西武40000系電車

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SeibuRailway mark bw.svg 西武40000系電車
西武40000系電車 (秋津駅、2017年5月11日)
西武40000系電車
秋津駅、2017年5月11日)
基本情報
運用者 西武鉄道
製造所 川崎重工業
製造年 2016年 -
運用開始 2017年3月25日
主要諸元
編成 10両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 110 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 ロング時1298人、クロス時1249人
全長 20,000 mm
20,270 mm(先頭車)
全幅 2,808 mm
全高 4,115 mm
床面高さ 1,135 mm
車体 アルミニウム合金(efACE)
主電動機 永久磁石同期電動機
主電動機出力 190 kWh
駆動方式 WN継手式中実軸平行カルダン方式
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
保安装置 西武形ATS
東京地下鉄新CS-ATCATO
東急・横浜高速ATC-P
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西武40000系電車(せいぶ40000けいでんしゃ)は、西武鉄道通勤形電車である。

概要[編集]

老朽化した9000系の置き換えと東京メトロ有楽町線副都心線東急東横線横浜高速鉄道みなとみらい線と直通する有料座席指定列車「S-TRAIN」への導入を目的に製造された車両であり[1][リンク切れ]、2017年3月25日から運用を開始した[2]。今後2016年度から2019年度にかけて10両編成8本の合計80両が導入される予定。初代「スマイルトレイン」30000系車両の後継として、「人にやさしい、みんなと共に進む電車」をコンセプトに今後のスタンダードの車両となるように開発された[3]

製造は、西武の車両としてはモハ550形以来約90年ぶりに川崎重工業が担当している[4]

車両の設計においては、担当部署の鉄道本部車両部のほかに、社内から選抜された若手男女社員6名によるプロジェクトチームにより、車両の外観や車内設備の随所にそのメンバーの意見を多く採り入れている。

日本の鉄道事業者では、電車の形式名として「40000系(40000形)」を使用したことはなく、西武で初めて使用された。

2017年にグッドデザイン賞を受賞した[5]

車体[編集]

車体側面のデザイン(仏子駅、2017年3月25日)
ドアの開閉(元町・中華街駅、2017年3月26日)

外観[編集]

車両の外観は、30000系同様の西武グループのコーポレートカラーを基調にしつつ、「山の緑と空の青」をイメージした沿線の風景や自然を感じさせるカラーリングを採用した。

車体はアルミニウム合金製のダブルスキン構体でありFSW(摩擦攪拌接合)による接合により品質と精度の向上が図られているが、リサイクル性を考慮して、同一の合金を使用する「モノアロイ化」を極力進めており、先頭構体部もアルミ合金とすることで、「モノアロイ化」を図っている。また、車体の設計においては、コンピューターで車体を3次元構造物として垂直・圧縮・ねじりのほかに振動や衝突などの各種の荷重に対して立体的な解析を行い、それにより車体のそれぞれの強度・剛性を明確化することで、車両を設計する有限要素法解析で行い、振動や衝突に耐えられる構造としている。中間車の妻面構体部は、対向する列車が衝突した場合に備えて、妻柱部の強化と端部をカット(Cカット)した形状としている。先頭車の先頭部は前頭構体の強化や先頭部を270mmオーバーハング(前に突き出す構造)とすることで、事故などでの生存空間の確保を実現している。前面または側面の種別行先表示器にはフルカラーLED表示器としており、行先などを表示する標準文字色を明るい白色とすることで、視認性向上を図っている[6]

他社との相互直通運転に対応できるよう、車両幅2,808mmとし、側構体をストレート構造としている。床面高さは、30000系と同一の1,135mmとすることで、ホームとの段差を極力なくしている。

車内[編集]

車内は、空間をより広く見せるように、座席の袖仕切や妻引戸にガラスを多用して開放感のある車内としており、ガラスには桜柄が描かれている。客室扉脇に設置した保護棒には木材を使用しており、側窓ガラスには、紫外線と赤外線を遮断する紫外線・赤外線カットガラスを採用している。荷物棚には、荷物棚下部の採光確保や荷物などへの傷付け防止のため、ガラス式としており、高さは、一般部では1,750mmとし、車端部では1,720mmとしている。池袋、元町・中華街方の先頭車(10号車)の運転室側に「パートナーゾーン」と呼ばれるスペースを設け、車椅子ベビーカー利用者に配慮するほか、大型の側面窓を設置し、子供が展望を楽しめるようにしている。先頭車1号車の運転席側と中間車の2・4・9号車の車端には、「車椅子・ベビーカースペース」を備えており、非常通報器と車椅子固定用ロープを設置しているが、2号車3位側と9号車1位側に設置されているものでは妻面に非常用車椅子の格納箱が設置されているため、側窓は無い。各車両の妻面の上部には、空気浄化装置であるプラズマクラスター発生装置が先頭車に2台、4号車に3台、4号車以外の車両に4台が設置されている。車内の天井照明は調光機能(暖色系or白色系の切替え、減光)付きLED照明を採用しており、省エネ・省メンテナンス化を図っており、天井中央部のレール方向にラインテリア(横流ファン)を設置している。つり手はレール方向のほかに天井中央部の枕木方向にも設置されており、客室扉付近にもレール方向に長さが短いつり手を設置している。なお、つり手は一般部では、高さを1,660mmとしており、つり手の形状を卵をモチーフとした形状としているが、優先席にあるものは識別のためオレンジ色としている[7]

空調装置は、屋根上に外気取り入れ機能が付いた集中式の出力58.14kW (50,000kcal/h) のものを搭載しており、使用されている冷媒にはR407Cを使用している。乗車率とS-TIMが持つカレンダー情報を基に、季節に考慮した最適な空調モードを、暖房・冷房・除湿・ラインデリア(横流ファン)からの送風の中から自動で選択して運転を行う。レール方向に取付けられたラインデリアは、空調制御器の指令により、運転モードを強・中・弱の3速制御の自動運転としているが、乗務員の指示よる強制運転も可能である、また、暖房装置は座席下部や車椅子スペースにシーズワイヤヒータを取付けており、寒冷期でも十分な能力としている[8]

客室扉には、戸閉装置をダイレクトドライブモーター方式による電気式ドアエンジンとしており、扉に挟まれた時には、ドアの閉める力を変化させて抜けやすくする戸挟み防止機能を備えている。また、駅での長時間停車時において冷暖房効果を高めるため、半自動機能を備えており、室内側と車外側に客室扉を開閉させる半自動スイッチを装備している[8]

2016年度導入の2編成には、座席をクロスシートロングシートの両方に切り換えられる天龍工業製の2人掛けシート(デュアルシート)を配置しており、有料座席指定列車として運用する際はクロスシート状態に設定され、それ以外はロングシート状態で運用される。座席1人当たりの着席幅は460mmとし、背面に収納式のドリンクホルダとフックを設けている。また、座席の状態・向きは乗務員室の運転席背面にある腰掛操作ボタンにて設定可能であり、運転台のモニター画面に表示される「転換許可」キーを押せば、各車の妻面に設置された操作スイッチでも転換できる[9]。また、クロスシート時では下部にあるペダルを踏むことで、個別の手動転換が可能である。なお、妻面車端部は3人掛けのロングシートとしている[10]

サービス設備として、乗客が無料で使用できるWi-Fi設備(「SEIBU FREE Wi-Fi」サービス)を備えているほか、各座席には電源コンセントを装備し、パソコンやスマートフォンの充電等に使用できる。コンセントの差し込み口は2人掛け転換シートの壁側下部、および3人掛けロングシートの肘掛の下に設置されている。なお、電源コンセントは主に有料座席指定列車におけるクロスシート状態での使用を想定しているが、一般列車運用時のロングシート状態であっても全ての差し込み口が使用可能である[10]

情報提供機器として、各乗降ドアの上に17インチ2画面の液晶式情報表示装置(西武スマイルビジョン)を設置し、右側画面には行き先や停車駅・運行情報などを表示し、左側画面には広告やニュース・天気予報などを放映する。これとは別に、2016年度導入分の2編成の車内天井には、中吊り広告に代わるデジタルサイネージ用の17インチディスプレイ2画面を枕木方向に並べて設置しており、1両当たり12 - 16画面が設置されている[11]

このほか、4号車には車いす対応のトイレ(洋式)が設置されている。

乗務員室[編集]

運転室は全室構造であるが、緊急時の避難経路確保のため、前面貫通開戸を設けている。ワイパー装置は電動式で、前面窓に主ワイパーと予備ワイパーを各1基を装備しているほか、貫通開戸の窓に1基とデフロスタを装備している。運転台の主幹制御器はワンハンドル式である。また、運転台には、速度計や表示灯のほか、車両の機器の状態の表示・サービス機器の操作ができるタッチパネル式のモニター画面を3つ配置している。

主要機器[編集]

列車情報管理装置 (S-TIM)は30000系のシステムを踏襲しており、力行とブレーキ時のブレーキトルクを編成で一括管理制御する列車統合制御を行うほか、車両の主要機器との間での伝送経路を2重化して、機器間伝送の信頼性を向上させており、各車に搭載されたS-TIM箱(Tc車にはNo1とNo2の2つを搭載)に床下機器を集約させることで車体配線の削減を図っている。また、東京メトロの副都心線・有楽町線や東急東横線でのATO/TASC運転対応のため、ATO制御部を統合している[12]

制御装置はIGBT素子を使用した2レベル電圧形PWMによるVVVFインバータ制御を採用しているが、素子を冷却する1台の冷却器ユニットに対して、4つのインバータ回路を装備した4in1(フォーインワン)インバータユニットとしている。これは、4つのインバータ回路が個別に4つの全閉式のPMSM電動機を制御する1C1Mの個別制御方式であり、力行時の消費電力の削減や電力回生ブレーキの回生電力量の増加による電力回生ブレーキの負担増加を図っており、インバータユニットを2台搭載して8台の電動機を制御する8C8Mの制御装置をモハ40200とモハ40800に、インバータユニットを1台搭載して4台の電動機を制御する4C4Mの制御装置をモハ40500にそれぞれ搭載している。主電動機の制御方式を応答性とトルク制御性に優れたベクトル制御としており、全電気ブレーキと定速運転の機能を有している。また冷却器ユニットの冷却方式を純水によるヒートパイプ水冷方式としている[13]

補助電源装置はハイブリッドSiC素子を使用した3レベルIGBTインバータ方式の静止形インバータ (SIV) を採用しており、出力は260kVA・三相交流400V・電流341A・周波数60Hzである。編成内に2台搭載しており、編成内の負荷に並列に接続されて同期運転を行い、1台が故障しても、もう1台が継続して編成内の負荷に給電を行う自立分散型並列同期制御と、列車情報管理装置(S-TIM)のネットワークを利用して、編成内の負荷が軽負荷時には、1台の補助電源装置を休止させる軽負荷休止制御の機能をもっている。また、素子を冷却する冷却器ユニットの冷却方式を純水によるヒートパイプ水冷方式としている[14]

電動空気圧縮機は、三相誘導電動機直結駆動のスクロール回転式であり、吐出し量は1600L/秒で除湿装置と一体箱形で収められており、編成内にモハ40300とモハ40900に2台搭載している。

集電装置はシングルアーム式であり、電磁かぎ外し装置と降下検知装置付きである。

主電動機は、6000系6157Fの機器更新時に採用された東芝製の全閉式永久磁石同期電動機 (PMSM) を採用しており、全閉式により電動機内の内部清掃を不要としている[15]

ブレーキ装置は、回生ブレーキ併用全電気指令式電磁直通ブレーキ方式であり、空気ブレーキはON/OFF制御弁による各軸制御が可能である。これにより、列車情報管理装置(S-TIM)からのブレーキ編成制御により回生ブレーキの有効活用が可能となるばかりでなく、ブレーキ指令を受けて台車ごとに装備されたブレーキ制御装置のブレーキ受量器が台車単位でブレーキ力を演算または管理することで、1両の荷重が偏ってもブレーキ力を適正に配分することができる。また、台車ごとにブレーキ制御装置を装備することにより、空気ブレーキ用の空気配管の短縮が可能となり、ブレーキ時でのブレーキ開始時間の応答時間が約半分となるため、ブレーキ時での空走時間が短縮されている[14]

台車[編集]

駆動方式はWN継手式の中実軸平行カルダン駆動方式を採用している。

台車は軸箱支持装置を軸重調整機構付きのモノリンク式としたボルスタレス台車を採用しており、牽引装置はZリング式を採用している。30000系の台車と比較して、台車枠の軽量化や主電動機受座強度向上が図られており、駆動装置の歯車の歯車形状を適正化することで低騒音化も図られている。また、左右の空気ばねの圧力差を調整する差圧弁に応荷重機能を付けた応荷重差圧弁を採用している。形式は制御先頭車と付随車はSS185T形、電動車はSS185M形である[10]

運用[編集]

以下では、2018年3月10日ダイヤ改正時点における営業列車(回送列車を除く)について述べる。

池袋線系統では、S-TRAINの全日全列車の他、同列車に関連する運用としては平日朝の102号の折返し列車豊洲駅所沢駅行き各停1本に充当されている。また、池袋線・狭山線の一般列車の一部にも使用される場合がある。

新宿線系統では、拝島ライナーの全列車に使用される[16]。また一般電車では拝島ライナーの折返しとなる一部の小平行き各停(平日3本、土休日4本)と通勤急行、その他一部の優等列車と新所沢→本川越の各駅停車に使用される。

備考[編集]

2017年5月11日に発表された西武鉄道の2017年度設備投資計画に基づき、同年度に4編成が増備された。なお、同年度導入予定の4編成についても引き続きデュアルシートが採用された[17]。同年度最初の増備編成である40103編成は10月12日から15日にかけて製造元である川崎重工兵庫工場から甲種車両輸送され[18][19]、10月27日より営業運転を開始した[20]。40104編成も同年11月9日から12日にかけて川崎重工兵庫工場より甲種車両輸送された[21]。新宿線配置となった残り2編成も追って搬送された。 2019年5月には、さらに2編成がロングシートを採用して増備されることが発表された[22]

脚注[編集]

  1. ^ 2017年春 座席指定制の直通列車を導入します! (PDF) - 西武鉄道・東京地下鉄・東京急行電鉄・横浜高速鉄道プレスリリース、2016年6月16日、同日閲覧。
  2. ^ 西武40000系“Sトレイン”の運転開始 - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2017年3月26日掲載
  3. ^ 2017年春、新型通勤車両「40000系」デビュー! (PDF) - 西武鉄道プレスリリース、2015年8月24日、同日閲覧。
  4. ^ 西武鉄道40000系、新型通勤車両を川崎重工が受注 - 2019年度までに80両納入 - マイナビニュース 2015年8月24日、2016年3月14日閲覧。
  5. ^ 「40000系車両」および「車いすご利用のお客さまご案内業務支援システム」が グッドデザイン賞を受賞!! - 西武鉄道ニュースリリース、2017年10月4日
  6. ^ 鉄道ファン676号、p.56。
  7. ^ 鉄道ファン676号、p.58。
  8. ^ a b 鉄道ファン676号、p.62。
  9. ^ 腰掛のパターンは、「ロングシート」・「上り方向クロスシート」・「下り方向クロスシート」の計3パターン
  10. ^ a b c 鉄道ファン676号、p.59。
  11. ^ 鉄道ファン676号、p.64。
  12. ^ 鉄道ファン676号、p.63。
  13. ^ 鉄道ファン676号、p.60。
  14. ^ a b 鉄道ファン676号、p.61。
  15. ^ 西武鉄道新型車両向け電気品受注について - 東芝:プレスリリース、2015年8月24日
  16. ^ “2018年春 西武新宿→拝島間に有料座席指定列車「拝島ライナー」を導入します!” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 西武鉄道株式会社, (2017年11月20日), https://www.seiburailway.jp/news/news-release/2017/20171117haijimaliner.pdf 2017年11月21日閲覧。 
  17. ^ 2017年度 鉄道事業設備投資計画 (PDF) - 西武鉄道ニュースリリース、2017年5月11日
  18. ^ 西武40000系第3編成が甲種輸送される - railf.jp(2017年10月14日)
  19. ^ 【西武】40103編成 小手指に到着 - RMニュース(2017年10月17日)
  20. ^ 【西武】40000系40103編成が営業運転開始 - RMニュース(2017年10月27日)
  21. ^ 西武40000系第4編成が甲種輸送される - railf.jp(2017年11月12日)
  22. ^ 2019年度 鉄道事業設備投資計画 (PDF) - 西武鉄道ニュースリリース、2019年5月14日

参考文献[編集]

新船紀弘(西武鉄道株式会社 鉄道本部 車両部 車両課主任) 平成29年3月25日ダイヤ改正でデビュー!西武鉄道40000系『鉄道ファン』67巻6号(通巻676号・2017年8月号)(交友社)pp. 56-64

外部リンク[編集]