方の後肢を内側に曲げて地面に座り、眠りが深くなると首は丸めて体に乗せる[3]。1日の睡眠時間は諸説あるが、眠りが深くなった姿勢をとるのは1日に3 - 4分、長くても10分と言われていされる[3]

鳴き声はにやや似た声で「モー」と鳴く。ただし滅多にその鳴き声を披露することはなく、動物園の飼育員ですらごくごく稀にしか聞けないという。

人間との関係[ソースを編集]

日本にキリンが来たのは、1907年3月15日である。ドイツの動物園から2頭のキリンが海路横浜港に到着した。鉄道で輸送する予定が、経路途中の陸橋をくぐることができないため、船で日本橋浜町河岸につけ、大八車で上野動物園に運んだ。 しかしこの時来日した2頭は、越冬できず翌年死亡している。原因は熱帯の動物だからという事で、過剰に暖房に注意を払った事による換気不足と考えられている。

なお「キリン」の和名は、この時に当時の動物学者石川千代松によって鄭和の故事に基づき定められたものといわれていたが、実際には江戸時代にもすでに使用例がある。

1933年に2度目の輸入で運び込まれた2頭については、冬期の暖房温度を20度から15度に下げてみた所、問題なく越冬し、1937年に繁殖に成功した。ちなみに第二次世界大戦中は動物園でも暖房を行う余裕など無かったが、2頭は無事生き延びており、暖房そのものが不要であったとされた。

キリンは法律上、ペットとして飼育できる。これは日本国内で個人が飼育できる最大の陸上哺乳類である。しかし実際に飼うとなると多額の費用[脚注 2]が必要である。寿命は長く、30年以上生きたことがある。なお、輸入には検疫が必要である。

日本では特定動物に指定されている[5]

キリンは人間の食用とされることがある。古代イタリアポンペイでは、住民がキリンやフラミンゴを食べていたことが分かっている[6]。キリンの個体数が多い国では、今でも個体数調整のため、キリンを狩猟して食べることがある[7]。また、イスラエルラビユダヤ教指導者)によれば、キリンはカシュルートに当てはまる動物であり、ユダヤ教徒が食べても良いという見解を発表した。ただし、ユダヤ教徒が多い地域では、もともとキリンのは一般的な食べ物ではない[8]

G. c. peraltaG. c. rothschildi ウガンダキリン
ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
Status iucn3.1 EN.svg

ギャラリー[ソースを編集]

参考文献[ソースを編集]

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  1. ^ a b Fennessy, J. & Brown, D. 2010. Giraffa camelopardalis. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T9194A12968471. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2010-2.RLTS.T9194A12968471.en . Downloaded on 19 October 2015.
    Fennessy, J. & Brown, D. 2008. Giraffa camelopardalis ssp. peralta. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T136913A4349726. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T136913A4349726.en . Downloaded on 19 October 2015.
    Fennessy, J. & Brenneman, R. 2010. Giraffa camelopardalis ssp. rothschildi. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T174469A7077893. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2010-2.RLTS.T174469A7077893.en . Downloaded on 19 October 2015.
  2. ^ a b c d e f g h i j k Peter Grubb, "Giraffa,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, p. 672
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 西木秀人 「サバナでの劇的な適応 キリン」『動物たちの地球 哺乳類II 6 イノシシ・カバ・キリンほか』第9巻 54号、朝日新聞社1992年、178-182頁。
  4. ^ 子ども動物園3 徳江和代・文 ポプラ社 1980年4月
  5. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2015年10月19日に利用)
  6. ^ “ポンペイの古代ローマ人、キリンやフラミンゴも食べていた”. AFPBB News. (2014年1月10日). http://www.afpbb.com/articles/-/3006265 2014年1月13日閲覧。 
  7. ^ “キリンの肉が食べられる国。”. Narinari.com. (2013年12月12日). http://www.narinari.com/Nd/2003121546.html 2014年1月13日閲覧。 
  8. ^ “「キリンは食べてもよい」、イスラエルの宗教指導者”. AFPBB News. (2008年6月10日). http://www.afpbb.com/articles/-/2402572 2014年1月13日閲覧。 

脚注[ソースを編集]

  1. ^ キリンに限らず草食動物タンパク質を必要とするときは他の動物を捕食することはあり得ることである。
  2. ^ 餌代だけでおよそ一日3,000円以上

関連項目[ソースを編集]