駅名標

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

駅名標(えきめいひょう)とは、鉄道駅において、自駅名を記した識別系案内標識である。「駅名板」とも呼ばれる。

「東京」が自駅名。端の「神田」「有楽町」は隣駅名、線の切れ込みは進行方向(次駅は神田)、緑線は社色、中央の水色は路線色JR東日本在来線)

日本の駅名標[編集]

概要[編集]

日本の駅名標は、自駅名を中央に大きく配し、左右に両隣の駅名を小さく表記したデザインを基本とする。

鳥居状に組んだ木製の支柱に板をはめ込み、白地に黒で平仮名の駅名を毛筆体で記して建植したものが原型。

国鉄時代に「スミ丸ゴシック体」と呼ばれる統一書体が制定された。この書体は、JR化後にJR東海が版権を所有[注 1]しており、JR北海道の柱用駅名標で使われているほか、デザインを一部修正したものがJR東海でも用いられている。

1964年に開業した東海道新幹線では、在来線とは異なり独自仕様の駅名標を採用した。在来線の駅名標と比較して横長[注 2]となり、またスミ丸ゴシック体による漢字とローマ字表記のみとして平仮名表記を省略し、隣駅の表示も廃止した[2][3][注 3]。その後1972年に開業した山陽新幹線での駅名標はそれを発展させ、漢字とローマ字表記のみという点は同じだが、横長のものから国鉄標準のものとほぼ同様の大きさに変更し、隣駅が併記されるようになった。しかし、東北上越新幹線以降は新幹線独自の駅名標は採用されず[4]、東海道新幹線も1970年代後半頃から、山陽新幹線では1980年代中頃の国鉄末期より在来線や東北・上越新幹線以降で採用された様式(隣駅入りの国鉄標準)に順次交換された。

JR化後はJR各社が独自の様式の駅名標を採用した。JR東海では基本は国鉄時代のデザインのまま、1987年11月から在来線では自駅のローマ字部分のみコーポレートカラーのオレンジ色の帯を入れ始めた[5]。その他のJR各社では、1990年代半ばにかけて色帯を配した独自の駅名標デザイン制定が相次いだ。

形態[編集]

柱用駅名標の例(写真はほしみ駅

国鉄の駅名標に関する規程の内容は時期によって大きく異なるが、最終的に「鉄道掲示基準規程」1986年3月改正(JR化前年)の時点で、以下のような分類となっていた[6]

駅名標(鉄道用)

屋外用(駅の入口上部に掲出) - 大きさは適宜

ホーム用(ア~ウの3種)

  • (ア):横書き・隣駅名入り - 1号型(天地90cm、左右120cm)または2号型(天地80cm、左右110cm)。電気掲示器の場合は431号型[注 4](天地75cm、左右133cm)
  • (イ):柱用(縦書き)- 9号型(天地75cm、左右15cm)。電気掲示器の場合は210号型(天地70cm、左右150cm)必要により、ふちをその線区の電車の車体色と同じ色(ラインカラー)にすることが出来る。
  • (ウ): 新幹線駅ホーム両端用 - 縦133cm、横200cm以上。必ず照明を備える。

国鉄では柱用駅名標は平仮名縦書きで、紺地に白字を基本とした期間が長かった。平仮名の書体は時期によって新旧の違いがある。JR北海道は現在も在来線では国鉄のスミ丸ゴシック書体を用いており、北海道新幹線を含む柱用駅名標でサッポロビールの広告が掲載されている。一部の事業者では下に新聞社などの広告が入る(東武鉄道など)。

現状[編集]

JRおよび私鉄の駅名標の多くは、会社や線区などを象徴する色帯に、列車の進行方向を示す矢印などを組み合わせたり、帯を枝分かれさせて分岐駅を示すなどのデザインを採用している。JR東海の在来線、JR四国JR九州、東武鉄道などでは、国鉄後期の規程に合わせ、自駅の所在地(都道府県市区町村[注 5])の表記を続けている。

自駅名の表記は明治期以降、長らく平仮名表記が主だったが、一部の駅名標では可読性の高さを理由に漢字を大きく表記するケースが現れた。さらにJR西日本、JR四国が漢字中心のデザインとしたほか、当初平仮名を主としたデザインを制定したJR東日本でも、首都圏や地方都市圏で、漢字を大きくした新デザイン駅名標への切り替えを進めている。また駅名標に中国語朝鮮語を併記するケースも現れている。

JR東日本の一部支社や、JR西日本境港線、JR九州、第3セクター各社では、観光客にアピールするために、駅名標に名所のイラストや写真などの装飾を施すオリジナルデザインも見られる。

JR各社のデザイン[編集]

  • JR東日本では、駅名表記を漢字中心とした新デザインへの置き換えを進めている。2009年からはつり下げ用の電気掲示器を「エコ薄型電気掲示器」として、光源を蛍光灯からLEDに変更した新型への置換えを順次進めている[7]
  • JR九州では、つり下げ用、建植用について帯を使わずに赤矢印を用い、地元のシンボルイラストを配したデザインを制定している。
  • 新幹線の駅名標は、JR東日本・JR西日本では在来線と同じ様式を採用しているのに対し、JR北海道・JR東海・JR九州では在来線とは異なる様式のものを採用している。

駅名標のグッズ化[編集]

  • 多くの鉄道会社が駅名標キーホルダーや駅名標ストラップを販売している[8][9]
  • 2009年1月には東急ステーションリテールサービス(東京都目黒区)が、東急東横線や田園都市線など東急線7線全駅の駅名標をプリントした「東急線駅名メモ帳」を限定発売した[10]

中国の駅名標[編集]

中国国鉄の高速鉄道駅の駅名標では中国語と英語で駅名が表記されている。ただし、ドイツの駅名標と同じ、その駅名のみ記載し、両隣の駅名もキロメートルもない。一方、在来線の駅では中国語とピンインで駅名が表記されて、両隣の駅名も記されている。また、各民族自治区にある駅名標は当該自治区の自治民族の言語による表記も入る。


台湾の駅名標[編集]

台鉄の今日の駅名標(八堵駅
台北捷運北投駅の駅名標。駅名と隣駅ではなく行き先が表記されている。
台湾高速鉄道台中駅の駅名標。駅名のみが表記されている。

台湾鉄路管理局の駅名標は、基本的なフォーマットは、自駅の名前が中央に大きく、さらに左右の下に両隣の駅名及びキロメートルが小さく書かれている。

交通部台湾鉄路管理局の所属ではなく阿里山森林鉄路の駅名標、海抜もある。

捷運と台湾高鐵は両隣の駅名のある駅名標がなく、路線図だけある。


韓国の駅名標[編集]

一般的な韓国鉄道公社の駅名標(都羅山駅
釜山交通公社チャガルチ駅の駅名標。韓国語、英語、日本語、中国語で駅名が表記されている。
ソウル交通公社1号線東大門駅の駅名標。韓国語・英語・中国語(簡体字)・日本語(カタカナ)で表記されている。

韓国の駅名標は、一般的にハングルや英語表記とともに韓国の漢字が併記されている。ただし、駅名に固有語や外来語など漢字で表記できない部分が含まれる場合、省略されるか、ハングル漢字交じり文で表記する(例:加山デジタル団地駅→「加山디지털團地」)か、固有語・外来語部分を漢字に翻訳する(例:西大田ネゴリ駅→「西大田四街」)ことで対応している。

近年、急増する外国人観光客への対応として、日本語や中国語を併記する駅名標が地下鉄を中心に増えている。釜山交通公社では、1号線4号線の全駅と2号線3号線の一部の駅において、朝鮮語・英語・日本語(新字体、漢字表記がない場合はカタカナ)、中国語(簡体字、日本語とほぼ同一の場合は省略。漢字表記がない場合は当て字)で表記された駅名標が設置されている(代わりに韓国漢字の表示はなくなっている)。

ソウル地下鉄首都圏電鉄の各路線、広域電鉄東海線においても、2014年以降に設置・更新された駅名標では、朝鮮語・英語・中国語(簡体字)・日本語(カタカナ)での表記が行われている。また、2015年以降は既存の駅名標にステッカーを貼る形で中国語・日本語対応とする駅もみられる。

また、ソウル特別市が管轄するソウル地下鉄の各路線においては、サインシステムと共にソウル市が制定したフォントの「ソウル南山体」が使われた駅名標への置き換えが進んでいる。

首都圏電鉄や都市鉄道においては駅ナンバリングも行われており、駅名標にも表記されているが、隣駅表示については日本と異なり前駅にも表記されているものが多い。


ヨーロッパの駅名標[編集]

ヨーロッパの駅名標は駅舎として屋根を有する建物がある場合には天井から吊るされている場合が多い[11]。駅名標の文字は大きいものの両隣の駅名が表示されていることはほとんどない[11]

ドイツイギリスなどでは両隣の駅名及びキロメートルは載っておらず、駅名のみ記載されている。


脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 分社化当時のJR東海社長 須田寛がスミ丸ゴシックの制作に携わっており、思い入れがあったからだという[1]
  2. ^ 現在のJR各社で採用している駅名標の大半も横長のものが基本となっている
  3. ^ この様式の駅名標は国鉄が制定した規格でもあり、実際に『東海道新幹線工事誌』土木編にも初代の駅名標を始めとして、ロール式の初代発車標や等級の書かれた初代の号車案内標などの図面が掲載されていた。
  4. ^ 電気掲示器の型の百位の数字は蛍光灯のワット数の十位を示す。十位の数字は蛍光灯の縦列、一位は横列個数を示す。431号型は40ワット縦3本×1列で構成される。
  5. ^ 国鉄やJR東海は政令指定都市の駅では県名を省略し、区名を表記している。例:静岡駅では「静岡県静岡市」→「静岡市葵区」に変更されている。国鉄時代には「北海道」は乗客にとっては当たり前の事なので省略されていた。

出典[編集]

  1. ^ 渡部千春 『これ、誰がデザインしたの?』 美術出版社。ISBN 4-568-50269-12009年6月23日閲覧。
  2. ^ 昭和毎日「さよなら0系新幹線:東海道新幹線が開通 新しい鉄道時代の幕開け」内にある岐阜羽島駅の写真内 - 毎日新聞社。2018年6月20日閲覧(わずかではあるが「岐阜羽島 GIFU-HASHIMA」と書かれているその当時の東海道新幹線専用の独自仕様の駅名標が映っているのが確認できる)。
  3. ^ 須田寛「東海道新幹線II 改定新版」 JTBパブリッシング 2010年4月20日発行(pp.145に掲載の東京駅ホームの写真に「東京 TOKYO」と書かれているその当時の東海道新幹線専用の独自仕様の駅名標が映っている)
  4. ^ 写真特集:東北新幹線ヒストリー みちのくの夢乗せ、全線開通への四半世紀 - 毎日新聞社。2012年6月18日発信、2018年6月20日閲覧(東北・上越新幹線では在来線と同じ国鉄標準様式を採用。この写真内にある盛岡駅の駅名標が国鉄標準様式であることが検証できる。)
  5. ^ 鉄道ピクトリアル1988年3月号(通巻492号)P92
  6. ^ 『鉄道法規類抄 運輸通則(2) 昭和61年7月10日現在』(日本国有鉄道総裁室文書課)P2103-2525
  7. ^ “環境にやさしい駅をめざして” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2010年2月2日), http://www.jreast.co.jp/press/2009/20100202.pdf 
  8. ^ 駅名標キーホルダー「ご長寿セット」発売 四国新聞
  9. ^ 武雄温泉駅で発足25周年ストラップを配布 JR九州 佐賀新聞
  10. ^ 東急線全駅の「駅名標」がメモ帳に-パラパラ電車イラストも シブヤ経済新聞
  11. ^ a b 海外鉄道サロン編『ヨーロッパおもしろ鉄道文化』交通新聞社、2011年

関連項目[編集]